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2020年2月12日水曜日

戦略爆撃機の復興、注目を集める大型機材の動向は

戦略爆撃機というかサイズに余裕がある機材はステルス性能でも有利です。さらに近い将来には戦闘機と爆撃機の境が消え、多数の無人機を統制氏運用しながら敵戦闘機を遠距離から排除する戦闘航空機に進化するというのが当方の予見なのですが、どうなりますかね。


戦略爆撃機の復興
米中露三カ国が爆撃機の効用を再認識

ェリー・スカッツの著書Bombersの最後にこんな表記があった。「爆撃機の将来は明るくない...」
 それは同書が出た1991年には正しい表現だった。冷戦終結が視野に入り戦略爆撃機は削減の一途だった。米議会はB-2ステルス爆撃機の生産を当初の132機から20機に削減し、その10年近く前に英国は最後のヴァルカン戦略爆撃機を退役させていた。
 防空体制の向上の前に低速のB-52と超音速機のB-1ランサーやTu-160はともに生存のチャンスは減る一方で、調達・維持費用は高止まりだった。将来は第4世代多任務機のF-15Eのように機敏さと柔軟さを兼ね備えた機体で精密兵器多数を搭載するのが主流になると見られていた。
 だが2020年に入り、戦略爆撃機が一大カムバックを遂げている。米空軍はB-21レイダーステルス爆撃機を100機超調達すべく生産開始する。66機残るB-52は改修し2040年代まで供用する。
 ロシアも冷戦時の機体を改修し、これまでになく頻繁に長距離パトロール飛行を行っている。中国は古参兵のH-6の新型を今も生産中で、新型H-20ステルス爆撃機を2020年に公開すると見られる。
 背景には超大国間競合の再開がある。特に米中がアジア太平洋地区でしのぎを削っている。広大な同地区は戦術機では限界があり、戦略爆撃機に長距離ミッションを行わせるのが得策だ。さらに陸上配備ミサイルが前方基地、空母双方に脅威となっている。中国、ロシア、イランはそれぞれ大型巡航ミサイルや短距離弾道ミサイルの整備を進めている。有事には米軍航空基地や海上の艦艇に大量のミサイルが発射されよう。
弾道ミサイル攻撃で短距離戦術機が何機生き残れるか見えてこない。駐機中のステルス戦闘機の撃破は実に容易だ。
 そうなると、米本土やディェゴガルシア、グアム、ハワイの各地に配備する戦略爆撃機は比較的安全ながら世界各地を攻撃する能力を有する装備だ。中国、ロシアともに中距離、長距離弾道ミサイルで各地を攻撃できるが、ICBMは核弾頭しかないし、前者は数が少ない。
 核心は爆撃機の航続距離より搭載兵装にある。米、中、露各国はもともと爆弾投下用に開発された1950年代開発の機材をいまも運用するが、爆弾投下は今の情勢では自殺行為とされる。
 ただし、今は長距離巡航ミサイルを搭載し、数百マイル先からの発射が任務で、AGM-158 JASSMステルス巡航ミサイル(射程230から575マイル)、ロシアのKh-101(1,800から2,700マイル)、中国のCJ-20(推定900から1,200マイル)がある。それぞれ射程はS-400地対空ミサイルの有効射程240マイルを優に超えた地点で発射できる。
「ミサイルトラック」というと大量の燃料と兵装を搭載した大型機を思い浮かべるが、737旅客機を改装した機材で十分なのだ。実際に米海軍がP-8ポセイドン哨戒機に爆撃機並の兵装運用能力を実現しようとしている。
 スタンドオフ爆撃機でも、敵迎撃機が超長距離対空ミサイルを搭載すればやはり脆弱となる。ロシアのR-37や中国のPL-15がある。ただし、米空軍は自衛用レーザー砲の導入で長距離攻撃に対応するとしている。
 またスタンドオフ攻撃にも短所がある。長距離巡航ミサイルは非常に高価で、JASSMは一発百万ドルといわれ、有事になれば米軍は在庫を使い切ってしまう恐れがある。
 さらに巡航ミサイルが標的に到達するのに一時間ないし2時間かかり、防御側に準備の時間が生まれる。人員は退避壕に隠れ、防空体制は待機するだろう。
 そこで、奇襲攻撃で強力な火力を加えるには、これと別のはるかに高額な対応方法がある。長距離ステルス爆撃機だ。
 ステルス爆撃機なら警戒されずに敵の国家首脳部、指揮統制司令所、核や化学兵器施設、通信中継地点を攻撃できる。航空基地や海軍基地の機能を低下させ、弾薬庫や防空レーダー基地も排除できる。
 B-2スピリットは三十年にわたり世界唯一の実用長距離爆撃機であり続けている。2020年代中に米空軍は最低でも100機のB-21レイダーのテスト、調達を行う予定で、更に大型の機材を求める声もある。
 他方で中国はH-20ステルス爆撃機をまもなく公開すると見られる。同機はB-2に似た外見となるはずだ。
 米中両国がステルス爆撃機の調達を急ぐのは前線後方に機材を配備できるからで、太平洋の広大さを考えると防空体制をかいくぐり、経済性の高い短距離射程兵装を大量投下できる性能に魅力がある。
 ロシアにもPAK-DAステルス爆撃機開発構想があり、2020年代中に初飛行の予定だが、同機の実現に相当の予算を負担できるのかが今後試されよう。
 現実には第二次大戦終結後、戦略爆撃機が軍事大国相手の実戦に投入された事例は皆無だ。冷戦時に開発の米戦略爆撃機では一発も実戦投下していない機種が大半だ。ロシアのベア爆撃機は1956年に配備開始となり2016年まで実戦投入は一回もなかった。それでも大型機には視覚的な威圧効果がある。
 米国はB-52、B-2で朝鮮半島上空の飛行を行い、北朝鮮に圧力をかけている。ロシアはブラックジャック爆撃機をヴェネズエラに、ベアを英国やアラスカの沖合に飛ばしNATOを挑発している。中国はH-6を台湾周回飛行させている。
 米国も大型爆撃機を低じん度戦役のアフガニスタン、イラク、シリアに投入している。ISISの様な敵にには高高度対空ミサイル装備がないのでB-1、B-52は上空はるか上を飛行し、地上部隊が捕捉した標的に安価なJDAM誘導爆弾を投下した。燃料兵装を満載した爆撃機一機で戦闘機な数回ソーティ分をこなし、戦場上空を数時間滞空できる。
 こうした事情から中国、ロシア、米国が冷戦時の爆撃機を未だに温存している理由がわかるし、新型ステルス爆撃機開発に多大な予算を投入している理由も明白だ。超大国間の死闘に新型機材が投入される日が来ないことを祈るばかりだ。■

この記事は以下を参考にしました。

The Strategic Bomber is Making a Come Back

From America to Russia and China—the bomber is making a comeback. 
February 8, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: B-1BombersCold WarU.S. Air ForceH-6


2020年1月5日日曜日

Tu-95近代化改修を続けるロシアの狙いは長距離スタンドオフミサイル攻撃にあり

 B-52とならび長寿のTu-95ですが、比較的最近にも新規製造があった点が異なります。B-52も当初はターボプロップ搭載案があったようですが、ジェットかターボプロップかで比較検討されていたのでしょうね。長距離スタンドオフ攻撃はやっかいな作戦になりそうですが、数千キロというのはロシア流の誇張では。航法衛星や支援装備がなければ無用の長物ですね。
Tu-95はロシア空軍で最古参の機体である。プロペラ反転式ターボプロップエンジンを搭載し、現役爆撃機として世界唯一のプロペラ推進機だ。退役の兆候もなく、ロシア空軍は逆にTu-95MSM近代化改修を実施し性能を向上させている。
ロシア戦略爆撃機部隊の中心がTu-95MSである。空対地ミサイル新型の搭載を狙った同型はこれまでの流れを継承している。ソ連時代から空対地ミサイル実験は1950年代に始まり、Tu-95Kが生まれた。冷戦時もこの流れは続き、Tu-95MSが1981年に登場した。同型はTu-95原型を近代化し、機関銃やレーダーに至るまで当初の装備を廃止した。ねらいは長距離から空対地ミサイルを発射することだった。旧型機材では近代化に耐えられないため、生産ラインが1980年に再開され新造のTu-95MSが生まれた。このため供用中の同機は一部NATO機材より機齢が若い。
Tu-95MSの主要兵装はKh-55空中発射式巡航ミサイル(ALCM)で、亜音速で2,500キロの飛翔距離がある。現在は核弾頭付きKh-55SMとして、射程が3,500キロに伸びた。その通常型はKh-555で2,000キロ先を攻撃できる。Kh-555はシリア戦線でTu-95MSから発射された。通常のTu-95MS6は機内に6発搭載する他、主翼下パイロンに最大10発を運用することで16発の発射が可能。2018年版の核兵器ノートブック(原子力科学者年報編)によればロシア空軍はTu-95MS6を25機、Tu-95MS16を30機運用中だ。ただしTu-95MSM近代化改修の対象機数の言及がなく、「おそらく44機」としている。
Tu-95MSM近代化改修の狙いはKh-101、Kh-102巡航ミサイル運用能力をTu-95MSに付与することにある。全長が伸びたKh-10(X)はTu-95MSの機内回転式弾倉に入らない。このためTu-95MSMではパイロン4つを追加し、同ミサイル4発を搭載する。パイロンは新型ミサイル、Kh-55ミサイル双方に対応する。Kh-101、Kh-102は有効射程が5,000キロまで伸び、レーダー探知されにくくなり性能が相当向上している。Kh-101もシリアで実戦投入済みで、2015年11月17日にTu-160が発射しており、その後も使用が続いている。
Tu-95MSMは機体構造の改良により主翼が強化されたことで新型ミサイル搭載が可能となった。その他筋によればエンジン、プロペラの改良も含まれ、飛行性能が向上しているという。Tu-95MSのエンジンは生産が終了しており、今後は予備部品と整備の確保が課題だ。新型レーダーとデータ表示システムも近代化された。
Tu-95MSMで興味深い点はロシア戦略爆撃部隊の規模縮小の一端がわかる点だ。前記年報やロシア筋によればMSM改修はTu-95MS全機が対象ではない。Tu-160生産が細々と進む中で、ロシア爆撃機部隊は新型PAK-DA爆撃機が登場するまで規模縮小となる。並行して陸上配備ICBMの重視が進んでおり、ICBMサイロにはアクティブ防御装備が導入されていることに注意が必要だ。MSM改修では通常兵器運用能力の向上もねらい、部隊は運用訓練を重ねている。Kh-101がスタンドオフ性能や精密攻撃能力で大きな兵力増強手段となる。■

Charlie Gao studied political and computer science at Grinnell College and is a frequent commentator on defense and national-security issues.

Russia Is Upgrading Its Old, Propeller-Driven Tu-95 Bombers

Why?

 January 4, 2020  Topic: Security  Region: Europe  Blog Brand: The Buzz  Tags: RussiaMoscowPutinMilitaryTechnologyBomberAir Force


2019年11月19日火曜日

B-21導入まで米爆撃機各型はこうして運用される。B-52、B-1Bを中心に動向を解説

Air Force Maps it Future Path to 100 New B-21 Bombers

by
B-52に長距離核巡航ミサイルを搭載、B-2には最新の防空体制を突破させ、B-1Bは極超音速兵器を運用する....これは空軍が今後数十年にわたる運用構想が現実となった場合の話だ。
空軍の装備開発部門は各爆撃機が今後も戦力として活躍できよう懸命に企画中だ。兵装追加、エイビオニクスやネットワーク技術の導入に加え新型B-21の実戦化も課題だ。
上層部が『爆撃機不足』と呼ぶ現状への対応が企画の中心で、供用中機材の性能を最大限活用させるのがねらいだ。
「西側に爆撃機は156機しかなく、全部米国の保有機だ。長距離打撃能力の要求拡大に対応していく」とグローバル打撃軍団のティモシー・レイ大将が空軍協会主催のイベントで9月に発言。
現在B-2は20機あり、B-21は100機を導入する。
「B-21導入に向かう際の問題はどう実現するかだ。ロードマップはあるのか。今後数ヶ月、データをにらみながら可能な策を考える。保有機材の多くで今後は維持管理が課題となるので、費用対効果が最大な形で維持できるよう分析が必要だ」(レイ大将)
B-21の導入の進展が不明なままでは詳細面が決まらないが、構想では75機あるB-52は2040年代まで供用し、B-1は最低でもあと10年あるいは20年残し、B-2は大幅改修するとある。
「現時点ではB-21を100機とB-52の75機を想定する。昨年はこの構想が実施可能かをずっと検証してきた。B-1にも新装備を搭載すれば、B-52の負担が減らせる。問題は現有機材を賢く運用しながらロードマップを準備し規模拡大にそなえることだ」(レイ大将)
構想が成功するかは現有機材の近代化改修にかかっているとレイ大将は述べ、センサー、エイビオニクス、兵装、通信技術で就役後数十年経過した爆撃機を次の10年も活躍できるようにすることだという。
「B-21の機数が十分揃うまでは現有機材をうまく稼働できると信じる。外部ハードポイント追加、爆弾倉拡大が実現できるとよい」(レイ大将)
通常の整備に加え新規装備の統合に向けた努力も並行して進んでいる。空軍研究本部で空軍科学技術戦略をとりまとめるティム・サクリッチがWarriorに紹介してくれたのは空軍の科学技術部門では新技術の導入を加速化しつつ既存機材に応用する姿勢で、例として軽量複合素材、レーザーや極超音速といった新兵器、次世代ネットワーク装備等がある。
B-2とB-52で近代化改修が進んでいるのはこの構想の一部で、旧型機を全く新しい機材にする。自律化運用とAIを既存機種に折り込めば機能面で全く違う機体になり、残存性が高まり、攻撃方法にも選択肢が広がる。
「ネットワーク化兵装やシステムを有人・無人機混合運用で使う際はAIに依存することになる。運用面で違いが生まれるかを実証中だ。ネットワーク化兵装を実地運用し、戦闘状況で標的に向け発射し通信機能、最適化効果を見ているところだ」(サクリッチ)
B-1の今後
空軍はB-1に2つの方向性を想定し、機体改修案とB-21導入に伴う即時退役も考えている。
この2つは一見矛盾しているようだが、同機の威力を最大限にしつつ、B-21への機種転換の負担を軽減するねらいがある空軍関係者がWarrior Mavenに語ってくれた。B-21の就役は2020年代中頃の想定だがはっきりきまったわけではなく、B-1の完全退役は2030年代になりそうだ。またレイ大将からはB-1Bの爆弾倉で極超音速兵器を運用する実証の話題が出ている。
関係者はB-1史上で最大規模の技術改修が進行中とし、兵装運用能力の拡大とともにエイビオニクス、通信機材、エンジンを更新するという。エンジンについては当初の性能水準を維持し、標的捕捉機能、情報機能を新型にするという。
統合戦闘ステーションには乗員用画像装置、通信リンクがあり、飛行中にデータ共有できる。これと別に完全統合型標的捕捉ポッドがあり標的捕捉ポッドの制御と画像フィードをコックピットに送る。また500ポンド級兵装の搭載量を6割拡大する改装を行う。B-1の実戦デビューは1998年の砂漠の狐作戦で、JDAM数千発をイラク、アフガニスタンで投下した。高度40千フィートでマッハ1.25まで出せる同機の実用高度上限は60千フィートだ。搭載可能爆弾はJDAMの他、GBU-31、GBU-38、GBU-54がある。また小口径爆弾GBU-38も運用可能だ。
B-52は2040年まで供用 
B-52全機にデジタルデータリンク、移動式地図表示機能、次世代英日にオニクス、新型通信機をそれぞれ搭載し、さらに機内兵装搭載量の拡大と新型ハイテク兵装の導入が進んでいる。.
レイ大将はエンジン換装に向け作業が進んでおり、新型かつ燃料消費で優れたエンジンが各機に搭載されると強調。
B-52の機体構造が頑丈にできており2040年代更にその先までも飛行可能となるため空軍は最新式エイビオニクスや兵装など技術導入で十分な戦力を維持する。
またB-52の兵装搭載量も増加させるべく技術面で進展が進んでいる。
内部兵装庫改修(IWBU)により最新「Jシリーズ」爆弾を最大8発まで搭載しつつ、主翼下に6発を取り付ける。IWBUではデジタルインターフェースで回転式発射装置を運用し、ペイロードを増加させている。
B-52は以前からJDAM兵器を外部搭載してきたが、IWBUにより機体内部に最新式精密誘導方式のJDAMと共用空対地スタンドオフミサイル等を搭載可能となる。
また内部兵装庫の運用能力が拡大することで燃料効率の妨げとなる機外搭載を機内へ移し抗力が減る。
IWBU改修ではレーザー誘導JDAMの運用が最初に実現する。次に共用空対地スタンドオフミサイルJASSM運用が始まる。JASSM射程拡大型(ER)とミニチュア空中発射型囮装置(MALD)が続く。MALD-J「ジャマー」もB-52搭載されれば敵レーダー妨害に役立つはずだ。
ヴィエトナム戦争での爆撃ミッションが有名だが、近年もアフガニスタンで地上戦支援を行っており、この際はグアムから発進していた。
B-52も砂漠の嵐作戦に投入され、空軍は「B-52が敵兵力集中、固定目標、地下掩壕の広範囲に及ぶ攻撃に投入され、イラク革命防衛隊は戦意喪失した」とまとめている。

2001年の不朽の自由作戦のアフガニスタンで近接航空支援にB-52を投入している。イラクの自由作戦では2003年3月21日、B-52H編隊で約100発のCALCM(通常型空中発射巡航ミサイル)を夜間ミッションで発射している。■

2016年10月9日日曜日

まだまだ現役、B-52の現状と今後の改修の方向性


まだまだB-52は供用されそうですね。エンジン換装が実現すれば一層その効果を発揮するでしょう。良い投資だったことになりますね。

The National Interest


Why America's Enemies Still Fear the B-52 Bomber

October 2, 2016


9月26日、大統領候補討論会でドナルド・トランプはヒラリー・クリントンから核戦力について聞かれこう答えた。

「ロシアの戦力増強で装備は近代化している。それに対し米国は新型装備配備が遅れている。
「先日の晩にB-52が飛んでいるを見たが皆さんの父親より古い機体で祖父の世代が操縦していた。このようにほかの国に追いついていない」

つまりB-52は老朽機で米空軍が世界から特にロシアから大幅に遅れを取っていると言いたかったのだろう。

でも本当に古い機体なのでは?

B-52ストラトフォートレスの初飛行は1952年で生産は1962年まで続いた。現在運用中のB-52H合計76機より高齢のパイロットは皆無に近い。トランプ発言は「祖父」というところまでは正確であり、B-52乗員の中には三世代続けて同機に搭乗員という家族がすくなくとも一組存在する。

その機体が今でも有益なのかが疑問となっているわけだ。

BUFFのニックネームが付くB-52は当初は核爆弾を上空から投下してソ連を攻撃するのが役目だった。だが地対空ミサイル、空対空ミサイルの登場で想定した任務は1960年代末に自殺行為となり、今でも同じだ。

では何に使うのか、米空軍がまだ運用しているのはなぜか。

B-52は湾岸戦争以降ほぼすべての戦役に投入されている。その理由は何か。

B-52には二つの大きな利点がある。大量の爆弾、ミサイルを搭載できること、遠距離に運べることだ。空中給油なしでも8,800マイルを飛べる。また性能向上用のスペースは機内に豊富にある。

同機は爆弾、ミサイルの長距離配達トラックということか。

防空体制を整備されあt標的にはどうするか。AGM-86空中発射式巡航ミサイルを最大20発を搭載する。核・非核両用の同ミサイルはスタンドオフ攻撃用だ。

だが高価な巡航ミサイルをB-52は発射していない。敵対勢力のタリバンやISISに強力な防空体制がくB-52は高高度を上空飛行できるからだ。

B-52はGPS方式のJDAM誘導爆弾12発あるいはGBUレーザー誘導爆弾を4から10発積んで戦闘地区上空で待機し、近接航空支援の要請を待つことがある。もちろんジェット戦闘機でも同じ仕事はできるが、戦闘機は上空飛行待機時間も限られる。アフガニスタンのタリバン討伐作戦を開始した2001年当時はB-52やB-1が米本土から飛来し爆撃していた。当時は近隣に米空軍が運用できる基地がなかったためだ。現在もB-52はタリバン、ISISを相手に作戦を展開している。

ISISへ絨毯爆撃していると聞いたが

絨毯爆撃では数百から数先発の非誘導型爆弾を投下し標的を爆撃する。無差別攻撃となりそのショック効果は大きい。B-52はこのために最適な機材で500ポンドから750ポンド爆弾なら51発を搭載できる。あるいはクラスター爆弾なら40発となる。イラク軍が砂漠地帯に陣取った1991年の湾岸戦争で低レベル絨毯爆撃を行っている。

ただし今日の空軍は絨毯爆撃には関心がない。空軍が同機を投入するの高密度目標だけだが敵側にそれだけの標的がないのが普通だ。付随被害も発生するので民間人居住区の近隣で実施できない。

BUFFは他にどんな任務に役立つの?

長距離飛行性能は海洋上空の監視飛行に最適だ。南シナ海の広大さと中国が覇権を狙っていることを想起してもらいたい。

B-52には海軍用機材が搭載するセンサーはないが、一部機材にライトニング、ドラゴンズアイの水上監視用レーダーポッド二種類が搭載され水上艦船の識別に使える。また別にAGM-184ハープーン対艦ミサイル8発搭載用に改修された機材もあり、160マイルの射程を誇る。このため水上戦闘でもB-52は威力を発揮できる。

ミサイルトラックとしてのB-52をもう一歩進めて空飛ぶ弾薬庫とする構想もある。その場合対空ミサイルも搭載するだろう。

戦闘機では空対空ミサイル搭載数に限りがある。特にステルス戦闘機でこの傾向が強い。そうなると数の上で優勢な敵との対決で不利だ。そこでステルス戦闘機の特性を活かし、アクティブ電子スキャンアレイレーダーにより接近してくる敵を探知させ、データリンクとネットワーク技術でデータを友軍機に送らせる。「弾薬庫」機としてB-52やB-1に長距離空対空ミサイルを多数の搭載させる構想がある。

現時点では理論にすぎず、制約もある。だがペンタゴンは構想を真剣に検討している。

ミサイル以外にB-52をどう活用できるだろうか。力の誇示で目立つ機材だ。弾道ミサイルとの比較では航空機は核兵器運搬手段として脆弱性が避けられない。だが地上配備、海中配備のミサイルはその存在が見えにくく、、一方でB-52は危険地帯近くへ飛ぶことができる。上空飛行で明白な力のメッセージを伝えることが可能だ。

B-52が南シナ海上空や核実験直後の北朝鮮付近を飛行する様子を伝えるニュースを耳にしただろう。ロシアのTu-95ベア爆撃機がイングランドやカリフォーニア沖合を飛行して嫌がらせをするようなものだが、B-52の上空飛行の方が政治的に大きな意味を有する。

だが機体の金属部品が疲労しないのか。また旧式エイビオニクスやエンジンはどうするのか。

その点は考慮ずみで心配は不要だ。空軍はB-52は2040年までの飛行供用は可能としさらに延長の可能性もあるとしている。B-52の設計が堅固かつ保守的であるのが理由で、その後登場した高性能機よりストレスへの許容範囲が高い。空軍は大規模投資でB-52の飛行性能を維持向上している。

だが搭載エイビオニクスは旧式だ。ニューヨーク・タイムズは油圧系統と配線が旧式でコンピュータも故障が多い旧型のまま機内に搭載されていると指摘している。

そこで空軍は11億ドルでBUFFにCONECTエイビオニクス改修を加え新型ディスプレイ、通信装置、データリンクによるネットワークを導入する。また兵装庫改修で誘導爆弾を追加搭載させる。現在はJDAMなら8発搭載可能だが、小型空中発射おとり(MALD)ミサイルも搭載し敵防空体制を混乱させる他、レーダージャミング装置も搭載する。

B-52のTF-33ターボファンエンジンは効率が劣る。一時間3,000ガロンの燃料を必要とする。そこ空軍はエンジン換装で整備コストともに経済性の向上を検討しているが予算がない。そこで浮上してきたのが民間会社に保守整備を信用払いで委託し、新エンジン換装で浮いた運用経費で費用を賄う支払い方法だ。

欠点はあるものの、B-52は今でもしっかりした仕事をしており、空軍も評価しているのは明白だ。ただし古ければすべてよし、というものでもない。

2015年にB-52一機を事故で喪失した空軍は13百万ドルで有名な航空機の墓場(アリゾナ州)からB-52H一機を代わりに復帰させた。13百万ドルで新型爆撃機は調達不可能だ。(なお、墓場にはB-52Hがあと12機温存されている。)

後継機種はないの?

空軍にはより近代的な爆撃機が二機種ある。B-2スピリット・ステルス爆撃機とB-1ランサーだ。だが両機種ともB-52の後継機種とはみなされていない。

B-2スピリットはステルス機で敵防空網の突破が期待されている。高度能力を持つ敵国に十分有効だが、20機しかない。運行は条件に作用され、飛行整備経費は一時間135千ドルとB-52のほぼ二倍だ。経費とともに搭載燃料・兵装量が少ないこともあり、爆弾トラックとして比較的安全な空域で毎日運用することは考えにくいし、海上監視機としても使いにくい。ただしステルス性能が効果を出すがステルスが外交的な力の誇示の目的には適さないことは明らかだ。

B-1BランサーはB-52と同様の効果が期待できる機体だ。搭載兵装量はより大きく、速度は25%も早く、レーダー探知も困難だ。だが今日の防空体制能力ではステルス機も探知されない保証はなく、迎撃を回避する速度も不足している。そこでB-52より性能が高いとは言え、空軍は同機を防空体制が整った空域に送りたくないはずだ。

そうなるとB-1(愛称ボーンズ)はレーザー誘導弾や巡航ミサイルを遠方から発射することとなり、B-52と同様になる。

B-1Bは高性能だが運用経費は一時間60千ドルとB-52より10千ドルも安い。ただし同機も63機と機材数が少ない。B-52がB-1の不足を補うことのか、爆撃ミッションを中止するのかとなり、このためB-52が今年はじめにISIS戦に投入されたのだ。
だがB-52に未来はあるのだろうか。空軍からB-21レイダーの調達を進めると今年発表が出た。これまで長距離打撃爆撃機と呼ばれていた機体だ。B-21はステルス機でB-2スピリットと形状が似ている。

B-21の設計思想は長距離爆撃機で遠隔地に飛び、敵防空レーダーに探知されずに飛行させることにある。中国、ロシアの低帯域レーダーはステルス機の探知にも有効と言われる。機体はB-2よりやや小さくなるだろう。

B-21の機体価格は5億ドルを超えるとされ、空軍としても新技術に真剣に対応しているというだろうが、ペンタゴンは最終価格でこっそりと交渉中と言われる。

ロシアには「最新性能」があるのか?

ロシアは三機種の爆撃機を運用中だ。高速のTu-22M3バックファイヤー、もっと高速のTu-160ブラックジャック、Tu-95ベアで冷戦時の機体設計だ。ただし、ステルス性能はなく、B-2や今後登場するB-21に匹敵する機材はない。

可変翼Tu-22M3はB-1より速度が70%も早いが兵装と燃料の搭載量を犠牲にしている。スピードが防御策にならないことは実証済みで2008年にジョージアで地対空ミサイルで一機撃墜されている。

巨大なTu-160は可変翼式でマッハ2とB-1よりはるかに高速だが兵装搭載量はほぼ同じだ。極めて高価な機体で製造、維持は大変だ。ロシアは16機を保有しているが大部分は飛行可能な状態にない。B-1同様にレーダー断面積は小さいが、敵防空網の突破は期待できない。

そこでTu-95SMとTu-142ベアがある。ロシア版B-52と言える機体で原型のベアは初飛行が1952年でB-52とほぼ同じ任務に投入されている。またうまく任務を実施している。だが何と言ってもプロペラ推進は低速で騒音がすざまじく、兵装搭載量はB-52の半分程度だ。

そうなると一定数の機材が運用されている唯一の重爆撃機は中国のH-6の120機で、冷戦時のTu-16を改修したものだが、飛行距離・兵装搭載量ともにB-52とは比較にならない。

ではトランプの言う「新能力」とは爆撃機以外のことを指しているのだろうか。ロシアにはたしかに新兵器が多数あるが、空の上で追いつくのに必死だ。Su-35はまだ生産が低調だがF-15より優位だといわれている。だがF-15は1976年初飛行で、Su-35はF-22ラプターには追随できない。

またT-50ステルス戦闘機の開発がある。現在の発注数は12機でラプターの一割にも満たない。米国にはラプターに加えやや性能が劣るがF-35も加わる。

地上兵力技術でロシアが進歩しているのは間違いなく、T-14アルマタ戦車には100両の発注がある。だが今のところはT-72戦車改良型数千両が主力で、米軍が1991年の湾岸戦争で粉砕した戦車の改良型だ。

一方でロシアのミサイルには畏怖させるものあり、これから登場するジルコン水上発射ミサイル、S-400地対空ミサイル、イスカンダル短距離弾道ミサイルが要注意だ。特に後者はロシアが航空機による効果に期待できない中で依存を高めそうだ。またロシアも米国同様に大陸間弾道ミサイルによる核戦力を保持している。

ロシアがここ数年で軍事力を増強しているのは明らかで、経済の停滞とは対照的だ。ただし、米国が2016年に投じた国防予算は597百万ドルに対しロシアは87百万ドルで7対1の差がある。多くの場合にロシアが有望な新技術を開発していても実際には十分な配備をする予算がないというのが実情だ。

そうなると…

B-52の愛称BUFFは「デカくて不格好な太っちょ野郎」という意味だ。

だが外観で判断してはならない。B-52にはセクシーさもステルス性能もなく、敵防空網突破やSAM回避はできないかもしれないが、地球の反対側に大量の兵装を投下することができ、ISISやタリバンの本拠地を壊滅することは可能だし、苦戦する地上部隊の援護にもかけつける。

新型機も同じ任務に投入できるし、より高性能機材も登場するだろう。だがB-52はこの時点でも後継機の必要がないほどの活躍をしている。古くても信頼性が高くしっかり仕事をこなす機体を廃棄する必要はない。■

Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.
Image: A B-52H Stratofortress takes off after being taken out of long-term storage at Davis-Monthan Air Force Base, Arizona. Flickr/U.S. Air Force

2016年8月14日日曜日

グアムに米重爆撃機三機種が集結中 真の狙いは?



War Is BoringWe go to war so you don’t have to
B-1s, B-2s and B-52s at Andersen Air Force Base on Guam on Aug. 10, 2016. Air Force photo

B-1, B-2 and B-52 Bombers All Descend on Guam in a Huge Show of Force

This is not something you see every day

by JOSEPH TREVITHICK

8月10日の米空軍発表で、B-2スピリットステルス爆撃機がグアムに到着し、B-52ストラトフォートレスおよびB-1ランサーに合流したとわかった。太平洋で各機種が揃うのは異例で、グアム島で初めてだ。
  1. 空軍長官デボラ・リー・ジェイムズは今回の配備を「爆撃機搭乗員に別機種との統合運用の貴重な経験と訓練の機会となり、同盟国協力国も各種ミッション通じ有益な機会となる」と述べた。
  2. ただしジェイムズ長官は今回の配備についてそれ以上触れず、各機種を同時配備する意味を深く説明していない。グアムから中国、北朝鮮は攻撃範囲である。
  3. ペンタゴンは爆撃機をアンダーセン空軍基地に定期配備している。ただし北朝鮮の核ミサイル実験、中国の南シナ海進出で今回の配備に新しい意義が生まれている。
  4. 今回の展開は8月6日にB-1編隊がグアムに到着して始まった。B-52に交代するため飛来したものでペンタゴンが「連続爆撃機プレゼンス」、CBPと呼ぶ作戦の一環。交代するB-52部隊は8月末に米本土に帰還する。
  5. 8月10日にB-2編隊が「爆撃機保証抑止力配備」BAADで到着。ただしステルス爆撃機隊がミズーリ州の本拠地に帰還する予定は不明だ。
  6. 三機種には全く共通性がない。すっきりしたB-1は超音速飛行可能で機内爆弾倉は3つに分かれ40トン近くを搭載する。最大行動半径は6,000マイル近い。
  7. 巨大なB-52は低速で爆弾搭載量はそこまでないが、さらに3,000マイル飛行可能だ。B-2スピリットも爆弾搭載量は少ないが全翼機形状でステルス特性で敵レーダーに補足されない。
One of the B-1s at Andersen Air Force Base. Air Force photo
  1. これまでCBPおよびBAADミッションは北朝鮮の好戦的な態度を睨んで実施されてきた。
  2. 2002年1月29日、当時のジョージ・W・ブッシュ大統領が北朝鮮をイラク、イランとともに「悪の枢軸」と呼び、一年以上たってグアムに新設の爆撃飛行団にB-1、B-52が派遣され、2004年にどう飛行団がCBPミッションを開始した。
  3. 初回展開の「2003年春はアンダーセン基地での爆撃機運用の新時代を開いた」と第36飛行団公式記録が記述している爆撃機需要とアンダーセンの活動状況は平行ししていた War Is Boringは情報公開法でこの記録写しを入手した
  4. 冷戦中のグアムに核爆弾搭載B-52爆撃機隊が駐留しソ連あるいは中国との開戦に備えていた。幸いに想定は現実にならず、ヴィエトナム戦争でB-52隊は同基地から発進し通常爆弾を投下していた。
  5. 2000年代に入ると爆撃機隊は広範囲ミッションに備え、オーストラリアやアラスカからハワイにかけてさらに東シナ海でも演習に参加した。空軍は各演習フライトに色彩豊かな名称「ブルーライトニング」や「ポーラーライトニング」をつけていた。
  6. 2004年8月から9月にかけ機材は韓国との年次軍事演習に派遣された。その三ヶ月後、U-2が集めた情報で地上部隊からB-52に模擬空爆の要請が入ったと第36飛行団の公式記録にある。
One of the B-2s at Andersen Air Force Base. Air Force photo
  1. これと違い、BAADは世界規模での示威行動が目的だ。ただし太平洋地区で脅威可能性が最大になっている。
  2. ペンタゴンは爆撃機を中東に定期的に派遣し、イラン核開発への不快感を示していた。ロシアがウクライナのクリミア地方を併合した2014年2月にはB-52派遣が拡大されヨーロッパでの演習を増強している。
  3. だが今回の派遣から空軍が太平洋を最重視しているのは明らかだ。8月10日の報道会見でディビッド・ゴールドファイン空軍参謀総長は中東や中央アジアと状況が違うと強調した。
  4. B-52やB-1は中東では対イスラム国などを相手にわずかのミッションしか実行していない。大型爆撃機は通常は国家規模の敵勢力への空爆の必要が生じるまで待機している。
  5. 対照的に太平洋地区の最高司令部は北朝鮮の挑発に加え中国の野望に直面している。2016年だけで平壌はミサイル10発以上を試射し、核弾頭搭載能力がついたと言われる。
  6. 7月には中国がH-6K爆撃機一機を紛糾中のスカーボロ礁上空に飛ばしている。同月に国連仲裁法廷が中国艦船がフィリピン漁船による同海域立ち入りを力で封じ込めているのは不法との裁定が出ている。
  7. 中国の海上警察がスカーボロはじめ小規模島しょ地帯への外国艦船の活動を封じ、北京の主張を強固にしようとしている。中国関係者は米艦船や航空機には地対空ミサイルや弾道ミサイルを配備していると公言している。
One of the B-52s at Andersen Air Force Base. Air Force photo
  1. だが重爆撃機三機種を本土から数千マイル先まで派遣できるのはペンタゴンだけだ。最近の出来事から、これだけの威力を揃えたのは偶然の出来事ではない。
  2. 空中給油機の支援を得て各長距離爆撃機は熱い地点へ到達で切る利点があり、直前発表すればすぐ実施できる。
  3. 空軍は新型ステルス爆撃機、巡航ミサイル他高性能装備を調達を希望して議会へ要求中で、長距離ミッションをグアムのような戦略拠点から迅速に事項できる能力を示している。
  4. 2016年早々に空軍は超極秘B-21爆撃機の総費用をめぐり議会と子どものような意見衝突をしている。「空軍上層部はB-21契約の全体金額を開示すれば米国の敵に機密情報が流出すると主張している」とジョン・マケイン上院議員はWar Is Boringで論説を発表している。「ナンセンスだ」
  5. そうなると空軍は各爆撃機を太平洋に集結させて実は議会関係者へ強力なメッセージを送っているのかもしれない。
  6. 8月10日の報道会見ではジェイムズ長官もゴールドファイン対象と横に並び、議会に対して国防予算は年間全額の一括認可とし、「継続決議」と言われる小出し予算を期間限定で認める措置は取らないよう求めた。
  7. ジェイムズはこの措置の場合にB-21開発にどんな影響が出るかを示した。「開発全体が遅れ抑止力に大きな影響が2020年代に発生します」
  8. 空軍が議会を説得できれば、あと15年するとグアムにもう一つの爆撃機が出現するだろう。■

2015年9月13日日曜日

★ここまでわかったLRSB、でもまだ大部分は秘匿のまま





USAF's Secret Bomber: What We Do And Don’t Know

Air Force hints at a solid plan to procure a new stealthy bomber, but details remain shrouded in secrecy
Sep 10, 2015Amy Butler | Aviation Week & Space Technology
総額800億ドルともいわれる新型爆撃機の選定結果発表が近づく中で知らされていることが知らされていないことより少ないのはやむを得ないのだろうか。
  1. 長距離打撃爆撃機(LRSB)と呼ばれる同機に要求される航続距離、ペイロード、最高速度については知らされていない。また同機が軍の他装備とネットワークでどこまで結ばれるのかも知らされていない。エンジンの数も知らされていない。また重量30,000-lb.の大型貫通爆弾を運用できるのかも知らされていない。なお、B-2はこの運用が可能だ。こういった点が設計を決定してくる。つまり同機がどんな外観になるのか誰もわからないままで、わかっているのはステルス性の機体となり、B-2に似た三角翼になるのか、もっと変わった形になるのかもしれないという点だけだ。
  2. わかっているのは新型ステルス技術が応用され、F-35を超えたステルス性能、残存性、生産のしやすさ、保守点検の容易さが実現することだ。また最新鋭の推進力、防御能力、通信技術に加え製造技術でも全米から最良の部分が集められることだ。
  3. 空軍によるブリーフィング(9月1日)では内容が慎重に統制されていたため、結局のところ同機の調達手順でわかったことはごくわずかだ。というよりも空軍が開示したい情報だけだ。関係者からは迅速戦力実現室(RCO)が関与し、通常の調達部門ではないとの説明は出ていた。ただし空軍によるブリーフィングではRCOの活用は従来型の調達部門を低く見ていることではないとの説明があった。鍵となる技術(その内容はまだ公開されていない)の選定、開発、統合のなため必要なのだという。
  4. RCOは2ワシントンの防空体制を向上させることを目的に003年に発足した。RCOでは指揮命令系統も従来と異なり、室長は参謀総長、空軍長官、調達部門長含む委員会の直属となる。ただし委員会を束ねるのは調達トップのケンドール副長官だ。つまり長官官房(OSD)が同機事業に異例の影響力を与えていることになる。
  5. RCOは極秘技術の理解度が高く、迅速に技術を実用化する経験も豊富だ。業務内容は多くが秘匿内容だが、LRSBの統括部門として最適だとブリーフィングで空軍関係者も述べている。業績にはX-37宇宙機がある。同機は極秘ペイロードを宇宙空間にすでに運搬するミッションを実施している。
  6. ただしRCOの指名はひとつ妥協のだったのかもしれない。2010年に次世代爆撃機事業が取り止めになり、ロバート・ゲイツ国防長官(当時)が2011年に秘密メモを配信して始まったのがLRSB事業だ。ゲイツ長官は空軍がKC-135、HH-60Gでともに後継機種選定につまづいているのを不満に思い、イラク・アフガニスタンで情報収集機材の配備が遅れていることにも苛立っていた。新型爆撃機を成功させるためにもこんな結果しか出せない従来の仕組みに頼るのはいやだとRCOが生まれた。OSDが後ろから支えてLRSBのフライアウェイ価格を2010年ドル価格で550百万ドルと設定したのは前例のない話だ。
  7. 空軍はノースロップ・グラマン、ボーイング=ロッキード・マーティンの双方に資金を提供してリスク低減策として推進手段の統合、アンテナ設計を始めさせた。ステルス機では通信アンテナを機外に装着できない。両チームとも初期設計審査段階を終えたか、実施中と見られ、これまで考えられていたより先行している。空軍からは具体的な発表がないが、言わんとするメッセージは明白だ。空軍は新型爆撃機調達の過程は順調で、B-2やF-35の轍は踏まないと言おうとしてる。国防支出で不信感を抱く議会に爆撃機案件を売り込もうというわけだ。
  8. ここまではぼんやりとわかってきたが、LRSBの大きな謎はその機体形状だ。ペンタゴンは一貫して同機を秘密扱いとしてきたが、同じペンタゴン内部に、安上がりな機体でいいのではとの声がある。次世代爆撃機では対照的に高価で高い水準を希求していたが、敵防空網を突破すれば独立して動く発想で、機体は非常に複雑かつリスクが高くなった。LRSBの最終選定発表を控えたペンタゴンは現実に合わせていく必要がある。
  9. 高度に防衛体制が整った目標の攻撃を世界上いかなる場所でも行うためにLRSBは必要だと関係者は言う。ステルス巡航ミサイルでも目標を狙えるが、て防空網施設や地下深くに構築された指揮命令所や核関連施設の破壊は頭の痛い課題だ。これらの攻撃には高度に精密な貫徹兵器が必要だが、打ちっぱなしミサイルでは難しい。また1980年代の技術製品であるB-2も20機弱しかなく、敵の防空体制が比較にならないほど強力になった今では見劣りがする。
  10. 9月1日のブリーフィングで調達業務の一端が垣間見られたが空軍が言うように健全な管理だといえる。最終選考後には経費プラス報奨金方式の契約とし、政府が一部リスクを負担するものの報奨金により契約企業が具体的な成果を上げないのに利益をむさぼることを防ぐ。空軍は初期の5ロットは固定価格制で19機から21機を調達する。うち4ロットは固定価格で打第5ロットは上限価格以内とする。その後第六ロット以降を再交渉する。この方式だと選定に残った企業にはコストダウンのプレッシャーが大きくなる。超過分は自社負担となるためだ。
  11. ただし選考の重点項目は何なのか発表はされていない。
  12. 開発段階ではテスト機材(機数未公表)を通例どおり導入する。通常兵器運用から開始するのは核兵器運用には配線、機体強度が必要となるためだ。ただし空軍としては核兵器の初期作戦能力獲得を遅らせるわけにも行かず、2020年代中ごろを目標に時間をかけて核運用の認証を目指す。このため規模は不明だがLRSBの一部が第一線からはずされ核運用テストにまわされる。
  13. 戦略軍団司令官セシル・ヘイニー海軍大将Adm. Cecil Haneyは核運用型は2030年までにほしいとする。「LRSBには期待している。特に核運用ではLRSBを念頭に置いた運用コンセプトを作成中だ」と語っている。
  14. 選定結果次第で米航空宇宙産業に大きな地殻変動が発生すると見るアナリストが多い中、ノースロップが敗れた場合は企業存続のため大幅なリストラ策で分社にいたるのではないかと見る向きもある。
  15. もっと可能性があるのが、敗退してもペンタゴンの大手受注企業として残ることで、まだ大口案件は残っているからだ。たとえばT-38高速ジェット練習機の後継機調達や新型偵察機の案件がある。「一時的に影響はあるでしょうが、もともと愛国的な企業が多いので敗退した側にも企業経営上は打撃は最小にとどまるでしょう」と見るのはレベッカ・グラント(爆撃機事業を支持するIRIS独立研究所の社長)だ。
  16. ロッキード・マーティンもボーイングも単独で爆撃機事業に手を上げることもできたはずだが、二社が手を結んだのはこれまでのライバルを超えて何とかしてノースロップに勝とうという意向が働いたためだろう。
  17. カリフォーニアで成立した立法措置により新型爆撃機の大部分は同州内で製造されることになる。ノースロップ・グラマンは早速政界に働きかけどちらが受注しても同じ内容の税制優遇策を得られるよう手を回している。同州法案が成立し、パームデールで生産するロッキードが有利になるよう420百万ドルを同州が拠出する内容とわかってノースロップは驚かされた。これだけの規模の優遇策があれば結果は明白だからだ。だが土壇場になってどちらが受注しても同じ条件になることとなり、ノースロップも自社パームデール施設がロッキードから滑走路を挟んだ位置にあるので安心できるようになった。
  18. 落とし穴がないわけではない。空軍は最近やっと同機を10年間運用した場合の費用規模を知ったようだ。議会にはこれまで331億ドルとこの二年間いい続けていた。だがこの積算は二重に間違っていたという。最新の見積もりは584億ドルとしてから417億ドルといい始めた。「まことに遺憾ながら人的ミスで誤った見積もりを発表してしまった。内部で数字を誤ったことと手順面でもミスがあった」とジェイムズ長官が8月24日の記者会見で述べている。「事業管理では外部からのチェックとバランスをはかり、金額を点検しているが、この種類の事業ではよくあること」
  19. この誤りで新型爆撃機に対する疑問が一気に増えている。「『チェックとバランス』で86億ドルも増えるとは。この違いは単なる誤差なのか、あるいは実際の性能に影響が出るのか。そもそも空軍はコスト上昇に備えてりいるのか。開発を始めるためには予算全額を確保する必要があり86億ドルは決して小額ではない。ただし空軍からはこうした疑問への回答はまだない。
  20. ゲイツ長官が決めた単価550百万ドルの生産型での上限は前例がなく、逆に言えば空軍が自信をもっていることのあらわれだ。目標の実現に失敗するぞ、と見る向きもあるが、前出グラントは「正しく管理すれば、それ以下でも実現可能」と見ている。「下手をすれば単価は三倍になるが、それ以下でも実施可能でしょう」
  21. これから10年間の米国核戦力整備で同機が最大規模の事業になりそうだ。核兵器の運用には米政府支出の55%が費やされており、その規模は2,980億ドルにのぼる。これはエネルギー省の予算も含み、核体系の維持管理と改修費用も含む、と会計検査院がまとめている。250億ドルがB-52とB-2の性能改修に、350億ドルがオハイオ級潜水艦の後継艦建造に回る。それでもLRSBはこれをはるかにうわまわる420億ドルが10年間に投じられる。
  22. ペンタゴンは爆撃機が必須と考える。議会で反対票を投じそうな動きがあり、ジョン・マケイン議員(共、アリゾナ)(上院軍事委員会委員長)とジャック・リード議員(民、ロード・アイランド)は空軍から出た費用試算の誤りの説明を求めている。そのほかにも異議を唱える向きがあるが、空軍は反論を準備した。RAND研究所が開戦後20日すると「敵陣突破するステルス爆撃機のコストは消耗品のミサイルより安くなり」これが以後30日間続くとの分析結果を出している。
  23. 現時点の爆撃機の機材構成は1950年代設計のB-52が76機、70年代のB-1が66機、80年代のB-2が20機ある。
  24. このうちB-2が防空体制で守りを固める各国へ圧力をかける切り札で、想定はイラン、北朝鮮、ロシア、中国だ。だが機数が足りないと爆撃機推進派が主張する。「B-2は高性能だが、戦闘計画の想定に対して不足している」とグラントは言う。「B-2の規模ではアジア、ヨーロッパ他での緊急事態へは抑止力効果が足りない」とグラントは述べ、新型爆撃機の必要を主張する。さらに設計案の絞込みが遅れていることを憂慮する。「新型爆撃機の生産を数年前からはじめているべきだったのです。遅れるだけリスクがましています」 会計検査院は2015年から20年までにB-52は敵防空網の突破能力を失い、スタンドオフ巡航ミサイルの発射しかできなくなると評価している。
  25. 空軍が選考結果を発表すれば、敗退した側が異議を唱え、数ヶ月にわたる選考手順が審査されることになり、新型機の設計工程が待たされる可能瀬が大いにある。■