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2017年12月31日日曜日

米国の北朝鮮戦略は見直しが必要だ

この主張のとおりなら悪の存在と共存しなければならないのでしょうか。北朝鮮に核兵力維持を認めることが耐えられないというメンタリティでは生きていけなくなります。幸いトランプには米外交政策の特徴の宣教師的な価値観の一環性がないので状況に応じうまく対応していくかもしれません。ただし北朝鮮核兵器の流出は困るので同国は実質上封じ込められたままになると思いますが、いつ我慢できずに暴れだすかもしれません。その場合、都度攻撃を受けるのであれば、準戦争状態が長く続くことになりますね。国連による飛行禁止区域措置や海上通行禁止措置も可能でしょうが、必ず抜け道を見つけるでしょう。日本としては鬱陶しい状況ではありますが、ソ連の核兵器脅威を受け止めざるを得なかった米国の60年代のように冷戦のメンタリティが必要となりそうですね。


Explained: Why America’s North Korea Strategy Is Failing

米国の対北朝鮮戦略が失速している理由
December 26, 2017

国の北朝鮮戦略は失速しかけている。
トランプ政権のいう「最大限の圧力」となる強硬な経済措置と軍事姿勢をもってしても北朝鮮のミサイル、核戦力整備に減速の兆しがない。トランプが大統領就任した2017年1月以降に平壌はICBM二種類、中距離弾道ミサイルでは一種類、固体燃料式の潜水艦搭載用ミサイル一種類の発射テストに成功したのに加え最大規模の核装置の爆発にも成功した。トランプ政権は一貫して北朝鮮には圧力で対抗するとしながら圧力の結果で北の行動に変化があるかは検証していない。
米国の対北朝鮮戦略での問題点は非現実的な目的が設定されていることだ。ワシントンが求めるのは完全かつ実証可能で不可逆的な核戦力解体であり、平壌がその目的に近づいて初めて交渉に応じるとする。
現時点の米戦略では非現実的目標を追い求めつつ攻撃姿勢を隠さないことを政策の前提にしているのでワシントンは金正恩を屈服させ核保有がとてつもなく高負担で割が合わなくさセル必要がある。ただし金正恩が核兵器を自らの権力基盤存続に必要ととらえているため、核兵器保有コストがいかに高くても甘受するつもりなのは明白だ。戦争一歩手前のまま、北朝鮮にこれ以上の負担をさせ金正恩に核放棄を迫るのは実質的に不可能になっている。核兵器保有は金正恩の頭の中では生死がかかった問題になっているからだ。
トランプ政権の新制裁措置で新兵器開発は減速をせまられるし、現行兵器の製造も同様に減速するが、この方向性では非核化目標に近づかない。圧力を増やすことは金正恩に核放棄を求めるためだが逆に核兵器への執着を強める結果になる。さらに北朝鮮の核兵力はまだ小規模で早期警戒体制や指揮命令系統が貧弱なため、金正恩は武力衝突の初期段階で核兵器投入をためらわず攻撃的な姿勢を示しそうだ。第二次攻撃能力がない北朝鮮にとって米攻撃を食い止める最善策は核兵器投入をちらつかせることで米国による政権崩壊が現実にならないようにすることである。
ワシントンは非核化という達成不可能な目標は脇に置いて、かわりに北朝鮮を核先制攻撃に踏み込ませない抑止を中心とすべきだ。こちらの目標の方が実施上は容易だが戦略上はいくつかの理由で賢明だ。
まず、無理強いと違い、抑止効果の方は防衛的性格が強く現状体制の維持に中心をおくため無理やり変化を求めるより実施は楽だ。
二番目に、米国の大目的が北朝鮮の核兵器投入を食い止めることなら、米国は北朝鮮核戦力への予防的軍事行動を強調すべきではない。北朝鮮を無理やり武装解体させるとの脅しは危機の不安定度を助長しかねず、金正恩に「今使わなければ敗ける」と思わせる状況が生まれるため抑止効果で非生産的でとなる。
三番目に非核化目標を放棄すれば米国に柔軟に北朝鮮へ対応できる可能性が特に外交面で生まれる。つまるところ、米国に非核化しか受け入れられないなら平壌にはワシントンとの交渉ができない。

「最大限の圧力」で北朝鮮を非核化するねらいは成功しない。かわりに米国は北朝鮮に核兵器を使わせないことに注力すべきだ。制裁と軍事力は抑止効果をねらう戦略でも有効だが、平壌に非核化を無理強いする政策から離れたほうが賢明な選択だ。■

2017年11月9日木曜日

北朝鮮非核化を断念し封じ込め戦略の採用を勧める考え方


悪の体制でも共存しなければならないのでしょうか。一部で期待するのは軍事力で北朝鮮を崩壊させることですが、米国ではこの封じ込め対策が抑止力の裏付けとともに主張されるようになっていますね。翻って日本ではまだその視点はすくないようですが。戦争がないほうがいいのですが、後の世代に禍根を残しても困りますし、北朝鮮の体制が永遠に続くとも思えませんが、封じ込めとなれば長期を覚悟し陸の国境線は中国だけに任せておけないでしょうし、海上封鎖や臨検となれば海軍力を常時朝鮮半島両岸に配置することになり、日本も参加を求められるでしょう。それにしても米国シンクタンクの人材は厚く色々考えていますね。熟考というか視点がちがいますね。

Getting Real on North Korea
北朝鮮に現実的対応が必要だ


By Daniel DePetris
November 08, 2017

  1. ロナルド・レーガン大統領時代から繰り返された光景だ。国防長官あるいは大統領が非武装地帯を訪問し、分断された朝鮮半島を目の前に双眼鏡で北を覗き、米韓同盟の団結と力は鉄壁と自慢する。米韓両国のつながりは60年にわたり維持されてきた。
  2. トランプ大統領は今回の韓国訪問ではDMZに行かないが、文在寅大統領との会見は重要だ。トランプの手中には北朝鮮の核問題に現実的な対処ができる機会がある。だが核放棄を金正恩に求めるのは断念すべきだ。
  3. 米国の対北朝鮮政策は歴代政権通じ平壌に核兵器開発を断念させるかわりに経済政治上の恩恵を国際社会通じ提供しようとした点で一貫している。ジョージ・H・W・ブッシュ大統領が1991年に韓国国内から戦術核兵器撤去を命じたのは朝鮮半島の非核化をめざす一歩だったが、結果的にこれは効果をあげなかった。
  4. 1994年にはクリントン政権が平壌と直接交渉を試み、重油を提供し、核拡散効果のない軽水炉建設を認めて北朝鮮のプルトニウム炉を閉鎖させる代償に関係正常化を使おうとした。プルトニウム炉はたしかにその後8年間停止されたが、米情報機関はウラニウム濃縮活動を探知し、合意はあっというまに消えた。
  5. ジョージ・W・ブッシュ大統領は5年近くを六か国協議の枠組みに使い合意を迫った。ただし透明性、アクセス、検証の技術問題のため外交が行き詰まりこれも挫折。
    バラク・オバマ大統領も外交を中心にしたが新たに登場した金正恩が合意内容を反故にした。
  6. トランプは過去四代の政権が平壌にあまりにもソフトすぎ米国の利益を最大化すできなかったとみているようだ。前任者が北朝鮮核問題の解決に失敗してきたが問題は解決可能だと繰り返し主張している。
  7. 端的に言えばその見方は間違っている。
  8. この段階で北朝鮮を御せるのは非核化政策そのものが非現実的で金正恩が権力の座についている限り実施不可能と米政権が理解した場合のみだ。北朝鮮は初歩的な第一回地下核実験から核クラブにかれこれ10年も加入している。CIA長官マイク・ポンぺオMike Pompeoの推定では北朝鮮が核弾頭付き弾道ミサイルで米本土を攻撃する能力を入手するまで数か月のところにきている。ワシントンの圧力の有無にかかわらず金正恩が核放棄する可能性は皆無に近い。
  9. そうなるとトランプ政権で実行可能な唯一の選択肢は現実を受け入れることだ。開戦となれば皆が認めるように極めて血なまぐさい展開になるのは必至でこれを避けて抑止と封じ込めをはかることだ。
  10. 抑止力戦略の効果は過去72年間で証明済みだ。数万発の核弾頭を有するソ連の封じ込めに成功した冷戦時の事実からすれば、はるかに少ない弾頭しか保有しない北朝鮮を封じ込めできない理由はない。
  11. 金正恩にはジョセフ・スターリンやニキータ・フルシチョフを思わせるものがあり、常軌を逸した発言や自国民を虐げもしているが、ソ連や中国の過去の指導者同様に自らの権力維持に取りつかれた側面がある。祖父が築いた基盤が崩壊するのは見たくないはずだ。
  12. 米主導の封じ込め抑止戦略では過去9代の大統領が冷戦を通じ70年間堅持した戦略と一面で類似しながら微妙に異なる点がある。
  13. まず平壌と意思疎通を確立確保し、核兵器を米韓さらに日本に向ければ金政権の終焉になると明瞭に理解させる。金正恩がソウルを攻撃しようとすれば、米軍援助部隊が韓国に駆け付ける前に片を付けようとするはずで、米国の同盟国への責務を誤算した場合だろう。
  14. 二番目にトランプ政権はこれまで以上に北朝鮮への外交努力を強化すべきだ。過去と違うのは対話は広範囲の非核化交渉の開始にはつながらない点だ。逆に両陣営の誤解誤算を防ぐために対話を利用する。レッドラインの概念は明瞭に伝えるべきだ。その意味で米朝の軍組織間の通信手段が強化されれば政治面の正常化につながり緊張緩和が訪れる日が将来来ないとは限らない。
  15. 三番目にペンタゴンは米太平洋軍に迅速に北朝鮮の挑発に対応できる海空軍力を配備しつづける必要がある。情報機関同士の関係も中国も含め平壌の軍事技術輸出の動向を監視する体制を強化すべきだ。国連安保理決議の実行に懐疑的になってはいけない。武器密輸や軍民両用技術の輸出を平壌が試み外貨収入を得る動きは封じる必要がある。
  16. 国防部門上層部は現実を反映してこそ米政策の意味が生まれる事実を受け入れるべきだ。抑止は先制攻撃で大規模で悲惨な核戦争にエスカレートするよりはるかに安全かつ効果を上げる選択肢になる。■

Daniel DePetris is a fellow at Defense Priorities.