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2025年7月27日日曜日

日本の水陸機動団 司令官への一問一答(Naval News)—日本メディアが軍事問題に距離をおいているため、こうしたナマの声を海外メディアを通じて知るというのが2025年夏の屈折した日本の事情です




Japan's ARDB's Combat Landing Battalion

水陸機動団ARDBは3個連隊を中核に構成されている。上陸作戦を容易にするため、旅団はAAV-7水陸両用強襲車両を装備している。 写真提供:稲葉義泰



2010年代の日本は中国の海洋進出と軍備増強に対応する必要に迫られてきた。特に重要な課題は、東シナ海に浮かぶ日本の南西諸島をいかに守るかである。この課題に対処するため、初期防衛作戦のための専門部隊である水陸両用急速展開旅団(ARDB)が2018年3月に設立された。

 ARDBは陸上自衛隊の部隊で、隊員数は約3000人。 その特徴は、陸上自衛隊がこれまで保有していなかった本格的な水陸両用作戦能力を有していることだ。仮に敵が日本の離島を占領した場合、その奪還には守りの堅い陣地に対する水陸両用攻撃が必要となる。 ARDBは、この目的のための専用部隊として創設された。

 ARDBは、水陸両用急速展開連隊として知られる3個連隊を中核部隊として構成されており、上陸作戦を容易にするため、旅団はAAV-7水陸両用強襲車両を装備している。ARDBはAAV-7の人員輸送型、指揮型、回収型の3種類を運用している。標準的な兵員輸送車は、司令官、運転手、後部乗員が搭乗し、後部コンパートメントに10人の兵員を輸送できる。

 水陸両用作戦ではARDBはAAV-7を海上自衛隊のおおすみ型揚陸艦戦車(LST)に搭載し、ウェルデッキから発進させ陸上攻撃を行う。 この旅団は、海上自衛隊佐世保基地に近い長崎県佐世保市の相浦駐屯地を拠点としている。同駐屯地は、緊急時に輸送艦への迅速な乗船を可能にするために選ばれた。

 ARDBのAAV-7は主に、3つの戦闘上陸中隊からなる戦闘上陸大隊に配属されている。本稿では、戦闘上陸大隊長の佐藤誠一郎中佐に独占インタビューを行った。


AAV-7の特徴と運用上の課題

まず、大隊の主要装備であるAAV-7の特徴と運用について聞いた。 陸上自衛隊はこれまで水陸両用装甲車を運用したことがなく、AAV-7の搭乗員も戦車のオペレーター経験者から選抜された。戦車と水陸両用装甲車の根本的な違いを踏まえ、筆者はAAV-7の運用について見解を求めた。

「装甲部隊では、伝統的に戦車と機動戦闘車(MCV、車輪付き戦車のような装甲車)を運用してきた。これらの車両は、火力、防御力、機動性という3つの主要能力を特徴としていますが、AAV-7は第4の能力である輸送能力を導入している。 兵員を乗せて輸送したり、戦闘工兵を配置して海岸線での障害物除去作戦を行ったりすることができる。 主に戦闘用に設計されたこれまでの装甲車とは異なり、AAV-7は戦闘能力と人員や装備の輸送能力を兼ね備えている点が特徴です」。


Japan's ARDB's Combat Landing BattalionARDBが運用するAAV-7は、左から人員輸送型、指揮型、回収型の3種類。 写真提供:稲葉義泰


水陸両用作戦における訓練の課題

次に、AAV-7を使った訓練での課題について質問した。 佐藤中佐によれば、日本の訓練環境には大きな障害があるという。

「たとえば、カリフォーニアのキャンプ・ペンドルトンで訓練したときは、海からの上陸、内陸への前進、戦闘という一連の作戦を、すべて連続した訓練で行うことができました。しかし日本では、これらすべてのフェーズを一緒に行える場所は1つもない。 海上自衛隊の輸送艦による海上機動訓練、陸上での上陸訓練、内陸での戦闘訓練は、それぞれ別の時間や場所で行わなければなりません。 このような状況下で、いかに部隊の熟練度を維持・向上させるかが、重要な課題のひとつです」。


将来の水陸両用装甲車: AAV-7の限界を超える

現在運用中のAAV-7に代わる次世代水陸両用装甲車についても佐藤中佐に聞いた。 防衛省は三菱重工業(MHI)を中心に国産の新型AAVの開発を進めている。 佐藤中佐は、この新型車両がAAV-7の欠点を解消することに期待を示した。

「何よりもまず、火力の向上を期待しています。 敵が軽装甲車両を装備している場合、現在の火力では不十分です。 AAV-7の武装は40mmグレネードランチャーと12.7mm重機関銃のみ。 さらに、搭載歩兵部隊は対戦車兵器をほとんど携行しておらず、主武装はせいぜい無反動ライフルだけだ。最低でも30ミリ自動砲は必要でしょう。さらに、高速海上での機動性と安定性も重要です。AAV-7は海上で極端なピッチングとローリングを経験し、乗員に深刻な乗り物酔いを引き起こす。 さらに、最大水上速度は時速13キロ程度しかないため、水陸両用攻撃時に船から岸まで移動するのに相当な時間がかかる。これは大きな欠点で、次世代機には高速かつ安定した海上航行が求められると思います」。


基地の能力拡張計画

取材の一環として、筆者はARDBが駐屯する相浦駐屯地を訪れ、第1戦闘上陸中隊が実施するAAV-7の走行訓練を見学した。同駐屯地にはAAV-7専用の訓練コースがあり、水漏れをチェックする検水タンクや、作戦状況を模擬した段差、不整地、坂道などの障害物が設置されている。さらに現在、相浦駐屯地に隣接し新しい桟橋の建設が進められている。この施設が完成すれば、AAV-7が基地から海上自衛隊輸送艦に直接乗船できるようになり、部隊の作戦態勢が強化される。■



Japan’s ARDB Combat Landing Battalion: An interview with its Commander

 

2024年11月18日月曜日

日本の海兵隊がオーストラリアへ定期的にローテーション配備され、日米軍事関係が強化される。日米豪三カ国合意が成立へ(Breaking Defense)

 

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ロイド・オースティン米国防長官は、「そう遠くない将来、日本がAUKUSの第2柱に加わり、まだ名前の挙がっていない特定のプロジェクトに取り組むことを期待している」と明言した


シドニー発-

中国の侵略を背景に、日米豪は今週末、オーストラリアへの日本の海兵隊の定期的な派遣を初めて含む、より緊密な軍事関係で合意した。

 日曜日にダーウィンで行われた記者会見で、以下発表された。

 リチャード・マールズ豪国防相は「本日、日本の水陸機動団がオーストラリアに定期的に派遣されることを発表する」と述べた。

 「今日、我々は演習と訓練を拡大するための次のステップについて議論している。日本がインド太平洋で毎年3カ国の水陸両用訓練を行うと約束したことは、ここオーストラリア北部の(米)海兵隊ダーウィンローテーション部隊を含め、我々の勢いを示すものだ」。 ロイド・オースティン米国防長官は、リチャード・マールズ豪国防相、中谷元・防衛相とともに出席し、「我々はまた、二国間演習を三国間演習へと発展させている」と述べた。

 オースティンにとってオーストラリアはインド太平洋地域4カ国歴訪の最初の訪問地で、12回目にして最後の訪問となる。この後、オースティンはフィリピン、ラオスでのASEAN国防相会議、そしてアメリカの国防長官として初めてフィジーを訪問する。

 今回の合意の一環として、日本は来年、オーストラリアが毎年実施する「タリスマン・セイバー」演習の常連参加国となり、「サザン・ジャッカルー演習」への参加を強化し、より複雑なシナリオに参加することで、三国間の相互運用性を高める。 

 さらに、ダーウィンに常駐している米海兵隊とともに、約600人の日本海兵隊員が定期的にローテーションで参加することが期待されていると、取材に応じた地元報道陣は語った。

 また、オーストラリア軍は来年からオリエント・シールド演習に参加し、従来から行われている日米二国間演習「山桜」「キーン・エッジ」「キーン・ソード」への参加も強化する。 

 昨年は、指揮所演習である山桜に3カ国から7000人が参加した。

 マールズは9月、ペニー・ウォン外相とともに、日本の木原稔、上川陽子両外相とジーロングの町で年次会談を行った際に、ダーウィンに向けて北上する前に、日米同盟の締結を示唆した。マールスはジーロング地区の代表を務めている。

 三国間の声明によると、演習への参加拡大や日本軍の定期的なローテーションに加え、両国は「日米二国間情報分析セル(BIAC)への豪日要員の参加を含め、インド太平洋地域における三国間の情報・監視・偵察協力を優先事項として成長させ続ける」という。

 2年前に開設されたこのセルは、日本の横田基地におかれており、両軍で極秘情報の分析と共有を可能にするために作られた。 

 今回の発表により、オーストラリア、日本、アメリカ三国はより効果的に情報を共有できるようになる。

 そしてオースティンは、「そう遠くない将来、日本がAUKUSの第2柱に加わり、まだ名前が挙がっていないプロジェクトに取り組むことになるだろう」と断言した。 

 同長官は、量子、自律性、共同戦闘機、長距離攻撃など、3カ国が研究開発協力する分野を列挙した。

 オースティンは、「ともに協力できることはたくさんある」と語った。■


Japanese marines to regularly rotate through Australia, as US-AUS-Japan military ties strengthen

US Defense Secretary Lloyd Austin said categorically that "we expect that Japan will join AUKUS Pillar Two at some point in the not-too-distant future to work on specific projects that have yet to be named."

By   Colin Clark

on November 18, 2024 at 1:01 AM



https://breakingdefense.com/2024/11/japanese-marines-to-regularly-rotate-through-australia-as-us-aus-japan-military-ties-strengthen/


2024年5月28日火曜日

自衛隊の水陸機動団も抑止力の一部だ。各国の特殊部隊との共同演習、知見の交換でこれから実力が伸びていくことに期待。

各国の特殊作戦部隊コミュニティに日本も水陸機動団を編成して正式に加われるようになってよかったですね。今後は各種演習や交流を通じ、相乗効果を上げてもらい、立派な抑止力になってもらいましょう。なお、このブログは当方の裁量が効く場所なので、一佐などというおかしな日本語は使わず、大佐と表現していることをご了承ください。Breaking Defense記事からのご紹介です。

japan sofJapan’s Special Operations Group, JGSDF, conducted a field training exercise with the Special Operations Command Australia in September 2023. This photo was posted on social media by the Japanese Self Defense Forces. (SDF)

「(日本の)特殊部隊の強化には、地域的な協力が必要だ」(自衛隊水陸機動団副司令)

国、北朝鮮、ロシアの脅威がインド太平洋全域に広がる中、日本の特殊作戦部隊が地域のパートナーとの絆を深める時期に来ていると、自衛隊幹部が語った。

自衛隊水陸機動団副司令官で、特殊作戦群(JSOG)前司令官の藤村太助大佐は、5月9日のSOFウィークのイベントで、「(日本の)SOFを強化するためには、地域協力がもっと必要だ」と珍しく公の場でコメントした。

また、SOFには敵対勢力を抑止する戦略的な取り組みを支援し、心理戦や防諜など非キネティックな手段を通じて、敵対勢力の心に疑念を抱かせる「メッセージを直接または間接的に相手に伝える」必要があると述べた。

「人間はテクノロジーよりも重要だ。テクノロジーを利用しても、テクノロジーに利用されてはならない:SOFコミュニティは、グローバルな課題に対処するために協力しなければならない」。

藤村の話を聞きながら、米太平洋特殊作戦司令部(SOCPAC)司令官で米海軍特殊部隊のジェロミー・ウィリアムズ少将は、日本の同僚と見解が「完全に一致」していると表明した。

「過去2年間の進展全部に感謝している。機密情報のため詳細には触れないが、戦略的な連携が大幅に向上している」とウィリアムズは語った。特に、「オーストラリアや日本との『キーン・エッジ』演習は、象徴的な出来事だった」。

さらにウィリアムズ少将はSOCPACと自衛隊、その他の連合国やパートナーとの「絶対的に重要な」関係を説明し、「この1年半の間に日本で起こったことに非常に感銘を受けている」と付け加えた。

オーストラリア特殊作戦司令部のポール・ケニー司令官も同席し、日豪SOFの関係が10年の間に、自由落下訓練などの基本的な技能から「さらに複雑な訓練活動」へ発展してきたことを説明した。

「最初の焦点は、国内テロ攻撃への対応を含むテロ対策の経験を共有することでした。東京オリンピックを控え、オーストラリアは他の国々と同様、日本とも経験を共有した。

「しかし、ここ2、3年......両国政府が、特に中国による悪意ある行動や、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)による継続的な行動による混乱によって、この地域で起きている不安定さを認識し、私たちは一斉にアプローチを変更しました。

「日豪両政府は強く連携しています。実際、そちらの首相は、オーストラリアは『準同盟国』だと指摘しました。「正式な同盟関係はありませんが、私たちは非常に緊密に連携しています」。

ケニーはまた、豪州のSOFとJSOG、そして日本の海上自衛隊特殊舟艇部隊(SBU)との緊密な協力関係を強調した。

「私たちは、米国、インド、日本との"クワッド"演習を実施する中で、SBUとの協力関係を高く評価しています」と述べるとともに、マラバール演習(VBSS(Visit, Board, Search and Seize)活動を含む海洋に焦点を当てた演習)を強調した。

米豪のSOF関係者は、活動に不可欠な存在が産業界だと指摘した。

「産業界には創造性を期待しています。そして、非常にエキゾチックな、オーダーメイドの軍事システムの代表としてここにいる何人かの人々に関して、私たちが消耗品と呼ぶような、迅速に調達可能でスケーラブルなシステムで、それらを絶対に補完しなければならない」とウィリアムズは語った。

「インド太平洋地域のパートナーとして、(産業界と)緊密に協力し、可能な限り共有し、協力し合う必要があります。中国のような脅威に直面し、産業基盤や私たちの国から技術を盗む傾向も含めて、私たちは緊密に協力し、まず彼らを凌駕するようなイノベーションを生み出す必要があります」。■

Japan's special forces need more 'regional' cooperation, officer says - Breaking Defense

By   ANDREW WHITE

on May 24, 2024 at 6:51 AM


2021年9月1日水曜日

島しょ部での戦いに特化した水陸機動団は中国も警戒するはず。抑止効果がどこまで期待できるかがカギだろう。

 

 

 

 

75年前に日本軍上陸部隊300名がクイーンズランド海岸に上陸していればオーストラリアの安全保障上で一大危機になっていたはずだ。

 

だが第二次大戦後の世界は大きく変わり、日本の水陸機動団(ARB)は侵攻部隊ではなく、タリズマンセイバー演習に参加しオーストラリア海岸に展開したのだった。

 

第二次大戦の傷ましい経験から戦後日本は6,852もの島しょで構成した国家ながら専用揚陸部隊は2018年まで編成してこなかった。

 

1930年代の日本海軍は海軍陸戦隊を呉、舞鶴、佐世保、横須賀の各海軍基地での養成を開始した。1941年には16個大隊の陸戦隊が整備され、フィリピン、蘭領東インド諸島、米アリューシャン列島のアッツ、キスカ、ニューギニアの上陸戦の先鋒部隊となった。

 

陸戦隊には落下傘部隊や戦車部隊もあったが、基本的に軽歩兵部隊で、米海兵隊と異なり、揚陸用舟艇は機械化していなかった。陸戦隊には降伏した敵兵の虐殺や最後の一兵まで戦う評判があり、1943年のタラワ攻防戦は血なまぐさいものとなった。

 

戦後日本では揚陸部隊は侵攻部隊と位置づけられ、自衛隊と平和憲法の下で不適当な存在とされた。だが自衛隊は遠隔島しょ部での武力衝突を想定し、「海上作戦部隊輸送艦」で敵部隊より先に部隊を送る構想を立てた。

 

日中間の緊張が21世紀に入り顕著となり、尖閣諸島ふくむ島しょ部が日中衝突の舞台になると注目された。

 

実際に中国研究者には人口が多い南西琉球諸島ベルトも中国の領土と堂々と主張する動きがある。中国が遠隔島しょ部を占領する懸念から2018年に水陸機動団が2,100名規模で発足し、佐世保に配備された。

 

その佐世保に海軍陸戦隊が置かれた経緯があるが、今回の新規部隊は陸上自衛隊の西部方面普通科連隊をもとに編成したものだ。

 

ARDBには800名編成の水陸機動連隊が二個あり、三個目が編成中で、発足すれば三千名の規模になる。支援大隊部隊として120mm迫撃砲を備える砲兵部隊、工兵部隊、補給部隊がある。

 

だが支援機能の中心が戦闘揚陸大隊でAAV-P7A1 揚陸装甲車両58台を運用し、艦艇から海岸まで時速8マイルで海上を進む。32トンの同車両は「アムトラック」と呼ばれ、21名を運び.50口径機関銃、手りゅう弾投射機を備える。ただし、アムトラックの装甲は薄く、実際にイラクの米海兵隊では多くの犠牲が発生している。

 

日本はMV-22Bオスプレイ17機も調達し、遠隔地島しょ部へ空からの兵力投入をめざす。オスプレイは高額装備で事故率の高さから日本国内で一般住民の配備反対もある。だが、ヘリコプターの垂直離着陸機能と固定翼機の速度と航続距離を兼ね備えた同機への期待は高く、九州から発進し南西部の最遠島しょ部も活動範囲に入る。

 

海上自衛隊が重要な補給任務を担う。おおすみ級戦車揚陸艦があり、1998年から2003年にかけ建造された14,000トンの艦内に16式高機動戦闘車両などの装甲車両多数を収容できる。また「ウェルデッキ」でLCACエアクッション艇を展開し隊員を上陸させる。おおすみ級は改装を加え、AAV-P7およびMV-22の運用能力を付与する。

 

海上自衛隊には小型LCM十数隻さらに540トン型多用途揚陸舟艇2隻もある。陸上自衛隊も独自に戦車揚陸艦を調達する動きあり、各種LST形式を検討しているが予算が不足している。

 

新規編成の水陸機動団が存在感を示したのが海外演習だ。2018年10月にARDB隊員50名がアムトラック4両で対テロ作戦演習でフィリピンのルソン島に現れた。日本の装甲車両が海外の地に上陸下のは第二次大戦後初のこととなり、まさしくその場所で日本陸軍の戦車部隊が米比連合軍と戦闘を展開したのだった。

 

2019年にはARDBは500名をアイアンフィスト演習でカリフォーニアのキャンプペンドルトンに送り、その後オーストラリアでも上陸作戦を展開した。

 

ただし、ARDBの作戦構想とはどういうものなのか。

 

日本がオーストラリア、フィリピン、米国と懸念事項を共有し、中国が太平洋島しょ部を占拠し、海洋交通を脅かす事態を憂慮しているのは事実だ。だが、現行憲法で日本は同盟国救援で部隊派遣できないことになっている。

 

そのため、ARDBの存在意義は個別具体的だ。日本の南西島しょ部を中国軍が占拠した場合に迅速に奪回することだ。日本の島しょベルト地帯はPLA海軍の作戦に制約を課すことになり、米国、オーストラリアの利益にもかなう。

 

3千名規模の旅団一個ではいかに有能でも大規模交戦の均衡は崩せない。そのためThe Diplomatでミーナ・ポールマンは「島しょ部が中国の手に落ちた段階で日本は敗北したのと同じ」と評している。その意見では日本はむしろ海上兵力や航空戦力の整備に注力し中国の第一列島線到達を防止すべきとする。

 

ただしその意見では揚陸旅団が小規模「グレイゾーン」となる中国の準軍事組織水上民兵や沿岸警備隊への抑止になる点を無視している。迅速かつ確実に島しょ占領部隊に対応できる水陸機動団の能力はこうした事態でリスク計算を根底から変える効果を生む。

 

さらに同旅団の揚陸能力は自衛隊の災害救助活動を遠隔島しょ部まで拡げる効果を発揮するはずだ。

 

当然ながら中国は揚陸部隊を復活させた日本を侵攻の先駆けと捉えるはずだ。だが、現実を見れば、日本は脆弱な遠隔島しょ部への武力侵攻に備え控えめに対応能力を整備しているに過ぎない。■

 

In an Island Battle, Japan’s Marines Have Some Surprises for China

by Sebastien Roblin

August 30, 2021  Topic: Marines  Region: Asia  Blog Brand: The Reboot  Tags: JapanMarinesChinaMilitaryAmphibious Warfare

 

Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.

This article first appeared in July 2019.

Image: Reuters.



2021年5月28日金曜日

主張 日本の南西島しょ部分防衛方針は中国の侵攻に対応できない。南西部を城壁にし、中国の水上進出を阻むべきだ

 

Japan Military Strategy

陸上自衛隊の88式対艦ミサイル Japan GSDF

 

 

本の南西諸島防衛が問題に直面しそうだ。

 

サウスチャイナモーニングポストに菅義偉首相率いる日本政府が防衛支出増額に向かうとの記事が出た。第二次大戦終結後の日本は非公式ながら防衛支出をGDP1パーセント上限に押さえ、軍国主義の再登場を懸念するアジア周辺国をなだめてきた。

 

ところが中国の軍事力増強と東シナ海での横暴な行動から日本もついに平和主義を脱し防衛費増額に向かいだしたわけだ。尖閣諸島含む南西部の防衛が日本の大きな懸念事項だ。岸信夫防衛相は「自衛隊に対応できない地点があってはならない。島しょ部分への部隊派遣は極めて重要」と述べている。

 

これを受けて陸上自衛隊は水陸機動団ARDBを発足させた。番匠幸一郎陸将はRANDでこの誕生を以下説明している。山本朋広防衛副大臣はARDBの主目的を「揚陸作戦を全面的に展開し、遠隔部が不法に占拠された場合に短時間で上陸、奪還、確保すること」と述べた。

 

番匠元陸将発言から「南西部城壁戦略」が見えてくる。島しょ線を日本の主権下に保ち、中国の海洋移動を阻もうというものだ。これ自体は良好に聞こえる。ただし、奪還となると話は別で問題となる用語だ。日本政府の考える戦略方針をそのまま反映している。自衛隊には相手の動きを待って反応させるが、先行した動きは認めない。また作戦はあくまでも第一列島線を舞台とする。日本は攻撃が加えられるまで待つのか。中国の人民解放軍PLAが地上を制圧するのを待ってから自衛隊が動き、奪還するというのだ。

 

これでは受け身の姿勢だ。逆に日本はPLAの攻撃前に島しょ部に部隊を急派し守りを固めるべきではないのか。守備隊が撤退しては敵の攻撃の前に城壁もそのまま守れない。南西島しょ部の壁も同じだ。プロシア陸軍のヘルムート・フォン・モルトケ元帥なら敵攻撃により陥落した島しょ部奪回作戦を聞いて興奮するはずだ。クラウゼビッツ流にモルトケは軍事史上で最高の作戦家にしてドイツ統一の立役者のモルトケは戦時には「戦術的防衛が有利」であり、戦略的攻勢が「より効率が高い方法であり、目標達成の唯一の方法」と述べている。言い換えれば、敵地を占拠あるいは占領してから戦術的に有効な防衛体制をとれば、戦略的な勝利につながるということだ。敵は莫大な犠牲と危険を覚悟で占領地の奪回を迫られる。戦場も実生活と同じだが、いったん手に入れれば我が物、ということだ。

 

海洋戦略も同様だ。前世紀の海洋歴史家ジュリアン・S・コーベットがモルトケの知見を沿海部に応用した。コーベットは戦略的攻勢に戦術的防衛を組み合わせれば限定戦で大効果が出ると主張した。戦闘艦艇は戦わずして敵に現実を受け入れさせることができる。あらゆる点で太平洋での戦闘は限定戦になる。核の時代に戦争を最終段階に持っていこうとするものは皆無だからだ。

 

戦術的防衛を戦略的攻勢と組み合わせることについてコーベットは「即応体制、機動力があること、あるいは有利な状況が該当地区にあり、敵が阻止してくる前にこれを実現することが前提」と述べている。敵が「撃退せんと動いてくれば、こちらの望ましい形で対応し、敵の反抗を遠隔地に限定させ、もって敵を消耗させるべし」としている。

 

コーベットもモルトケも地形や地理上の距離さらに防衛側の主体的な動きで反攻は困難になると主張している。このまま海洋面に応用できるかは疑問もある。コーベットは「目標地周囲が海の場合、敵は海洋全周の支配ができない」とし、守備側が占拠を維持できる可能性をほのめかしている。島しょ部は周囲が海だ。海洋戦略でこの海を壁にし、敵の動きを戦術的防衛で困難にさせればよい。日本はもっと攻撃的な姿勢になるべきだし、こうした過去の戦略大家の言葉を咀嚼すべきだ。ただし、何でもそうだが、すべてが想定通りに進まない。PLA部隊が自衛隊部隊より先に上陸する可能性もある。そうなると自衛隊の水陸両用機動団は敵の銃火の下で奪回を迫られる。南西部島しょ部で日本の主権を守る作戦としてこれは最も難易度が高い。日本ではなく中国が戦術的防衛の優位性を享受する。こうした想定が日本の外交政策や防衛当局に共有されれば、水陸機動団に出撃命令は出せなくなる。したがって積極策を考えるべきだ。

 

城壁に人員を配置するべきだ。しかも早期に。

 

そこで日本はモルトケやコーベットもほめるような攻撃的な思考ができるようになる。そうなればよい。また、番匠元陸将が説明したように、陸上自衛隊は「水陸機動団発足」のプレスリリースの中で「日本の遠隔島しょ部へのいかなる攻撃も撃退する」「統合能力」は十分にあると公言している。これは中国の揚陸作戦を阻止すると聞こえる。だが同時に水陸機動団の主目的は襲撃を受けた遠隔島しょ部で「上陸し、迅速に再奪回し占拠する」こととしている。

 

そこで再奪回ということばだ。

 

ここに中国と日本の考える戦略の違いが見え隠れする。日本の2017年版防衛白書では「中国は東シナ海南シナ海の現状変更を狙い、国際法による現状の秩序では受け入れられない形の主張をしており、日本含む域内諸国のみならず国際社会で懸念を生んでいる」と論じていた。言い換えれば、中国は現状を変えるべく攻勢をかけようとしている。

 

たしかに中国は常に積極的防衛手段をためらわないと公言しており、戦略的目的のためには攻撃作戦や戦術を取るとしている。中国の侵攻による犠牲者が中国の侵攻を生むと非難している。だがこれまで続いてきた域内秩序をひっくり返せば戦略的防衛につながるのは必至だ。実際に中国共産党は戦略的攻勢を主張し、実際に攻撃手段を実行している。党に従属するPLAが非武装あるいは紛糾する地点の占拠を選択する、あるいは他国の奪還を許さないと決定する事態が考えられる。このパターンはすでに南シナ海からヒマラヤまで展開しているではないか。モルトケ=コーベットならこの事態を見て即座に軍事対応につながるものと認識するだろう。

 

では日本はどうか。戦略的防衛に徹するが、国のトップは戦術の選択で悩んでいるように見える。日本に一番正しい道はモルトケだ。水陸機動団は中国部隊が防備を固める前に島しょ部へ移動する必要がある。戦術防衛策の優位性を証明することになろう。

 

そうなると菅首相以下の日本政府はモルトケ、コーベットに学び、南西部城壁を有効にする方法を採択すべきだろう。中国の攻勢に対し、日本にはスパルタ王レオニダスが劣勢な軍を巧みに活用したテルモピュレ峠の事例(紀元前480年)というモデルもある。ペルシア王クセルクセスの使者が剣を下ろせと要求すると、レオニダスはできるもんならやってみろ、と回答した。二千年以上前のこの姿勢が今日にも通じる。■

 

この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmailまでご連絡ください。


Japan’s Backwards Island Defense Strategy Against China Is a Mistake

DR. JAMES HOLMES: THE NAVAL DIPLOMAT

ByJames Holmes

 

 

James Holmes holds the J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College and served on the faculty of the University of Georgia School of Public and International Affairs. A former U.S. Navy surface-warfare officer, he was the last gunnery officer in history to fire a battleship’s big guns in anger, during the first Gulf War in 1991. He earned the Naval War College Foundation Award in 1994, signifying the top graduate in his class. His books include Red Star over the Pacific, an Atlantic Monthly Best Book of 2010 and a fixture on the Navy Professional Reading List. General James Mattis deems him “troublesome.”


2021年2月6日土曜日

海上自衛隊がLHDを新規要求し、水陸機動団の運用能力向上を実現する日が来る? 「空母」にばかり目を向けないで、日本の安全保障に目をそむけず知識情報を強化しましょう。

 


Photo: JMU

 

 

 

 

本の造船メーカーが新型ドック型強襲揚陸艦建造を売り込んでおり、水陸機動団やMV-22の収容能力をアピールしている。

 

ジャパンマリンユナイテッド株式会社(JMU)は2019年の防衛展示会でヘリコプター搭載揚陸ドック艦LHD構想を発表した。

 

排水量19千トンで通水可能ウェルデッキでLCACエアクッション揚陸艇2隻、AAV7A1強襲揚陸車を20両搭載する。全通飛行甲板に5機のヘリコプターまたはティルトローターを同時運用できる。さらに5機を艦内に収納できる。

 

 

乗員は500名とある。戦闘要員を何人収納するかは不明だが、他国が供用中の同程度艦では長距離ミッションで500名、短距離で1,000名というところだ。

 

海上自衛隊にLHD建造の要求はないが、艦艇構成を見れば当然あって良い存在だ。日本は水陸機動団を展開するべくMV-22を17機、AAV7を52両、LCAC7隻を整備する。だが、上陸舟艇、車両、回転翼機には現場まで運搬手段が必要だ。

 

日本にはいずも級大型強襲揚陸艦2隻があるが、軽空母に改装されF-35Bジャンプジェット運用に投入される。これ以外の揚陸艦としてひゅうが級ヘリコプター空母2隻および、おおすみ級揚陸艦LSTが3隻ある。

 

このうちLST3隻にV-22およびAAV7運用能力を付与する改装が進行中だ。だがLSTで収納できる戦闘要員は長距離任務では330名しかないが、水陸機動団は3千名だ。このため旅団全体の移動には輸送艦がもっと必要だ。そこでLHDを取得すれば、海上自衛隊も他国なみの能力を獲得できる。米海軍にはLHDは10隻あり、うち1隻は日本に前方配備されている。オーストラリアには2隻が就役中、韓国は3隻を建造中だ。中国海軍も2019年から独自にLHDを整備している。

 

「日本にLHDが数隻あるだけで水陸機動団が東アジア全域で存在感を増し、太平洋も活動範囲に収められる。太平洋では安全保障の懸念が高まっている」とThe War Zoneでジョー・トレヴィシックが評している。

 

日本にとって喫緊の脅威が北朝鮮であるのは確かで、日本は防衛能力の整備を強化してきた。また中国が南シナ海で大部分を領海と主張する動きに日本は積極的に対抗する動きを示しており、日本の広義の外交政策の目標に資するため日本から遠隔地点でも海上軍事活動の展開能力を整備する可能性がある。

 

この点で水陸機動団の誕生は大きな意味があり、太平洋地区で共同演習に参加することが増えている。2019年10月にはフィリピンで米国もまじえた恒例のカマンダグ演習に加わった。

 

JMUは海上自衛隊がLHDを最低1隻、正式要求してくると見ているとJane’sに述べており、いつでも対応できるよう設計をしているとのことだ。

 

だが揚陸部隊の整備には別の方法もある。「おおすみ級後継艦として小型ドック艦艇を建造するほうが費用対効果は高い。いずも級、ひゅうが級と連携して運用すれば良い」とトレビシックは指摘している。■

 

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Japan’s Marines Could Be Due for a New Amphibious Assault Ship

February 5, 2021  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Reboot  Tags: JapanJSDFChinaMilitaryTechnologyMarines

by David Axe 

 

David Axe served as Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels  War Fix, War Is Boring and Machete Squad.