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2025年6月6日金曜日

米国議会調査局による極超音速ミサイル防衛に関する議会への報告書 (USNI News)―繰り返しになりますが、米議会にはこのような情報提供があるのに対し、日本の議員は週刊誌で議論しているというのはいかがなものでしょうか

 



以下は、2025年5月15日付の米国議会調査局イン・フォーカス・レポート「極超音速ミサイル防衛:議会の課題」である。

報告書より

ミサイル防衛局(MDA)と宇宙開発局(SDA)は現在、極超音速兵器やその他の新たなミサイルの脅威から防衛できるミサイル防衛システムの要素を開発している。これらの要素には、PWSA(Proliferated Warfighter Space Architecture)の追跡層と輸送層、および様々な迎撃ミサイル・プログラムが含まれる。MDAとSDAがこれらのシステムの開発を続ける中で、議会は監視と国防認可、予算への影響を検討する可能性がある。


背景

極超音速兵器は弾道ミサイルと同様に少なくともマッハ5、つまり秒速約1マイルで飛行する。弾道ミサイルと異なり、極超音速兵器は弾道軌道をたどらず、目標に向かう途中で機動することができる。ロシアは2019年12月に最初の極超音速兵器を実戦配備したと伝えられており、中国は2020年には極超音速兵器を実戦配備していた可能性が高い。

 極超音速兵器の機動性と飛行高度の低さは、既存の探知・防衛システムに挑戦する可能性がある。例えば、ほとんどの地上型レーダーは、レーダー探知における視線制限のため、極超音速兵器の飛行後期まで探知することができない。このため、防衛側が迎撃ミサイルを発射し、着弾した兵器を無力化できる時間はごくわずかである。 

 マイク・グリフィン元国防次官(研究・技術担当)は、「極超音速のターゲットは、米国が通常静止軌道上の衛星で追跡しているものより10倍から20倍暗い」と指摘している。

増殖する戦闘用スペース・アーキテクチャ

SDAによると、PWSAは、以前はNational Defense Space Architecture(国防宇宙アーキテクチャ)として知られていたが、「軍事衛星とそれをサポートするエレメントからなる弾力性のあるレイヤーネットワーク」を目指している。その他のレイヤーは、移動式地上資産のターゲティングをサポートするカストディ・レイヤー、宇宙ベースのコマンド・アンド・コントロールを提供するバトル・マネジメント・レイヤー、GPSに依存しないポジショニング、ナビゲーション、タイミングを提供するナビゲーション・レイヤー、深宇宙での潜在的な敵対行為を検知する抑止レイヤー、他のPWSAレイヤーの衛星運用を促進するサポート・レイヤーを含む。 完全に実戦配備されれば、PWSAは全地球をカバーすることになる。

追跡層

SDAは、追跡レイヤーは "極超音速ミサイルシステムを含む高度なミサイル脅威のグローバルな表示、警告、追跡、ターゲティングを提供する "と述べている。このレイヤーの一部として、SDAは広視野(WFOV)衛星のアーキテクチャを開発しており、最終的には全地球をカバーすることになる。SDAは2025年度のTranche 0追跡活動に1億870万ドル、Tranche 1追跡活動(Resilient Missile Warning Missile Tracking - Low Earth Orbitとしても知られる)に17億ドルを要求した。

 SDAの追跡衛星と連携するのは、MDAがSDAと共同で開発中の極超音速・弾道追跡宇宙センサー(HBTSS)(以前は宇宙センサー層と呼ばれていた)である。HBTSSは、WFOVと比較して、より高感度であるが、より限定された(または中視野[MFOV])カバレッジを提供する。このため、WFOVはHBTSSに手がかりとなるデータを提供し、HBTSSは地上配備の迎撃ミサイルにより具体的で質の高いデータを提供することを目的としている。MDAは2025年度にHBTSSに7600万ドルを要求した。2025年3月のMDAと米海軍のテストでは、HBTSSのデータが機動する極超音速目標を「探知、追跡、模擬交戦」できることが実証された。

 宇宙軍の宇宙システム司令部(SSC)は、弾力性のあるミサイル警報ミサイル追跡-中型地球軌道(MEO)と呼ばれる追跡衛星の第3のセットを開発している。SDAによると、MEO衛星は「低緯度のカバレッジと追跡の保護」を追加し、国のミサイル防衛アーキテクチャの弾力性を強化する。宇宙軍は2025年度に、弾力性のあるミサイル警報ミサイル追跡-MEOに8億4630万ドルを要求した。

 2022年、宇宙軍は、SDAのPWSA、MDAのHBTSS、SSCのMEO衛星を含むミサイル警報と追跡の取り組みを調整するために、統合プログラムオフィスを設立した。


文書のダウンロードは こちら


Report to Congress Hypersonic Missile Defense

U.S. Naval Institute Staff

May 20, 2025 1:04 PM

https://news.usni.org/2025/05/20/report-to-congress-hypersonic-missile-defense


2018年9月17日月曜日

極超音速ミサイル迎撃手段の開発始まる---進化するミサイル防衛技術

This Is How the U.S. Military Wants to Shoot Down Russian or Chinese Hypersonic Missiles 米軍は中露の極超音速ミサイルをこう撃墜する

Kill a bullet with a bullet—hypersonic style. 弾丸で弾丸を撃ち落とす---しかも極超音速で

September 15, 2018  


超音速ミサイルが米国のミサイル防衛網を突破する可能性が出てきた中、米ミサイル防衛庁(MDA)が極超音速(マッハ5超)迎撃ロケットを求めるのは当然だ。

MDAは迎撃体で極超音速での高G飛翔制御を可能とする装備開発の研究提案を求めようとしている。

MDAによれば「飛翔制御は最大にしつつ運動エネルギー損失を最小限にして極超音速での飛翔を制御する」方法が必要だとする。

「提案ではマッハ5以上の速度域、高度50キロ以上を想定してもらいたい。迎撃体は1メートル未満あるいは5メートル以上の大きさを想定する」

実に明確に聞こえるが実は違う。極超音速ミサイルが大気圏にマッハ5プラスで突入する様子を想像してもらいたい。(DARPAがマッハ20の飛翔体をテストしたが焼えつきてしまったといわれる)そこにマッハ5プラスの迎撃体が接近する。両者合わせた速度は相当の難題となる。

興味深いことにMDAから「政府はこれまで各種システムに相当の支出を続けてきた」との発言が出ており、飛翔方向を制御するスラスターのことを指しているようだ。

極超音速ミサイルの出現は米国には嬉しくない事態で、現在のミサイル防衛は冷戦時代からつづくICBMや戦域規模の弾道ミサイルへの対応が中心だからだ。ICBMは上昇後は宇宙空間を巡航してから分離した弾頭がマッハ23で大気圏に再突入する。このため宇宙での迎撃が最も望ましい。だが、極超音速ミサイルは大気圏内を高速飛翔しながら回避行動をとり、一定の弾道コースを飛ばないのだ。MDAは2019年度予算で極超音速兵器対策に120.4百万ドルを要求している。

「MDAは現行の迎撃手段では制御可能な極超音速ミサイルへ対応できないと公に認めている。今後は極超音速ミサイルに最適化した手段の開発が必要と認めている」とジェイムズ・アクトン(カーネギー平和財団核政策研究部門)が本誌に語ってくれた。「今回の要望を見ると明らかにその方向に向かっているようだ」「現行の迎撃手段の一部も極超音速飛翔できるだろうが今以上の飛翔制御能力がないと標的を直撃できないのだろう」

ここから生まれる嫌な問題は極超音速迎撃が実現すれば国際軍備管理が不安定となり軍拡競争が生まれるのではないかという点だ。アクトンは迎撃体が非戦略ミサイルを相手にするなら受け入れ可能と見る。「米THAAD(終末高高度広域防衛)は短距離、中距離の弾道ミサイルへ十分効果がある手段であり、こうした弾道ミサイルは同じ距離なら極超音速兵器より高速飛翔する。そうなると極超音速ミサイル相手の局所防衛は十分可能と思うし、それが実現したからと言って不安定化を招くことはないだろう」

ただしICBM相手に極超音速迎撃体を使うと事態は変わる。「広域防衛に極超音速手段を使えば不安定化を招く。ロシアや中国の第二次攻撃能力を危うくするからだ。それでも実施可能だと思う」(アクトン)

一方でDARPAがグ極超音速兵器に対応するライドブレイカーGlide Breaker防衛構想を募集中だ。「グライドブレイカーの目的は超音速、極超音速の脅威全体に有効な米防衛体制を高めることにある」とDARPAが説明している。■

Michael Peck is a contributing writer for the National Interest. He can be found on Twitter andFacebook .