スキップしてメイン コンテンツに移動

投稿

2011の投稿を表示しています

日本の武器輸出三原則緩和で何が生まれるか

                               年末の大きなニュースはF-35の採用と武器三原則の変更でした。そもそもF-35が正しいのかという疑問は当ブログがかねてから主張しているところですが、政府として採択したのであれば納税者にとっても不幸な結果にならないようにお願いしたいところです。さて、その武器輸出制限の方針転換についてAviationweekは以下のように伝えています。これが今年最後の配信になります。それでは皆様良いお年を。 Japan To Ease Arms Export Ban Dec 28, 2011     武器輸出制限の緩和は歴史的な決断であり、日本は防衛装備の開発製造で国際的な活動に加わることになる。 今 回の方針変更で日本国内の防衛装備メーカーに大きな変化が生まれる。各メーカーは得意技術に集中することが可能となる。これまでは装備全体の製造を非経済 的な少量生産で強いられてきたのと好対照だ。ただし、この変化が現れるには時間がかかるものだろう。日本と防衛装備開発生産で協調可能な国は安全保障の関 係で米国、カナダ、オーストラリア、西ヨーロッパ各国が考えられ、韓国も可能かもしれない。 そ の手始めにF-35ライトニングがあげられる。同機採用を選択した日本にとって国内の戦闘機生産基盤をどこまで維持できるかが課題だ。日本の購入予定はわ ずか42機に限られ、これが当初の予定数としても経済的な生産規模を維持するのは相当に困難だが、同機を運用する各国向けの部品を日本が生産した上で、そ の他部品を輸入してF-35を組立るのであれば話は別だ。 日本では戦闘機国内生産は1956年に開始され、今年9月に三菱重工業F-2の最後の二機を納入で終了している。F-35採択は日本の戦闘機生産のあり方を大きく変化することは避けられない。 武器輸出三原則はそもそも1960年代に提唱され、70年代以降は厳格に解釈されてきたが、結果として国際共同開発への参加を不可能にしてきた。共同開発は第三国への輸出が通常付随するからであり、それは新政策でも考慮すべき課題である。 日 本政府の考えでは共同開発装備の第三国輸出には日本の同意がなければ実施できないとする。二年前にも同原則の改正の機会があったが、当時も人権を軽視する 諸国への防衛装備販売はし

サウジアラビア向けF-15SA販売が実現に

                              Saudi, U.S. Finalize F-15SA Sale aviationweek.com Dec 29, 2011     サウジアラビアによるF-15SA購入により ボーイング のセントルイス工場の生産ラインの仕事が確保できたものの、同社が期待していたF-15の準ステルス阪の海外販売の希望は消えつつある。 サウジアラビアは製造済みF-15SをF-15SAとして改造する機体の受領を2014年に開始し、完全新造のF-15SAがその翌年から加わり、総額294億ドルの商談となる。 オバマ政権はこの商談で米国経済には年間35億ドル、5万人の雇用の恩恵が生まれるとしてこれを歓迎しているが、製造済み機体の改装作業の一部はサウジアラビア国内でアルサラム航空機Alsalam Aircraft Companyにより実施される。 今 回の商談成立はボーイングにとっては朗報で、実際に商談成立を見込んで社内作業は開始されている。また、韓国からの受注の期待もあったが、日本がF- 35AをF-18スーパーホーネットを退ける形で採用したため、韓国も日本の選択を真似ると見られる中、韓国向け販売の可能性は消えつつある。それはボー イングが2009年に発表したサイレントイーグル仕様についても同じだ。韓国とイスラエルが同機の導入可能性ありと見られていた。イスラエルもF-35を 選択しており、ボーイング首脳陣は韓国から正式な提案提出要請が出るのを待っているが、サイレントイーグルが選択肢になるかは微妙だ。 ボーイングのシンガポール空軍向けF-15SGおよび韓国向けF-15Kの引渡しは2012年第三四半期に終了する。生産は一ヶ月一機になっており、サウジアラビア発注でこれを増加させることは可能。 今回の商談成立を発表したアンドリュー・シャピロ国務次官補はイランに対して強いメッセージを送る意味があり、米国は湾岸地区おより中東に安定をもたらす役割を果たしていくと発言している。    今回の商談にはあわせて レイセオン 製AESAレーダー、 グッドリッチ DB-110電子光学偵察装置、赤外線捜索追跡をもつSniperおよびLantirnボッド、電子戦装置が含まれている。 兵装ではAIM120C7空対空ミサイル、500ポンド・

捕獲されたRQ-170のデータは保全されているのか

2月8日に突如イランが世界に発表したRQ-170の「捕獲」ですが、米空軍に近いAviationweekが全然取り上げないため、今回は無人機の話題を専門に取り上げるUAS Vision www.uasvision.com から関連情報をご紹介しましょう。 US Says Downed RQ-170 Data Heavily Encrypted                                             Posted on December 23, 2011 by The Editor                                                                  米関係者によるとイランには捕獲したCIA運用のステルス無人機からデータや技術を入手するのは相当困難だという。その理由に敵対的な空域で運用する無人機の情報価値を制限する措置が有効に働いているようだ。 イラン発表によるとRQ-170センティネルを乗っ取り、イラン東部のカシュマル近郊に着陸させたと主張しているが、米国は同機が作動不良に陥ったというのが事実で、イランの主張を退けている。 各種専門家によると同機のデータと通信装置には重度の暗号化措置がされており、イランでは情報を引き出せないという。米関係者は無人機には自爆装置は装備されていないと公言している。 一方、イランの電子戦部隊がRQ-170の衛星通信リンクを妨害して同機の自動操縦装置を欺瞞しアフガニスタン基地に帰還させたと思わせ、イランに着陸させたと主張する技術専門家もいる。確かに GPS航法は 弱点だ、とこの専門家は言っているらしい。 これに対してイランがRQ-170の航法システムを妨害する性能があるシステムを保有している可能性は「きわめて低い」と見る専門家もいる。 米国の無人機は軍用GPS周波数を使っており、そのタイミングコードの手順は極秘事項になっている。民用GPSのリピーターは民間用周波数で作動している。 下 院情報委員会のマイク・ロジャース委員長はたとえイランが今回入手した技術を実用化したとしてもそれが実現する時点で該当技術は陳腐化していると発言。こ れに対してイランのアリ・アクバル・サレヒ外相は国営IRNA通信に対して無人機捕獲の発表を遅らせたのは同機

本当にF-35で大丈夫なのか

                              Japan Judged F-35 To Have Best Performance aviationweek.com Dec 22, 2011 日本の防衛省は ロッキード・マーティン F-35Aライトニングの性能水準の高さがF-X選定の決め手だったと発表。 また同省はF-35Aが一番安価であったともする。競合する ユーロファイター・ タイフーンおよび ボーイング F/A-18E/Fスーパーホーネットがともに空中給油用にフライングブーム式に改装しなければならないためだという。 産経新聞報道によると同機の「主要部品300点」のうち、40%を国内生産すると報道しているが、読売新聞は米政府からF-35主翼および尾部の生産を持ちかけられていると報道している。 両報道を見ると日本は従来の限りなく完成品に近い国内生産にこだわる方針は予想通り撤回しているが、一定の国内生産基盤は維持する意向が見えてくる。ロッキード・マーティンからは最終組立ラインの国内開設も提案されており、この実現はありうる。 国 内生産比率が高くなれば、初期取得規模の42機完成後にも日本がF-35を追加生産する公算が高くなる。防衛省は業界の予測通り42機購入を確認してい る。かねてから日本の産業界からはF-X生産は2020年代後半まで維持してボーイングF-15J部隊の一部の後継機灯すべきだとの主張があった。 今回の防衛省の評価基準では50点が性能、22.5点が費用、22.5点が国内生産への寄与度、5点が導入後の支援体制だったという。 だ が、F-35の性能は想定にとどまり、 それだとF-35が性能面で最優秀だったという評価が生まれない のであり、防衛省は支援サービスが一番良いとの評価をしている。また 国内生産への寄与 度も低い 、それは米政府がステルス技術の移転を認める公算がないことによる。ユーロファイターは95%の「情報共有」を認め、ボーイングは70から80% を提示していい(産経新聞は伝える。これに対してF-35での情報共有比率は著しく低い(同紙)。 ユーロファイターはタイフーン生産でも日本の希望通りの比率を認めるとしていた。この申し出は国会議員の一部に特に魅力的に写っていたとの報道があり、実際に、国会審議の中でタイフーンを採択す

ABL空中レーザー実験機は開発中止 ただし技術開発は進む

Lights Out For The Airborne Laser aviaionweek.com Dec 21, 2011     開発期間16年、50億ドルを投入し、弾道ミサイル迎撃テストで幕を飾る形でペンタゴンはボーイングによる747-400Fを改造した空中レーザー機をモスボール保存することを決定した。 米ミサイル防衛庁は新世代レーザーを超高度を飛行する 無人機からの 運用を検討中で、レーザー技術、発電、ビーム制御などABLの開発成果を活用する。 ABL開発は1990年代に米空軍が開始したもので、メガワット級の化学酸素ヨウ素レーザー(COIL)により上昇中の弾道ミサイルの推進動力部分を焼ききり、逆にミサイルを発射地点に墜落させることをめざした。 ABL は目標の撃破実験に昨年ついに成功したとはいえ、あまりにも巨額な予算見積と非現実的な運用シナリオ、さらに財政危機を反映したペンタゴンの予算状況 により止めを刺された格好だ。ABLは 何回も 中止対象にあげられていたが、MDAと業界が存続させてきた。2010年2月にABLが目標捕捉、破壊に初めて成功し(テリアブラックブラント固体燃料ロケット)、その一週間後たらずに外国製液体燃料ロケット破壊に 成功している。 MDA長官パトリック・オライリー 陸軍中将 は新世代のレーザーシステムに本腰を入れており、「より高性能のレーザーを小型化し、もっと高高度から発射する」と今後の機器構成はより簡略化すると言っている。 「技 術的にはあと一歩のところに来ていると思います。二三年でプロトタイプを完成し高高度で無人機からの運用が可能となります。いろいろな技術でいわば競 馬をしているようなもので、今のところどの技術にも十分な可能性があります。2010年代中に高高度飛行UAVと組み合わせた実践能力が獲得できるでしょ う」 ただMDAは詳細を公表していない。ABL実験開始後の進展では半導体レーザー研究がめだつが、必要な発電量が確保できるかが鍵だ。 実際にはABLのすべてをモスボール保存したり廃棄するわけではない。ボーイングはMDAにビーム制御、発射母機の運動特性などの専門家20名の保持を提言しており、「今後の高出力指向性エネルギー兵器開発に知見を円滑に移転する」ことができるという。 ただ公式にABLが終了すると、ボー

日本のF-35導入を注視する韓国

Seoul Will Be Watching aviationweek.com Dec 16, 2011                                                                  英語ではジョーンズさんに遅れるな(見栄を張る)という表現があるが、韓国の国防関係者にとってはさしずめ田中さんに遅れない事が重要だ。 日本が ロッキード・マーティン F-35導入に踏み切り42機以上を購入するとの観測が強まっている。韓国がこれを注視しているのは間違いない。 日 本からの発注が実現すれば即座に韓国も後を追い、結果としてF-35の需要を増加させて、資金難の米国や欧州各国による取り消し分を穴埋めする効果にな る。日韓両国はF-4ファントムの後継機種の選択を急ぐ必要があり、トラブルの多いF-35で納入を待つ期間が長くなるとしてもそのリスクを受け入れるだ ろう。 日 本の決定内容は現地メディアにリークされており、年末までには正式発表となると見られるが、日本にとって過去55年間の戦闘機国内生産体制に決別する内容 となる。日本はイタリアとならびF-35組立工程を抱える可能性があるが、ステルス機能の秘匿性のため米国外での完全生産は認められないし、実現するとし ても法外に高価な生産になろうと業界筋は見る。 一 方F-X候補とされてきた ボーイング F/A-18E/Fスーパーホーネットと ユーロファイター ・タイフーンなら国内生産実現の可能性がはるかに大きい。こ の両社は日本で敗退すると韓国でも60機分の販売機会を失うリスクに直面する。両社とも韓国の国民感情から韓国国防省が日本の選択よりも先進性の劣る装備 を採択する可能性は少ないと見る。そうなるとF-35導入は両国にとって無難な選択か。未成熟技術を抱える同機の購入に走ることへの批判は両国内であるだ ろうが。 ボーイングは韓国向けにF-15SEサイレントイーグルを提案してきており、一部同国内で生産できるとしていた。ここでもF-35を採択すれば国内の戦闘機生産ラインが維持できなくなり、現有の生産基盤と人員は他の仕事を探す必要がある。 日 本国内では新型戦闘機の国内生産を2020年代後半まで維持する必要が訴えられてきた。日本では普通の低率生産ペースであってもこれなら120機を生

イラク空軍向けF-16販売へ

Iraq F-16 Order Finally Confirmed aviationweek.com Dec 6, 2011                                                                  長く決着がつかなかったイラク向けF-16売却だが、いよいよ実行に移される。ロッキード・マーティンに総額835百万ドルの海外軍事販売契約が交付され、18機が売却される。         国 防総省による同契約内容はF-16C12機とF-16Dブロック52を6機ならびに予備部品と支援サービスが含まれ、2018年5月まで有効になってい る。これによりフォートワースの生産ラインは2015年まで継続されることになり、ロッキード・マーティンにとってはF-16の確定受注は一年以上ぶり だ。         イラクはF-16購入交渉を2009年に開始し、同国空軍の拡充の柱としてきた。現在の同空軍にはヘルファイヤ搭載のセスナ・キャラバンしかない状態だ。当初予定してた購入の頭金は食料購入に流用されて実施できない状態になっていた。 その後交渉は再開し、ことし9月にイラクのF-16購入が発表され、同国は第26番目のF-16運用国になる。               

F-35開発が中止になったら③代替エンジン開発は途中で中止に

                              GE, Rolls Give Up on F136 JSF Alternate Engine aviationweek.com Dec 2, 2011 ジェネラル・エレクトリック と ロールスロイス はF136エンジン開発を中止する。これでF-35共用打撃戦闘機の代替エンジン開発計画は消滅することになる。 こ の決定の出発点は去る10月31日のGEエイビエーション首脳部と国防次官アシュトン・カーターAshton Carterの会合で「国防総省から自社開発への支援が得られる見込みがなくなったため」とGEは説明。国防総省はすでに4月にF136開発の中止を決め ていたので、驚くべき内容ではないが、これでF-35に採用済みの プラット・アンド・ホイットニー 製F135エンジンを上回る性能をねらったF136の 15年に渡る開発は終了することになる。 業界筋ではJSFのエンジン関連業務量を1.000億ドル相当と見ており、代替エンジン開発による競争効果で15から20%の生涯費用節約を予想していた。 F136 開発の中止により戦闘機用エンジンメーカー間の将来の第六世代戦闘機向けエンジン開発のバランスにも影響が出る。プラットとロールスが従来は考えられな かった共同事業の形で民間商用機向けのターボファンエンジン開発にとりかかっており、その延長で第六世代機用の軍用エンジン開発でも提携する可能性が出て きた。 ペ ンタゴンから終結宣言が出た時点で開発は八割ほど完了しており、国家予算も30億ドル程度投入されていたが、GEとロールスは自社資金によりF136開発 を2012年度まで続けると宣言していた。しかし、GEによるとカーターの発言により「F136の開発継続が困難と判断し、JSF関連の連邦予算の動向も さらに不確実性を増している」という。 これまでにF136開発用エンジン6基で合計1,200時間の稼働実績がある。GEによるとF136関連の人員は全員他部署へ移動の予定だという。 F136 は技術的に先進性があるとはいえ、GEとロールスは別箇に将来の第六世代機用エンジン開発を空軍研究所の適合性多用途エンジン技術Adaptive Versatile Engine Technology (Advent) 他の研究

F-35 第四ロット機は7%の予算超過に

F-35 LRIP 4 Jets 7% Over Target Cost aviationweek.com Dec 2, 2011     By Amy Butler 総額3,800億ドル規模のF-35開発を管理する政府関係者によると同機生産の第四生産ロットでは機体単価が目標を約7%上回りそうだという。 D・ヴェンレット中将(F-35生産統括責任者)によるとロッキード・マーティンには単価引き下げの可能性があると見るが、低率初期生産ロット4号(LRIP)の3割は完成しているという。 ロッキード・マーティンも7%超過は「きわめて正確な予測だ」と認めている。 では、政府が掌握している同機の単価はどうなっているのか。 -通常型離着陸のF-35Aでは111.6百万ドル -短距離離着陸型は109.4百万ドル -空母運用型の初期生産で142.9百万ドル と なっており、契約により目標価格の120%上限までの価格超過部分は政府とロッキードが折半して負担する。初期の生産ロットでの超過額は11から15% だった。結果、政府はLRIP1から3までに総額771百万ドルを負担している。これは一機あたり27.5百万ドルの追加支払になる。このうち135百万 ドルはテスト期間に判明した補修を完成機に実施することにあてられた。これだけで対象28機に一機あたり4.86百万ドルをつかったことになる。

リビア作戦から明らかになったNATO軍の実態

                              Libya Reveals NATO Readiness Highs And Lows aviationweek.com Dec 2, 2011     一 回の紛争事例の結果から「普遍的な真理」を引き出すのは危険かもしれない。今年前半に英国の戦略国防安全保障レビューはアフガニスタン作戦から将来の作戦 上のひな形を想定している。その報告では国家間の紛争とそれ以外の紛争のオプションの区別などきれいにまとめてはいるが、あくまでもきれいごとだ。では統 合護民官作戦Operation Unified Protector(NATOによるリピア内戦におけ国民、反乱軍保護ミッション)から意味のある教訓は引き出せるのか。 NATOの即応体制 が作 戦実施 で欠点があきらかになったとか、ヨーロッパ各国の準備不足が露呈した等結論を急いで引き出す傾向があったが、空中給油機の8割 は米空軍が提供しており、このことが関係者に衝撃を与えているのが事実だ。欧州全体からはわずか20機程度しか動員できなかった。英国はVC-10とトラ イスターの退役で空中給油能力が低下しており、この状態は エアバス A330ヴォイジャー給油機が稼働開始するまで続く。フランスの給油機の稼働率は著しく低く、両国で進行中の調達拡充が実現すれば、「タンカーギャップ」は解消するだろう。 一方、敵防空網の制圧ではNATOは米国装備に頼りっぱなしであったのも事実だ。これは今回始まったのではなく、これまでの数十年間同じ状況で今後も変わりそうにない。また、救難捜索用機材がないため、サハラ砂漠が緊急時には着陸地点に指定されていた。 だ が空軍戦力近代化の努力の結果が今回出ている。各攻撃機には目標照準・Istar(情報収集、監視、目標捕捉、偵察)ポッドを搭載し、1990年代よりも 状況に応じてはるかに柔軟な対応をしている。すでに他国からは今回のNATO作戦で示された欧州各国の軍用機の作戦状況に関心が寄せられており、複雑な攻 撃作戦の大部分を地上統制官なしで実施していることが注目を集めている。今回の作戦の前にはアフガニスタンの経験が念頭にあり、複雑な航空作戦を実施する には地上統制官が目標を示すことが必要だろうと広く信じられていた。リビア作戦はこの考え方をある程度変え

F-35が中止になったら② 結局F-15を徹底的に使いこなすことになるのか

                              F-15s May Out-Maneuver Sequestration Impact aviationweek.com Nov 30, 2011             F-35開発が仮に中止あるいは更に遅延した場合、米国及び同盟国はレーダー断面積の少ない機体またはスタンドオフ兵器を敵の高性能防空網に向けて発射できる機体がより多く必要となる。 そこで現有機を改良して高性能通常型兵器、指向性エネルギー兵器、高性能電子戦(EW)能力の搭載が求められるが、その価格はステルス専用機の数分の一にすぎない。 F-35開発中の ロッキード・マーティン は既存のF/A-18やF-15、F-16を改装してもJSFと同程度の能力を実現することは不可能だと主張している。 た だし、空軍内部でステルス機のF-22やF-35の能力を現有機が代替できると信じる向きはわずかだ。「現時点で利用できる技術を取り入れないのでは現在 の空戦で求められる機能を発揮できません。みなさんのほとんどが対空ミサイルの性能、配備数が上昇しており、対抗上機体断面積を小さくするステルス性が必 須になっていることをお分かりになっていないようです」(太平洋空軍司令官ゲーリー・ノース大将“Gen. Gary North, commander of U.S. Pacific Air Forces) 「空対空ミサイルの有効射程も伸びており、敵を先に探知し、集中的に電子戦を仕掛けることが重要になっています。各国の防衛政策では必要な装備をどこまで整備するのか、どれだけの防衛作戦を行うのか真剣に検討するべき時期が来ています」(同大将) だ が、ステルス機の配備数があまりにも少ないのであれば、その補完装備が必要だ。ここで ボーイング のF-15ミッションシステムズ担当部長ブラッド・ジョー ンズがすき間市場として、 サイレントイーグル を海外向けに売り込もうとしている他、米空軍向けには現有F-15CとF-15Eストライクイーグルの改修を 提案している。米軍装備が縮小に向かう中、急に発生する紛争事例(リビアがその例)に投入できる各国共通運用が可能な機体の需要が大きくなっていると分析 する。ただし第一の疑問は現有のF-15は今後の新型機導入あるいは現有

F-35開発が中止になったらどうなるか

             Are There Alternatives To The F-35 Program? aviationweek.com Nov 29, 2011     もしF-35開発がさらに遅れるか、規模縮小になるか、予算問題で取りやめになったとしたら米国の攻撃機戦力保持の代替策はあるのだろうか。 仮 にF-35の編成整備が高価過ぎると判断された場合、ペンタゴンの選択肢は即刻取りやめから海軍用F-35Cあるいは海兵隊用F-35B開発の中止または 先送りまでの範囲がある。空軍用A型の中止の場合は全体開発そのものが継続できなくなるので、むしろ開発を先送りにするか、空軍向け本格生産機数を現在の 目標の年間80機から縮小する可能性がある。 JSF 関係者は代案はありえない、とか次善の策はないとこれまで巨額の規模の同機開発がサクッ元されようとすると繰り返し主張してきた。ただし、財務危機の現実 の前に計上済みの予算も削減の可能性が出てきた。JSFでは初期作戦能力獲得がいつになるのか未だに保証ができない状態であり、調達コスト、維持コストで も同機の将来には不安が離れない。一方で米国、海外において現行の各種機体の生産を今世紀半頃まで維持し、戦闘機の不足を回避するべきだと主張する向きが ある。現行機種ではステルス性が劣るため、その穴を無人攻撃機、長距離発射兵器、電子攻撃装置また探知性削減の装置装着で補う構想がある。 それにしてもF-35で複雑な問題が国際共同開発国の役割だ。8カ国の合計でも全体機数の5%相当にしかならないが、各国は機体調達を早期に求めており、初期低率生産LRIP段階で各国が導入する機数は米空軍分に相当する規模になる。 仮に共同開発国が遅延と価格上昇に我慢できず、計画から脱落したら、生産数が低下し、単価がLRIP段階で上昇していしまう。LRIPでは初期の少数生産から急速に年間200機程度に増加するのが当初の計画だ。 こ の規模は現在の戦闘機各種のいずれよりも大きく、この規模の経済がJSFの根本なのだ。これまで大規模投資が組み立て設備、試験機器等になされており、複 雑なサプライチェーンで中小企業含む多数の企業が参加しているが、これは一定規模の仕事量を前提としてきた。その結果、現行の戦闘機の生産量では不十分な 規模のシステムが生

米空軍のISR分野に新しい動きが出ています

                              USAF ISR Review Points To Priority Change aviationweek.com Nov 28, 2011     今夏に実施された米空軍の情報収集・監視・偵察(ISR)業務内容の検討の内容が明らかになった。相手国防空体制が整備された空間での活動、宇宙配備・サイバー空間の装備との融合、空軍以外の各軍や情報関連諸機関との連携を求めるのがその大綱だ。 こ の10年間の空軍ISR活動の中心は対テロ作戦におかれており、有人・無人機ともに脅威の存在しない空域での作戦が可能だった。空軍ISR担当参謀副本部 長ラリー・ジェイムズ中将Lt. Gen. Larry Jamesは今後の課題は接近を拒む空域での作戦を実現できるバランスの取れた装備を整備することにあると指摘。 同中将は空軍協会主催のグローバル戦闘シンポジウムの席上でISR整備計画検討の結果は「空軍長官に数週間前に説明ずみ」と紹介した。その結果は「2013年度予算要求に反映され、14年度案にも影響を与える。また国防長官から大方針は承認を受けたところ」であるという。 今回の検討結果ではISRの一層の統合運用を、空中、宇宙、サイバー空間間で行い、高性能技術でデータ量の増加に対応し、情報伝達面では電気光学、赤外線、無線の各情報収集活動に加え可視光偵察他現行の各種手段により情報を統合することが課題だ。 「融合するにはどうしたらよいか。地上施設に行くと下士官が4時間連続でスクリーンに向かってアフガニスタンで敵の動きのパターンを捉えようと集中している。これこそ機械が行う仕事でしょう」(ジェイムズ中将) ISR分野は大幅な予算削減のさなかでも比較的優遇されているとはいえ、今回の検討結果では研究開発、技術開発分野で不安な動きになりそうだ。が、ジェイムズ中将は両分野の予算は絶対必要で高い優先順位をつけると、死守の姿勢だ。 あ わせて戦闘空中哨戒用にMQ-1プレデター、MQ-9リーパー、RQ-4グローバルホーク合計65機体制で戦域上空に提供する計画は順調にすすみ、 2013年度末に完成する。このうちMQ-1は予定268機は全数納入済みで、MQ-9発注400機の内最初の100機が納入中で2016年までに全機 リーパーによる編成が完

F-35の2011年テスト目標は早期に達成されたが....

                              Lockheed Hits 2011 F-35 Test Targets Early aviationweek.com Nov 21, 2011         ロッキード・マーティンはF-35共用打撃戦闘機の2011年内フライトテスト目標を達成し、このまま順調に行けば2012年フライト回数は大幅に目標を上回る見込み。 11月17日に本年第875回目のフライトを実施し、年間目標回数を上回った。フライト全体で合計6,809点のテスト項目達成も年間目標を上回る。 ただしF-35B短距離離陸垂直着陸(Stovl)型のテスト機は再度飛行を停止しており、リフトファン収納部分の構造部品を交換する。これは小さなひびがみつかったため。 ロッキードはStovl機のBF-5テスト機以降では問題の構造部品が最設計されており、問題はないという。 BF-1は12月でバタクセントリバー海軍航空基地でテスト再開する。BF-2の改修は次回定期補修時に行う。BF-3はStovlテスト回数の実施が少なく、ひびはまだ発生していないが改修は受ける。BF-4は現在高度飛行に使用されている。 今年の一月にF-35のテスト全体が見直され、二年間延長して問題点の改修に余裕が生まれた。8月半ばの飛行再開後、F-35テスト機は月間で 平均 100フライトをこなしている。来年は合計1,100フライトを予定している。 テスト項目数は予定水準を上回ったとしても、F-35C艦載型で500点以上、F-35A通常離着陸型では100点以上のテスト項目達成目標が残っている。 2011年のフライトテストの大きな目標はデータを集めて飛行訓練開始時の性能限界を明確にすることだったが、これは達成され、性能限界の改訂につながっている。ただし、F-35Aのエグリン空軍基地(フロリダ州)での訓練はまだ開始に至っていない。

指向性エネルギー兵器搭載ミサイル誕生

                              First Look: Electronic Warfare Missile aviationweek.com Nov 18, 2011     米国は指向性エネルギー兵器を搭載するための専用ミサイルをすでに製作し、発射実験に成功している。実戦運用はまもなくと思われるが、使用されれば敵の電力網を撹乱、停止、あるいは損害をあたえることができるが、この全貌はほとんど不明のままだった。 た だし各種の情報を総合するとこの新型ミサイルの運用コンセプト(conops)が浮上してきた。プロジェクト名は対電子装置高出力マイクロ波発達型ミサイ ルプロジェクトCounter-electronics High-power Microwave Advanced Missile Project (Champ)だ。 ボーイング 発表の想像図ではB-52から投下される空中発射型の設計のようだ。ただし、指向性エネルギー高出力マイクロ波(HPM)を発生するペイロードは陸上、海上、に加えて空中出の運用が可能な柔軟性を持つ。 対電子装置能力では無線周波数帯の全域が標的になるとボーイングは明らかにしており、その効果は目標の周波数ならびに実行性放射出力effective radiated power (ERP)に依存するという。 空 軍製作のビデオクリップ2本でconopsと効果が示されている。巡航ミサイルが低高度出飛行しながら高層オフィスビルに向けてHPMビームを側面及び下 方から発射している後継がアニメーションで示されている。ビルの照明が消える。実写では室内のデスクトップコンピュータの場面が真っ暗になる光景が写って いる。 ただ2つの疑問が残る。Champはステルス性があり、再使用が可能なのか。ボーイングの図を見ると機体は小型で発射後に主翼が伸長する。ボーイングの図は実際のミサイルと一致しない可能性があるが、同社制作の空中発射型巡航ミサイルと類似している。 Champの初発射は5月17日にユタ試射訓練場(ヒル空軍基地内)で行われており、目標群への照準は成功し正確な照射により付随的損害を最小限あるいは皆無にできると確認されている。 巡 航ミサイルはレーダー断面積が小さく、小型でレーダー波吸収あるいは反射塗料を施す事が可

将来の戦力構成を真剣に考える米空軍

                              USAF Weighs Future Priority Needs aviationweek.com Nov 18, 2011     米 空軍の新型装備開発計画も現実の財政制約で既存装備の改修と新装備開発との間に極めて微妙なバランスを取ることを余儀なくされている。そのひとつにF- 22後継機種の開発計画があり、空軍内でF-Xと呼称されている。20年先に実用化される技術でそのあと30年間にわたり制空権を確保する方法を模索して いる。また次世代ミサイルは現行のレイセオンAIM-120D空対空ミサイルの後継モデルでF-22・F-35の機体内部搭載を想定する。 ま た空軍はミサイル防衛庁と空中発射兵器のミサイル防衛体系取り込み構想を協議中。この構想の出発点は空軍参謀総長ノートン・シュワーツ大将が空中発射で確 実に命中する兵器体系の可能性を2009年に問いかけたことで、そこから技術検討が開始された。空軍はこの構想に関心を示したもののMDAに開発を担当さ せようとしていると伝えられる。 空 軍は2014年度以降の予算方針を検討しており、この構想もその一部となると見られる。方針案の完成は来年1月の予定で現時点で協議が進んでいる予算削減 の内容も反映されるだろう。財政難の及ぼす一例として空軍はF-16およびA-10の州空軍での配備機数を削減する案があるが、予算節約にはなるが、ミッ ション遂行のリスクとなる案だ。 F-35Aの運用開始がさらに遅れて2018年となる見込みからF-16ブロック40/50の300機ないし350機の耐用年数延長、エイビオニクス改修が予定されており、一機あたり10百万ドルになると空軍は議会に報告している。 さ らにF-15の老朽化も無視できない。2008年には金属疲労が原因でF-15Cの墜落事故が発生している。さらに機体構造にひびが入っているのが最近発 見された。機体点検で対策が可能である程度でまだ致命的問題とはなっていないが、各機の経年変化は免れない。すでに長期間就役している機体では修理点検サ イクルがはやまっているが、F-15Cで2030年、F-15Eが2035年という就役期間の終了目標が達成できなくなるまでとは見られていない。 も う一つの課題が厳しい予算配分の中で機体の運用能