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2014年9月20日土曜日

ロシア、中国の新型爆撃機開発の現況


西側との対決姿勢を示すロシアが軍事装備の拡充を図っているのは周知のとおりですが、伝統的な長距離航空戦力でも進展が生まれつつあるようです。中国はもっと秘密のベールに覆われていますが、空母と合わせ長距離爆撃機の開発を進めているのは間違いないようです。これに対し米空軍のLRS-Bが本当に開発できるのか、F-35で相当計画が狂っている各国の防空体制が中ロの新型機に対抗できるのか、今行われている投資が2020年代意向の航空戦力図を決定することになるのでしょうね。





Future Bombers Under Study In China And Russia

China may follow Russia in bomber developments
Sep 18, 2014Bill Sweetman and Richard D. Fisher | Aviation Week & Space Technology


Long-Range Plans
ラドゥガKh-101/-102ALCMは全長が大きく、Tu-95の爆弾倉に入りきらず主翼下パイロンに装着する。
VIA INTERNET

米空軍の長距離打撃爆撃機(LRS-B)開発が来年にも本格実施を目指す中、ロシア、中国も次期爆撃機を開発中。このうちロシアのPAK-DA(perspektivnyi aviatsionnyi kompleks dal’ney aviatsii、次期長距離航空システム)は1977年のツボレフTu-160以来となる新型爆撃機、他方、中国は初の国産爆撃機の実現を狙う。
  1. PAK-DAはユナイテッドエアクラフトUnited Aircraft Corp. (UAC) 傘下のツボレフが開発にあたる。ツボレフは第二次世界大戦終結後のロシア長距離爆撃機のほぼすべてを手がけてきた。開発の正式決定は2007年。新型爆撃機が登場するまで既存機種の改修が進められる。

  1. 亜音速全翼機あるいはブレンデッドウィング形式の機体にステルス性能を加えた案が2012年初頭に提出されている。実現すればロシア初の全方位高性能ステルス機となり、1997年就役のB-2と同等の基本性能を手に入れることになる。

  1. PAK-DA製造の最終決定は昨年末で、作業開始は2014年。UACにPAK-DAの設計、製造契約が交付され初飛行は2019年を予定。最終組み立てはUACのカザン Kazan 工場。2023年までに公試を終え、2023年から25年の間に就役、とロシア報道が伝える。エンジンはユナイテッドエンジンUnited Engine CorpのJSCクズネツォフ部門JSC KuznetsovがTu-160搭載のNK-32アフターバーナー付きターボファンを原型に開発する。

  1. それ以上のPAK-DA情報はほとんどないが、ロシア爆撃機部隊の構成やミッション内容から推測は可能だ。
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  1. 現有の長距離爆撃機部隊はTu-160(13機)、Tu-95MS(63機))と減衰中のTu-22Mバックファイヤーで構成。このうちTu-22M3は戦域レベルの陸上攻撃任務で小型だが使い勝手の良いスホイSu-34に切り替え中。

  1. Tu-160近代化改修を2020年までに完了しTu-160Mになるとロシア国防省が2012年に発表。Tu-95も改修を受けてTu-95MSM名称に変更している。ともに大規模な改修で新型レーダーや電子戦装備、計器・データ処理で改良を受けた。機体寿命の延長、エンジンの寿命も長くなった。2010年試算で80億ルーブル(220百万ドル)を2020年まで投入する。NK-32エンジンは2016年までに完成し、PAK-DAのエンジンの基礎となる。

  1. 両型とも長距離空中発射巡航ミサイル(ALCM)を搭載する。ロシアは二型式のALCMを開発中でタクティカルミサイル企業Tactical Missiles Corp.のラドゥガ事業部Raduga divisionが一手にとりくんでいる。このうちKh-555は通常弾頭だが80年代のKh-55核弾頭を改良し、慣性誘導、レーダー地形参照誘導、赤外線誘導を組み合わせる。

  1. これに対し新型で大型のKh-101/102(通常弾頭/核弾頭型)の生産が本格化しており、Tu-160は機体内部に12発、Tu-95MSは主翼下に計8発搭載する。ALCMでは最大で発射時重量は 5,300 lb.と推定。ターボファン動力であるのはKh-55と共通。ロシアの長距離巡航ミサイル在庫は850発。

  1. PAK-DA登場後も改修済み旧型爆撃機は10年ないし15年使用される見込みだ。一方PAK-DAは敵地侵攻任務に投入されるだろう。

  1. 新型爆撃機のエンジンをNK-32原型に開発するとの発表があったこと、ロシア爆撃機は空中給油への依存度が米国より低いことから、機体寸法は大型と推測できる。NK-32は3軸・低バイパス比エンジンでミリタリー推力は31,000-lb、アフターバーナー使用時55,000-lb.。PAK-DA用はアフターバーナーを省き、バイパス比をわずかに上げる。エンジン4発だと重量200トンとなり、B-2およびLRS-Bの推定寸法を上回り兵装搭載量と航続距離が大きくなるだろう。

  1. これに対して中国も新型爆撃機を開発中と伝えられている。人民解放軍空軍 (Plaaf) と海軍航空隊(PLAN-AF)が今でもソ連時代のTu-16を使用し続けているため中国は世界クラスの戦略爆撃機の製造に真剣でないと思われがちだ。Tu-16は中国には1959年から導入され西安航空機 Xian Aircraft Corp. (XAC) が轟炸六型(爆撃機6型、H-6)として製造。ただし改良を加えつつ製造継続していることから長距離空軍力への中国の関心度が推し量られる。

  1. 中国政府、人民解放軍(PLA)双方も今後の爆撃機開発について何も語っていないが、漏れ伝わる情報を総合すると新型爆撃機が開発中なのは明らかだ。H-20の名称で2025年までに登場するとのアジア某国政府の情報もある。

  1. H-20の登場時期は中国が目指す二つの戦略目標と一貫性がある。まず「第一列島線」と呼ぶ日本、台湾、フィリピンを結ぶ線に米国が接近するのを拒否する役目が新型爆撃機に期待できる。二番目に兵力投射の手段となり、中国空母部隊を補完し揚陸能力を整備する海軍を助ける事になる。

  1. これまでも次世代爆撃機の噂は非公式な筋から流れていたが、ノースロップ・グラマンB-2がベルグラードで中国大使館を誤爆した1999年5月が開発開始の契機といわれる。中国がB-2情報をノースロップ・グラマン技術者ノシル・ゴワディア Noshir Gowadia からどれだけ入手したか不明だ。ゴワディアは2011年に軍事機密を中国に渡した罪で刑期32年の有罪判決を受けた。

  1. この新型爆撃機でも西安航空機が主契約企業となっる可能性が高い。ロシア、米国の新型機と同様にH-20も亜音速低探知性の「全翼機」形状となるだろう。
  1. 興味深い情報が人民解放軍の研究部門から出ている。中国報道ではPlaafのWu Guohui大佐(国防大学National Defense University 准教授)がステルス爆撃機が「国家の関心を再度呼び起こし」て「中国は爆撃機が弱体だったが今後は長距離打撃機開発をめざす」と発言しているのだ。
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  1. また同大学の准教授Fu Guangwenは2013年に中国の爆撃機開発の障害はエンジン、素材だという。一方で、新型機は第二列島線のグアム、南シナ海、インドを標的にし、ステルス性で侵入が容易になり、「情報対決」つまりサイバー電子戦に対応し、核・非核両用対応、と発言している。

  1. 新型爆撃機の設計は2008年に開始ずみとの報道が2014年1月にSina.comから出ている。報道では機体は全翼機形式で米西海岸が攻撃目標になる。

  1. 2013年にB-2に酷似した想像図が中国の技術報に出ている。2014年初めにはコウモリの翼形状のラジコン機がテストされている場面が流出している。中国が次世代軍用機の形式を真剣に検討中なのは明らかで、情報漏出は意図的な国内、海外向けだろう。

  1. このうち上記のラジコン機は長距離無人航空機 (UCAV) の想定かもしれず、中国が長距離無人攻撃機を開発している可能性を示す。メディアが大々的に全翼機「利剣」LiJian(瀋陽航空機 南昌Hongdu航空機共同開発)のデビューを2013年11月に報じている。ボーイングX-45Cと形状、寸法が酷似した利剣は両社から今後登場する大型UCAVの魁だろう。ロシア、米国に追随し西安航空機がH-20の無人機版を開発する可能性もある。

  1. また中国は超音速中距離爆撃機にも関心を示しているのが2013年に低視認性双発形状のモデル機が登場したことでうかがえる。実現すれば全長25メートルから30メートルで1950年代のコンヴェアB-58(西側では最大規模の超音速爆撃機)とほぼ同寸。しかし開発が進行中なのか不明で、過去の競作で不採択案なのか、予算がつかなかった案件なのか不詳。

  1. PAK-DAは合衆国内地点を目標とする戦略的野心作だが、中国の新型機が同様の想定とは考えにくい。とはいえ、長距離飛行し生存可能性高い機体で大量のミサイル搭載により中国の近隣地区の敵陸上基地や海軍部隊には大きな脅威になる。超音速ステルス戦闘機J-20の存在も考慮する必要がある。

  1. 一方でPLAはH-6新型の開発と既存各型改修も進めている。ロシアからTu-22M3購入を断られて、H-6の大幅改修に迫られた背景がある。
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  1. H-6Kはロシアが提供した推力26,500-lb.のUEC-サトゥルンD-30KP-2ターボファンを搭載し、1950年代のターボジェットから3割近く出力が増えている一方、高バイパス比 (2.24:1) で燃料消費効率が向上。戦闘行動半径は3,500 km と言われる。機首に新型レドームとし、電子光学式目標捕捉センサーを搭載。グラスコックピットに改装し、主翼下のパイロン6つは射程1,500-2,000-kmのCJ-10/KD-20 対地攻撃巡航ミサイルを搭載する。また精密誘導爆弾も中国国内企業4社が製造中で運用可能だ。

  1. 旧型H-6も改修中。空軍のH-6G三個連隊には新型超音速ラムジェット式YJ-12対艦ミサイルの配備が始まる。射程400 kmとみられる。さらに旧式のH-6MもCJ-10/KD-20 対地巡航ミサイル運用能力を付加されている。先出のアジア某国政府筋によるとPLAにはH-6が130機配備されているが、2020年には180機になるという。つまりH-6Kの生産が今後も続くということだ。

  1. PLA戦略爆撃部隊の将来は空中給油能力の整備に大きく左右される。今年3月から4月にかけてPlaafはイリューシンIl-76MD三機を取得してウクライナでIl-78給油機に改修している。各機には給油用ロシア製ドローグ・ホースシステム3組があり、旧式H-6U給油機(推定24機)は1組搭載で搭載燃料重量も小さいことから大きな進展になる。

  1. 将来は西安Y-20大型輸送機を改造した給油機も登場するだろう。ロシアとの間でワイドボディ輸送機開発の話もあり、この改装版になるかもしれない。
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  1. ただし今後の大型機へ対応するには給油効率を上げる必要があり、中国もフライングブーム給油方式の採用を検討するはずだ。2013年の学会発表として西工大 Northwest Polytechnical Universit yから北斗 Beidou 航法衛星の発信信号に光学システムを組み合わせホース・ドローグあるいはフライングブーム式の空中給油を自動制御する方法が提案されている。■



2012年10月21日日曜日

ロシアの次世代爆撃機名称はPAK-DA・現有長距離航空戦力の状況

Russian's next-generation bomber takes shape

09:00 15 Oct 2012
Source:  via Flightglobal


.ロシア空軍創立100周年式典(今年8月)の席上、空軍司令官ヴィクトル・ボンダレフ中将 Lt Gen Victor Bondarevが新型戦略爆撃機PAK-DAの開発が始まっていると明らかにした。この名称はロシア語で「未来型長距離航空機」を意味し、現有ツボレフTu-160、Tu-95MS、Tu-22M3で構成されるロシアの戦略爆撃部隊の後継機種となる見込みだ。
【政府は全面支援】.同 中将は直近のウラジミール・プーチン大統領との会談内容を紹介し、空軍が調達希望を優先採択してもらえる立場だと確認できたことに満足しているという。大 統領から空軍は希望をなんでも言えば手に入ること、PAK-DAプロジェクトでも大統領が支援することの確約を得ている。「国防省はPAK-DA関連の要 求内容すべてで作業中で、内容が固まれば産業界は同機の技術像を練り上げるだろう。」(ボンダレフ中将) ロシアは「戦略級無人機UAVs」も開発中で、 「第六世代機」のひとつにするといい、ボンダレフによると「知能を埋め込んだ」無人機が第六世代の中心となるという。
【2020年代に登場か】 アナトリ・ジカレフ中将Lt Gen Anatoly Zhikharev(長距離航空軍司令官)はPAK-DAの戦闘テストは2022年開始だという。初期設計は完成しており、納品済みでロシア航空産業は現在、同機の開発に取り組んでいるところだ。
  まだ新型爆撃機関連の情報はわずかしかない。超音速機なのか亜音速機なのか、有人機なのか無人機なのかも不明だ。ただロシアがこのような機体開発に取り組 んでいるのは驚くべきことではない。これまでの歴史をひもとくと最悪の時でさえツボレフ設計局は新しい設計概念や技術の研究を続けていたし、その成果が同 社展示館に行くと極超音速攻撃機、宇宙機、Tu-500大型無人攻撃機などの例で見ることができる。これらはTu-160(ブラジャックジャック)爆撃機 の生産が始まった後に開発されたものだ。
  その他ロシアの科学研究機関としてツアギTsAGI (中央航空流体力学研究所)がPAK-DA設計に技術協力しており、ツアギでは大規模な風洞試験をSova将来型極超音速機(マッハ5飛行可能)で行い、 ロシア以外にもヨーロッパが今後は衣鉢を狙う超音速ビジネスジェット等でも協力をとくにソニックブーム抑制と抗力の削減に重点を置いて行っている。
.【PAK-DAの開発はいつ始まったのか】ロ シア国内報道を総合するとPAK-DA開発は2010年早々に始まっている。初期研究は2007年にさかのぼり、ロシア空軍がツポレフに将来の長距離爆撃 機の想定で技術要求書を手渡したことがきっかけらしい。開発予算は2008年国防予算に計上されており、2009年に国防省からツボレフへ三ヵ年の研究開 発契約が交付され、概念研究調査が開始され、同機の空力特性とシステム構造の具体化をめざした。
  そして本年8月に空軍はPAK-DAの初期設計案を承認し、産業界は同設計を「各種戦術上および技術上の要求内容」にあわせ調整できるようになった。技術 実証機の金属素材削り出し、または試作機の開発は2015年の予想で、量産化は2020年ごろだろう。最初の飛行隊編成は2025年より早まるかもしれな い。ただし、業界筋によると新型爆撃機の生産は現実的には2025年以降で開発サイクルには最低15年から20年必要という。
 .PAK- DのA概念設計案も性能達成目標水準も未公表のまま。空軍はまだ性能要求最終案を出していないのかもしれない。ただ明らかにPAK-DAには核、非核両面 で精密誘導兵器を運用した作戦が期待されている。ロシア国防相がいみじくも言うように新次元の戦闘能力による新しい抑止力になることが期待される。
【搭載兵器開発にも要注目】 新型爆撃機には複合材など新素材もつかわれステルス機として設計される。搭載兵器は同機専用に新設計開発されるだろう。
ロ シア国内で議論されているのが「第二世代極音速兵器」の開発で、これが計画中の新型爆撃機と関連していると思われる。第一世代は現有のオニックスOnix 地上攻撃ミサイルとそのインド版ブラモスBrahMos PJ-10を指す。ただ、この種の兵器の性格上、燃料消費が激しく、抗力がどうしても高くなる。
【現在運用中の戦略爆撃機の現状】  2012年現在、ロシア空軍は実戦配備の大陸間爆撃機を66機運用中で、これ以外に補修中、改装中、訓練用の機材がある。66機はTu-160が11機、 Tu-95MSが55機で、核爆弾200発を配備している。Tu-95MSは近代化改装中で新型長距離亜音速巡航ミサイルの搭載を可能とする。機材は大部 分が80年代90年代製造で飛行時間は比較的少ない。したがって各機が2030年、2040年代にも稼動している可能性がある。そうなるとPAK-DAが 時間通りに運用可能となる段階でTu-95MSやTu-160のミッションとちがう役割を担うことになるかもしれない。ロシア空軍としては探知されにくい 爆撃機により敵領土内深く進攻し、新鋭防空網を突破制圧するミッションを期待しているのだろう。
  ロシアとアメリカの戦略爆撃機では類似性が見られる。B-52HとTu-95MSが大型機で巡航ミサイル多数を搭載し、スタンドオフ攻撃を想定している。 B-2とTu-160は敵防空網を突破する作戦を想定。B-1B とTu-22M3は可変翼超音速爆撃機だ。ただ機材の戦闘投入では相当の変化があり、今日では戦略的よりも戦術的な運用が多くなっている。
【LRS-Bとは異なる機体になるのか】 米 国は長距離打撃爆撃機Long-Range Strike-Bomber (LRS-B)開発に取り組んでいるが、ロシアはそのコピーはしないだろう。むしろ、ロシアはより安価だが戦略抑止力として十分な機能を実現する可能性が 高い。PAK-DA開発予算は国防省内の反対派や他省庁の批判から守られているものの、弾道ミサイル原潜と陸上配備大陸間弾道弾でより効果的で経済的な抑 止手段になり、PAK-DAは不要との批判は根強い。原油価格水準が高止まりであれば、石油収入によりPAK-DAはじめ高額の国防装備調達をまかなえる だろうが、軍・産業界ともに高い期待を実現できるかが課題だ。
【PAK-FAは開発難航】. そのほかの主要航空機開発事業にPAK-FA第五世代戦闘機があるが、技術上の問題を解決していない。発動機と搭載システムに問題があり、サトゥルン 117エンジンが同機用に開発されたが飛行中にフレームアウトする事故が発生している。空軍は改良型129エンジンの開発をメーカーにすでに求めており、 結果がよいとPAK-DAにも搭載の可能性が開ける。
【エンジンが問題】.いずれにせよ発動機が大きな課題で、運用中の爆撃機もクズネツォフ製エンジンの信頼性の低さに悩まされており、その他部品不足もあり稼働率は50-60 %に低迷している。
. ロシアはTu-160のエンジン再生産をしようとしており、改良版NK-32Mエンジンは稼働率が向上し、燃費でも改善があるという。ただ生産型エンジン は2016年以降に装備となる見込みだ。一方で、NK-12ターボプロップエンジンの生産再開は難航しており、Tu-95の発動機である同エンジンの入手 に困難があるため、かわりにイヴェチェンコ・プログレスD-27エンジン(アントノフAn-70用に開発)に換装する案が検討されている。
 . 電子装備、エイビオニクスでも状況は同様である。Tu-160機内のシステム各種は故障が多く、20年かけてチップ、コンピュータ基板を交換する作業が続 いてきた。最後の近代化改修が完了すれば各機の耐用年数が延長される。Tu-160の場合は30年になろう。さらに、同型のうち10機を選び第二期近代化 改修が2016年から始まる。また、30機のTu-22Mがこれから8年間で生産されるが、さらに30機をロシア空軍が発注すると思われる。
【戦略爆撃機も地域紛争に投入するロシア運用思想】 グルジアが北オセチア紛争でTu-22M一機を2008年に撃墜している。ロシア空軍が核運用可能な戦略爆撃機を喪失した初の事例となっている。とくにこの事件でロシア軍が地域紛争にも戦略級機材を投入することが明らかになった。
【長距離航空作戦能力は着実に復活中】.ロシア国防省の公式刊行物である「赤い星」によるとTu-160各機の指揮官クラスの年間飛行時間は100時間程度、Tu-95乗員は200時間、Tu-22Mは300時間だという。こういった数字はロシア長距離航空の飛行時間が着実に伸びていることを示している。
ロシア空軍が老朽化進むツポレフ爆撃機各機の運用を何とか維持するのに懸命な状況にあることは疑いない。一方で、ロシア軍産複合体が現行の各機の性能を上回る新型機を必要な機数生産できるのかはまだ不明だ。■