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2026年10月17日土曜日

F-35共同開発のステータスを一度捨てたトルコは同機調達を目指すが、イスラエルが反対姿勢だ―地域内で中堅国の座を争う両国は対立が目立っている。また、F-35に搭載されているイスラエル技術の移転も神経に触っているのだろう

 

米国によるトルコ向けF-35売却をイスラエルの反対が阻止する可能性

Israel’s F-35 Veto: How Tel Aviv’s Opposition Could Block a US Sale to Türkiye

イスラエルは同機が搭載するイスラエル技術の移転に反対し、さらに安全保障上の懸念を理由に、米国によるトルコへのF-35戦闘機売却を阻止しようとしている

地域内で中堅国の座を争う両国は対立が目立つ。また、F-35に搭載されているイスラエル技術の移転も
神経に触っているのだろう

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米国、英国、イタリア、オランダ、トルコ、カナダ、デンマーク、ノルウェー、オーストラリアの9カ国が開発に関与するF-35は、米国および連合パートナーの安全保障を確保する、21世紀の国際協力の新たなモデルだ。米空軍、カレン・J・トマシク上級曹長撮影。出典:DVIDS

イスラエルがF-35売却を阻止する意向

イスラエルのシャレン・ハスケル外務副大臣は、米国がアンカラへF-35ジョイント・ストライク・ファイターの売却を承認したとしても、同機に組み込まれているイスラエル開発の技術のトルコへの移転は許さない、と公に表明した。イスラエルのこの立場は、戦略的な不信感、地域の勢力均衡への懸念、そして機密性の高い軍事技術に対する懸念に起因している。

ドナルド・トランプ大統領がトルコへのF-35売却合意を「非常に真剣に検討している」と示唆した発言について、ハスケル氏はイスラエルは「懸念」を抱いていると述べ、「たとえ彼らが同機を入手したとしても」、イスラエルの技術は合意の一部にはならないと付け加えた。

この立場は、産業参加や輸出規制が、多国籍の兵器プログラムにどのような影響を与えるかを浮き彫りにしている。

イスラエル当局者の発言は、イスラエル製システムを除外するように構成されたワシントンによる売却承認の可能性に直接反応したものである。そのシナリオでは、イスラエルは航空機自体に対して直接的な技術的拒否権を行使できないが、質的な軍事的優位性の考慮事項が依然としてある場合、構成の選択、輸出承認、および地域の軍事バランスに関する評価についての米国の審議には、イスラエルの反対意見が考慮されることになるだろう。

背景:F-35プログラムからトルコを排除

トルコは当初はF-35プログラムのパートナーで、産業参加国として参加し、数十機の受領を予定していた。だがトルコは、ロシア製S-400防空システムを導入したことを受け、米国はこの措置が同盟国の軍事技術の安全保障を損なうものだと指摘し2019年にF-35プログラムから排除された。

その結果、米国はトルコを多国籍のF-35プログラムから排除し、トルコ空軍向けに製造されていた機体の納入を停止した。アンカラは排除措置を不当と主張し、復帰を繰り返し求めてきたが、戦闘機協力に関する米トルコ間協議が再開されたとの報道を受け、この問題は再び浮上している。

排除措置により、トルコはF-35のサプライチェーンからも締め出された。同サプライチェーンは、複数のパートナー国の生産貢献に依存している。特にイスラエル企業は、主翼の外側部品やヘルメットマウント型ディスプレイ技術など、同機の主要なサブシステムを製造している。

こうした産業面での組み込み的な役割は、米国の武器販売に対する正式な拒否権には当たらないが、イスラエル製部品や第三者からの技術移転承認が必要な場合、技術移転を制約する可能性がある。

排除決定以来、アンカラは空軍の維持・近代化に向け代替案を模索してきた。これには、英国がトルコへの販売に合意した「ユーロファイター・タイフーン」など欧州製先進戦闘機の購入や、独自の戦闘機開発プログラムの推進などが含まれる。

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イスラエルのF-35「アディール」2機が編隊飛行を行い、テネシー州空軍州兵のKC-135から給油を受けた後、米国とイスラエルの国旗を掲げている。米国は、戦略的施設の建設において両国が提携する「対外軍事資金(FMF)」プログラムを通じて、F-35プログラムに関して数年にわたりイスラエルと提携してきた。(米空軍写真:エリック・D・アンソニー中尉)

イスラエルの懸念が当てはまる点と当てはまらない点

F-35プログラムは、パートナー諸国間の技術、ソフトウェア、産業参加の共有に依存する多国籍事業である。イスラエルは、るF-35I「アディル」を運用しており、これにはイスラエルが開発した電子戦システム、エイビオニクス、ミッションシステムが組み込まれている以外にイスラエル企業もプログラム全体に部品を供給している。

しかし、報道によると、トランプ大統領は、トルコへのF-35売却については、イスラエル由来の技術を用いず進めることも可能との見解を示しており、これにより、技術的な理由を根拠にイスラエルが移転を直接阻止する能力は制限される。

条件付きとはいえ、イスラエルの反対意見は、正式な拒否権として機能しないものの、米国の政策上の考慮事項と重なる部分があるため、一定の意味を持ち続けている。イスラエルの懸念は、中東における大規模な武器売却を承認する前に米国法で義務付けられている「質的軍事的優位性(QME)」の評価に反映される。

この評価では、提案された移転がイスラエルの通常戦力における軍事的優位性を損なう可能性があるかが検討される。つまり、たとえ航空機の構成からイスラエル固有のシステムが除外されても、イスラエルの反対意見は米国の意思決定に影響を与えたままとなる可能性がある。

米国の政策および立法上の障壁

米国がトルコへのF-35売却を決定した場合、国内の政策および法的条件も乗り越えなければならない。「制裁を通じた米国の敵対者への対抗法(CAATSA)」や毎年の「国防授権法」の規定といった米国法令により、アンカラがS-400取得に起因する未解決の問題を解決していないため、トルコへのF-35移転はこれまで阻止されてきた。

トルコへのF-35売却を真剣に検討する旨を示唆したトランプ大統領発言は、NATOの南側防衛線を強化し、米=トルコ関係を固める戦略的計算を反映している。しかし、議員たちには様々な見解が示されており、戦略的連携や安全保障上の約束に関する明確な保証がないまま、トルコが西側の先端軍事技術へのアクセスを拡大することに多くの議員が依然として慎重な姿勢を示したままだ。

地域安全保障への影響

イスラエルがトルコへのF-35売却の可能性に公然と反対していることは、両国間の根深い戦略的不信を反映している。地政学的競争、シリアやガザをめぐる政策の相違、そして地域的野心の対立が協力関係にひずみをもたらしており、過去10年間で両国の外交関係は著しく悪化している。

イスラエルは、自国の安全保障姿勢に敵対するグループに対するトルコの支援を根本的な戦略的リスクと見なしており、機密技術へのアクセスを制限するよう主張しているのは、潜在的な地域上の敵対勢力に対して質的な優位性を維持するという同国のドクトリンに沿っている。

今後の展開

F-35の運用で必要となる技術移転を阻止するというイスラエルの意思表明は、トルコへのF-35販売や同国をF-35プログラムに再統合しようとするあらゆる取り組みにとって、重大な障害となる。これは、産業参加や同盟国としての技術権が、武器輸出の決定で政治的な影響力と結びつく姿を浮き彫りにしている。

ワシントンにとっての重要な課題は、S-400をめぐるトルコの公約が解決できるかどうか、議会が売却提案にどう反応するか、そして具体的な安全措置や代替案を通じてイスラエルの懸念に対処できるかどうかである。

その広範な影響は、F-35を超えて及ぶ。第5世代戦闘機が空軍力と同盟間の相互運用性の中心となる中、アクセスや技術共有をめぐる紛争は、多国間防衛協力の未来を形作る上で、政治連携、信頼、そして戦略的優先事項の共有が、純粋な能力と同様に極めて重要であることを浮き彫りにしている。■


2026年8月4日火曜日

トルコの第5世代戦闘機「カーン」がタキシング試験を開始

 TAI kaan on runway

提供:トルコ航空宇宙産業(TAI)

トルコの「カーン」戦闘機がタキシング試験を開始

Turkish Aerospace Industries' Kaan Fighter Jet Begins Taxi Trials


https://aviationweek.com/defense/aircraft-propulsion/turkish-aerospace-industries-kaan-fighter-jet-begins-taxi-trials


トルコ航空宇宙産業(TAI)が、戦闘機「カーン」Kaanの最初の完全実物大プロトタイプでタキシング試験を開始した。

7月31日に公開された静止画と動画には、初飛行を控えた、ほぼ完成状態の同機が、アンカラ近郊にあるTAI施設の滑走路をタキシングする様子が映し出されている。動画では、同機が試験を行う様子が確認できる。一部フェアリングが欠けており、特定のカバーはまだ取り付けられていない。

また、この新たな画像からは、当初は飛行を想定していなかったものの、2024年に2度の飛行を行った「P0」デモ機と比較し、機体設計の変更点を明確に確認することができる。

TAIは機体の2基のジェネラル・エレクトリックF110エンジンに空気を供給するエアインテーク位置をコックピットのさらに後方に再配置し、サイズも拡大した。キャノピーのすぐ前には、アセルサン Aselsan 「カラット(Karat)」赤外線探知・追跡装置(IRST)用の多面体の開口部がある。機首下には、アセルサン社製「トイグン(Toygun)」電気光学照準システム用の別の多面体のフェアリングがあり、こちらはすでに装着されているようだ。また、P0機と比較して、主脚は胴体上で外側に移動され、広いトレッドが確保されている。

TAIのメフメット・デミログル Mehmet Demiroglu CEOはファーンボロ航空ショーで、同機のタキシング試験が開始されたと明らかにしていたが、映像を公開するには政府の承認を待たなければならなかった。初飛行の時期には言及しなかったが、本誌に対し、サプライチェーンの遅延がスケジュールを妨げていると語った。P2と呼ばれる2機目の完全な実機プロトタイプ「カーン」も組み立ての最終段階にあり、P1に続いて飛行を行う予定だ。

トルコ空軍は、この双発・34メートルトンの戦闘機を、今後数年のうちに現行のロッキード・マーティン¥F-16の代替機として導入することを目指しており、最初の約20機のバッチは、今世紀末までにトルコ空軍に配備される予定だ。

TAIはすでに、生産仕様のカーンBlk. 10モデル20機の製造契約を締結しており、トルコ政府は現在、同機に搭載されるF110エンジンを米国政府から調達する手続きを進めている。F110エンジンは「カーン」のBlk. 10およびBlk. 20シリーズに搭載される予定であり、その後のロットでは、TUSAS Engine Industries社とTRMotor社が共同開発中の国産エンジン「TF35000」が採用される見込みだ。■

トニー・オズボーン

ロンドンを拠点とするトニーは、欧州の防衛プログラムを担当している。2012年11月に『エイビエーション・ウィーク』に入社する前は、シェパード・メディア・グループに在籍し、『Rotorhub』誌および『Defence Helicopter』誌の副編集長を務めていた。


2025年12月2日火曜日

トルコのバイラクタル・キジルエルマ無人機が初の空対空ミサイル発射による撃墜に成功(Naval News)

 

バイラクタル・キジルエルマが無人戦闘機で初の空対空戦実証に成功した(Naval News)

2025年11月30日公開

GÖKDOĞAN空対空ミサイルを装備したBayraktar KIZILELMA無人戦闘機(提供:Baykar)


2025年11月30日、トルコのドローンメーカーバイカルBaykarは、自国開発のGÖKDOGAN空対空ミサイルを用いて、バイラクタル・キジルエルマBayraktar KIZILELMA無人戦闘機が空中目標の捕捉・撃破に成功したと発表した。キジルエルマは、トルコ海軍の旗艦TCGアナドルおよび現在建造中の空母に搭載される予定だ。

バイラクタル・キジルエルマは、空対空・空対地・艦載航空任務向けに設計されたトルコ初のジェット推進無人戦闘機である。バイカルが開発した低可視性・高機動プラットフォームとして、有人戦闘機に従来割り当てられていた役割を担いながら、運用コストとリスクの低減を目指す。本機は自律飛行能力、AI搭載ミッションコンピューター、短滑走路・空母運用に最適化された構造を特徴とする。

ターボファンエンジン単発を搭載し、最大離陸重量は約6,000kg。内部・外部兵站に計約1,500kgの兵装を搭載できる。国産AESAレーダー、TOYGUN電光照準システム、安全な長距離データリンクを搭載している。初期構成では高亜音速性能を想定しているが、将来は遷音速域に接近する見込みだ。本機はトルコ製スマート弾薬の幅広い互換性を有し、GÖKDOGAN空対空ミサイルの発射に成功し実機空中目標を撃破するという無人戦闘機としては初の重大な成果を達成した。

関係者によれば、キジルエルマはトルコ海軍旗艦TCGアナドル艦上で航空戦力の中核を成し、バイラクタルTB-3無人攻撃機と共同運用される予定だ。この無人戦闘機は、トルコ海軍が計画中の空母「ムゲム」への配備も予定されている。空母搭載可能な設計と多目的任務遂行能力を備えたキジルエルマは、今後数年間でトルコの分散型海軍・航空戦闘能力の中核となる見込みだ。

バイカル社プレスリリース

バイカルが独自開発したバイラクタル・キジルエルマは、世界の戦闘航空史において前例のない新たな偉業を達成した。

トルコ国産の無人戦闘機は、シノップ沖での試験でアセルサンのムラドAESAレーダーで捕捉した標的機を、トゥビタク・サゲのゴクドガン空対空ミサイルで完全な精度で撃墜した。この試験は、航空史上初めて無人戦闘機がBVR(視界外)空対空ミサイルでジェットエンジン搭載の空中目標を破壊した事例となった。

トルコ初の国産無人戦闘機「バイラクタル・キジルエルマ」は、バイカルが自社資源で開発した機体であり、防空においてゲームチェンジャーとなる道程において、また一つ重要な関門を突破した。シノプ射撃場で行われた今回の試験は、無人戦闘機が空対空ミサイルでジェットエンジン搭載の空中目標を撃墜した世界初の事例となった。

世界初の無人機による空中戦闘能力

世界の無人戦闘機プロジェクトの大半は、主に対地攻撃任務を想定している。これまで対空発射能力を達成した無人プラットフォームは存在しなかったが、バイラクタル・キジルエルマは今回の発射試験により、世界初かつ唯一の対空戦闘能力を実証したプラットフォームとなった。これは航空史に新たな一章を開くものである。

キジルエルマとF-16の編隊飛行

トルコ空軍F-16と編隊飛行するバイラクタル・キジルエルマ(提供:バイカル)

歴史的試験のためメルジフォン第5主要航空基地司令部から離陸した5機のF-16戦闘機が、シノプ上空でバイラクタル・キジルエルマと合流した。バイラクタル・キジルエルマはF-16と編隊飛行し、有人・無人機共同作戦による未来の空中戦闘概念を実証した。一方、バイラクタル・アキンジ無人攻撃機が編隊に随伴し、空からこの歴史的飛行を記録した。

試験シナリオの一環として、ジェットエンジン搭載の高速標的機が放出された。バイラクタル・キジルエルマに統合されたアセルサンのムラドAESAレーダーが検知・追跡した。レーダーが標的を正確に捕捉すると、キジルエルマは翼部の発射装置からTÜBİTAK SAGE開発のゴクドガンBVR(視界外)空対空ミサイルを発射。国産ミサイルはジェット推進の標的を撃墜した。

この試験により、国産無人戦闘機バイラクタル・キジルエルマの空対空攻撃能力も実証された。トルコ航空史上初めて、国産航空機が国産レーダーの誘導で空中の標的に対して国産空対空ミサイルを発射したのである。こうして空対空任務の全工程が、国産技術のみで完結した。

トルコ航空史に新たな章を開いたこの試験は、空中からライブで監視された。空軍司令官ジヤ・ジェマル・カディオウル将軍、戦闘航空軍司令官ラフェト・ダルキラン将軍、アセルサン総支配人アフメト・アキョル、バイカル会長セルチュク・バイラクタルは、メルジフォンから離陸したF-16編隊に搭乗し、コックピットから歴史的な攻撃を監督した。試験を見守った代表団には、TÜBİTAK SAGE研究所所長のケマル・トパロメルとロケサン総支配人のムラト・イキンチも含まれていた。

「先に視認し、先に攻撃する」

この歴史的な実弾試験は、未来の空中戦闘概念がどのように形作られるかを示した。バイラクタルTB2無人攻撃機が対地任務で生み出したゲームチェンジングな影響は、バイラクタル・キジルエルマによって対空任務へも拡大される。既存の戦闘機に比べはるかに低いレーダー反射断面積(RCS)を持つバイラクタル・キジルエルマは、高度な搭載センサーにより、敵機が自機を検知するよりはるかに長い距離から敵機を捕捉できる。この「見られずに見抜き、撃たれずに撃つ」という新たな概念により、バイラクタル・キジルエルマは空中戦で決定的な優位性をもたらすプラットフォームとなる。

バイラクタル・キジルエルマは、重要な任務システム群でも際立っている。これまでに、アセルサンのムラドAESAレーダーや低観測性電光照準システム「トイギュン」など、世界でも限られた国々しか生産していない先進技術をプラットフォームに統合することに成功している。多様な兵装オプションを備えたトルコ国産無人戦闘機は、国産兵装を全て運用可能だ。過去の試験では、バイラクタル・キジルエルマはトルン及びテベル-82兵装による目標への直撃を成功させている。ゴクドガン発射試験により、対地任務だけでなく対空戦闘においてもその能力を実証した。

輸出のリーダー

バイカルは創業以来、全てのプロジェクトを自社資金で遂行し、2003年の無人航空機研究開発開始以降、収益の83%を輸出で生み出している。2023年、バイカルは18億ドルの輸出を達成し、トルコ全産業分野における輸出企業トップ10にランクインした。無人航空機市場の世界的輸出リーダーとして、バイカルは2024年も世界的な成功を継続し、収益の90%を輸出で生み出し、再び18億ドルの輸出額を達成した。

バイカルは2023年と2024年の両年で全産業分野におけるトルコ輸出企業トップ10入りを果たし「輸出チャンピオン賞」を受賞した。防衛産業庁(SSB)とトルコ輸出業者会議所(TIM)のデータによれば、2021年、2022年、2023年、2024年と4年連続で防衛・航空宇宙産業の輸出リーダーだ。2023年にはバイカル単体で業界全体の輸出額の3分の1を占めた。2024年にはトルコ全体の防衛・航空宇宙輸出の4分の1を単独で担い、トルコが無人航空機輸出市場における世界的なリーダーとしての地位を確固たるものにした。世界最大の無人航空機メーカーとして、バイカルは計37カ国と輸出契約を締結している。内訳は「バイラクタルTB2」無人攻撃機が36カ国、「バイラクタル・アキンジ」無人攻撃機が16カ国だ。■

TCGアナドルの飛行甲板に展開するキジルエルマ(提供:トルコ国防省)


Unmanned Fighter Jet Bayraktar KIZILELMA Hits Target in First Air-to-Air Test-Firing


2025年8月1日金曜日

シリアの崩壊が始まった(National Security Journal)—民族宗教が入り乱れた中東でシリアについて日本人が理解に困難を感じるのは当然かも知れませんが、無視していいわけではありません。

 

地域内大国のイスラエルとトルコが暗躍を始めています。地政学は冷酷です。ともすれば内向きな日本の有権者が世界市民としての自覚と責任を感じ始めるのはいつなのでしょうか。

シリアでは新イスラム主義政権下で暴力が加速しており、民族的・宗教的少数派への迫害も激化している。この悲劇は完全に予測可能なものだった。バラク・オバマ政権の最初から警告が批判派から出ていた。ワシントンのスンニ派アラブ過激派への接近と支援が悪影響を及ぼすだろうと。それでも、ジョー・バイデン政権は、バシャール・アル=アサドの世俗政権を打倒するため、その方針を変えなかった。米国の政策立案者の立場からすれば、アサドは2つの許し難い罪を犯した。シリアをイランの最も近い地域同盟国に変貌させ、ウラジーミル・プーチン率いるロシアとの結びつきを強化したことだ。2016年にシリア政府軍がスンニ派主体の反乱軍を撃破し、シリアの主要地域を再掌握する際に、ロシアの空軍力は重要な役割を果たした。

政権の支えと打倒

しかし、テヘランとモスクワがアサド政権を支える能力は、年月を経るにつれ徐々に衰えていった。

特にモスクワからの支援は、クレムリンが主要な戦略的焦点をウクライナ紛争に移すにつれ、信頼性が低下した。バイデン政権の最終年、アメリカ、イスラエル、サウジアラビア、トルコからなる事実上の同盟は、シリア反政府勢力を権力に就かせるための努力を強化した。

その動きは最終的に成功した。2024年12月、アルカイダ系組織だったハヤト・タハリール・アル・シャム(HTS)を率いるスンニ派イスラム主義連合が、アサド政権を打倒した。ワシントンとその同盟国は、2011年からこの目標に向け尽力していたが、その努力は60万人を超える死者や1300万人以上の避難民を伴う内戦を引き起こした。

バイデン政権の当局者や、確立されたメディアの帝国主義支持派の代弁者たちは、反政府勢力の勝利を「抑圧されたシリア人民の解放」と描きいた。2024年12月15日放送のCBS番組「60 Minutes」はこの典型的な例だった。このようなプロパガンダは、最も腐敗し、悪質な権威主義者たちさえも、自由と民主主義の支持者として描写するというワシントンの長く不名誉な伝統を引き継いだものだ。

敵の敵は

HTSが軍事的に勝利するまでは、米国政府は、この運動をテロ組織として指定していた。しかし、米国指導層は、この運動を大々的に美化し、不愉快な過去がまったくなかったかのように、新政権は欧米の界隈で称賛されている。

シリアに関する米国指導者のこのような政策の盲目さは、長年にわたり恥ずべきものである。シリア内戦の初期、一部の米国政策立案者やオピニオンリーダーは、特にオバマ政権時代にアルカイダとその同盟者たちとの協力を公然と提唱していた。例えば、元CIA長官のデビッド・ペトレイアスは、この組織の「より穏健な」一部は米国にとって有用な同盟国となり得るため、彼らに接近すべきだと主張していた。後にバイデン大統領の国家安全保障担当補佐官となるジェイク・サリバンも、同様の考え方を支持していた。

民族宗教国家

これは、ナイーブで破壊的な戦略だった。

シリアは、今も昔も、脆弱な民族・宗教のモザイクのような国だ。アラブ系住民が大部分を占め、内訳はスンニ派(アラブ人口の約 60%)、キリスト教徒(10~12%)、アラウィ派(シーア派の分派、同じく 10~12%)、そしてシーア派、キリスト教、ユダヤ教の要素を融合した宗派であるドルーズ派(約 5%)に分かれている。残りの人口は、主にスンニ派の少数民族で構成され、その大半はクルド人(シリア総人口の約10%)だ。

40年以上にわたり、アサド家はアラウィ派の基盤の強い忠誠心と、その派閥がキリスト教徒、ドルーズ派、その他の小規模な民族・宗教グループとの同盟関係を維持していたため、権力を維持してきた。理性的で合理的な人間なら、数十年にわたり鉄拳でシリアを支配してきたアサド家が、残虐な支配層であったことを否定する者はいないはずだ。しかし、既成の独裁政権の残虐性が、その反対勢力がより優れていることを自動的に意味するわけではない。

与党

その不快な現実が今や明らかになりつつある。

HTS支持派の宣伝の信憑性は、前例のない速度で崩壊している。新政権は、アルカイダ元メンバーの暫定大統領アフメド・アル・シャラーアが率いる政権で、報道によると、多数の政治的反対派をほとんどまたは全くの法的手続きなしに処刑したとされている。また、数千人の(主に民間人)の命を奪う残虐な軍事攻撃を開始した。

重要な段階は2025年3月初旬に始まり、政府軍が地中海沿岸の主要なアラウィ派の故郷に対して攻撃を開始した。攻撃は1,500人以上の犠牲者を出した、ほとんどがアラウィ派だった。4月の政府軍の第二波攻撃はキリスト教徒とドルーズ派を標的とした。このエピソードで数百人の追加の犠牲者が出た。イスラム過激派の同調者たちも、キリスト教徒とドルーズ教徒の民間目標(教会を含む)に対し、テロ爆弾攻撃やその他の攻撃を実施した。

イスラム主義政権は、ベドウィン民兵のスンニ派同盟勢力と協調したと見られる新たな攻撃を初夏に展開した。この戦闘で、1,000人以上(主にドルーズ教徒)が死亡した。イスラエルがその後介入し、シリア政府の目標に対して空爆を実施、表向きは苦境にあるドルーズ教徒を保護するためだった。

アサド政権がテルアビブの怒りの対象ではなくなった今、これまでアサドのスンニ派のライバルたちと協力してきたイスラエル指導層にはダマスカスの新しいイスラム主義の支配者と協力する動機がほとんどない。

シリアは分割されるのか?

シリア国内で顕在化しつつある悲惨な国内情勢に加え、同国の地域的なライバルであるトルコとイスラエルという少なくとも 2 カ国が、傷ついた隣国を犠牲にして領土の奪い合いを行っているようだ。

イスラエルが、同国が数年前に併合したシリア・ゴラン高原に隣接する、主にドルーズ教徒が住むシリア南部のスワイダ県に地上部隊を派遣したことは、テルアビブがシリア南部の広大な地域を事実上支配下に置こうとしていることを示唆している。

トルコも少なくとも同程度に露骨な行動を取っている。トルコ政府(ワシントンの支援を受けて)は、アサド政権の弱体化を背景にクルド人が実現していた自治権の野心を放棄させるよう圧力をかけ、成功を収めた。イスタンブールはシリアの国境沿いの広大な緩衝地帯を事実上支配している。

次に何が起こるか?

米国と主要な中東同盟国がシリアで追求してきた政策は、人道的な面でも地政学的な面でも、恐ろしい失敗となる可能性が出てきた。アサドの退陣は、新たなスンニ派主導政権による宗教的・民族的少数派の迫害を特徴とする、より悪質な独裁体制の扉を開く可能性がある。またアサド退陣はまトルコとイスラエルの危険な拡張主義的野心を刺激する可能性がある。

ワシントンのシリア政策は、またしても小国を破滅に追い込み、不安定な地域でさらに多くの人道的な悲劇を招く条件を創出してしまった。

トランプ大統領は、米国をシリアから撤退させりべきだ。シリアにはさらに問題が迫っているように見え、ワシントンは状況をさらに悪化させないよう努めるべきだ。



The Collapse of Syria Has Begun

By

Ted Galen Carpenter

著者について:テッド・ギャレン・カーペンター

テッド・ゲイルン・カーペンターは、ケイトウ研究所の防衛と外交政策研究のシニアフェローでした。カーペンターは1986年から1995年までカト研究所の外交政策研究ディレクターを務め、1995年から2011年まで防衛と外交政策研究の副所長を務めました。


The Ruins of Syria

The Ruins of Syria. Image Credit: Creative Commons.


2025年5月20日火曜日

シリア上空のトルコ軍VSイスラエル軍ジェット機の異常接近:中東に新たな危機が生まれそう(19fortyfive) — シリアで力の真空が生まれ、拡張主義の両国が進出を狙い対立するのは非常にわかりやすい状況で、これが現実の姿です

 



Freepik


2024年12月のバッシャール・アル=アサド政権退陣とHTS指導者アーメド・アル=シャラーの台頭を受け、シリアでは米国の同盟国であるトルコとイスラエルの間で緊張が高まっている


トルコとイスラエルがシリアで衝突 トルコとイスラエルはともに、何十年にわたりワシントンの最も親密な同盟国リストに名を連ねてきた。


 ワシントンの熱心な支援でNATOは1952年にトルコを加盟させた。米国の指導者たちは、冷戦時代も冷戦後も、トルコを同盟の南東側を守る不可欠な守護者とみなしてきた。米国とイスラエルは、1948年のイスラエル建国以来「特別な関係」にあり、両国の外交政策は数十年にわたって緊密化してきた。 ワシントンはイスラエルに、米国の兵器庫にある多くの高性能兵器へのアクセスを与えてきた。


同盟国間の緊張

しかし、アメリカの2つの緊密な同盟国間の緊張は、特にシリアで直接対立する目的を追求する中で高まっている。2024年12月、ハヤト・タハリール・アル・シャーム(HTS)率いる主にイスラム主義の反体制派連合が、50年間シリアを支配してきたバッシャール・アル=アサドを打倒した。

 『フォーリン・アフェアーズ』誌に寄稿した中東研究者のデイヴィッド・マコフスキーとシモーネ・サンドメアは、HTSの指導者であるアーメド・アル・シャラがシリアを掌握し、外国勢力は彼の行動に舵を切ることを望んでいると指摘する。「隣国であるイスラエルとトルコの2カ国は、この権力の空白を利用しシリアに進出しており、すでに対立を始めている」。 マコフスキーとサンドメアは、「トルコはシリアで支配的な軍事大国として台頭している。2019年以降、HTSはシリア北西部のイドリブを掌握し、何年もの間、アンカラはシリア北部の緩衝地帯をアサド軍から守ることで、間接的にHTSを支援してきた。 今、トルコはシリアでの影響力をさらに高めようとしている」。

 残念なことに、イスラエルもシリアにおける影響力の拡大を望んでおり、アンカラが権力の空白を悪用してアンカラの支配下にあるイスラム過激派の新たな波を支援しないとは信じていない。 マコフスキーとサンドメアは、「イスラエルの指導者たちは、アサド失脚を戦略的な収穫とみなし、シリア南部に緩衝地帯や非公式の勢力圏を確立することで、アサドの失脚を利用しようと躍起になっている」と結論づけている。イスラエルがトルコの存在を特に懸念しているのは、アンカラがシリアに反イスラエルの過激派を匿うように仕向けることを恐れているからだ」。

 5月上旬、トルコとイスラエルの戦闘機がシリア上空で独自に至近距離で作戦を展開し、緊張が燃え上がった。 イスラエル軍機はイスラム過激派勢力を攻撃しようとしていたが、トルコ軍機はイスラエル軍の攻撃を妨害し、その標的を守ろうとしていた。

 シリアの公式通信社SANAは、金曜の砲撃の際、ダマスカス近郊のハラスタ郊外とアル・タール市に対するイスラエルの攻撃で、民間人1人が死亡、数人が負傷したと報じた。 イスラエル放送局はトルコの妨害を確認し「トルコ機が警告信号を送り、イスラエル戦闘機を妨害してシリア領空から退去させている」と報じた。

 トルコ政府高官は、イスラエルがシリアでの活動を拡大していることに不満を募らせており、アンカラはこれを自国の利益と地域の安定に対する脅威と考えている。

 問題の根源は、イスラエルとトルコがともに積極的な拡張主義国であることだ。アメリカの指導者たちは、1967年の戦争後、イスラエルがシリアのゴラン高原を占領し、最終的に併合したとき、ほとんど抗議の声も上げずに傍観していた。

 その後のイスラエル政府は、入植者をヨルダン川西岸に移動させ、パレスチナ住民を強制的に追い出し、イスラエル入植者とイスラエル軍車両専用の道路を建設した。 イスラエルの閣議は、ヨルダン川西岸のかなりの部分を事実上併合するような新たな措置を承認したばかりだ。

 ワシントンもまた、ガザを支配し、パレスチナ住民を追放しようとする同盟国の動きに積極的に協力してきた。 ガザでのイスラエルの拡張主義的な目的は、今もなお続いている。 拡大された "緩衝地帯 "を形成したイスラエルは、現在ガザの50%を支配している。


 トルコからの侵略

トルコは、キプロス、イラク、シリアの3つの隣国に対して、不法な領土獲得のために露骨な侵略行為を行っている。トルコ軍は1974年夏、キプロスに進駐した。表向きは、島の人口の約20%を占め、より大規模なギリシャ系キプロス人社会と暴力的な対立を繰り返していたトルコ系キプロス人を保護するためだった。この時、トルコ軍は北部のトルコ系住民が多い地域の前線基地から外へと拡大し、島中のギリシャ系住民の居住地域を占領した。

 トルコのキプロスに対する侵略は、後にロシアがウクライナで行った行為よりも大胆かつ大規模なものだった。 モスクワは現在、同国の約20%を支配している。アンカラはキプロスの40%を占領し続けている。 北大西洋条約機構(NATO)加盟国がこのような露骨な侵略行為を行ったことに対し、議会では広く怒りの声が上がり、トルコに対する制裁措置が発動された。

 しかし、国防総省や外交官僚、防衛産業界にいるアンカラの支持者たちは、当初からこうした制裁を薄めようと努力していた。 数年のうちに懲罰的措置は薄れ、ワシントンとアンカラの協力関係は正常に戻った。 議会は1978年、トルコへの武器売却の禁輸措置を解除した。

 キプロスは、アンカラが追加的な領土の支配権を得るために軍事力を行使した最も顕著な犠牲者だが、それだけではない。2003年にサダム・フセインのイラク政権が打倒され、イラク北部にクルド人自治区が設立された後、トルコ軍は何十回もの侵攻を行った。

 ドナルド・トランプの第一次政権時にアンカラはシリア北部のクルド人支配地域に対してさらに大規模な行動をとった。トルコ政府はどちらの国の土地に対しても正式な領有権を主張していないが、アンカラは事実上、両隣国との国境を越えた領土の大部分を支配している。

 ワシントンは大きなジレンマに直面している。 シリアにおけるイスラエルとトルコの拡張主義的な目的は真っ向から対立している。 米国の指導者たちにとって、両同盟国の目標を満足させることは不可能に近い。 そして、イスラエルとトルコの軍用機がシリア上空で危険で挑発的な作戦行動を行っているため、状況は非常に悪化する可能性があることに注意が必要だ。■


Turkish vs. Israeli Jets Over Syria: The Middle East Has A New Crisis Brewing

Tensions are escalating between US allies Turkey and Israel in Syria following Bashar al-Assad’s ouster in December 2024 and the rise of HTS leader Ahmed al-Sharaa.

By

Ted Galen Carpenter


https://www.19fortyfive.com/2025/05/turkish-vs-israeli-jets-over-syria-the-middle-east-has-a-new-crisis-brewing/?_gl=1*1f4qqpc*_ga*NzUzMzkwOTUxLjE3NDc0Mzg3NDI.*_up*MQ..


文/テッド・ガレン・カーペンター

テッド・ガレン・カーペンター博士は19FortyFiveのコラムニストであり、ランドルフ・ボーン研究所とリバタリアン研究所のシニアフェローである。 ケイトー研究所での37年間のキャリアにおいて、さまざまな上級政策役職も務めた。 国防、外交政策、市民的自由に関する13冊の著書と1,300本以上の論文がある。 最新刊は『Unreliable Watchdog』: The News Media and U.S. Foreign Policy」(2022年)。