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2024年10月19日土曜日

紛争が拡大する中で社員も予備役動員される圧力に対応するイスラエル防衛産業は収益を拡大し、海外からの受注も好調だ(Aviation Weeek)

 

Sky Sting Credit: Rafael



スラエルが昨年10月7日に動員した30万人以上の軍予備役のうち、約2000人がイスラエル航空宇宙産業(IAI)出身だった。世界の武器市場がピークを迎え、イスラエル国防軍からの需要が急増すると予想されるなか、国営のIAIは従業員の13%を一挙に失った格好だ。

 突然の人員削減とイスラエル国防軍の差し迫ったニーズという、昨年の開戦以来イスラエルの航空宇宙・防衛産業各社が直面している2つの問題は、業務を麻痺させかねないものだった。IAIの渉外担当副社長であるシェイ・ガルは9月18日、記者団に「国営企業ラファエルは、10月7日以降、従業員の訓練を急ピッチで進め、24時間体制の生産シフトを開始し、サプライヤーと協力することで、同様の労働力格差に対処した」と語った。 

 予備役招集への対処は、イスラエルの防衛部門にとって独特の負担である。イスラエルの軍事戦略は比較的小規模な常備軍に依存しており、非常時には大量の予備役で補う。イスラエルの防衛産業は、この政策を利用し、新製品への投資や技術的な決定を行うために何千人もの予備役を雇用してきた。 

 歴史的に、予備役の招集は、アラブ諸国、パレスチナ人グループ、イランの代理人との激しく短い紛争の間、数週間から数ヶ月しか続かない傾向がある。しかし、この業界は今、イスラエル史上最も長い動員期間に直面している。ガザ地区のハマスに対する軍事作戦はほぼ終結したものの、依然として活発なままだ。一方、レバノンのヒズボラ軍との北部国境で暴力がエスカレートしており、ただちに解決する見通しは立っていない。 

 労働力の圧力にもかかわらず、イスラエルのトップ防衛請負業者であるエルビット・システムズ、IAI、ラファエルの各社は需要増加に対応し、記録的な収益と利益を報告している。各社の決算は格付け会社に好印象を与えている。S&Pは7月同日、ラファエルとIAIの格付けを再確認し、両社の業績と財務状況の改善を評価した。 

 8月、ラファエルの幹部はまた、アイアンビーム・システムが予定通り2025年に配備できると再確認した。指向性エナジーを利用した同防空システムに関する最新情報は、イスラエルの防衛産業が内外の顧客からの需要に応えるべく取り組んでいる中で、新製品開発も維持されていることを示唆している。

 ラファエルの研究開発ポートフォリオには、極超音速ミサイル迎撃システム「スカイソニック」や空対空ミサイル「スカイスティング」も含まれている。ラファエルの記録的な業績に支えられ、これらのプログラムは順調に進んでいる。

 ラファエルの広報担当者は『エイビエーション・ウィーク』誌の取材に対し、「ラファエルは二重焦点戦略を採用しており、緊急の運用ニーズで会社の基盤となる長期的なイノベーションが妨げられないようにしている」と語った。 

 戦争が続く中、業界は依然として難題に直面している。イスラエルの軍事行動に対する反発から、イスラエルの防衛企業に対する抗議やボイコット運動が起こっているところもある。6月のユーロサトリでは、フランス裁判所が直前になりイスラエル企業の出展禁止を覆した。チリ政府は5月、イスラエル企業のFIDAE航空ショーへの参加を禁止した。ブラジル政府は3月、ラファエルのスパイク対戦車ミサイルの発注を延期した。 

 しかし、イスラエルの軍事技術に対する外国からの需要は依然として高い。この1年で、IAIは非公開の顧客から12億ドルの防空システムの受注を獲得し、ドイツとは35億ドルのアロー3迎撃ミサイルの契約を結んだ。一方、ラファエルはフィンランドからダビデ・スリングを、ポーランド、ギリシャ、オーストラリアからスパイク・ミサイルを受注している。アルゼンチンもスパイク・ミサイルの発注を検討していると報じられている。■


The Debrief: Israeli Defense Industry Coping With Conflict Pressures So Far

Steve Trimble September 23, 2024


https://aviationweek.com/defense/supply-chain/debrief-israeli-defense-industry-coping-conflict-pressures-so-far


2019年2月20日水曜日

★F-15Xから思い起こされるF-4ファントム改修構想とその顛末

歴史は繰り返すのでしょうか。ファントムが異例の長寿となったのはやはり大型機ならではの余裕が理由でしょう。F-15も同様に長寿機になっていますが、折角出てきたF-15XをF-35支持勢力が抹殺する愚行が起こらないよう願うばかりです。

In the 1980s, Israel Developed a 'Heavy Hammer' F-4 Super Phantom: What Happened?1980年代にイスラエルが『大型ハンマー』のF-4スーパーファントム開発に走ったがその結果は?

Some fighter history you may not know.あなたの知らない戦闘機の歴史がある
February 16, 2019  Topic: Security  Region: Middle East  Blog Brand: The Buzz Tags: MilitaryTechnologyWeaponsWarIsraelF-35
2018年の報道記事で性能改修型F-15X戦闘機調達をペンタゴンが検討中と判明した。F-15C制空戦闘機の更新用だがF-35ステルス戦闘機支持派にF-15X導入でF-35調達への影響を恐れる向きもある。ただしF-35はF-15C後継機ではなかった。新型機メーカーが既存機種の改修型の出現を警戒するのは今回が初めてでない。
F-4ファントムは複座ジェット戦闘機の野獣といった存在でマッハ2飛行しながらB-17爆撃機を凌ぐ爆弾搭載量を誇った。高性能レーダーを搭載し、空軍、海軍、海兵隊で1960年代に採用され空対空ミサイルで視界外の敵機を排除する構想だった。
だが初の実戦となったヴィエトナム戦で設計不良と不利な状況が浮かび上がった。初期の空対空ミサイルは信頼性が極めて低く、交戦規則では米パイロットは有視界内で確認を最初に求められた。さらにMiG各機に比べファントムの操縦性は劣り、米パイロットは視界内での空戦訓練を十分受けておらず、ファントムには機銃が搭載されていなかった。
設計上の不良は修正されていった。20ミリヴァルカン砲がF-4Eから搭載され、ミサイル技術も大幅改良された。さらにパイロットも空中戦闘操縦理論で訓練を受け、主翼にスラットが追加され速力を犠牲にしたが操縦性が向上した。ヴィエトナムでは150機撃墜で41機被撃墜の3対1のキルレシオだったがその後のイラン-イラク戦争やアラブ-イスラエル戦で実績を上げていき、150機程を撃墜し地対空ミサイル陣地の排除で成果を見せた。
1970年代中頃から米軍ではファントム後継機として第四世代機のF-15イーグル、F-16ファイティング・ファルコン、FA-18ホーネットの導入が始まった。各機とも効率に優れたターボファンエンジン、フライバイワイヤで油圧式制御を排除し、ドップラー・レーダーで低空を飛ぶ敵機への対応力を上げ、機体とエンジンの組み合わせと速力と操縦性のバランスが改良されていた。
ただしこうした新技術はファントムにも改修で搭載された。1980年代にイスラエル航空宇宙工業(IAI)がファントム近代化をクルナス(大型ハンマー)の名称で三段階で企画した。第一段階はレーダー更新、ヘッドアップディスプレイ、コックピット計器の更新、スタンドオフミサイル運用能力の付与だった。だがIAIは国産軽戦闘機ラヴィ(ライオン)でもっと野心的な性能向上を狙っていた。
1980年にIAIはエンジンにブラット&ホイットニーを選定しF-15用のF100ターボファンを小型化しラヴィに搭載しようとした。ここから生まれたPW1120はF100より小型だが推力はほぼ同じ、部品互換性も70%を実現した。
1983年にボーイングとプラット&ホイットニーが「スーパーファントム」構想を発表しPW1120搭載で燃料消費効率を大幅に改良しファントムが50年代から搭載中のJ79ターボジェットより推力を3割増やすとした。ボーイングのスーパーファントムは機体一体型燃料タンクも備え飛行距離は倍増し主翼吊り下げ型燃料タンクより抗力を改善するとした。ただし米空軍は1984年に同構想の予算手当を取り下げた。
その後1986年7月にIAIがラヴィ開発を進める一方でF-4Eファントム336号機をテストベッドとし、J79エンジン1基をPW1120に換装した。おそらくボーイングが支援したと思われるが、その後PW1120双発になり1987年4月に初飛行した。
すべての面でエンジン換装後のファントムの性能はずば抜けており、F-4Eの推力重量比は0.86から1.04に変わった。(1.0以上で90度の垂直上昇が可能となる)スーパーファントムは上昇性能が36パーセント向上し旋回速度は15パーセント早くなった。これでF-15Eと同程度の性能となった。エンジンが軽量化したこと、燃料消費が改善されたことでスーパーファントムは航続距離も伸びた。
もっと驚くべきことはスーパーファントムでスーパークルーズが可能となったことで、アフターバーナーを使わずに音速以上の速度を維持できた。現時点でもスーパークルーズ可能な戦闘機はF-22ラプターのみである。
1987年のパリ航空ショーでベテランパイロットのアディ・ベナヤがスーパーファントムを操縦しスピンからの脱出を見せつけた。ドナルド・フィンクがAviation Weekに「むき出しのパワーで垂直方向の機体操縦とタイトな高G旋回を見せ、旧式F-4とは全く異なる飛行ぶりを見せた」と評している。
スーパーファントムの航空ショーデビューでIAIがPW1120改修に向かい各国で販売するとの予測が出てきた。だが結局スーパーファントムは販売されず、その理由には物議をかもすものがある。
スーパーファントム改修は非常に高額だったとの指摘がある。一機12百万ドルとされ、エイビオニクス改修、機体構造強化、特殊燃料タンクまで一式とされた。当時のイスラエル空軍機材がその段階で耐用年数が残っていたことも考慮すべきだ。
さらに二ヶ月後にラヴィ戦闘機開発が中止となったのは米国からの圧力も原因で第四世代戦闘機で競争相手を作りたくないとの思いもあった。PW1120が他機で採用されないことも調達コストの底上げにつながった。
とはいえ当時の噂ではファントムの原メーカーたるマクダネル-ダグラスの横槍でIAIのスーパーファントムが同社の新型FA-18C/Dホーネットの邪魔になると妨害されたとも言われる。スーパーファントムはFA-18Cホーネット(29百万ドル)と同水準の性能だったともいわれる。その段階でドイツ、ギリシャ、日本、イスラエル、韓国、スペイン、トルコ、英国で数百機のファントムが供用されていた。
マクダネル-ダグラスがPW1120を搭載したスーパーファントムの認証を拒みIAIは価格面で競争力のある同機販売ができなくなったといわれる。この噂は当時広く出回ったものの確認できなかった。
IAFは55機のクルナス-ファントムでエイビオニクス改修を行い、スロットルと操縦桿の一体化、APG-76ドップラーレーダーの搭載、ポパイ対地攻撃ミサイルの搭載が実現した。クルナス-ファントムは2004年に退役したがIAIは同様の改修をトルコ空軍機材に行いターミネーター2020の名称とした。この機材がシリア上空で活躍している。
日本がライセンス生産のF-4EJを2019年に退役させると、残る運用国はギリシア、イラン、韓国、トルコのみとなりすべて改修型機材だが2020年代まで飛行する。だが結局スーパークルーズ可能なファントムは実現しなかった。■
Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.
Image: Wikimedia