2025年10月12日日曜日

トマホークがロシアに戦争の構図を変える「隠れる場所なし」(National Security Journal)―ロシアの背後で叩きたくなるのは当然で、ずっとこれができず悔しい思いをしてきたウクライナついに鬱憤を晴らす段階になるのか注目です

 


The Institute for the Study of War (ISW) Map.

戦争研究所(ISW)作成の地図。

道どおりなら、ワシントンはトマホーク巡航ミサイルウクライナに送ろうとしている。ワシントンに拠点を置くシンクタンク戦争研究所(ISW)が公開した地図を見ると、戦火にさらされたこの国が支援を歓迎する理由が容易に理解できる。

ISWの地図でトマホーク提供がウクライナにとってゲームチェンジャーとなり得ることがわかる。ウクライナ軍は、自国製のドローンや地上攻撃ミサイルを用いてロシア領内深くまで攻撃を仕掛けることで、プーチン大統領の戦争マシンに破壊的な損害を与え続けてきた。

ウクライナ軍がトマホークを加えることで、ロシア軍陣地後方の標的を攻撃する能力が桁違いに拡大する。

トマホークミサイルの射程は、これまでウクライナに提供されてきた他の西側製ミサイルを凌駕する。現在ウクライナに提供されている主要システムは、MBDA製ストームシャドウ/SCALP EG空対地巡航ミサイルと、米陸軍の地対地ATACMSの2種類だ。

トマホーク陸上攻撃ミサイル(TLAM)は、米国防産業が生産する最も精密かつ汎用性の高い長距離攻撃システムの一つで陸上・海上・潜水艦・航空機など多様な発射プラットフォームから運用可能だ。

Tomahawk Launch

トマホーク発射。画像クレジット:クリエイティブ・コモンズ。


Tomahawk Block IV Missileトマホーク・ブロックIVミサイル。画像クレジット:クリエイティブ・コモンズ。

ウクライナに提供された場合、この兵器はトマホークの性能に合わせて改造された地上移動式または固定式垂直発射システムから発射される。ウクライナでの使用に向け、米国およびNATOの計画担当者は既存のMk 41垂直発射システム(VLS)あるいは、米国管理下の射撃調整ソフトウェアと統合可能な地上移動式プラットフォームを配備すると見込まれている。

選択肢としては、現在は廃止された米陸軍の中距離能力(MRC)がある。これはタイフォンミサイルシステムの一部で、改造された艦艇用発射セルを用いて陸上からトマホークを発射する。

MRC発射装置は、スタンダードミサイル6(SM-6)とトマホーク陸上攻撃ミサイル(TLAM)の両方を発射可能である。MRCバッテリーはバッテリー作戦指揮所、発射装置4基、動力装置、改造トレーラーで構成される。

トマホークの射程は短距離型で1,600キロメートル超、長距離型では最大2,500キロメートルに達する。これによりウクライナはレーダー探知を回避する低高度飛行で、高価値目標への深部浸透攻撃が実行可能となる。

当然ながら、元KGB中佐で、現在はロシア大統領であるプーチンは、ワシントンがウクライナにトマホークミサイルを供給するのを阻止しようと、必死の努力を続けている。同大統領は、そのような動きは「着実に改善している」と本人がみなすモスクワとワシントンの関係を破壊すると警告している。

この警告は、ホワイトハウスが同意しないかもしれないというプーチンの判断によるものだ。プーチン大統領が、ウクライナ戦争の終結に向けたワシントンのあらゆる取り組みを巧みに回避したり、ごまかす中、ドナルド・トランプ米大統領の政権は苛立ちを募らせている。

トランプ大統領は、プーチン大統領の二面性に嫌悪感を示し、何度も「電話では『友好的な話』をするが、その直後に『皆を爆撃する』」と発言している。トランプは最近、ロシアのますます衰退する軍事力を「張り子の虎」と嘲笑するまでに至っている。

これまでの交渉やその他外交的取り組みはすべて失敗に終わっており、今こそ「力による平和」の時だと、ワシントンDCに拠点を置くアトランティック・カウンシルは今週月曜日、見解を述べた

状況の概観

10月6日のインタビューで、トランプは、米国がウクライナを含む同盟国にトマホーク巡航ミサイルを供給する準備が整っていることを確認した。これらは枠組み協定に基づき提供され、運用統制権は米国が保持する。

これは画期的な決定で、ワシントンの軍事支援モデルのレベルと殺傷能力における劇的な進化——転換とは言わないまでも——を示す。この構想は、米国が指揮権を維持しつつ、他国への高精度攻撃システムへのアクセス拡大を伴う。トマホークがウクライナに提供されれば、戦場が一変する可能性がある。

その攻撃能力はロシア軍への戦略的圧力を強めるだろう。10月7日付のArmy Recognitionニュースサイトによれば、この動きは欧州の安全保障構造を再構築する可能性もある。

プーチン大統領はこの点を痛感しており、そのためウクライナへの提供可能性への反対は、クレムリン報道官ドミトリー・ペスコフのような常連の偽情報専門家ではなく、外務省高官によって表明された。

セルゲイ・リャブコフ外務次官はトマホークのウクライナ供与に警告を発しただけでなく、トランプ大統領が8月にアラスカでプーチン大統領と行った会談から生まれたウクライナ紛争解決に向けた勢いは「ほぼ枯渇した」と宣言した。

本人含むロシア当局者はここ数週間、トランプが和平解決にの努力を停止し、代わりにウクライナへの新たな武器売却を検討していることを嘆いてきた。

トマホーク売却に対するこの最新の警告は水曜日に出され、ウクライナへのミサイル供与からトランプを抑止しようとするロシアの取り組みの一環であった。この行動は、ウクライナ戦争の過程でモスクワが繰り返し用いてきた策略の再現である。

今回はセルゲイ・リバコフ外務次官が「ウクライナへのトマホーク供給がもたらす深刻かつ重大な結果」を警告する形で表明され、このレベルの先進軍事技術をウクライナに提供すればロシアとNATO諸国との直接衝突につながると宣言した。

プーチンの唯一の問題は、モスクワの威嚇にもかかわらず、今回はこの戦術が通用しない可能性が高い点だ。

トマホークにとって標的が豊富な環境

ロシアのどの地域が標的となり得るかを示すISWの地図によると、ロシア全土にわたり約2,000箇所の軍事・産業施設がトマホークの射程圏内に入る可能性がある。

地図はミサイルの2つのバリエーションに基づいて作成された。

地図上の最初の射程範囲は、射程約1,600キロメートルの短射程型ミサイル用で、より長射程のモデルは、発射地点から最大2,500キロメートル離れた地点まで到達可能だ。

ISWの試算によれば、1,600キロメートル射程の標準モデルは、ロシア国内の少なくとも1,655の目標(うち67の空軍基地を含む)を攻撃可能だ。長射程モデルでは1,945施設(うち76の軍事飛行場を含む)が射程圏内となる。

トマホークの射程圏内に入る施設には、タタールスタン共和国エラブガにある巨大ドローン製造工場や、ロシア爆撃機部隊の相当数を擁するサラートフ州のエンゲルス第2空軍基地などが含まれる。

これらの著名施設に加え、ISWは司令部、兵器・燃料貯蔵庫、兵器庫、防空システム、整備施設、防衛生産工場、訓練場など他の潜在的標的を特定している。

ウクライナにとってこれは前線から遠く離れたロシアの空軍基地、兵站拠点、指揮所を攻撃できる能力を意味し、従来、ストームシャドウやATACMSシステムでさえ到達不可能とされていた標的である。

トマホークがロシア軍に与える象徴的・心理的影響に加え、これはウクライナが米国製HIMARSシステムと欧州製ストームシャドウミサイルを受領して以来、同軍の攻撃能力において最も重要な向上となる。

ロシアは「隠れる場所のない」世界に生きざるを得なくなる。ウクライナ前線からの距離が安全を保証することはなくなった。これによりロシア軍は戦術的撤退、分散配置、そして重要な軍事インフラや兵器システムの多大なコストを伴う移転を余儀なくされるだろう。

トマホークミサイル供給に関する議論は、10月7日の報道でトランプ大統領がキーウへの提供について「ほぼ決断済み」と示唆され、「推測の域」から「極めて可能性が高い」段階へと移行した。

ただし米大統領は、ウクライナがミサイルをどのように使用し、どのような目標を攻撃するのかについて明確化を求めていると付言した。

トランプはまた、紛争の激化を望んでおらず、ウクライナの要請の背後にある戦略的目的を理解したいと強調した。■


‘Nowhere to Hide’: How Tomahawks Would Change the Map of the War for Russia

By

Reuben Johnson

著者について:ルーベン・F・ジョンソン

ルーベン・F・ジョンソンは、外国の兵器システム、防衛技術、国際的な武器輸出政策の分析と報道において36年の経験を持つ。ジョンソンはカシミール・プワスキ財団の研究部長である。また、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻の生存者でもある。長年、米国防産業で外国技術アナリストとして勤務した後、米国防総省、海軍省、空軍省、英国政府、オーストラリア政府のコンサルタントを務めた。2022年から2023年にかけて、防衛報道で2年連続の受賞を果たした。デポー大学で学士号、オハイオ州マイアミ大学でソ連・ロシア研究を専門とする修士号を取得。現在はワルシャワ在住。


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