日本のF-15が大西洋展開に向け千歳基地を出発(The Aviationist)
大西洋展開に向け千歳航空基地を離陸するF-15J。インセット:展開用に作成された特別マーキングとパッチデザイン。(全画像提供:航空自衛隊)
待望の航空自衛隊F-15イーグルの欧州展開が開始され、千歳航空基地を出発した機体はまずアラスカ州エイールソン空軍基地へ向かった
アラスカからカナダ・グースベイを経由し、大西洋を横断して英国RAFコニングスビー基地に到着。コニングスビーでの滞在後、ドイツ・ラーゲ空軍基地へ向かう。日本への帰路もこの経路となるだろう。
この派遣については、英国国防大臣が、日本を訪問中の英国空母「プリンス・オブ・ウェールズ」艦上で演説を行い、その事実を確認した。その後、日本の情報筋からも、その事実が確認され、詳細が説明されている。中谷元防衛大臣は、この派遣について、「欧州大西洋地域とインド太平洋地域の安全保障は切り離せないという共通認識を体現したもの」と述べた。さらに、日本の要員は「これらの国の空軍との相互理解を深めることを目指す」と付け加えた。
F-15 は、航空自衛隊(JASDF)の KC-46 ペガサス および KC-767 給油機、ならびに 川崎 C-2 輸送機 に支援される。C-2 は、戦闘機の出発に先立ち、千歳空港から出発したことが確認されている。オメガ・エアリアル・リフューリング・サービス社のKDC-10給油機も、長距離飛行の一部を支援している。
日本最北端の北海道にある千歳航空基地が、ソーシャルメディアに航空機の離陸を記録した投稿を掲載した。映像や画像から、今回の任務に参加した機体は22-8936、22-8939、42-8946(いずれも単座型F-15J)に加え、シリアル番号が82で始まる未確認の4機目のF-15と推測される。この4機には「アトランティック・イーグルス」と銘打たれた今回の展開専用の特別尾部マーキングが施され、外部燃料タンクにも同様のマーキングが確認された。さらに3機のF-15が千歳を離陸したが、これらは主要機が第一区間で帰還を余儀なくされた場合に備えた予備機として、特別マーキングは施されていない。
航空自衛隊のプレスリリースによると、アトランティック・イーグルス展開に航空機を提供する部隊は以下の通り。千歳航空団がF-15を4機全て提供し、小牧航空団がKC-767を1機参加させる。鳥取県の美保航空基地からは第3戦術航空団所属の川崎C-2輸送機1機とKC-46ペガサス1機が派遣され、残りの川崎C-2輸送機1機は埼玉県入間航空基地の第2戦術航空団から派遣される。アトランティック・イーグルスには計約180名の航空自衛隊要員が参加する。
欧州の空へ向けて離陸準備を整えた航空自衛隊F-15J。尾翼に「アトランティック・イーグルス」のバッジを掲げた4機が確認できる。(画像提供:航空自衛隊)
重要な点として、アトランティック・イーグルス派遣は演習ではなく、主に日本と同盟国間の人的・部隊レベルでの親善を育む連絡訪問を目的としている。そのため、欧州滞在中の実飛行は最小限に留まり、おそらく目的地間の移動飛行のみに限定されると見られる。
日本の軍用機が欧州を訪問するのは極めて稀であり、最近の顕著な例としては、ウクライナ向け支援物資を輸送するため日本から欧州へ飛来した川崎C-2輸送機、および機体輸出への関心が高まる中、欧州航空ショーに参加した川崎P-1海上哨戒機の訪問が挙げられる。日本のF-15が欧州に飛来するのは今回が初めてで、飛行が限定的であっても、多くの航空ファンにとってその到着は間違いなく見どころとなるだろう。
同盟国の協力
この訪問は、2016年に英国、2022年にドイツがユーロファイター・タイフーンを日本に派遣した最初の好意への返礼となる。さらに最近では、英国の空母プリンス・オブ・ウェールズが、海上自衛隊のF-35B 搭載可能なヘリコプター空母「かが」、および航空自衛隊の F-15、F-35 などの航空機と共同演習を行ったばかりである。
インド太平洋地域に展開中のHMSプリンス・オブ・ウェールズ(オペレーション・ハイマスト、別名空母打撃群25)は、現在その長大な航海の後半段階にあり、日本が帰還前の最終寄港地となった。同空母は今年12月頃に英国への帰還が予定されている。
先週、CSG 25に配備されている23型フリゲート艦HMSリッチモンドは、アーレイ・バーク級駆逐艦USSヒギンズと共に台湾海峡を通過する航行の自由演習を実施した。中華人民共和国はこの航行を「地域の平和を損なう」と非難したが、英国海軍は「国際法と規範に完全に準拠し、国連海洋法条約に基づく航行の自由の権利の行使」と主張している。
航空自衛隊機は、東シナ海および南シナ海で活動する中国軍用機を監視しており、場合によっては迎撃するため緊急発進している。日本の沖縄は台湾から400マイル(約640キロ)未満の距離にあり、日本が実効支配する(台湾が領有権を主張する)尖閣諸島はさらに近い。そのため、台湾周辺における中国の偵察任務や軍事演習の多くは、しばしば日本軍の対応を引き起こす。
日本の防衛省は、中国軍の「翼龍II」偵察・空中偵察/精密攻撃ドローンが日本の防空識別圏侵犯対策下で確認されたことを発表した。同ドローンは東シナ海から沖縄近海を経て太平洋へ飛行中と確認された。
ロシアは、日本の空域付近で行われたこうした航空演習の一部において、中華人民共和国と共同参加している。これは、距離は離れているものの、東アジアの国である日本が欧州のNATO同盟国と多くの安全保障上の利害を共有しているという日本政府内の見解を強めるものと思われる。日本は、相互演習や相互訪問だけでなく、グローバル戦闘航空計画(GCAP)のようなプロジェクトへの産業参加を通じて、これまで以上に欧州の同盟国と緊密に協力している。
従来は国内供給専用だった日本の軍事産業は、前述の川崎P-1や川崎C-2を通じて輸出に目を向けている。今年、オーストラリアが日本のもがみ級フリゲート艦設計を調達し、英国海軍のタイプ26フリゲート艦の現地派生型発注を補完することが確認され、成功を収めた。■
Japanese F-15s Depart Chitose for Atlantic Eagles Deployment
Published on: September 15, 2025 at 5:02 AMFollow Us On Google News
カイ・グリート
カイは英国コーンウォールを拠点とする航空愛好家、フリーランス写真家、ライター。ファルマス大学にてBA(優等学位)プレス・エディトリアル写真学を修了。国内外の著名機関やニュース媒体で写真作品が掲載され、2022年にはコーンウォール史をテーマに自費出版した。航空全般に加え、軍事作戦・歴史、国際関係、政治、諜報活動、宇宙開発にも深い関心を抱いている。