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日曜特集 ハインライン短編「大当たりの年」(心臓の弱い方はご遠慮ください)

  これも冷戦期の作品らしいトーンに満ちたハインラインの短編です。映画のシーンのようなセリフの応酬が続き、シーンが展開していきとんでもない結末へ一気になだれ込むところこそ、ストーリーテラーとしてのハインラインのだいご味でしょう。翻訳がそれに追いついているかが問われます。 この作品から 統計学に 興味を覚えたのを覚えています。高校生のことでした。原作は1952年発表です。 ポ ティファー・ブリーンは最初、服を脱いでいる娘に気づかなかった。彼女はわずか10フィート先のバス停に立っていた。ブリーンはバス停横のドラッグストアのブースに座っており、若い女性との間には板ガラスと時折通る歩行者しかなかった。それでも彼は、娘が脱ぎ始めても顔を上げなかった。彼の目の前にはロサンゼルス・タイムズが立てかけてあり、横には未開封のヘラルド・エクスプレスとデイリー・ニュースがあった。新聞を注意深く読んでいたが、見出し記事には一瞥しただけで、テキサス州ブラウンズビルの最高気温と最低気温を記録し、立派な黒いノートに記入した。同じようにニューヨーク取引所の優良株3種と2種類の犬の終値と株式総数も記録した。彼が記録したものは、ミス・ナショナル・カッテージ・チーズ・ウィークが、生涯ベジタリアンであったことを証明できる男性と結婚し、12人の子供をもうけるつもりであることを発表した広報リリース、状況証拠はあるがありそうもない空飛ぶ円盤の報告、南カリフォーニア全土に雨乞いを呼びかける呼びかけなど、無関係のものばかりだった。ポティファーは、8歳の伝道師ディッキー・ボトムリー牧師が神こそ真実の存在教会のテント集会で奇跡的に癒やされたカリフォーニア州ワッツの住民3名の名前と住所を書き留め、ヘラルド・エックスに取りかかろうとしていた。立ち上がり、眼鏡をケースに入れ、新聞をたたんでコートの右ポケットに丁寧に入れ、小切手の正確な金額を数てえ25セントを足した。そしてフックからレインコートを取り、腕にかけて外に出た。そのころには、娘はすっかり素肌に近づいていた。ポティファー・ブリーンには、彼女がいい肌を持っているように見えた。にもかかわらず、彼女には上品さがあった。街角の新聞売りは呼び込みをやめて娘を見てニヤニヤしていたし、バスを待っていたらしき男装女装趣味の二人組は彼女に視線を向けていた。通行人は誰も立ち止まらなかった