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2017年3月24日金曜日

SEAL作戦と電子製品持ち込み禁止措置の関係


これは恐ろしい事態です。今のところ保安措置の対象は一部便に限定ですが、場合によっては拡大するかもしれません。ラップトップが一切持ち込めなくなっては困る向きが多いのではないでしょうか。今後の進展は要注意ですね。


Yemen SEAL Raid Likely Led to New Restrictions for Electronics on Flights イエメンSEAL強襲作戦と電子製品持ち込み制限措置の関連

Mar 22 2017 - By Tom Demerly

ダアロエアラインズ159便爆発事故の損傷具合。ソマリア上空を飛行中で2016年2月に発生した。 (credit: GoobjoNews).


情報リークと報道内容からラップトップPC機内持ち込み禁止措置は1月28日のSEALイエメン強襲作戦が遠因と判明。

  1. 情報筋の話を総合すると米海軍SEAL強襲作戦が今年1月27日に実施されたことからラップトップ含む電子装備の機内持ち込み禁止が一部エアラインで実施されている。
  2. Daily Beastでジェナ・ウィンター、クライブ・アービング両名が匿名情報源のリークとして伝えている。その他報道機関も今回の措置と実施済み作戦の関連に気づいてきたようだ。
  3. 両記者は「強襲作戦で得た情報からアルカイダが小型電池の形の爆弾を開発に成功しラップトップやその他製品に入れて運び機体を破壊する可能性が指摘された」と書く。
  4. 両記者は情報源を明らかにしていない。情報機関が意図的に「リーク」記事を書かせ社会の反応を見ることはよくある。
CNNはソマリアの旅客機が「高性能ラップトップ爆弾により破壊され、X線検査をそのまま通過していた」と報じている。 (Somali Police Authority via CNN)

  1. 国土保全省は2015年10月31日のロシアのメトロジェット9268便がシナイ砂漠上空飛行中に爆弾で墜落させられたと発表している。同省によれば2016年2月2日にジブチに向かっていたダアロエアラインズD3159便が損傷を受けたのも今回の措置につながっているという。各事件がSEALによる2017年1月28日イエメン強襲作戦に発展し、さらに今回航空保安体制の強化につながっている。
  2. ロシアメトロジェットの場合はラップトップ爆弾が疑われており、ダアロ機事件では車椅子の乗客が機体を損傷した。犯人が爆弾を点火しているがこれもラップトップか、車椅子内部の可能性があり、右主翼の付け根部分で爆発した。犯人は主翼近くで爆発させれば機体構造を損傷できると考えたようだ。ダアロエアラインズのエアバスA321-111は墜落せず、ソマリアの出発空港アデンアデ国際空港に戻り緊急着陸を要請した。
  3. エジプトエア804便はパリからカイロを目指していたが、2016年5月19日に地中海上空で墜落し、乗員乗客66名が死亡した。事故報道から遺体から爆発物の痕跡が見つかったといわれる。
  4. 大手報道機関のCNNやBBCでは米強襲作戦と航空保安体制強化の関連は報じていない。一ヶ月ほど前にデイヴィッド・サンガーがニューヨーク・タイムズで「まだ成功とはいえないものの、今回押収した情報の価値は相当あり、コンピューターと携帯電話がほとんどだが今後解明が進む。また聞くところではまだ情報の価値の評価はできていないとのこと」と書いていた。この記事は2月2日付けのことだった。次第に出てきた報道と今回の航空保安体制強化から強襲作戦で得られた情報が今回の措置につながったと伺わせる。■

2013年12月11日水曜日

中国のADIZ設定の先にあるものは何か 

China Uses ADIZ As Part Of Buffer-Building Strategy

By Bradley Perrett
Source: Aviation Week & Space Technology

aviationweek.com December 09, 2013


中国が高圧的かつ異例な形で防空識別圏(ADIZ)を設定したのは同国への海上交通で実効支配を徐々に強化していく一環だ。心配なのは中国共産党が国際緊張を意図的に高め国内支持を強めようとしている点だ。
  1. 中国は周辺国へ自己主張を強めており、敵意をあらわにし外部を見る態度は国内政治向けに国力増強と国家主義を強化するためのもので、日本が大戦中の残虐行為を認めないことがこの傾向を助長している。
  2. 今のところ中国のADIZ内での民間航空は通常通り運航中で、日本の各社はフライトプラン提出を拒否しているが支障は発生していない。一方、米日韓の軍用機は中国の要求を完全に無視している。
  3. 「今後の執行が問題です」と語るのはシドニーのシンクタンク、レービ研究所Lowy Instituteのローリ・メドカフ Rory Medcalf(アジア海上安全保障専門家)だ。宣言後の中国は他国をどう自国要求に従わせるのか。
  4. 航空会社へは着陸拒否すれば遵守させられるが、その動きはない。中国が日系航空会社に中国運行を拒否すれば、日本も同様の報復措置に出て、世界第二、第三位の経済大国間で直行便が消滅する。
  5. これに対し軍用機に強制すると確実に危険がともなう。中国の主張する排他的経済水域内では中国海軍艦船が米海軍艦船に衝突してくる事例が発生しているが外国の軍事行動を排除しようとするものだ。が、空で同じ行動に出ると悲惨な結果になるのが、2001年に中国戦闘機パイロットが米海軍EP-3オライオン情報収集機に接近しすぎ衝突した事例だ。
  6. 11月23日の中国ADIZ宣言へ報道の関心は中国外交政策の不器用さに集まっている。ADIZ設定そのものは珍しくないが、中国の一方的宣言は他国との事前協議なく、日本との対立が解消されない中だった。一方で、中国のADIZ設定は自国の所有意識を重視しており、圏内を飛行する全航空機にフライトプラン提出を求めるもの。
  7. EEZ定義の拡大解釈も連想させ、ともにシドニー大ジョン・リーJohn Lee教授がいう中国のサラミソーセージ薄切り戦略の一部だという。つまりそれぞれの動きで中国は近隣の支配に向け次の段階をねらい、南シナ海でもEEZ内の経済権益を強化する動きがある。
  8. 東シナ海上空のADIZは「戦略的に賢明な動きだ。他国に中国の権威を受け入れさせ、次の手に拡大する一歩となる」とメドカフは言う。同空域を通過飛行する乗員がフライトプランを提出し指示通りの周波数で交信をすれば中国に屈することになる。
  9. 米国では下院軍事委員会海上兵力・軍事力投射小委員会の委員長ランディ・フォーブス(ヴァージニア州選出、共和党)Rep. Randy Forbes (R-Va.)が国家安全保障担当大統領補佐官スーザン・ライスNational Security Adviser Susan Rice に12月3日付けで書簡を送っており、FAAから中国の新政策に従うことを米系エアライン各社に勧奨しているのを見直すよう政府に要求している。「米国エアライン各社が中国ADIZに従えば、政府は中国による領空の国際的な概念の破壊に手を貸すことになる」
  10. 外部からは中国の動きは好戦的に映る。中国軍が日本艦船に射撃照準レーダー波を照射した事件もあった。しかし中国の観点では、近隣水域を実効支配し防衛上の緩衝地帯が生まれる、とシンガポールの南洋理工大学で中国外交政策を研究するLi Mingjian李明江は説明する。中国が主張するEEZ権益がその鍵だという。もし中国が所属をめぐり紛糾する韓国からインドネシアにかけてひろがる諸島、岩礁、砂州で中国領有を他国に認めさせれば、またもし外国軍の艦船、航空機がEEZに入るためには中国の許可が必要となれば、中国は自国の安全が確保されたと感じることができる。緩衝地帯はまだできていないが、サラミを薄切りにする動きは中国が外部から停止を求められるまではつづくだろう。
  11. だが、そもそもなぜ中国は巨大な緩衝地帯が必要なのか。外国軍事を何百キロ以内に配置させたくないと感じる国はほかにない。その答えは中国は西側諸国では第一次世界大戦で消滅した「自国と他国」を区別する心理構造をまだ残してることであり、「中国は国際的な仕組みの中で部外者扱いされていると感じている」と李は見る。中国が信頼できる友好国は少数で、パキスタンと北朝鮮くらいしかない。北朝鮮は中国にとって戦略的な緩衝地帯にもなっている。一般的な中国人はなんのためらいもなく、戦争の可能性特に日本との開戦を口にする。
  12. また中国人が理解ができないのが日本が1937年から45年にかけ中国中心に数百万人を殺害したのに西側諸国が日本を許していることだ。もし戦時中の虐殺行為を無反省にかつ記憶していないとしてドイツと共存するようロシアに求めたらどうなるか。
  13. 李が指摘するのは中国は自国の緩衝地帯へ批判を受け、自国の安全がおびやかされていると感じ、米国が北朝鮮体制を崩壊させようとし、台湾の独立を支持しており、日本と東南アジア各国に中国と領土問題で対立を煽っていると見ているとする。
  14. 現在進行中の緊張の裏には国内政治がある。中国外交の強硬策は、好んで現行方針になっているわけではない。中国国民は意図的に国家主義の扇動を受けているものの、自国の影響力が周囲にさらに増大することを望んでいる。外交で弱みを見せれば広範な国内批判の対象となる。
  15. 中国共産党の権力基盤は急速な経済成長と国家主義にあるといわれ、経済減速で指導層が国家主義的感情を引き上げようとどんな行動に出るのかが不安となる。同時に共産党には国民から産業公害から汚職にいたるまでの苦情が充満している。また、習近平政権が進める改革政策の破壊的な結果もここに加わるだろう。「中国指導層には弱みを示すのは実質的に不可能」と李は見ている。「新指導部は対外危機により国民をまとめる策が役に立たないと理解しており、改革を推進し国内政策を重視するだろう」
  16. そうなると危機を作り出す欲求がでてくる。この欲求は共産党の立場が弱体化するほど強くなるだろう。中国が緩衝地帯を確立しようと過激手段を選択すれば、あともどりができなくなってしまうだろう。■