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2019年1月24日木曜日

旧型機もステルス化する技術があると主張する中国に信憑性は?

なんでも大げさな表現が好きな中国のことですからわれわれはいつもあちらの言い分は割引して聞いているわけですが、中国国内でさえ信憑性を疑われるのはいかがのものでしょう。ただしステルスとは別にメタマテリアルにはいろいろな可能性が生まれそうですので注目しましょう。


Forget China's J-20 or J-31 Stealth Fighters: What If Beijing Could Make Older Fighters Stealth? 

J-20やJ-31ステルス戦闘機以外に旧型機のステルス化技術が中国にあるのか

January 23, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: ChinaJ-20MilitaryTechnologyWorldStealth
年のことSouth China Morning Post が中国が旧型機材もステルスにできる新技術を実験中との記事を伝えた。同紙は「『メタマテリアル』の多層構造で無線信号が表面反射されレーダー映像が極限まで消えることで飛行中の機体は見えなくなる」としていた。
このメタマテリアルを開発したの南東大学のミリ波研究国家重要実験室で現在は瀋陽でテスト中とある。記事ではテスト機材の種類に触れていないが瀋陽航空機はJ-11、J-15の開発元でともに非ステルス機だ。
記事によれば同研究所ではメタマテリアル以外の研究もしており、「ゴースト錯覚装置」に触れていた。これは「機体一部をレーダー上ではプラスチック同様に見せ一機を三機のように写すもの」だという。
あくまでも理論上の話だが非ステルス機がステルスになるのなら中国空軍力には朗報だ。記事では中国のステルス戦闘機J-20は20機しかなく、通常型機材は1,500機とある。だがそのJ-20も実はステルス性能は宣伝どおりではない可能性がある。昨年2月に「中国は初のステルス戦闘機配備を予定を前倒しでつなぎのエンジンを搭載している」と伝えられ、搭載予定のW-15エンジンが飛行中に爆発したため初期機材はWS-10Bを搭載した。J-10やJ-11に搭載のエンジンを改良したが推力重量比の不足でJ-20はアフターバーナー無しでは超音速加速ができず、同機は高速ではステルス性を犠牲にする。
ここから中国の非ステルス機のメタマテリアル導入での問題が見えてくる。ステルス性能とは機体の各種特性で実現するものだ。そのうち4つ大切なのが「形状、形状、形状、素材」だとステルス開発者が述べている。その他の要因は「形跡を消す化学素材、高性能で被探知不可能なセンサー、無線交信装置、特別設計のエンジン空気取り入れ口形状、特殊塗装、冷却装置で熱特徴を消すことだという。メタマテリアルはある程度レーダー吸収効果のある素材(RAM)の役目をするが、それで機体全部がステルスになるのか不明だ。旧型機が低性能エンジンを搭載したままでもメタマテリアルが熱特徴を消せるだろうかと、西安電子科技大学の応用物理研究所長Han Yipingは同紙に述べ、高い信頼性を得るためには性能を犠牲にする必要があると指摘。
Hanはさらにメタマテリアルの欠点も指摘知る。まず、現在のメタマテリアルは一定の無線周波数帯にのみ有効であるという。ただし具体的な数値は述べていない。またメタマテリアルの大量製造は極めて困難であるというが、記事は「中国国内報道dによればメタマテリアル大量製造のめどがついた」としていた。国家重点実験室の発表を疑うのはHan以外の科学界に多い。「共通見解として今回の発表はまだ解決スべき点が多いというところでしょう」
メタマテリアルは中国以外でも開発中だ。Financial Timesによれば「メタマテリアルが2006年に初めて注目されたのはインペリアル・カレッジのジョン・ペンドリ発表の論文で特別な素材を使いハリー・ポッターなみの透明装置の製造が可能と述べたことだ」。その後、各社が民生用途の開発を開始し、そのうちの一社Krymetaは自動車や列車、ヨットに搭載可能なアンテナでインターネット接続が可能な製品を発表した。その他、太陽電池パネルやレーダーを軽量化し無人機への搭載を目指す会社があるとFTは伝えていた。
当然ながらこの技術に各国の軍が関心を寄せている。そのうち米陸軍は「ウェアラブルのカモフラージュでカメレオンのように周囲に溶けこむ」装備を実現したいとする。ここにメタマテリアルを使うのだろうが、どこまで実現可能か不明だ。■
Zachary Keck ( @ZacharyKeck) is a former managing editor of the National Interest.
Image: Creative Commons.

2018年12月13日木曜日

☆第6世代世代機の姿を大胆に想像してみた




The F-22 and F-35 Will Be Obsolete: What Will a Sixth-Generation Fighter Look Like? F-22やF-35を旧式化させる第6世代戦闘機はどんな形になるのか

It could be a game-changer. Here's why. 戦闘の様相を一変させる可能性がある。


by Sebastien Roblin
December 11, 2018  Topic: Security Blog Brand: The Buzz  Tags: 6th Generation FighterMilitaryTechnologyWorldF-22F-35


国が開発し配備した第5世代戦闘機F-35ライトニングなどは今日の安全保障環境の根本要素であるが、数カ国.が第6世代機開発でその先に進もうとしているのも事実だ。

研究開発のペースが進んでいるが実戦体験が背景にあるわけではなく次世代機開発に数十年間が必要との予測がある中で開発に今から着手するに越したことはない。
第6世代機開発の動きは二分でき、まず米国はステルス戦闘機を開発済みであるのに対し、第5世代機開発を断念あるいは飛ばして開発する国があり、時間節約効果とともに一気に次世代技術に飛びつこうとしている。

後者にフランス、ドイツ、英国があり第6世代機FCAS及びテンペストの開発初期段階にある。ロシアはSu-57ステルス機開発は断念し第6世代機構想MiG-41迎撃機に焦点を移そうとしている。日本は国産第6世代F-3ステルス機をめざしていたが海外設計が原型の第5世代機開発に落ち着く可能性を秘めている。

米国には現在プロジェクトが二種類あり、うち空軍の「侵攻制空戦闘機」は超長距離ステルス機でステルス爆撃機の援護機で、海軍にはFX-XXがある。ボーイングロッキード・マーティンノースロップ・グラマンが第6世代機構想をそれぞれ公表している。

三番手がインド、中国で第4、第5世代戦闘機の技術要素の確保をめざしている。

ステルス性能と視界外対応ミサイル
第6世代機は構想こそ多様だが大部分が同様の技術を採用する。第5世代機での重要性能二種類が第6世代機でも重要視される。ステルス性能と長距離ミサイルだ。費用対効果に優れる防空装備にS-400などがあり、空域を広く防衛する。そのためステルス機には「接近阻止領域拒否」の空域に進入し安全な距離から敵防空網を排除する性能が求められる。さらにステルス機は非ステルス機との空中戦で大幅に有利だ。

そのためレーダー断面積を少なくしつつレーダー吸収塗装が必要になるが第6世代機ではこれだけでは不十分だ。高性能センサー技術の前にステルス機体構造も将来脆弱になるとの声がある。またステルス機体構造の進化はエイビオニクスや兵装に比べ遅い。したがってジャミング、電子戦、赤外線による敵防空網への対策が重要性を増していくだろう。

視界外射程ミサイルがカギを握るのは現在同様だ。AIM-120Dのような高性能ミサイルは100マイル先の標的を撃破できるが、相手が機動性に富む戦闘機の場合には命中率を上げるため実際にはもっと接近する必要がある。ただし、ラムジェット推進式高速空対空ミサイルの英メテオや中国のPL-15の出現で今後の戦闘ではより遠距離で敵を狙う必要が生まれるだろう。

大威力を発揮する「X線視界」パイロット用ヘルメット
F-35は高性能ヘルメット搭載画面で先陣を切り、状況認識力を大幅に上げた。主要計器情報を同時に表示しミサイル照準もヘルメット搭載の画面上で行える。(ただしミサイルのくだりは以前に実用化済み技術である)まだ未解決問題が残るもののこうしたヘルメットが将来の戦闘機で標準装備となるのは疑いなく、操縦席計器の一部に代わりそうだ。音声指示インターフェースも戦闘機パイロットの負担軽減につながりそうだ。

機体大型化と高効率エンジンの採用
陸上基地や空母がミサイル攻撃の前に脆弱になっているため、軍用機に従来より長い飛行性能が必要だ。また搭載兵装も増やす必要がある。視程範囲内ドッグファイトは今後は減る予想の空軍が多いため、操縦性より高速域の維持と搭載ペイロード増を重視してよいとの姿勢が見える。
こうした設計上の要求は高性能適応型g変動サイクルエンジンで実現しそうだ。飛行中に作動仕様を変更し高速飛行性能をターボジェットで確保するか、高バイパス比ターボファンで燃料効率を重視した低速飛行か自由変更できるエンジンのことだ。

無人操縦が基本仕様になる
これまで将来の空軍では無人機が中心になるといわれてきた。一方で無人機技術は大幅に進歩し、各国がパイロット不要の戦闘機開発を模索しはじめている。予算やリスク低減もあるが同時に価値観の問題もある。例として米海軍パイロット集団が圧力をかけステルス攻撃型無人機を給油機に変更させている。
第6世代機構想は有人無人双方で運用可能な選択型機材をめざしている。ただし、これでは高額な訓練費用が依然として必要となる欠点が残る。だが選択可能なら完全無人機部隊への移行による急激なショックが回避できるし、短期的には軍指導部もパイロットを犠牲にせずに高リスクミッション実施が可能となる。

陸海空宇宙の友軍とのセンサー融合
F-35の中核的技術革新としてセンサーデータをデータリンク介し友軍と共有する能力がある。これで「全体像」を生成し、ステルス機は敵を回避し友軍部隊は有利な地点に進出しミサイルを遠距離で発射しつつ自らのレーダーを作動させる必要がなくなる。

この戦術を使えば戦力増強効果になるので、センサー融合や協調交戦能力は第6世代機で標準となり、融合機能は衛星や無人機を介しさらに深化するのではないか。

サイバー戦、サイバーセキュリティ
センサー融合、有人操縦選択型とは第6世代機がデータリンクとネットワークに大きく依存することになり、その分ジャミングやネットワーク侵入に脆弱になることを意味する。地上配備の補給網ではF-35にALISがあり、効率面で大きな向上が期待できるが、地上機体もサイバー攻撃の前に脆弱となる。

そのため第6世代機のエイビオニクスは電子攻撃やサイバー攻撃からの回復力が求められる。だが同時に敵に同様の攻撃を与える能力も必要だ。例として空軍はネットワーク侵入でデータパッケージ(ウイルス)を置く能力のテストを繰り返し行っており、海軍が戦闘機に搭載する次世代ジャマーがまさしくこの性能を実現する。

人工知能
.一つ問題なのはセンサー、通信、兵装それぞれシステムが複雑化しヒトの頭脳の処理能力を超えてきたことだ。パイロットには機体操縦の必要がある。第四世代機では後席ウェポンシステム士官が助けてくれた。第5世代ステルス機はすべて単座機だ。

そこで各国の空軍がAI技術に注目し、複雑な操作を任せパイロットに必要な情報を整理したかたちで提示させようとしている。さらにAIと機械学習で無人機の管理が可能となろう。


無人機、無人機大量投入の技術
2016年10月、F/A-18スーパーホーネット2機でパーディックス無人機計103機を運用する試験がチャイナレイクで実施された。AIの助けを借り各無人機はイナゴの大群のように目標地点に殺到した。ひとつひとつは小型で安価だが大群をなすと恐ろしい兵器になることを実証してみせた。


将来戦力の予見で安価かつ消耗品扱いの無人機多数をネットワーク接続で運用すれば敵の防御が困難になるとの意見がある。ただし第6世代戦闘機では、大型かつ高性能無人機をセンサー偵察機や攻撃機あるいはおとりとして運用する可能性の方が高い。

指向性エネルギー兵器
敵無人機が大群で向かってきたら、あるいはミサイル、旧式機でも多数が対抗してくれば高性能ステルス機を圧倒する可能性がある。この対抗策として指向性エネルギー兵器 Directed Energy Weapons (DEWs) があり、電力供給さえ十分ならレーザーや高周波を迅速かつ正確に弾薬制約なしに照射できる。


米空軍ではDEWの機内搭載に3つの形式を想定している。低出力レーザーで敵センサーやシーカーを妨害・破壊する、中程度出力で空対空ミサイルを破壊し、高出力で機体や地上標的の破壊をめざすことだ。
第6世代戦闘機はまだ構想段階であり、費用規模が巨大になる予想の一方で現行の第5世代機の問題解決に忙殺されているのが現状だ。今後必要となる要素技術のレーザー・協調攻撃・無人運用はすでに開発が進んでいるものの、機体搭載にまとめるには相当の課題が残っている。


第6世代機の実用化は最短でも2030年代で、2040年代になってもおかしくない。航空戦の概念がそれまでにさらに変化する可能性もある。



Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.

Image: Screenshot. U.S. Air Force.

2018年1月24日水曜日

ステルス性能さらに引き上げる画期的な技術をBAEシステムズが実証


New Drone Has No Moving Control Surfaces

制御面がまったくない新型無人機

BAE Systems' MAGMA could lead to much stealthier warplanes

BAEシステムズのMAGMAは高性能ステルス機の先駆けになるか

New Drone Has No Moving Control Surfaces
January 11, 2018 David Axe

BAEシステムズはマンチェスター大学と共同で無人実験機の初飛行に成功した。同機には可動式制御面が皆無だ。BAEシステムズが2017年12月発表した。
全幅12フィートのジェット推進無人機はMAGMAの名称でBAEが今後開発する高性能ステルス機につながる。制御面を廃止したことで機体のレーダー探知性が大幅に減る。
ラダー、エルロン他通常の制御面を廃したMAGMAは機体制御に二つの新技術を使う。一つが主翼への排気循環で「機体エンジンの排気を主翼後縁に吹きつけ操縦制御する」とBAEシステムズは説明。
もうひとつが流動推力偏向 fluidic thrust vectoring で「空気を吹き付け偏向させて飛行方向を変える」
「こうした試行は今後の機体につながる」とMAGMA開発をマンチェスター大学でまとめたビル・クロウザーがBAEシステムズの報道資料で述べている。「目指しているのは真の意味で画期的な機体」
初飛行したMAGMAは小型垂直フィン二枚で機体を安定させている。だがフィンでレーダー探知される可能性が大で、暫定的につけているだけだ。「今後の飛行実験で全く新しい飛行制御技術を試し究極の狙いはフィンもなく可動制御面が皆無の機体として飛行させること」とBAEシステムズは説明している。
MAGMAはBAEシステムズが目指す可動制御表面がまったくないUAVとしては二番目の機体だ。2010年に同社はクランフィールド大とデーモン小型無人機を製造している。これも排気を吹き付ける機体制御を目指した。MAGMAはこの流れをくむ次の機体だ。
航空宇宙業界では機体から可動式制御面の廃止が目標で、レーダー断面積RCS縮小に加え、制御面の重量、機構の複雑さ、製造コストを省く効果が期待される。
ボーイングの研究員ジョン・ケリーが可動式制御面がステルス機開発で障害だと発見したのは1975年だった。「制御面の廃止が低RCS設計の課題だ」とケリーが社内論文で書いていた。
ケリーは表面を滑らかにした機体と可動式制御面を有する機体を比較した。表面が滑らかな機体のRCSは0.1平方フィートだったが、可動式制御面付きの機体は5平方フィートだった。

現在のステルス軍用機であるB-2、F-22、F-35は低探知性モードで制御面を管理しレーダー反射を最小限に抑える。MAGMAでBAEシステムズは制御面が少ない、さらに全くない機体の実現を目指し、ステルス効果はさらに増える。■
MAGMA初飛行の様子

2017年5月2日火曜日

★★透明人間に一方的に撃墜された!最新空戦演習に参加した編集者の手記



なるほどマジュンダー編集員は貴重な体験をしましたね。広報用の体験飛行ではなく、空軍関係者向けのフライトでステルスの威力を体で体験したとのことでうらやましい限りです。最近は自衛隊への関心が高まっているのか安易な取材も増えているようですが、航空編集者、防衛編集者が確立されれば自衛隊側も広報の仕方を変えていかざるを得ないでしょうね。その前にF15などと平気で記載する記事の書き方を変えてもらわないとね。


“It's Like Fighting Mr. Invisible”: How I Went to War Against Stealth F-22 Raptors and F-35s (And Lost Bad)「透明人間相手に勝負したみたいだ」ステルスF-22やF-35相手の空戦でコテンパンにやられた編集者の体験


May 1, 2017



  1. 先週水曜日、米空軍のアトランティック・トライデント17演習の訓練飛行に参加を許された。ヴァージニア州のラングレー=ユウスティス共用基地でのことだ。
  2. 演習にはNATO主要三カ国の空軍部隊も参加し、機材はロッキード・マーティンF-22を演習ホストの第一戦闘飛行団が飛ばし、ロッキード・マーティンF-35A共用打撃戦闘機、英空軍のユーロファイター・タイフーン、フランス空軍のダッソー・ラファールが参加した。米空軍からはボーイングF-15Eストライクイーグルが391飛行隊から、ノースロップ・グラマンT-38タロン練習機が第一飛行団所属の71戦闘教育飛行隊から加わり、「レッドエア」として敵役に回った。
  3. ラプター運用部隊とは長い付き合いがあることから第一飛行団司令のピーター・「コーチ」・フェスラー大佐が記者をF-22、F-35、タイフーン、ラファール参加の演習を直接視察する機会を与えてくれた。このため空軍は記者を71戦闘教育隊のノースロップT-38Aに乗せ、アトランティック・トライデント第三週目で演習ピークの様子を見させてくれた。
  4. 最初の仕事はラングレー空軍基地内の病院で臨時の72時間有効飛行診察を受けることだった。内容は何度も経験した海軍のクラスI飛行前医学診察と似ていた。空軍軍医からは検査はクラスI内容を短く手直ししたものと聞いた。クラスIは海軍パイロットに必須だ。結果を受け軍医は飛行許可を出してくれた。
  5. 今回の飛行は空軍が「習熟課程フライト」と呼ぶもので広報向けフライトではなく他の任務につく一般の空軍関係者向けであり、編集者はパイロット同様にT-38A用の生存訓練を受ける必要があり、着水時の生存方法を装備すべてつけた状態で行い、各種通信装置の取り扱い方、またT-38A用の古めかしい飛行装備の装着方法も学んだ。とくに強調されたのがパラシュートとシートへのハーネス装着方法だった。
  6. 空軍教官は記者含むクラス(B-52パイロット一名、E-3パイロット一名、E-3レーダー要員一名)向けにT-38Aの射出脱出方法を細かく説明し緊急脱出方法を教えてくれた。脱出の手順が強調されたのはT-38Aにゼロ/ゼロ射出座席がついていためだ。パラシュート訓練もあり、仮想現実ゴーグルをつけての着地シミュレーションもあった。
  7. 翌日は第71戦闘教育飛行隊に赴き飛行装備を体に合わせた。空軍技官はまずOTS600イマージョンスーツをあてがったが、これは寒い大西洋上空を飛ぶことからの選択とはいえ、きわめて不快な着心地だ。次に難燃性ノーメックス飛行服とブーツをGスーツの上に着た。その後にパラシュート、ハーネス、シートキットを付け、ヘルメットとマスクを調整した。71FTSの技官は記者を飛行可能にすることにかけて完璧なプロとわかった。
  8. 翌朝に71FTSの飛行業務部に出頭しパイロットに会った。印象的な若者でコールサイン「ツァー」で(保安上の理由から空軍から飛行隊の中枢将校の実名は公表しないよう求められている)パイロット養成課程を出て初の任務とのことだった。26歳の彼はクラスのトップ近くの成績で第43戦闘飛行隊に赴任し次の課程のF-22「Bコース」でラプター操縦をフロリダのティンダル基地で学ぶとのことだった。
  9. 71FTSでは若手パイロットが経験豊かなパイロットから学びながら、ラプターの強み弱みを学び、F-22の戦術、運用技法、手順も体得することでツァーや同輩の若手パイロットに有益な学び効果を実現する。一緒に飛ぶのは「スコア」のベテランF-16パイロットと旧知の「ファングス」で、彼とは10年以上前にネリス空軍基地で初めて会い、F-22の運用テストパイロットだった。こうしたベテランから学べばツァーは次の任地でF-22をうまく飛ばすことができるだろう。
  10. 今回のソーティーではT-38A三機がヴォトカ飛行隊として飛ぶ。スコアが編隊リーダーでヴォトカ1、ファングスがヴォトカ2でツァーと編集者がヴォトカ3だ。我々の前にはアグレッサー部隊がMiG役として飛び、後方にもF-15Eが敵役として飛ぶ。F-15Eを投入するのはF-22以下各機相手に現実的な高性能敵機の役をさせるためだ。タロンはロシアのMiG-29フルクラム、F-15Eはスホイのフランカー役だ。
  11. 装備を整え機体に搭乗しストラップを付けるとツァーは急いでチェックリストに目を通し、起動させた。機体は滑走路にタキシングし編隊離陸した。われわれ三機は編隊を組み上昇し演習空域に移動し戦闘を開始した。T-38Aのアグレッサーとしての通常の飛行空域は高度10千フィートから14千フィートだが当日は悪天候のため氷結を避けるため急いで22千フィートへ移動した。
  12. .戦闘になると三機のタロン=フルクラム編隊は青軍機との交戦を目指し機体を制御した。タロンはロシア第四世代機と同様のエイビオニクスも運動性能ももちあわせていないが、有視界範囲内なら戦闘機同様の行動をそれなりに示すことができる。
  13. そこにT-38をアグレッサーに使う意味がある。F-22に対してラプターの知識を使って弱みをどう活用するかを情け容赦なく考える敵になるのだ。有視界範囲に入るとタロンはひどく面倒な存在になった。タイフーンを飛ばす英軍パイロットもタロンが意味のある敵役になったと認めている。
  14. ツァーと記者の乗るヴォトカ3を撃墜したのは英空軍のタイフーンだ。開戦後数分間以内にヴォトカ1と2も撃墜されたが、こちらには攻撃を受けていることもわからなかった。ツァーは回避行動をとったが、タイフーンはF-22と連携して急速かつあっさりとこちらへ向かってきた。不運にも天候は荒れており基地にすぐ戻り燃料を補給するよう指示されたが、通常はT-38は演習中に数回「復活」し空戦に臨むのである。記者の結論は百聞は一見にしかず、であり、ラプターとタイフーンの組み合わせはそこまで強力なのだ。
  15. 「イーグルでもJ-20でも同じように感じたはず」と空軍高官がフライト後に記者に語っているのは目に見えない敵に攻撃されることの感想についてだ。「保安上の理由から説明できませんが、『敵装備を選択』することが可能なのです」
  16. ラングレー基地への帰還の途中で今回の体験には目を開かれる思いがした。記者はラプターやF-35を初期段階から取材してきた。ステルスの威力を頭で理解するのではなく、実際に体験するとはるかによく理解できる。こちらの編隊にはAWACSやGCIから攻撃をうけそうだとの警告は一切なかった。気が付いたら撃墜されていたのだ。目に見えない敵と戦えといわれても無理だ。
  17. ラプターはステルス以前に搭載性能そのものが理由で世界最強の戦闘機だが、F-35も操縦性能は中庸だがレーダー断面積の小ささやセンサー性能ゆえに極めて危険な敵になると記者は理解できた。「双方のパイロットが9ミリ銃を携行してキャノピーを飛行中に開いて決闘するとしたら」と上記の空軍高官が編集者に語った。「透明人間との勝負ですよ」■
Dave Majumdar is the defense editor for The National Interest. You can follow him on Twitter: @davemajumdar.

2016年12月31日土曜日

★F-35に代わる選択肢は可能なのか トランプ発言を考察する



トランプ次期大統領の発言が色々波紋を呼んでいます。それは既成事実そのものが崩れる効果を産みかねないため既得権を手にしている勢力にとっては大変な事態ですが、それだけ今まで本質を議論していなかったことになるのでしょう。何が何でも新型機が必要としてこれまで時間を空費してきましたが、2017年はJSF構想そのものが大きな曲がり角に来そうな予感が出てきました。これを不愉快と捉えるのではなく、必要な性能と価格の関係を見直す機会にしたいものです。やはりトップが変われば大きな変化が生まれそうですね。「軍事情報センター」は本稿を勝手にコピーするのであれば出展を明確にしてくださいね。

The National Interest

The 'Super' Plane That Could Replace the F-35 Stealth Fighter

December 28, 2016


ドナルド・トランプ次期大統領は自身ののツィート(12月22日)で「F-18スーパーホーネットの価格検討」をボーイングに頼んだとし、ロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機の価格があまりにも高すぎるのを理由に上げていた。ワシントンの政治エリート層とジャーナリストから冷笑を呼んでいる。
確かにF/A-18E/F現行型ではF-35の性能に劣るが、業界筋の反応は例によって先入観にとらわれている。トランプ発言を文字通り解釈してはいけない。トランプの真意はスーパーホーネット発達型ならF-35の売りである性能の多くをもっと合理的な価格で実現できるはずと言っているのだ。
米海軍にとっては高性能版スーパーホーネットはF-35Cより安価ながら8割方満足できる選択肢となる。米空軍にとっては要求内容とは程遠く映るが、陸上運用の攻撃戦闘機としてスーパーホーネットがオーストラリア空軍が実証済みだ。残る海兵隊は短距離離陸推力着陸にこだわるあまり、トランプがJSFをキャンセルすれば大変なことになる。三軍は敵地侵攻能力を断念してスタンドオフ攻撃に特化するだろう。F/A-18E/Fは今後もステルス機になる見込みはないからだ。

ステルス性
スーパーホーネットがF-35にどうしても勝てないのはステルスだ。ステルスの実現には設計そのものを最初から変える必要があるからだ。だがボーイングはレーダー断面積を特に前面で減らしたスーパーホーネットをテストしている。またコンフォーマルタンクで3,500ポンドの燃料を追加搭載し、低視認性(LO)の兵装ポッドで2,500ポンドの搭載も構想している。これでF/A-18E/Fのレーダー探知可能性は減りながら、性能は向上するが、スーパーホーネットはF-35並のステルス性能は発揮できない。とはいえ物理的に可能な選択肢ではある。

電子戦能力はどうか
だがロッキード・マーティンや米空軍が公言するようにステルスがすべてなのだろうか。ロシア、中国は低周波レーダーでステルス戦闘機追尾の能力を整備中だ。そうなるとステルス機を支援する電子戦能力の拡充が一層重要になる。「ステルスは少なくともここ十数年は必要だが永遠に続くマジックではない」と海軍作戦部長(当時)のジョナサン・グリナート大将は2014年に米海軍協会年次総会で述べている。「その先が重要だ。そこでステルス性能もそこそこにもちながら敵の無線電磁送信を無効にする機材も必要になる」
米空軍も電子戦の重要性を認識している。ステルス機パイロットの中には高度の防空体制ではステルス機といえども単独侵入は容易ではないと認めるものもある。低周波レーダーの普及でこの傾向は一層強まるだろう。「ステルスとEA(電子攻撃)はシナジー関係にあり、敵の信号探知が重要だ。LOで信号探知を減らし、EAでノイズを上げる」と空軍関係者が語る。「A2/ADの脅威環境では両者を重要視していく」
ノースロップ・グラマンAN/APG-81アクティブ電子スキャンアレイ(AESA)レーダーでF-35には相当の電子戦能力が搭載されている。だがAPG-81はあくまでも高感度電子支援手段のアンテナであり、ジャマーとしても機能するが、Xバンド内の自機が使う周波数の範囲内に限られる。一方でスーパーホーネットおよびEA-18G電子戦機材にもAESAレーダーは搭載されており、レイセオンAN/APG-79もAPG-81と同様の性能がある。海軍はまだAPG-79の電子戦能力を拡充していくだろう。
F-35がスーパーホーネットに対して優位なのはBAEシステムズのAN/ASQ-239の効果もある。多数のアンテナを機体表面に埋め込み、周囲の状況をパイロットに伝えてくれる。ただしF-35の開発が長引く中でこの技術は進展を示している。海軍は統合防御電子対抗装置(IDECM)のブロックIVをF/A-18に追加搭載している。ボーイングはBAEのALQ-239や今後登場するイーグル・パッシブアクティブ警報残存装備を搭載して、レーダー警報、地理情報、状況認知、機体防御の各能力が付与できるとする。こういう新型装備でF-35のAN/ASQ-239に匹敵する性能が実現する。
別の選択肢としてEA-18Gが搭載するノースロップ・グラマンALQ-218レーダー警報受信機兼電子支援・電子情報収集(RWR/ESM/ELINT) センサーの流用がある。ALQ-218は電子情報収集ツールとして特化した装備で、ASQ-239より高性能だ。EA-18Gは未知の信号でもジャミングが可能だ。だがALQ-218は戦闘機には過剰かもしれない。

センサー・センサー融合機能
スーパーホーネットには統合電子光学目標捕捉システム(EOTS)は搭載されていないのがF-35との違いだが、ポッド式高性能センサーは搭載できる。目標捕捉ポッドのほうが有利になる場合がある。F-35のEOTSは時代遅れの技術になりつつある。F-35開発室はこの問題を認識しており、ブロックIVで解決する意向だが実現は2020年代前半までになる。F-35の個別システムのアップグレードは相当複雑であるのに対し、ポッドを交換すれば常時最新のソフトウェアが利用できる第四世代機の方が有利だ。
またステルス性能を損なうため機体外形を分解できないF-35と違い、スーパーホーネットの性能更新はずっと容易で、新型センサーも搭載できる。その例に海軍のAN/ASG-34長波赤外線探査追尾センサーポッドがあり、今年始めに低率初期生産が始まっている。AN/ASG-34投入で海軍は敵ステルス機やミサイルの探知、捕捉が厳しい電子戦環境でも可能となる。同様に長波赤外線センサーを中波EOTSに追加搭載するのはF-35のステルス特性を損なうことになり選択肢として考えにくい。
ただしF-35には切り札がある。開発が完了すればF-35は各種センサーやデータネットワークで収集した各種データをすべて集め、統合して表示できるようになる。この機能があるのはロッキード・マーティンF-22とF-35だけだが海軍は同様の「センサー融合」装備をスーパーホーネットに搭載しようとしている。海軍の複合センサー統合(MSI)は三段階で開発途上にあり、一部が実戦投入されている。目標はF-22やF-35並のセンサー融合能力を実現することだ。
海軍関係者によればスーパーホーネットのMSIはF-22・F-35の先行事例を参考にしているというが、違うのはF/A-18E/Fの現行ディスプレイでは限界があることだ。これに対してボーイングは新型大型高精細カラーディスプレイの搭載で問題解決可能としている。

ネットワーク機能
第四世代機の利点の一つに機体を探知させる無意味な送信を心配する必要がないことがある。F-35は通常は全方位有効なLink-16データリンクを使用し、多機能高性能データリンクを高度脅威環境で使う。問題は両者ともF-35の各種センサーからの大量情報を送信するスループットが不足していることだ。これに海軍が気づいて対策を考えている。他方で海軍は戦術目標情報ネットワーク技術(TTNT)のデータリンクを超高速データ・レートでEA-18Gグラウラーで実現し、海軍統合火器管制防空NIFCCAの一部とする構想を進めている。

結論は
F/A-18E/Fはステルス機になれないが、低費用で米海軍は必要な能力の8割を実現できる。発達型スーパーホーネットなら敵地侵攻攻撃除きF-35Cの性能はすべて実現する。この攻撃はスタンドオフ兵器で実現できる。米空軍へは朗報とはいえないが、発達型スーパーホネット導入を迫られれば渋々受け入れざるをえないだろう。海兵隊にはまったくいい話ではなく、短距離陸垂直着陸型のスーパーホーネットは物理的に不可能だ。いずれにせよトランプ提言でボーイングとロッキード・マーティン間でコスト競争が生まれれば納税者には悪い話ではない。提言そのもののよりも生まれる効果に期待できるのではないか。

Dave Majumdar is the defense editor for The National Interest. You can follow him on Twitter: @davemajumdar.