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2021年10月4日月曜日

(再)米海兵隊F-35Bの運用テストを開始した海自は、英海軍とも協力関係深化をめざす。将来日米英で艦、機材の相互利用体制が生まれそう。警戒する中国は国内反対勢力に火をつけ、集団安保反対の論調を張らないか。

 海上自衛隊は今後も「ヘリコプター護衛艦」の名称を使うのでしょうか。米海軍でも強襲揚陸艦を空母として利用しても揚陸艦のままの呼称なのであながちこれが間違いとはいえないのですが。


第一期改修後のいずも youtubeより

 

 

海兵隊のF-35Bが海上自衛隊のいずも(DDH-183)に搭載される。海兵隊機材で日本は自国発注のF-35Bの導入前運用を試すことになる。とくに今回はいずも改装後の運用能力を試す。

 

防衛省発表では海兵隊機材は10月3日から7日まで艦上運用される。固定翼機の空母運用は日本では第二次大戦終了後初めてとなる。いずも(排水量24千トン)はこれに先立ち岩国基地へ回航されていた。

いずもには海兵第一航空団海兵航空集団12の機材が搭載される。同集団には飛行隊二つがあり、うち海兵戦闘攻撃飛行隊121(VMFA-121)「グリーンナイツ」が2012年11月にF-35Bを配備され、初期戦闘能力(IOC)を2015年に獲得しており、岩国基地には2017年1月に移動してきた。同飛行隊は海上でのライトニングII運用の経験も重ねており、2018年3月に強襲揚陸艦USSワスプ(LHD-1)にF-35B6機を展開している。

 

2020年10月に岩国基地にVMFA-242「バッツ」が加わり、今年9月にIOCを宣言した。

 

このうちVMFA-121の機材がいずもに搭載される。海兵隊では同様に英海軍空母HMSクイーン・エリザべス、イタリア海軍空母カヴール(写真下)でもF-35B運用を行ってきた。

 

いずもは2隻ある同級の一番艦ヘリコプター空母として建造され、当初は回転翼機専用艦となっていた。ただし、発注時から固定翼機運用も想定しており、二隻は第二次大戦後の日本で最大規模の艦となった。

 

今年夏、いずも飛行甲板の改装が完了し、同艦はF-35B運用に対応可能となった。中でも耐熱塗装によりF-35Bの推力偏向型エンジンの高温排気に対応するほか、照明設備も変更された。

 

ただしF-35Bの運用をねらった今回の改修に続き、さらに飛行甲板の改装が控え、末端の形状で四角形になる。内部もF-35B用の補給物資、整備作業を念頭に改良される。また航空燃料、弾薬類の貯蔵区画を加える。

 

いずも級にスキージャンプ方式の離陸用ランプをつけるのではとの観測があった。英、伊両海軍艦にはこれがついている。だがこれは実現しないようだ。また後方エレベーターと格納庫スペースはF-35Bの移動に対応しているようだ。いずもの飛行甲板長からSTOVL機運用には制約がつくようで、海兵隊機では軽武装の上、極めて短い発艦を求められそうだ。

 

最終的に同艦には共用精密誘導着艦システムJoint Precision Approach and Landing System (JPALS)が導入される。JPALSは固定翼機、ヘリコプターのアプローチ、着艦を支援し、すでに米海軍で大きな効果を上げている。

 

一連の改修がいずもで完了するのは2026年の予定だ。二号艦かがも同様の改装を受ければ、海上自衛隊でF-35B運用に対応する艦艇が二隻そろうことになる。通常の整備や訓練のサイクルを考慮しても作戦能力が大幅に増強される。整備は5年周期で行うのが通常だ。

 

日本のF-35整備計画では157機導入し、うち42機をF-35Bとする。これまでのところうち8機の契約が成立しており、宮崎県新田原基地への導入は2024年度に行われる。令和4年度予算要求にさらに4機調達予算が計上された。F-35Bは航空自衛隊が運用する。

 

 

いずも級空母に米海兵隊機が定期的に搭載される可能性がある。これは英海軍艦艇に英軍保有機がそろうまで海兵隊機を搭載するのと並行する。ただ、英国が当初予定通りのF-35B導入できるか不透明な中で、海兵隊機搭載は長引く可能性も出てきた。

 

日本が海兵隊の「ライトニング空母」構想を参考にする可能性もあろう。これは強襲揚陸艦にライトニング戦闘機を搭載するもので、いずももこの構想の影響を受けているといえる。

 

米軍との共同作戦体制を敷く日本は英国とも同様の動きをめざし、英国がアジア太平洋に戦略中心を移動させるのに対応する。両国でF-35Bが供用されれば、英軍機が日本艦から、あるいはその逆の状況が生まれてもおかしくない。

 

日本が固定翼機運用空母を実用化することは中国人民解放軍海軍の増強に対抗する意味があり、中国の空母、強襲揚陸艦部隊の著しい拡充が視野にある。海上自衛隊に任務部隊が生まれれば、艦載F-35Bによるスタンドオフ対艦ミサイル攻撃能力も実現し、徳に揚陸部隊の迎撃に有効となろう。

 

F-35Bの艦載運用により有事の際に運用面で柔軟性と生存性が増強され、陸上基地の脆弱性を相殺できる。F-35B搭載艦が尖閣諸島付近に展開すれば、日本領土への兵力投射を困難にできる。

 

これまで日本では憲法の理念を受けて防衛を旨としてきたため、固定翼機を運用し、攻撃的性格の兵装を運用する空母の取得は困難とされてきた。いずも級各艦が「ヘリコプター駆逐艦」の区分となっているのはまさしくこのためである。ただし、中国や北朝鮮の脅威の高まりを念頭に、考え方にも変化が生まれており、将来はF-35Bが日本の空母から普通に運用される日が来れば、新しい防衛上の現実のシンボルとされよう。■

 

Marine Corps F-35s Are About To Be The First Fighters To Fly From A Japanese Carrier Since WWII

Next week, F-35B stealth fighters are due to go aboard the newly modified Japanese carrier Izumo for the first time.

BY THOMAS NEWDICK OCTOBER 1, 2021

2021年10月3日日曜日

米海兵隊F-35Bの運用テストを開始した海自は、英海軍とも協力関係深化をめざす。将来日米英で艦、機材の相互利用体制が生まれそう。警戒する中国は国内反対勢力に火をつけ、集団安保反対の論調を張らないか。

海上自衛隊は今後も「ヘリコプター護衛艦」の名称を使うのでしょうか。米海軍でも強襲揚陸艦を空母として利用しても揚陸艦のままの呼称なのであながちこれが間違いとはいえないのですが。


第一期改修後のいずも youtubeより

 

 

海兵隊のF-35Bが海上自衛隊のいずも(DDH-183)に搭載される。海兵隊機材で日本は自国発注のF-35Bの導入前運用を試すことになる。とくに今回はいずも改装後の運用能力を試す。

 

防衛省発表では海兵隊機材は10月3日から7日まで艦上運用される。固定翼機の空母運用は日本では第二次大戦終了後初めてとなる。いずも(排水量24千トン)はこれに先立ち岩国基地へ回航されていた。

いずもには海兵第一航空団海兵航空集団12の機材が搭載される。同集団には飛行隊二つがあり、うち海兵戦闘攻撃飛行隊121(VMFA-121)「グリーンナイツ」が2012年11月にF-35Bを配備され、初期戦闘能力(IOC)を2015年に獲得しており、岩国基地には2017年1月に移動してきた。同飛行隊は海上でのライトニングII運用の経験も重ねており、2018年3月に強襲揚陸艦USSワスプ(LHD-1)にF-35B6機を展開している。

 

2020年10月に岩国基地にVMFA-242「バッツ」が加わり、今年9月にIOCを宣言した。

 

このうちVMFA-121の機材がいずもに搭載される。海兵隊では同様に英海軍空母HMSクイーン・エリザべス、イタリア海軍空母カヴール(写真下)でもF-35B運用を行ってきた。

 

いずもは2隻ある同級の一番艦ヘリコプター空母として建造され、当初は回転翼機専用艦となっていた。ただし、発注時から固定翼機運用も想定しており、二隻は第二次大戦後の日本で最大規模の艦となった。

 

今年夏、いずも飛行甲板の改装が完了し、同艦はF-35B運用に対応可能となった。中でも耐熱塗装によりF-35Bの推力偏向型エンジンの高温排気に対応するほか、照明設備も変更された。

 

ただしF-35Bの運用をねらった今回の改修に続き、さらに飛行甲板の改装が控え、末端の形状で四角形になる。内部もF-35B用の補給物資、整備作業を念頭に改良される。また航空燃料、弾薬類の貯蔵区画を加える。

 

いずも級にスキージャンプ方式の離陸用ランプをつけるのではとの観測があった。英、伊両海軍艦にはこれがついている。だがこれは実現しないようだ。また後方エレベーターと格納庫スペースはF-35Bの移動に対応しているようだ。いずもの飛行甲板長からSTOVL機運用には制約がつくようで、海兵隊機では軽武装の上、極めて短い発艦を求められそうだ。

 

最終的に同艦には共用精密誘導着艦システムJoint Precision Approach and Landing System (JPALS)が導入される。JPALSは固定翼機、ヘリコプターのアプローチ、着艦を支援し、すでに米海軍で大きな効果を上げている。

 

一連の改修がいずもで完了するのは2026年の予定だ。二号艦かがも同様の改装を受ければ、海上自衛隊でF-35B運用に対応する艦艇が二隻そろうことになる。通常の整備や訓練のサイクルを考慮しても作戦能力が大幅に増強される。整備は5年周期で行うのが通常だ。

 

日本のF-35整備計画では157機導入し、うち42機をF-35Bとする。これまでのところうち8機の契約が成立しており、宮崎県新田原基地への導入は2024年度に行われる。令和4年度予算要求にさらに4機調達予算が計上された。F-35Bは航空自衛隊が運用する。

 

 

いずも級空母に米海兵隊機が定期的に搭載される可能性がある。これは英海軍艦艇に英軍保有機がそろうまで海兵隊機を搭載するのと並行する。ただ、英国が当初予定通りのF-35B導入できるか不透明な中で、海兵隊機搭載は長引く可能性も出てきた。

 

日本が海兵隊の「ライトニング空母」構想を参考にする可能性もあろう。これは強襲揚陸艦にライトニング戦闘機を搭載するもので、いずももこの構想の影響を受けているといえる。

 

米軍との共同作戦体制を敷く日本は英国とも同様の動きをめざし、英国がアジア太平洋に戦略中心を移動させるのに対応する。両国でF-35Bが供用されれば、英軍機が日本艦から、あるいはその逆の状況が生まれてもおかしくない。

 

日本が固定翼機運用空母を実用化することは中国人民解放軍海軍の増強に対抗する意味があり、中国の空母、強襲揚陸艦部隊の著しい拡充が視野にある。海上自衛隊に任務部隊が生まれれば、艦載F-35Bによるスタンドオフ対艦ミサイル攻撃能力も実現し、徳に揚陸部隊の迎撃に有効となろう。

 

F-35Bの艦載運用により有事の際に運用面で柔軟性と生存性が増強され、陸上基地の脆弱性を相殺できる。F-35B搭載艦が尖閣諸島付近に展開すれば、日本領土への兵力投射を困難にできる。

 

これまで日本では憲法の理念を受けて防衛を旨としてきたため、固定翼機を運用し、攻撃的性格の兵装を運用する空母の取得は困難とされてきた。いずも級各艦が「ヘリコプター駆逐艦」の区分となっているのはまさしくこのためである。ただし、中国や北朝鮮の脅威の高まりを念頭に、考え方にも変化が生まれており、将来はF-35Bが日本の空母から普通に運用される日が来れば、新しい防衛上の現実のシンボルとされよう。■

 

Marine Corps F-35s Are About To Be The First Fighters To Fly From A Japanese Carrier Since WWII

Next week, F-35B stealth fighters are due to go aboard the newly modified Japanese carrier Izumo for the first time.

BY THOMAS NEWDICK OCTOBER 1, 2021

2019年5月27日月曜日

いずも級2隻では何ができるのか、戸惑う海自幹部の声に耳を傾けるべきだ

コメントは下にあります。

Japan Doesn’t Know What to Do With Its New F-35 Armed Aircraft Carriers F-35空母の任務を日本が理解できていないことが問題だ

That's a problem.
May 24, 2019  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Skeptics  Tags: MilitaryTechnologyWeaponsWarJapan


空母で日本に迷いがあるようだ。日本は空母で何がしたいのか。
日本政府関係者にもいずも級二隻の取扱に自信がないようだ。建前で「ヘリコプター駆逐艦」と呼称される両艦は20千トン超の小型空母そのものだ。日本に根強い平和主義が問題で第二次大戦後の新憲法で空母は「攻撃的」装備の一つとして保有を禁じている。安倍晋三首相率いる現政権は二隻をF-35B約10機運用可能に改装する命令を下した。
空母保有と空母ミッションの定義は意味が違う。「いずも改装で日本が堅持してきた『専守防衛』政策に反しないのか、また中国への対抗以外に改装空母で何をするのか、意見の総意ができていない」とJapan Timesは報じている。
一部防衛関係者が同紙に公然たる秘密を明かしている。日本が空母を必要とするのは中国の軍事力増強が原因だ。「公には国名を名指ししないが中国海軍が宮古海峡を通過し太平洋に進出しているのは事実だ。この5年で太平洋での中国海軍の活動が増加している」(関係者)
政界や元指揮官には空母で日本が強硬策に出るのではと憂慮する声がある。「いずもに戦闘機が搭載されれば日本は海上から自由に圧倒的攻撃をしかけるのではないか」と共産党議員が疑問をなげかけた。
小型空母二隻の20機程度の戦闘機で「圧倒的」と言えるのか、は別の議論だ。「防衛省・海上自衛隊幹部には運用目的を巡り混乱が見受けられる」とJapan Timesは指摘。「疑問の中心はいずも級改装で意味のある戦闘作戦が展開できるのか、あるいは日本の軍事プレゼンスを見せつけることだけが目的なのかという点である。空母部隊運用で効果をあげるのであれば三隻以上でローテーション投入が通常は必要となるからだ」
「3隻あれば1隻を作戦投入し、1隻を訓練に残りをドックで整備できる」と防衛省幹部が同紙に述べている。
米海軍では今年2月に空母USSハリー・S・トルーマンの退役案がリークされ大論争が起こった。実施すれば現役空母が11隻から10隻に減る。11隻でもあるいはペンタゴンが企画する12隻でも米海軍は世界各地への空母配備に苦労しており、各艦に必要な整備と乗員の休息の時間をひねり出すのも大変だ。
伊藤俊幸元海将は空母は四隻必要と試算している。「2隻だと離着艦訓練にしか使えない」「率直に言って現行案には海自関係者も疑問を持っている」
もうひとつはいずも級ではF-35Bを10機程度しか運用できない点だ。平和維持任務なら充分だろうし、商船護衛任務が政治的に日本で受け入れられればこれにも充分だろう。だが海自艦船部隊の防御や島しょ部防衛では中国の海空軍力増強を見れば不足すると言わざるを得ない。■
Michael Peck is a contributing writer for the National Interest. He can be found on Twitter and Facebook.
Image: Reuters
この記事を読んで思うのは 1- 憲法改正は待ったなし。このまま自衛隊を中途半端な立場に置くといざというときに実力が発揮できない。自衛隊員が公務員という扱いもなんとかしたいものです。 2- その上で日本の国防戦略を明確に示すこと、そこでは聞こえの良い表現ではなくそもそも国家として国民の生命財産を守る責務と言う至上命題から目的、手段を展開し国民に率直に説明すべき。 3- 議論は結構だが決まったことは着実に実行すべく国内も心構えを変えるべき 4- いずも級は空母運用の「習作」ではないか。次世代大型艦を最初から空母として整備すればいつものことで同型艦を2隻建造すれば、改いずも級とあわせ4隻体制になる。という点です。皆さんの意見はいかがですか。

2019年4月4日木曜日

改装いずも級空母は防衛装備の性格を堅持、日本の安全保障への意味を理解しましょう

コメントは下にあります

 JS Izumo transits the South China Sea while doing maritime operations with a U.S. surface action group.
海上自衛隊のJSいずもが米水上行動群とともに南シナ海を航行中U.S. NAVY (BYRON C. LINDER)

Japan’s Refitted Izumo-class Ship Is Still a Defensive Platform

改装してもいずも級は防御装備であることに変わりない

By Admiral Dennis C. Blair and Captain Christopher Rodeman, U.S. Navy (Retired)
March 2019
Proceedings
Vol. 145/3/1,393
ARTICLE


しい日本の防衛大綱(NDPG)では宇宙、サイバー、電磁スペクトラムの新分野に注意喚起した。ただし新規NDPGへの反応ではいずも級ヘリコプター「駆逐艦」の多用途航空母艦改装で短距離離陸垂直着陸(SVOVL)を運用する方針に集中している。NDPGではロッキード・マーティンF-35BSTOVL機を計42機導入するとしており、各艦にF-35Bを搭載すれば「攻撃型空母」になり専守防衛という日本の安全保障政策から脱却となると批判する向きがある。

日本がめざす安全保障戦略の「目的」と中期防で掲げる「手段」を繋ぐ役目をもつNDPGで「方法」を明示している。2013年制定のNDPGは10年間有効のはずだったが途中変更となったのはそれだけ安全保障環境が厳しさを増しているとの政府見解の反映だろう。

岩屋毅防衛相の昨年12月18日記者会見で質問は半分近くがいずも関連で「攻撃型空母」の定義だった。日本国内各紙の報道基調や社説は軍事力強化への強い違和感を示していた。

ただしF-35Bを搭載したいずも級各艦を攻撃主体の兵器体系とし、専守防衛を旨とした戦後日本の防衛政策からの離脱と見るのは誤解だ。いずも級をSTOVL機運用に改装すると目的と手段の関係で有効だとする日本政府の国防戦略は正しく、攻撃装備にならず同時に他国の領土主権にも何ら脅威とならない。

日本防衛とは制海のこと


資源に乏しい島しょ国家の日本は海洋アクセスに依存する。日本は米国の支援のもと潜在敵対勢力の海洋利用を抑止・予防する必要があり、海洋通商活動ならびに遠隔島しょ部の防御は必須だ。戦後の日本は憲法解釈で国家存続がかかる際に自衛権を認めてきた。

いずも改装は憲法違反の攻撃型装備と批判する向きは戦術と戦略を混同している。攻撃、防御の能力整備は選挙で選ばれた政治指導層が戦略的レベルで判断すべきものだ。攻撃戦術が必要となるのは防衛戦略が機能する場合でのことだ。海軍戦闘の古典的教科書というべきFleet Tacticsでウェィン・ヒューズ退役大佐は「全ての艦隊行動が防衛戦術(防衛部隊ではない)に基礎を置くと理論的に不十分となる。防衛的海軍戦略の機能には部隊を集中投入し戦術攻撃で成功する必要がある」と述べている。

防御中心の軍事作戦で日本を防衛し海洋利用を図ると複雑かつ多くの要素がからむ。「日米防衛協力ガイドライン」が示すように「自衛隊が日本の主要港湾、海峡部の防衛を主担当すると同時に日本周辺海域の船舶艦船も日本が担当し関連作戦も実施する。このため自衛隊に必要となるのは沿岸防御、対水上艦戦、対潜戦、機雷戦、対空戦、航空制圧でありこれのみに限られない」 尖閣諸島を中国特殊作戦部隊から奪還する作戦でも同様の各作戦実施を可能とする戦力が必要だ。


防御的制海戦略を支える戦術とは

いずも級各艦はSTOVL機を10ないし20機運用し海上自衛隊の能力を防衛協力ガイドラインが想定する三分野で強化する。対水上艦戦、対空戦、航空制圧である。いずも級は海自潜水艦や水上艦と共同運用し、陸上自衛隊のミサイルが主要海域を中国海軍のミサイル、航空機から防御する。そこでF-35Bをいずも級各艦から展開すれば海自は監視偵察機能と防御装備の有効範囲を数百マイル伸ばせる。

海上自衛隊艦船を航空機発射の巡航ミサイルから防御するためいずも級がF-35BSTOVL機を運用する必要がある。平均的な対艦ミサイルの有効射程が数百マイルなのに対し対空ミサイルやミサイル迎撃ミサイルの射程は百マイルしかないためだ。同様に水上艦やパトロール艇が巡航ミサイルを発射すると海自に脅威となる。そこでミサイル発射前に攻撃を仕掛ける艦船や航空機を探知撃破することが海自艦艇の防御上最善の策となる。いずも級各艦がSTOVL機を運用すればこの一環となる。

F-35Bを運用するいずも級各艦は制海任務でも大きな役割を演じる。F-35Bが短距離対艦ミサイルを搭載すればパトロール艇や海上民兵の「大量動員戦術」に対し有効だ。「島しょ奪回」シナリオではF-35Bによる局地制空の確立が日本の水陸両用部隊による奪回で必須となる。


防御的制海戦略の効果を上げるには


海自艦隊に戦術航空戦力が生まれると短期以外の効果も生まれる。長期的に改編がまったなしの防衛方針、戦術、実証で米軍との協力体制の向上につながる。

防衛方針 海軍作戦部長によればこのたび発表となった「海洋優勢維持の全体構想2.0」で米海軍は高度戦力を有する敵対勢力を制圧する方針だ。ここでは有人無人装備をネットワークで結び分散独立型で高度な戦術効果を有する部隊を調整統合して運用する。日本の制海戦略はこれと異なるが、技術の進歩で同様の構想を取り入れていくはずだ。STOVL機と対潜ヘリコプターを運用するいずも級各艦が日本の今後の海洋戦略の鍵をにぎる。

戦術 F-35Bは有能な機材だ。だが戦闘で重要なのはペイロードである。つまり搭載兵装やセンサーが戦闘を左右する。さらに兵装システム技術は急進化しており、自律性能、極超音速技術、最終誘導技術から各装備を継続かつ急速に評価する必要がある。また戦術も効果を生む形に整備する必要がある。米海軍と海自は軍事力増強中の潜在敵対勢力に対する抑止・撃破という課題を共有する。日本が共用打撃ミサイル、共用空対艦スタンドオフミサイル、長距離対艦ミサイルを導入するのは正しい発展方向でより効果のある戦術を整備し各装備を有効活用する必要がある。

実証 F-35Bをいずも級に搭載し海自に海上で戦術航空戦力を運用する貴重な経験が生まれる。海自ではこれを米軍部隊とともに新しい戦闘構想の整備機会ととらえ、戦術、機材運用でも進化を期待する。いずも級は無人航空機(UAV)に各種ミッション装備を搭載しての実証に理想的である。さらにV-22オスプレイも日本が導入しつつあり、在日米軍で供用中だがこれも実証対象として有望だ。開発中の有人機でも海軍への転用が可能な機材があり、米陸軍が進める共用多用途技術実証機事業ではベルV-280ヴァラーティルトローター機とシコースキーボーイングSB>1デファイアント複合ヘリコプターがある。既存技術も含め、こうした有人無人機にも早期警戒任務、電子攻撃任務、洋上偵察や空中給油任務を行わせる構想がある。分散・ネットワーク化海軍部隊を戦力増強ならびに弾性確保の手段にいずも級やその他航空運用可能な海自や米海軍艦船から運用する各機を使えるだろう。

中国による高性能兵器開発、海軍空軍部隊の整備、さらに強圧的なグレイゾーン行動や好戦的国家主義により北東アジアの安全保障環境は一変した。日本は防衛力近代化を加速しないと、この脅威に追随できなくなる。中国は軍事優位性を盾にさらに大胆かつ強硬な動きを示すだろう。
日本は憲法解釈で国家存亡に必要な防衛力整備は許されている。海洋国家としての日本の生存と繁栄は海と表裏一体だ。中国が海洋面で強硬な動きに出ていることが日本の今後に不安の影を落としており、遠隔島しょ部主権でも脅威となっている。そこで自衛隊の対中抑止力、制圧力の改善に防衛的制海戦略を行使することは合理的かつ重要な一歩となる。

短期で見れば海自艦隊が航空自衛隊、陸上自衛隊、米軍と協調の上実施する防衛的制海戦略で求められる攻撃的戦術能力でいずも級改装によるSTOVL戦術機運用能力付与は効果的手段となる。長期で見ればこの能力により戦術、構想、実証がさらに広がる。このように日本の軍事抑止力が整備されるが、抑止に失敗しても領海を防御する能力、海洋コモンズへのアクセスの確保、遠隔島しょ部への侵攻を排除する効果が生まれる。■


「空母」=攻撃手段としか見ていない人はことばに踊らされて本質を理解していない人なのでしょう。また安全保障環境でもまったくちがう世界を想定している人なのでしょう。こうした人達による「口撃」に応対する政府や自衛隊も大変ですが、理路整然と事実を示しながら一つ一つ話を進めるしかないと思います。それだけいまの忙しい社会で本質を理解することなく上滑りな言葉尻で動いている人が多いということなのでしょうか。某国の思惑を「忖度」して「代理人」のように立ち回る「国会議員」や自らを国民の代表と錯覚する「メディア」に至ってはなにをか言わん、でしょうね。文民統制はもちろんですが、上に立つ人は専門家の知見を活用し、時間かけても耳を傾けてもらいたいものです。

2019年2月11日月曜日

★★いずも、かがとF-35Bを日本はどう運用するのか考えてみた

Aircraft Carriers and F-35s: The Killer Combination China Fear Is Coming Soon  中国が恐れる空母とF-35の組合わせが現実のものになる

To Japan... しかも日本に
February 10, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-35JapanChinaNavyMilitaryAircraft Carrier
本政府は2018年12月の閣議決定で日本海軍のいずも級ヘリコプター空母二隻をF-35Bステルス戦闘機運用艦に改装することとした。
第二次大戦終了後初めて日本は空母で固定翼機を運用することになる。二隻と機材がそろえば英国が1982年にアルゼンチンに占拠されたフォークランド諸島奪回と同様の作戦を日本が実施できる。
「小規模航空戦力でも実施できることは多い」と語るのがCombat Fleets of the Worldの編者エリック・ワーサイムだ。「高性能ステルス機のF-35Bであればなおさらだ」
日本政府は同時にF-35Bを42機の追加調達も決め、50億ドルの出費になるが空母二隻には十分な機数だ。
各国海軍は最重要艦艇を2ないし3隻導入し、うち一隻を戦闘投入可能とし残りを訓練あるいは保守整備にあてるのが通常だが、有事となれば一隻でも多く作戦投入すべく訓練や修理はあとまわしになる。
米海軍にはニミッツ級、フォード級の超大型空母10隻があり、危機発生30日以内に6隻を投入し、少なくとも別の一隻を90日以内に稼働させるのが目標だ。
日本はF-35Bの42機をいずも級2隻でどう運用するか。
いずも級の航空部隊の構成では発表がないが、2023年までにF-35Bを18機取得することにしており、一個飛行隊の編成に十分だ。その間に空母は大幅な改修が必要となる。飛行甲板に耐熱性が必要だ。F-35Bのリフトファンの排出する熱への対応だ。
現時点でいずも姉妹艦かがは通常は9機しか搭載していない。H-60対潜ヘリとMCH-101掃海ヘリだ。ただし全長814フィート、排水量27,000トンの同艦では理論上は28機が搭載できる。
他国海軍の例があてはまればいずも級はF-35十数機と支援ヘリを搭載できる。日本陸軍にV-22ティルトローター輸送機の調達予定があり、艦艇運用も可能となることに注目すべきだ。
イタリア海軍の全長800フィート、3万トンの旗艦カボールでジャンプジェット6機を運用し、現在はハリヤーだが将来F-35Bに替わる。英海軍のクイーンエリザベス級空母二隻は全長920フィート排水量65千トンでF-35Bを24機とヘリコプター数機を運用できる。.
米海兵隊は全長850フィート、40千トンのワスプ級およびアメリカ級強襲揚陸艦でF-35Bを20機さらにヘリコプター、ティルトローター数機の運用を狙う。
英海軍はF-35Bを48機導入し、常時24機の稼働を目指す。日本海軍も同様の規模で、12機体制の航空隊二個を各艦に搭載するのではないか。
30千トンの空母に戦闘機十数機を搭載すれば相当の戦力となる。英海軍の1982年に作戦行動では軽空母インビンシブルは22千トンでハリヤー8機を搭載していた。同艦は退役済みだ。同様に退役した空母ハーミーズはハリアー12機を搭載し、後日14機を追加した。
前出のワーサイムは「英海軍のシーハリヤー戦闘機はフォークランド諸島で極めて限定的な防衛任務を小型空母から効果的に実施したことでアルゼンチンの攻撃をものともせず英軍作戦を継続することができた。F-35Bでも少数機とはいえ日本に同様の効果を実現するのではないか」と語る。■

David Axe serves as the new Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels  War Fix, War Is Boring  and Machete Squad.

2019年1月27日日曜日

オーストラリアもF-35B運用のため揚陸艦を空母に改装すべきか

中国、ロシア、北朝鮮、イランといった勢力に対抗する自由と民主主義を信奉する各国の対立が鮮明となる中、日本にとってオーストラリアは米国と並んで重要なパートナーとなってきました。今回は日本の「空母」が同国にどんな影響を与えるのかの考察です。

Should Australia Follow Japan and Take the F-35 to Sea? 

日本にならってオーストラリアもF-35を海上で運用すべきか。

Or is this a bad idea? それともまずい選択になるのか。
January 23, 2019  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: AustraliaJapanF-35NavyAircraft Carrier
本が短距離離陸垂直着陸型F-35Bをいずも級に配備し同艦建造時点から出ていたとおりに小型空母へ改装を決定した。対象はJSいずも、JSかがの二艦でF-35Bは空中給油能力を付与せず短距離運用に限られる。
十数機程度の配備では通常の空母航空戦力としては規模が小さいが琉球諸島さらに尖閣諸島の防衛には寄与できそうだ。
ただし日本は「空母」を中国の接近阻止領域拒否圏内に前進させることは及び腰だろう。中国のA2/AD圏がグアムに届くまで拡大している中ではこれは問題となる。中国はDF-26対艦弾道ミサイルや潜水艦発射巡航ミサイルのほか長距離空軍力を整備している。
日本さらに米国にも課題となるのは厳しい環境の中で空母が生き残れるかどうかだ。同じことはオーストラリアにもあてはまり、F-35Bを同国のキャンベラ級ドック型揚陸ヘリコプター艦(LHD)に搭載すべきか。
LHD艦からのF-35B運用構想は2014年にASPI や The Strategist が提起し、2016年度国防白書が取り上げた。次回の白書は2020年刊行予定で、それまでに日本の新方針が刺激となりオーストラリア国内で議論を呼ぶのは必至だ。今回はオーストラリアが日本の後を追うべきか考えてみたい。
議論の背景にオーストラリア防衛軍(ADF)の装備を整備し陸上運営航空力の範囲外へ兵力投射ならびに遠征部隊支援を進めるべきかとの問題提起がある。オーストラリアの有するHMASキャンベラ、アデレイドの二艦は退役ずみ空母HMASメルボルン(中国へ売却され浮かぶカジノに改装)より大きく、ともにスキージャンプを設置済みだ。通常型F-35A調達が先行しているが、F-35Bも28機程度調達しLHD二艦で運用すればAIR 6000構想の2C段階が実現する。
F-35Bで確かに作戦上の利点を生まれる。LHDから小規模飛行隊を運用すれば限定的とはいえ遠征統合任務部隊に航空支援を提供し、艦隊防空、近接校区支援、情報収集監視偵察任務も実行できる。
F-35に代表される第5世代戦闘機の大切な機能はステルスモードと「システムのシステム」ネットワークだ。F-35Bにより防御側のネットワークに「協調型交戦能力」が加わり、オーストラリアのホーバート級駆逐艦、ハンター級次期フリゲートは残存性を高めつつ戦闘能力を高めることができよう。
またF-35Bの運用国、米・英・日の各国ならびにF-35Cを飛ばす米海軍への支援も可能となる。
ただF-35B運用はオーストラリアにも課題となる。キャンベラ、アデレードの両艦をそのまま同機運用に改装する可能性は低い。というのは予算と工期の一方で両艦の揚陸力が減るためだ。2014年時点の専門家報告書ではLHD改装費用を5億ドルと積算し、飛行甲板の耐熱強化などを盛り込んでいた。
報告書は以下問題提起していた。
STOVL機の搭載は可能だがLHDはそもそも多用途揚陸艦であり空母として最初から想定しておらずヘリコプター、揚陸部隊、車両装備とSTOVL機ならびに支援機材を同時搭載は不可能だ。「STOVL限定」にしてもLHDで課題が残る。F-35Bのソーティー数を継続維持し敵戦力の前に十分な防御が実現できるだろうか。
LHDで12機ないし16機を搭載できるが、全機が同時に発進することはない。STOVL機の設計上の制約からF-35各型の中で「B」が速力、航続距離、兵装ペイロードの各面の性能が劣る。
性能面の制約は通常の空母航空作戦では大きな不利になるがF-35BとLHDの運用は別の側面から考えるべきだろう。F-35のデータ統合ネットワーク機能で自軍に有利な状況が生まれる。第5世代機の運用はRAAFに限るべきでなく、海軍でもネットワーク機能向上は大きな効果を生むはずだ。
F-35B搭載のLHDを水上艦で防御する必要があるのは明白だ。多国籍軍部隊の一員としてオーストラリは同盟国海軍部隊とLHDを防御するはずだが、オーストラリアが域内紛争に単独で関与するシナリオもありうる。その場合はLHD防御に艦艇をさく必要が生まれホーバート級駆逐艦(3隻)やハンター級次期フリゲート艦(9隻)を配備するだろう。
F-35BでLHD護衛部隊の戦力を引き上げるのは興味深い課題でこれ自体で別途検討が必要だ。F-35BをE-7Aウェッジテール他無人機と組み合わせて戦力増強効果が期待でき、ISR機材や情報ネットワークとも効果が上がる可能性が高い。さらに無人機をLHDに搭載すれば興味を引く選択となろう。
現時点の戦略見通しは2016年版国防白書の内容より遥かに危険な状況だ。このためオーストラリアの戦力整備と国防予算支出規模で見直しが必要だ。GDP比2%支出を2016年白書は選択肢のひとつにとりあげていたが今こそこれを実施すべきであり、場合によっては規模拡大も求められそうだ。
予算追加が実現すれば2016年時点の想定を上回る大規模海軍力が整備できる。LHD三番艦の建造も道が開け、護衛艦艇を増強する選択肢も今後の戦力整備計画で出るはずだ。
F-35B導入の検討では、オーストラリアは危険度を増す戦略環境の中で敵対勢力戦力が急速に伸びている現実を日本や米国同様に認識すべきだ。そうなると中国やロシアのA2/ADの中で西側各国の空母が生き残れるのかという質問に戻る。■

Malcolm Davis is a senior analyst at ASPI. This first appeared at ASPI's The Stratgist here.