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★F-35に代わる選択肢は可能なのか トランプ発言を考察する



トランプ次期大統領の発言が色々波紋を呼んでいます。それは既成事実そのものが崩れる効果を産みかねないため既得権を手にしている勢力にとっては大変な事態ですが、それだけ今まで本質を議論していなかったことになるのでしょう。何が何でも新型機が必要としてこれまで時間を空費してきましたが、2017年はJSF構想そのものが大きな曲がり角に来そうな予感が出てきました。これを不愉快と捉えるのではなく、必要な性能と価格の関係を見直す機会にしたいものです。やはりトップが変われば大きな変化が生まれそうですね。「軍事情報センター」は本稿を勝手にコピーするのであれば出展を明確にしてくださいね。

The National Interest

The 'Super' Plane That Could Replace the F-35 Stealth Fighter

December 28, 2016


ドナルド・トランプ次期大統領は自身ののツィート(12月22日)で「F-18スーパーホーネットの価格検討」をボーイングに頼んだとし、ロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機の価格があまりにも高すぎるのを理由に上げていた。ワシントンの政治エリート層とジャーナリストから冷笑を呼んでいる。
確かにF/A-18E/F現行型ではF-35の性能に劣るが、業界筋の反応は例によって先入観にとらわれている。トランプ発言を文字通り解釈してはいけない。トランプの真意はスーパーホーネット発達型ならF-35の売りである性能の多くをもっと合理的な価格で実現できるはずと言っているのだ。
米海軍にとっては高性能版スーパーホーネットはF-35Cより安価ながら8割方満足できる選択肢となる。米空軍にとっては要求内容とは程遠く映るが、陸上運用の攻撃戦闘機としてスーパーホーネットがオーストラリア空軍が実証済みだ。残る海兵隊は短距離離陸推力着陸にこだわるあまり、トランプがJSFをキャンセルすれば大変なことになる。三軍は敵地侵攻能力を断念してスタンドオフ攻撃に特化するだろう。F/A-18E/Fは今後もステルス機になる見込みはないからだ。

ステルス性
スーパーホーネットがF-35にどうしても勝てないのはステルスだ。ステルスの実現には設計そのものを最初から変える必要があるからだ。だがボーイングはレーダー断面積を特に前面で減らしたスーパーホーネットをテストしている。またコンフォーマルタンクで3,500ポンドの燃料を追加搭載し、低視認性(LO)の兵装ポッドで2,500ポンドの搭載も構想している。これでF/A-18E/Fのレーダー探知可能性は減りながら、性能は向上するが、スーパーホーネットはF-35並のステルス性能は発揮できない。とはいえ物理的に可能な選択肢ではある。

電子戦能力はどうか
だがロッキード・マーティンや米空軍が公言するようにステルスがすべてなのだろうか。ロシア、中国は低周波レーダーでステルス戦闘機追尾の能力を整備中だ。そうなるとステルス機を支援する電子戦能力の拡充が一層重要になる。「ステルスは少なくともここ十数年は必要だが永遠に続くマジックではない」と海軍作戦部長(当時)のジョナサン・グリナート大将は2014年に米海軍協会年次総会で述べている。「その先が重要だ。そこでステルス性能もそこそこにもちながら敵の無線電磁送信を無効にする機材も必要になる」
米空軍も電子戦の重要性を認識している。ステルス機パイロットの中には高度の防空体制ではステルス機といえども単独侵入は容易ではないと認めるものもある。低周波レーダーの普及でこの傾向は一層強まるだろう。「ステルスとEA(電子攻撃)はシナジー関係にあり、敵の信号探知が重要だ。LOで信号探知を減らし、EAでノイズを上げる」と空軍関係者が語る。「A2/ADの脅威環境では両者を重要視していく」
ノースロップ・グラマンAN/APG-81アクティブ電子スキャンアレイ(AESA)レーダーでF-35には相当の電子戦能力が搭載されている。だがAPG-81はあくまでも高感度電子支援手段のアンテナであり、ジャマーとしても機能するが、Xバンド内の自機が使う周波数の範囲内に限られる。一方でスーパーホーネットおよびEA-18G電子戦機材にもAESAレーダーは搭載されており、レイセオンAN/APG-79もAPG-81と同様の性能がある。海軍はまだAPG-79の電子戦能力を拡充していくだろう。
F-35がスーパーホーネットに対して優位なのはBAEシステムズのAN/ASQ-239の効果もある。多数のアンテナを機体表面に埋め込み、周囲の状況をパイロットに伝えてくれる。ただしF-35の開発が長引く中でこの技術は進展を示している。海軍は統合防御電子対抗装置(IDECM)のブロックIVをF/A-18に追加搭載している。ボーイングはBAEのALQ-239や今後登場するイーグル・パッシブアクティブ警報残存装備を搭載して、レーダー警報、地理情報、状況認知、機体防御の各能力が付与できるとする。こういう新型装備でF-35のAN/ASQ-239に匹敵する性能が実現する。
別の選択肢としてEA-18Gが搭載するノースロップ・グラマンALQ-218レーダー警報受信機兼電子支援・電子情報収集(RWR/ESM/ELINT) センサーの流用がある。ALQ-218は電子情報収集ツールとして特化した装備で、ASQ-239より高性能だ。EA-18Gは未知の信号でもジャミングが可能だ。だがALQ-218は戦闘機には過剰かもしれない。

センサー・センサー融合機能
スーパーホーネットには統合電子光学目標捕捉システム(EOTS)は搭載されていないのがF-35との違いだが、ポッド式高性能センサーは搭載できる。目標捕捉ポッドのほうが有利になる場合がある。F-35のEOTSは時代遅れの技術になりつつある。F-35開発室はこの問題を認識しており、ブロックIVで解決する意向だが実現は2020年代前半までになる。F-35の個別システムのアップグレードは相当複雑であるのに対し、ポッドを交換すれば常時最新のソフトウェアが利用できる第四世代機の方が有利だ。
またステルス性能を損なうため機体外形を分解できないF-35と違い、スーパーホーネットの性能更新はずっと容易で、新型センサーも搭載できる。その例に海軍のAN/ASG-34長波赤外線探査追尾センサーポッドがあり、今年始めに低率初期生産が始まっている。AN/ASG-34投入で海軍は敵ステルス機やミサイルの探知、捕捉が厳しい電子戦環境でも可能となる。同様に長波赤外線センサーを中波EOTSに追加搭載するのはF-35のステルス特性を損なうことになり選択肢として考えにくい。
ただしF-35には切り札がある。開発が完了すればF-35は各種センサーやデータネットワークで収集した各種データをすべて集め、統合して表示できるようになる。この機能があるのはロッキード・マーティンF-22とF-35だけだが海軍は同様の「センサー融合」装備をスーパーホーネットに搭載しようとしている。海軍の複合センサー統合(MSI)は三段階で開発途上にあり、一部が実戦投入されている。目標はF-22やF-35並のセンサー融合能力を実現することだ。
海軍関係者によればスーパーホーネットのMSIはF-22・F-35の先行事例を参考にしているというが、違うのはF/A-18E/Fの現行ディスプレイでは限界があることだ。これに対してボーイングは新型大型高精細カラーディスプレイの搭載で問題解決可能としている。

ネットワーク機能
第四世代機の利点の一つに機体を探知させる無意味な送信を心配する必要がないことがある。F-35は通常は全方位有効なLink-16データリンクを使用し、多機能高性能データリンクを高度脅威環境で使う。問題は両者ともF-35の各種センサーからの大量情報を送信するスループットが不足していることだ。これに海軍が気づいて対策を考えている。他方で海軍は戦術目標情報ネットワーク技術(TTNT)のデータリンクを超高速データ・レートでEA-18Gグラウラーで実現し、海軍統合火器管制防空NIFCCAの一部とする構想を進めている。

結論は
F/A-18E/Fはステルス機になれないが、低費用で米海軍は必要な能力の8割を実現できる。発達型スーパーホーネットなら敵地侵攻攻撃除きF-35Cの性能はすべて実現する。この攻撃はスタンドオフ兵器で実現できる。米空軍へは朗報とはいえないが、発達型スーパーホネット導入を迫られれば渋々受け入れざるをえないだろう。海兵隊にはまったくいい話ではなく、短距離陸垂直着陸型のスーパーホーネットは物理的に不可能だ。いずれにせよトランプ提言でボーイングとロッキード・マーティン間でコスト競争が生まれれば納税者には悪い話ではない。提言そのもののよりも生まれる効果に期待できるのではないか。

Dave Majumdar is the defense editor for The National Interest. You can follow him on Twitter: @davemajumdar.


コメント

  1. あけましておめでとうございます。
    記事の最後に

    >発達型スーパーホーネットなら敵地侵攻攻撃除きF-35Cの性能はすべて実現する。

    とありますが、その敵地攻撃能力、しかも洋上運用可能な小型機としてファーストストライクが可能な機材であるということが、F-35Cの最大の美点であり、F-35Cを運用することで得られるプレゼンスの本質だと思っているのですが、その点についてはどうなんでしょうか。
    代替機材は見つかるのでしょうか?
    それとも、米海軍は航空機による高脅威環境での敵地攻撃能力を必要としないという見立てで書かれた記事なのでしょうか。

    返信削除
  2. 確かにF-35を諦めてF/A-18EorFやE/A-18Gを導入することである程度の能力を確保することは出来る。
    結果としてコストも相当低減出来るだろう。

    実際F-35計画において3軍共用というのは大きな足枷だった筈だ。
    更にステルス性能を要求として優先順位を下げることになってもF-35のデータリンクやセンサー類、それを統合するソフトウェア機能を他機種で補完できれば「8割」は達成可能かもしれない。

    しかしここで議論されていない大きな問題がある。
    それは最初にあった「3軍共用」という部分だ。
    個人的に共用を避けることができるのは良いが、F/A-18は艦上機であり陸上機としては無駄な機能が多すぎる。

    他国でこれを陸上機として運用している国を例に挙げるのならば、他機種(主にF-16)を選定した国が遥かに多いという事実を無視することは出来ない。

    海兵隊のハリアーⅡに関してはF-35Bを諦めれば完全に後継機種が絶たれる、つまり海兵隊の航空機運用思想その物を大きく変える必要に迫られるだろう。

    いずれにせよもしF-35事業がキャンセルされた場合、ロッキードには早急に別の仕事を与えなければ倒産する可能性すらあり、トランプ氏の言う「アメリカ・ファースト」という考え方にも反する物になる非常に難しい問題なのは確かだ。
    個人的にF-35事業を中止or大幅に縮小する場合でも現代段階では多大なコストが必要なことに変わりはないと考える。
    少なくとも決定が下された段階でF-35をキャンセルする国(日本も含む)が増えるのは確実だろう。

    返信削除

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