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2025年2月3日月曜日

米海軍、海兵隊、DARPA、USSOCOMの水上機に関する進捗状況の最新情報(Naval News)―太平洋戦線の「距離の暴政」に対応する輸送能力の確保は大きな課題で輸送艦の建造では間に合わないのでこういう発想がでてきたのでしょう

 Progress Update on U.S. Navy, Marines, DARPA, and USSOCOM Seaplanes

オーロラ・フライト・サイエンシズによる「リバティ・リフター」翼付き地上効果水上機プログラムのコンセプト。 グラフィック:DARPA



2024年秋、本誌は、米海軍、海兵隊、DARPA、特殊作戦軍に対し、水上機プログラムの進捗状況に関する最新情報を問い合わせた。回答を得るまで数か月を要したが、米国の軍事機関は本誌に以下の情報を回答した


年にわたり、本誌は、水上での機動性を高める必要性から、水上で離着陸が可能な新型水上機の導入を目指す米国の取り組みを追ってきた。

 中国はすでに世界最大の水陸両用飛行艇を実用化しており、これは民生用であるものの、軍事利用も可能だ。

 米軍の水陸両用飛行艇の利点は明らかであり、現在、世界には日本の新明和US-2やカナダのCL-415などの水陸両用飛行艇がある。日本とカナダの水上機は、兵員や戦闘用ゴムボート(CRRC)を輸送することは可能だが、水陸両用車、ジェットスキー、小型ボート、または大型貨物を収容できるほど大きくはない。理論的には、米海軍が各機を必要とする可能性もある。

 本誌は、これらの水上機の構想やプログラムについて、以前にも取り上げています。

  • MC-130Jフロートプレーン(米国特殊作戦軍(USSOCOM)

  • REGENTシーグライダー(米海兵隊のプログラム

  • 「リバティ・リフター」(国防高等研究計画局(DARPA)

  • 米海軍の水上機プログラム


米国特殊作戦軍MC-130Jフロートプレーン

 米国特殊作戦軍(USSOCOM)のMC-130J「コマンドーII」フロートプレーンのコンセプトは、最もシンプルなアイデアの1つであるように思える。既存のロッキードMC-130J軍用ターボプロップ輸送機にポンツーンを取り付け、水上に浮くようにする。ポンツーン式着陸装置により、MC-130Jは理論上、海岸や滑走路に自力で乗り入れることができる。水上飛行機型には利点がある一方で、設計上の欠点もある。

 2024年10月23日、米特殊作戦軍(USSOCOM)の広報担当は次のようにコメントした。

「過去数年にわたり、米特殊作戦軍は産業界のパートナーと協力し、MC-130J水陸両用能力(MAC)のような先進的な探査エンジニアリングプロジェクトを含め、新技術を運用化する方法に関するデータ主導型のモデルを開発してきました。これは、必要に応じてさらに追求できる能力ですが、他の近代化優先事項に投資するため、当面は取り組みを中断しています。USSOOCOMは、米軍兵士と統合軍の要件をサポートする最善の方法を継続的に検討し、模索しています」。ティモシー・ブロンダー大佐、米太平洋軍固定翼航空プログラム担当プログラム執行責任者


MC-130Jフロートプレーンに関するコメント

Naval Newsは、戦略国際問題研究所(CSIS)の防衛・安全保障部門シニアアドバイザーであるマーク・カンシャンにコメントを求めた。カンシャン氏は2024年12月に電子メールで次のように回答した。「海軍が世界的な飛行場ネットワークを利用できるようになり、水上機は米国の在庫から姿を消した。水上での離着陸に伴うペナルティは、もはや支払う価値がないと判断されたのです。これは今でもほぼ真実です。しかし、3つの任務が、ニッチな能力として水上機を復活させるかもしれません。海兵隊の分散型作戦、長距離の海・空からの救助、特殊部隊の投入です。海兵隊は、沿岸部での分散型作戦を計画しており、そのための後方支援体制の構築に苦慮しています。水上機は、その解決策の一端を担うかもしれません。海軍は、大国間の競争において、1945年以来直面することのなかったような、艦船の大量損失の可能性に直面しています。最後に、SOCOMは、小型ボートやパラシュートよりも、より大規模で装備の整った部隊を長距離にわたって投入する方法を求めている。しかし、そのような航空機が在庫に加わったとしても、他の航空機がより効率的に、より幅広い気象条件下でほとんどの任務を遂行できるため、その数は限定的なものになるだろう。

 米国が、日本の新明和US-2のようなすぐに利用可能な水上機を調達しない理由を尋ねられたカンシアンは、「良い答えは持ち合わせていません。DARPAは、短期的なシステムよりも技術開発に興味を持っているのかもしれません。しかし、海兵隊はすぐにでも何かが必要なのです。C-130Jフロート機は既存のプラットフォームを使用できるという利点がありますが、このシステムは衰退しているようです…」

 ヘリテージ財団のアリソン国防安全保障センターで海軍戦術および先進技術のシニア研究員を務めるブレント・サドラーは、米特殊作戦軍が日本の新明和US-2の購入を見送った理由について次のように述べた。「私の理解では、少なくともUS-2の生産数は限られており、米国の購入による追加需要には対応に時間がかかる可能性がある」

米海兵隊のREGENTシーグライダー

Progress Update on U.S. Navy, Marines, DARPA, and USSOCOM SeaplanesREGENT Seagliderは、12人の海兵隊員と2人の乗組員を輸送できる全電気推進プロペラ式ハイドロフォイル水上飛行機です。画像:REGENT

米国海兵隊(USMC)は、補給物資の再供給任務にREGENT Seagliderを導入する計画であり、2023年10月18日に海兵隊員にSeagliderを実演するために475万ドルの契約を締結した。

REGENT社によると、シーグライダーは、水上翼船で、翼を接地させた状態で航行する水上機だ。シーグライダーは、沿岸域における高速、低コスト、低被探知性、滑走路不要の機動性という米国防総省の認識されているギャップに対応し、兵員および貨物輸送、遠征先での前進基地運用、通信など、さまざまな任務を遂行する。REGENT社のViceroyシーグライダーは、12人の乗客または3500ポンドのペイロードを搭載でき、1回の充電で最大180マイルの航続が可能。

 本誌は、米海兵隊のシーグライダー・プログラムの現状について問い合わせたところ、2024年11月15日に、コミュニケーション戦略・運用、戦闘開発・統合の広報担当者から次のような回答を得た。

「海兵隊戦闘研究所(MCWL)は現在、ウィング・イン・グラウンド(WIG)効果を利用して高速の海上後方支援輸送を実現する海上プロトタイプの予備調査を実施しています。WIG船は、国際海事機関(IMO)が定めた規則や規制により、航空機ではなく船舶として認定される一方で、高速(100ノット以上)を実現するという独自の能力を備えています。MCWLは現在、WIGグランドエフェクトでのみ運用可能で、航空機としての二重認証を受けていないタイプAのWIG航空機のみを検討しています。水上飛行機は航空機プラットフォームに分類され、WIG車両は船舶に分類されます」。 

 24会計年度にMCWLは、REGENTとその他の取引契約(OTA)を締結し、国防および商業用途の両方に向けて開発中の同社の全電気式ハイドロフォイル「シーグライダー」のさらなる調査を行った。約500万ドルの契約で、沿岸地域における医療搬送と補給のための革新的なソリューションを提供するために、ハイドロフォイル付きのシーグライダーの試験を行う予定だ。このプログラムの目標は、船体、フォイル、翼搭載の各動作モードにおけるシーグライダーの能力を検証し、リスク低減と船舶レベルの認証要件を明らかにし、機動および輸送作業を含む軍事作戦における車両の潜在的可能性を理解することにある。実物大のプロトタイプの技術デモンストレーションは、2025年度に実施される予定だ。

 MCWLは現在、軍事補給用の水上機を調査していないが、水上機は歴史上の紛争において非常に重要な役割を果たしており、今後も調査対象として有力な技術であり続けるだろう。


米海兵隊戦闘開発統合部隊の広報担当、2024年11月

DARPAの「リバティ・リフター」ウィング・イン・グラウンド・エフェクト貨物水上機

Naval Newsは、国防高等研究計画局(DARPA)の「リバティ・リフター」について、こちらで取り上げた。本誌は2022年6月に、「「リバティ・リフター」のDARPA Xプレーン要件の1つは、総重量67,500ポンド(30,617キログラム)または33.75トンである米海兵隊の装甲水陸両用戦闘車両(ACV)2台を輸送することである」と述べていた。 「リバティ・リフター」が2台のACVを運搬するの要件により、車両の貨物重量は合計で約67.5トンとなる。この運搬重量は、DARPAのWIG貨物機が当初評価した100トン超よりも小さいものの、C-17の貨物重量約72.6トン(16万ポンド)とほぼ同じだ。

 本誌は「Liberty Lifter」の最新情報を得るためにDARPAに問い合わせ、DARPAから回答があった。2024年10月10日、DARPAの「Liberty Lifter」プログラムマネージャーであるクリストファー・ケント博士は、以下の回答を寄せた。

Naval News:米国防総省および国防高等研究計画局(DARPA)は、水上飛行機の導入を真剣に検討しているのでしょうか?その理由は何ですか?

DARPA:「国防総省が現在および近い将来に抱える任務を考慮すると、水上飛行機が適している任務は数多くあります。 沿岸地域における人員および物資の高速輸送、捜索救助などがその例です。

 DARPAの観点から言えば、この技術の実証と実用化に真剣に取り組んでいる。リバティ・リフターは、潜在的な費用対効果の高い生産と実用化を実現する技術を活用し、C-130型機程度のXプレーンを設計、製造、浮揚、飛行させるための戦略的投資を行っている。

 リバティ・リフターのような長距離、滑走路、港湾インフラに依存しない装備品は、紛争が発生した場合の太平洋沿岸での作戦を成功させるために不可欠だ。西太平洋の多くの島々では、遠隔地であること、滑走路がないこと、港湾がないことなどから、従来の物流支援はほぼ不可能だ。たとえ適した港湾があっても、時間的制約のある環境では、太平洋を越えて物資を輸送するのにかかる時間は容認できない。

 リバティ・リフターの大きな貨物積載能力と柔軟な運用性は、人道支援/災害救援ミッションや海上での多数の負傷者への対応に最適な設計となっています。現在、迅速に現場に到着し、広大な海洋で多数の人員を救助できるプラットフォームは存在しない。

Naval News: 2024年秋時点で、水上飛行機に対する資金提供やプログラム要件はありますか? ある場合、その理由は何ですか?

DARPA: 「DARPAリバティ・リフターのデモンストレーション・プログラムは、完了まで資金提供されます。実際のプログラム要件については、この役割はDARPAにはありませんが、DARPAは国防総省の関係者と協力し、潜在的な水上飛行機のプログラム・オブ・レコード(記録)に必要なミッションのニーズと能力を定義するための研究を行っています。DARPAの見解では、リバティー・リフターをベースとしたプラットフォームは、海上での多数の死傷者への対応、人員回収、遠征環境における後方支援、滑走路に依存しない航空機など、国防総省の複数の能力ギャップに対処する可能性を秘めています。

Naval News:新型水上機に関して、DARPAや他の軍部隊で進展はありましたか?

DARPA:「DARPAは、詳細設計と実証計画を含む、2015会計年度におけるプログラムの次のフェーズへの移行を目標としています。

Naval News: 日本の新明和US-2のような外国製水上機を購入しないのはなぜですか?

DARPA:「US-2のような既存の水上機は、海上での捜索救助能力をある程度提供できるギャップフィラーとして役立つ可能性がある。しかし、航続距離、貨物搭載能力、取得および運用コストにおける現在の水上機の限界は、リバティー・リフターのような大型で、目的に特化したプラットフォームによって対処できる、重大な課題である。

Naval News: DARPAの新型水上飛行機はいつごろ就役し、どのような形態になるのでしょうか?

DARPA: 「DARPAの『リバティー・リフター』Xプレーン実証機は、2029会計年度に飛行する予定です。DARPAの実証プログラムが完了した後、Xプレーンは後続の実証プログラム用に軍に提供されます。デモンストレーションキャンペーンが成功すれば、リバティ・リフターのコンセプトの軍事的有用性を評価することが可能となり、リバティ・リフター・プログラムから得られた教訓は、国防総省の要件開発と、潜在的な後続のプログラム・オブ・レコード(記録上のプログラム)のための取得戦略に役立つでしょう。


米海軍の水上機プログラム

水上機に関する多くの宣伝やプログラムがあるが、表向きには、顧客は米海軍となる。Naval Newsは、水上機のプログラムに関する最新情報を得るために米海軍に問い合わせた。海軍航空システム司令部(NAVAIR)にメールで問い合わせたところ、2024年9月16日、米海軍のNAVAIR報道官は電話で「水上機の要件はない」と述べた。これは、米海軍が水上機のプログラムに積極的に関与していないことを意味する。

 ヘリテージ財団の上級研究員であるブレント・サドラーは、2024年12月9日付の『Naval News』に対し、水上機について次のように述べている。

「水上機に関する考えをいくつか述べたい。

1. 紛争や自然災害により、遠隔地や損傷した飛行場へのアクセスが困難な場合、水上機は現代の軍や沿岸警備隊にとって価値ある選択肢となる。

2. 環境やコストの問題により、小規模な島嶼コミュニティを世界貿易や危機対応に接続することが困難な場合、水上飛行機は理想的な選択肢となる。

3. 日本はさまざまな用途で水上飛行機を運用しており、私は横須賀を拠点とする第7艦隊の少尉およびスタッフとして、その多くを直接目にした。米国は、まず太平洋諸島で、そして太平洋諸島の中でこの能力を活用するために投資すべき時が来た。


Progress Update on U.S. Navy, Marines, DARPA, and USSOCOM Seaplanes

Peter Ong  14 Jan 2025

https://www.navalnews.com/event-news/sna-2025/2025/01/progress-update-on-u-s-navy-marines-darpa-and-ussocom-seaplanes/


2022年6月6日月曜日

第二次太平洋戦争を想定し、大型水上機が復権する:DARPAのリバティリフター構想について

Japanese US-2 seaplane

二次世界大戦の太平洋で水上機が多くの命を救った。米軍のPBY-4カタリナは、海上に墜落した飛行士を拾い上げ、敵艦の捜索任務や潜水艦を狩る任務をこなした。飛行場が点在し、空中給油の発明前、広大な太平洋では水上発着可能な水上機は欠かせない存在であった。

 しかし、水上機は陸上機や艦載機に比べ、重く、扱いにくく、性能も劣りがちだった。冷戦時代にソ連が水陸両用哨戒機Be-12を飛ばしたのを除けば、水上機の軍事利用はほぼ行われなくなった。

 しかし、水上機が復権しつつある。第二次太平洋戦争が勃発すれば、今回は中国と戦うことになるが、飛行場のない広い海域で戦うことになる。さらに悪いことに、中国の長距離兵器で飛行場が破壊されたり、損傷を受ける可能性もある。日本はUS-2水陸両用機で実績をあげており、航空機乗務員の水上救助などの任務に役立てている。

 米軍も水上機がほしいところだ。しかも、装甲車両を運べる大型水上機だ。巨大な水上輸送機がもたらすメリットは非常に大きい。飛行場がないところ、あるいは敵の砲撃で飛行場が破壊されたところに、兵員や装備を運べる。また、水陸両用装甲車を遠隔地に空輸し、奇襲攻撃ができる。

リバティリフター構想



 国防総省の研究機関DARPAがつけた「リバティ・リフター」という名前からして、第二次世界大戦を連想させるようなプロジェクトである。しかし、DARPAが実際に想定するのは、あくまでも近代的な航空機だ。

 問題は、米軍が大量輸送とロジスティクスを海上輸送に頼っていることである。

「大量のペイロードを運ぶには非常に効率的だが、従来型の海上輸送は脅威に弱く、機能する港湾を必要とし、輸送時間が長くなる」とDARPAの公募要項にある。

 「従来型の航空輸送は、桁違いに速いが、高価で、海上作戦への支援能力が限られる。さらに、航空機は長い滑走路を必要とし、垂直離着陸機(VTOL)やその他の海上航空機は積載量で制限を受ける」。

  解決策としてDARPAが求めるのは、水面近くを飛行する際に翼が生み出す揚力を利用する、地面効果を利用した設計だ。最も有名な例は、対艦ミサイルを搭載した300トン、全長242フィートの巨大な地面効果機で、飛行機というより船だったエクラノプラン(別名「カスピ海の怪物」)だ。

 しかし、エクラノプランを真似るものではない。

 「これらの機体は高速(250ノット以上)で滑走路に依存しないが、対地効果飛行の制御性は穏やかな海域(例えばカスピ海)での運用に限られる」とDARPAは説明。「さらに、地面効果での高速運転は、混雑した環境で衝突の可能性を増加させる」。

 DARPAは、水上飛行機と地面効果機を組み合わせた、ハイブリッド設計を目指しているようだ。最終的な形状は不明だが、大型機になるだろう。DARPA仕様では、米海兵隊の水陸両用戦闘車2台、または20フィートコンテナ6個を搭載できることがある。つまり、C-17輸送機に近い機体サイズになる。

 リバティリフターではその他のスペックにも目を見張るものがある。貨物積載量は90トンとC-17並み、航続距離は45トン積載時で4000海里以上、フェリー航続距離は6500海里以上、さらに高度1万フィート以上で運用が可能とある。

 また、海面状況4(中程度の海面状態)での離着水、海面状況5(中程度の荒海面)までの対地効果飛行が求められている。さらに「悪天候や障害物の回避、一部の地形上の飛行、運用の柔軟性を可能にするため、持続的な非加圧飛行」を行うものとある。

 興味深いことに、DARPAによれば、リバティリフターは「最大46週間の海上運用」が可能でなければならないとある。飛行場のない遠隔地で活動し、特殊作戦部隊や諜報任務の海上基地として機能する航空機/ボートを示唆している。

水上機を武装したら

 DARPAがリバティリフターの武装について言及していないことが重要だ。おそらく、第二次世界大戦における水上機の戦闘実績を反映しているのだろう。カタリナ含む水上機は、対潜哨戒や無防備商船への攻撃には有効だった。しかし、浮体構造の重量が戦闘能力を低下させた。日本が開発したA6M2零戦の水上機型は、ドッグファイターとしてはお粗末なものであった。

 しかし、アメリカ空軍は、C-130などの貨物機に巡航ミサイルを搭載する計画を進めている。輸送機は軍需物資を大量搭載でき、また、スタンドオフ兵器により、敵の防空圏外に安全にとどまることができる。ミサイルを搭載したリバティリフターは強力な武器となる。とはいえ非武装の輸送機としても、装甲車両を遠隔地に運ぶ水上機は、非常に意味のある装備となる。

Giant seaplanes may make a return as great-power competition in the Pacific heats up - Sandboxx

Michael Peck | June 3, 2022

Michael Peck is a contributing writer for Forbes. His work has appeared in The National Interest, 1945, Foreign Policy Magazine, Defense News and other publications. He can be found on Twitter and Linkedin.

 

2021年4月18日日曜日

南シナ海での運用をにらんで水上機飛行艇のリバイバルがやってくる(?) 米海軍が中国新型大型飛行艇AG600を意識。しかし、技術は日本が握っている。

 Coast Guard HU-16E amphibious aircraft

沿岸警備隊のHU-16Eアルバトロス水陸両用機がマサチューセッツ・オーティス空軍基地に配備されていた US Navy


年の3月で米軍から水上機が姿を消し38年になった。沿岸警備隊のHU-16Eアルバトロスが最後の水上機だった。


第二次大戦で水上機は海軍の勝利に大きな役割を演じた。冷戦時初期にも投入構想があったが、優位性は消えていた。ところが中国が大型水上機を開発していることで水上機の有用性に注目が改めて集まっている。


2020年7月に中国はAG600水上機クンロンの海上運用テスト開始を発表した。


AG600は世界最大の水上機で山東省の空港を離陸し、青島沖合に着水し、4分間水上移動した後、離水し無事帰還した。


米軍では水上機を過去の遺物とみなしていたが、同機の登場で一気に関心が集まった。


かつては必須装備だった

Consolidated PBY-5A Catalina flying boat

コンソリデーテッドPBY-5Aカタリナ US Navy



水上機はかつては米海軍で必須装備だった。空母が支配の座に就くより前に、水上機母艦が長距離航空作戦に必要な艦種とされた。水上機母艦は大型クレーンで水上機を吊り上げ、機体の補給整備を行った。米海軍初の空母USSラングレーは元は給炭艦で水上機母艦に改装されてから1920年代末に空母になった。


その後、水上機は艦艇が発進させるようになり、長距離型は対潜戦、捜索救難、海上制圧や偵察任務のような重要な役目に投入された。本艦隊から数百マイル先で敵部隊を探知できる能力が特に重宝された。


その中で最も米国で記憶に残る機体がPBYカタリナ飛行艇だ。コンソリデーテッド航空機が製造し、海軍が1936年に制式採用した同機はミッドウェイで日本艦隊の位置をつきとめ、海上を漂う搭乗員や水平数千名を救助したほか、枢軸国潜水艦20隻以上を沈めた。


英国に供与されたカタリナに米人パイロットが登場し、ドイツ戦艦ビスマルクを発見したのは1941年5月で、米国の参戦7カ月前のことだった。


冷戦時の運用構想

Navy seaplane tender Salisbury Sound Martin P5M-1 Marlin

水上機補給艦USSサリズベリーサウンドがマーティンP5M-1をクレーンで釣り上げている。1957年サンディエゴ。US Navy


水上機の役割は第二次大戦終結を契機に弱体化した。枢軸側潜水艦が姿を消し脅威は減り、太平洋で獲得した各地の基地から米海軍は長距離地上運用機材を飛ばした。しかし、海軍は水上機を直ちに放棄しなかった。冷戦初期には水上機打撃部隊の創設を狙っていた。


コンヴェアR3Yトレイドウィンドは輸送飛行艇で1956年に採用が決まり、航続距離は2千マイルを超え、100名あるいは貨物24トンを運べた。空中給油型ではグラマンF9Fクーガー4機へ同時給油できた。だが、同機にはエンジンで問題があり、1958年には11機全機が退役している。


Convair R3Y-2 Tradewind refueling Grumman F9F-8 Cougar

コンヴェアR3Y-2トレイドウィンドがグラマンF9F-8クーガー四機に同時に給油している。1956年9月. US Navy


同じコンヴェアによるF2Yシーダートは野心的なねらいのデルタ翼水上戦闘機だった。超音速飛行可能で20mm機関砲4門あるいはロケット弾を搭載するシーダートは1953年に初飛行したが、死亡事故の発生で1957年に開発中止となった。


より鮮明な印象を与えたのがマーティンP6Mシーマスターだ。核兵器運用を当初構想された同機は大型ジェット飛行艇で亜音速飛行で1,000マイルを超える航続距離を有していた。


だがポラリス潜水艦発射式弾道ミサイルの開発によりシーマスターには機雷敷設が新たな任務となった。


結局、弾道ミサイル潜水艦と大型空母の登場で水上機打撃部隊構想は意味を失い、シーマスターは1959年に開発中止となった。


AG600の登場

AVIC AG600 Kunlong floatplane

AVIC AG600飛行艇. Xinhua/Li Ziheng/Getty


米国で水上機はすべて姿を消したが、一方で今でも運用している国がある。


ロシアはターボプロップのベリエフBe-12にかわり、ジェット推進式のBe-200ESの導入を進めている。


日本には長期にわたる輝かしい水上機運用の伝統があり、最高峰の性能を有する新明和US-2を供用しており、AG600の登場までは世界最大の飛行艇だった。


AG600は中国航空工業(AVIC)が製造している。中国人民解放軍空軍のステルス機等のメーカーだ。


AVIC AG600 Kunlong floatplane

AVIC AG600飛行艇. Xinhua/Li Ziheng/Getty


AG600開発は2009年に始まり、機体製造は2014年スタートした。存在が公表されたのは2016年で、初飛行は2017年だった。機体開発は2022年までに終了し軍に引き渡すとしている。


同機は全長120フィート翼幅127フィートで、50名を乗せ、最高速度310マイルで航続距離は2,800マイルである。


AG600は多用途機となり、捜索救難、輸送、森林消火に投入を想定する。AG600は南シナ海で特に有益な機体となり、中国が造成した各地の人工島をつなぐ機能が期待される。


水上機のリバイバルが来る?

Japan amphibious aircraft seaplane Iwakuni

海上自衛隊の水陸両用機US-1Aが岩国基地へ着水の準備に入った。2013年1月。US Marine Corps/Cpl. Vanessa Jimenez


中国がAG600開発を進める中、米国もインド太平洋を重視し、多数の島しょがあることから水上機のメリットに再度注目している。


水上機なら陸上基地や滑走路が破壊されても何ら心配ないからだ。


飛行艇は大量の兵員さらに一定の軽車両なら直接沿岸に送ることができる。これは島しょ部への展開や増派の際に効果を発揮する。


空中給油機に転用すれば、水上機により空母艦載機の運用範囲がひろがり、空母搭載の給油機を廃し、その分多くの攻撃機材を搭載できる。水上機自体も艦艇や潜水艦から給油を受ければ、運用範囲を拡大できる。


ただし、よい話ばかりではない。水上機はどうしても陸上機や艦載機の飛行性能には追い付かない。また水上機の供用期間は陸上機より短くなる。さらに水上機の性能をフルに活用するには水上機母艦が必要となるが、現時点で海軍にはこの用途の艦艇は皆無だ。


インド太平洋での作戦運用という課題に関心が集まる中、中国が改めて飛行艇を重視する姿勢を示していることで、水上機運用の戦術面での意義の検討が重要になってきたといえよう。■


この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmail.comへご連絡ください

 

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