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2024年11月24日日曜日

エイブラハム・リンカンCSGが中東を離れ、ヴィンソン空母打撃群が展開、G・ワシントンCSGは横須賀へ移動中(USNI News)

 

2024年11月8日、アーレイ・バーク級誘導ミサイル駆逐艦USS Frank E. Petersen Jr.(DDG-121)と洋上補給を行う準備をするUSSエイブラハム・リンカン(CVN-72)。. US Navy Photo




USS エイブラハム・リンカン(CVN-72)が米第7艦隊担当海域に入り、中東で1年ぶり2度目の空母不在となることがUSNI Newsの取材で分かった。

 ハリー・S・トルーマン空母打撃群は現在、地中海に向かう途中で東大西洋にいる。同空母打撃群は、継続的な商船保護任務「オペレーション・プロスペリティ・ガーディアン」の一環として、米中央軍に向かう可能性が高い。

 米国が空母打撃群なしで中東を離れたのは、6月にUSSドワイト・D・アイゼンハワー(CVN-69)が地中海に入り、USSセオドア・ローズベルト(CVN-73)が中央司令部担当海域に向かった以来だ。

 セオドア・ローズベルトの到着により、ドワイト・D・アイゼンハワー空母打撃群は7カ月ぶりに中東を離れることができた。エイブラハム・リンカン空母打撃群は8月に中東に到着し、セオドア・ローズベルト空母打撃群と合流した。

 西海岸を拠点とする2つの空母打撃群を太平洋から中東に移動させることは、海軍が現在のニーズを満たすために戦力を増強する一例である、と関係者はUSNIニュースに語っている。 

 海軍は、2022年初頭のロシアのウクライナ侵攻に先立ち、2021年12月以来、東海岸の空母を中心に東地中海でのプレゼンスを維持してきた。

 ハマスが2023年10月7日にイスラエルを攻撃し、その1カ月後にフーシ派が紅海の海運を攻撃し始めると、海軍はイスラエルと商業海運を支援するため艦船を移動させた。

 フーシ派の攻撃以来、中央司令部の対応地域には継続的にプレゼンスが維持されている。国防総省は今月初め、リンカンの出発に合わせて駆逐艦と航空機をこの地域に移動させると発表した。USNIニュースの『Fleet and Marine Tracker』によると、現在、海軍は2隻の駆逐艦を中東に、2隻を紅海に配備している。

 月曜日には、カールビンソン空母打撃群が太平洋展開のためカリフォルーアから静かに展開したと、2人の防衛当局者がUSNIニュースに確認した。

 海軍のスポークスマンはUSNIニュースに対し、空母は第3艦隊の作戦区域で通常の作戦を行うと語ったが、詳細は明らかにしなかった。

 ヴィンソンは2023年10月12日から2024年2月23日まで西太平洋に展開し、環太平洋2024演習の一環でハワイ沖を航行した。 8月14日に帰還して以来、空母はカリフォルニア沖で短期間の維持巡航を行っている。 この打撃群がどのくらいの期間展開するのかは不明だ。

 一方で空母ジョージ・ワシントン(CVN-73)を東海岸から横須賀の新母港に移動させる作業が完了に近づいている。搭載する第5空母航空団飛行隊は空母から日本の基地にひとあし先に移動した。■


Carrier USS Abraham Lincoln Leaves Middle East, Vinson Carrier Strike Group Deploys

Heather Mongilio

November 18, 2024 4:57 PM - Updated: November 18, 2024 10:37 PM


https://news.usni.org/2024/11/18/carrier-uss-abraham-lincoln-leaves-middle-east-vinson-carrier-strike-group-deploys


2024年8月26日月曜日

太平洋での米海軍の空母展開がゼロに―南シナ海など中国の行動へ警戒が必要だ (Naval News)


240815-N-WV584-1036 シンガポール海峡(2024年8月15日) ニミッツ級空母のエイブラハム・リンカン(USS Abraham Lincoln、CVN 72)とフランク・J・ピーターセン・ジュニア(USS Frank J. Petersen Jr.、DDG 121)がシンガポール海峡を通過した。(米海軍撮影、報道担当海軍伍士ジョーイ・シッター)



エイブラハム・リンカン(CVN 72)が第5艦隊へ配備された。空母が最も必要とされるこの時期に太平洋に空母配備がない状態となった。


海軍は、中東で増強を続ける中、太平洋における空母の不足に直面している。西太平洋に重大な空白が生じている。

 USSエイブラハム・リンカンの出港は、USSロナルド・レーガン(CVN 76)の母港が横須賀からワシントン州ブレマートンに変更された時期と重なっている。ロナルド・レーガンの代替艦USSジョージ・ワシントン(CVN 73)は、現在もサンディエゴに停泊している。

 米海軍の他の太平洋配備空母は、入港中または整備期間中にある。太平洋に配備されている空母6隻のうち、USSカール・ヴィンソンは最近、環太平洋合同演習(RIMPAC 2024)に参加し、USSニミッツは最近、6か月間の計画された段階的な整備期間を完了し、USSロナルド・レーガンは最近、母港をキトサップ海軍基地に移し、USSジョージ・ワシントンはUSSロナルド・レーガンからの乗組員と装備の交換が完了するまでサンディエゴに留まる。


USS セオドア・ローズベルトとUSS アブラハム・リンカンは、中東における地域紛争の可能性が高まっているのを受け、第5艦隊作戦地域に配備されている。ローズベルトは配備から11ヶ月目に入ろうとしている。リンカンは、ロイド・オースティン国防長官が空母を中東に派遣するよう命令したことを受け、第7艦隊での配備を短縮した。

 今後少なくとも3週間は太平洋に米空母が不在となるため、海軍は、今週南シナ海でフィリピン沿岸警備隊の船と中国沿岸警備隊の船が衝突したように、対立や事件が頻繁に起こる地域において、重要な防衛の空白が生じる。

 来月末までに、次期前方展開空母として、USSジョージ・ワシントン(CVN 73)が第7艦隊の一員として横須賀に到着する見込みだ。■


No U.S. Navy Aircraft Carriers Deployed in the Pacific

The deployment of the USS Abraham Lincoln (CVN 72) from 7th Fleet to 5th Fleet has left the United States with no deployed carriers in the Pacific Ocean, at a time when they are needed most.

Carter Johnston  25 Aug 2024

https://www.navalnews.com/naval-news/2024/08/no-u-s-navy-aircraft-carriers-deployed-in-the-pacific/


2023年1月1日日曜日

空母キラーDF-26弾道ミサイルに米海軍は防御手段を着々と整備している。これも一つのオフセットだ。

 


DF-26

Xinhua

 

 

DF-26は太平洋全域でアメリカ海軍艦艇を攻撃可能だ

 

 

 

中国の「空母キラー」ミサイルは、米海軍空母を中国沿岸に近づけない主要な兵器として、ここ何年話題になっている。

 

DF-26ミサイルとは

DF-26ミサイルは、中国が数回試射し、米空母を破壊する能力を示すことで、不吉な警告を発してきた、中国で最も強力な対艦ミサイルだ。全長46フィート、重量44,000ポンド。

 

ワシントンDCの戦略国際問題研究所は、「DF-26は『モジュール設計』で、ロケットに核弾頭と通常弾頭を搭載できる」と述べている。DF-26の射程は最大2500マイル、積載重量は4000ポンドで、衛星を利用すれば、理論上は西太平洋全域の米海軍艦艇を攻撃することが可能だ。「中国の内陸部から発射されても、DF-26は南シナ海をカバーする十分な射程距離を持っている」と、ある無名の軍事専門家は数年前グローバルタイムズに語っている。

 しかし、海軍高官コメントをよく読むと、この問題に議論の余地があるようだ。この種の脅威の深刻さを疑問視する人は皆無で、中国兵器を真剣に受け止めているのは明らかだが、空母打撃群の防御も着実に進歩していることを考えれば、脅威の表現の一部は「誇大表現」と評価されるかもしれない。

 「空母キラー」について問われた海軍高官は、脅威を否定するのではなく、米海軍の空母は「攻撃に必要であればどこででも活動できる」と明快に述べている。

 当然ながら、艦船防御の具体的内容は、安全保障上の理由で明らかにされていないが、海軍は、「層状」艦船防御技術が急速に成熟していると公に語っている。これには、攻撃用または防御用の艦載レーザーが含まれ、飛来するミサイルを追跡して「焼却」または「無効化」できる。新しい EW アプリケーションは、「ベアリングライン」を検出したり、ミサイルの誘導システムの電子署名を追跡しその軌道を「妨害」できる。

 海軍のHELIOS(High-Energy Laser with Optical-dazzler and Surveillance)は現在、アーレイ・バーク級フライトIIA駆逐艦に搭載されており、さらに陸上と海上でテストと評価中だ。

 また、現在、陸上および海上で試験と評価が行われている。これは、駆逐艦が、敵無人機を光速で正確に焼却、圧倒、燃やしたり、無力化する能力が運用されることを意味する。

 レーザーは静か、低コスト、拡張性があり、正確であるだけでなく、より重要なのは、光速で発射されることだ。新技術が海戦の領域に入り、戦術方程式が大きく変化するにつれ、海洋戦でスピードがますます重要度を増している。

 HELIOSのようなレーザーは、光学要素も充実し、センサーとしてターゲットを追跡し、監視任務の手助けも可能だ。また、レーザーは、艦載砲を補い、精密誘導技術で狭い目標エリアをピンポイントで狙えるため、場合によっては水上艦艇が敵陣に接近することも可能になる。

 ノースロップ・グラマンが主契約者の水上電子線改良事業Surface Electronic Warfare Improvement Program (SEWIP) Block 3では、インバウンド脅威を突き止め、妨害し、混乱させることにとどまらず、敵の通信ネットワーク、データリンク、レーダーシステム、その他の電子ソースに電子攻撃を加え、高度な攻撃的電子攻撃能力と将来は電子戦を情報作戦(IO)と統合する能力を追加することでEW用の技術機能を進化させた。SEWIPブロック3は現在、海軍のDDG-51級駆逐艦に搭載する設計で、今後数年で運用を開始する予定と、ノースロップ開発者は説明している。また、海軍の新型フリゲート艦も高度なEWシステムを搭載する設計だと、海軍関係者はWarriorに語っている。

 SEWIPブロック3の EWシステムは、アクティブ電子走査アレイ(AESA)の集合体16個を使用し、ターゲットとなる個別の「ペンシル」ビームを放射する。ノースロップ・グラマンで陸上・海上センサー担当副社長のマイク・ミーニーMike Meaneyは、SEWIP Block3開発の初期段階において、Warriorのインタビューに、「AESAの利点の1つは、重なり合った広いビーム送信ではなく、ペンシルビームを生成できること」と答えている。「ペンシルビームは狭く、焦点が合うため、軌道が速く進むにつれて、必要な場所だけにエナジーを投入できます」。将来のコンセプトは、IOとEWを合成し、情報収集技術をEW攻撃および防衛システムと接続することにある。そのためには、ソフトウェアの継続的なアップグレードと脅威の監視が必要だ。

 EW兵器は、狭い範囲の信号を発信することで、探知性を大幅に低下させる。当然ながら、電子放射が大きく広がれば、敵に発見されやすくなる。事実上、SEWIPシステムは、司令官が「見せたいものを敵に見せる」に限定することを可能にするとミーニーは説明する。

 こうした要素に加え、アップグレードされた「キネティック」ディフェンスや迎撃手段の包囲網で、襲い来る攻撃を排除する。海軍艦艇の迎撃ミサイルは、艦載レーダーや射撃管制装置と連動し、敵の対艦ミサイルや弾道ミサイル、さらに一部航空機を撃破する。艦船搭載型迎撃ミサイルは、駆逐艦や巡洋艦の垂直発射システムから発射され、「階層化」能力を有する。SM-3は最も射程の長い迎撃ミサイルで、長距離弾道ミサイルや最終段階に近づくICBMも追尾でき、特に射程を伸ばし誘導システムを改善した最新型SM-3 IIAで能力はさらに向上する。

 DF-26は、米海軍の迎撃ミサイルSM-6に弱い可能性がある。SM-6は、理論上、発射直後、中国のミサイルが上昇し加速中と、目標に向かって弧を描いて降下する終末期の2段階でDF-26を攻撃可能だ。SM-6のソフトウェアがアップグレードされ、「デュアルモード」シーカーが改良されたことを考慮すると、特に可能性が高くなる。これにより、ミサイルは飛行中にコース調整し、機動可能になり、中国の対艦ミサイルを追跡し破壊する能力を発揮する。

 また、SM-6は「NIFC-CA(Naval Integrated Fire Control - Counter Air)」海軍のネットワークシステムで、「レーダーの地平線の彼方」からやってくる巡航ミサイルの脅威の迎撃もできる。このシステムは、E-2DホークアイやF-35など空中ゲートウェイを「ノード」として使用し、艦載レーダーでは探知不能な距離から接近する脅威を探知し、脅威データをネットワーク送信、または受信し、司令部は遠隔地点からSM-6を発射して脅威を破壊する。このシステムの効果は証明済みで、海軍はNIFC-CAを攻撃用としても開発中である。同システムは、従来到達できなかった距離から移動目標を正確に発見し破壊する能力がある。

また、海軍艦艇は、ESSM(Evolved Sea Sparrow Missile Block II)という迎撃兵器を搭載し、地表と平行して低空を飛行する巡航ミサイルを迎撃する「シースキミング」モードが可能である。SM-2、シーラム、ローリング・エアフレーム・ミサイル(RAM)は、接近した脅威を攻撃できるが、これらの中には大型対艦ミサイルの破壊能力がないものもある。しかし、敵の小型ボート、ドローン、ヘリコプター、軍艦、銃弾、ロケット弾、砲弾などを標的にできる可能性が高い。艦船防御に最も近いのは、近接武器システム(CIWS)と呼ばれるもので、ファランクス砲は、1秒間に数百の小型金属弾を発射し、エリアを抑圧、防御射撃で「ブランケット」することが可能だ。CIWSは1B型にアップグレードされており、飛来する航空脅威の破壊に加え、小型ボートや水上攻撃など水上脅威の排除も可能だ。■

 

Could the US Navy Destroy Attacking Chinese "Carrier-Killer" DF-26 Anti-Ship Missiles? - Warrior Maven: Center for Military Modernization

 

(Photo by Matt Cardy/Getty Images)

Video Above: Maj. Gen. Pringle Manned-Unmanned Teaming

By Kris Osborn - President & Editor-In-Chief, Warrior Maven

 

Kris Osborn is the President of Warrior Maven - the Center for Military Modernization. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University.

 

Kris Osborn, President, Center for Military Modernization

Kris Osborn, Warrior Maven - Center for Military Modernization

BY KRIS OSBORN, WARRIOR MAVEN - CENTER FOR MILITARY MODERNIZATION


2017年8月14日月曜日

★★英海軍新鋭空母がはやくも演習に参加、しかしその実態は?




英海軍が大型空母二隻を整備する理由がよくわかりません。グローバルな打撃力を実現するとしてもF-35Bが12機程度しか搭載できないのであれば片手落ちでしょう。結局米海兵隊機材を搭載するのであれば図体は大きいのに中途半端な存在にならないでしょうか。むしろ艦を建造し運用は余裕がある同盟国に任せる賃貸物件のオーナーのような立場になるのでは。日本から見ればF-35B運用の実際を見てみたいところですがね。あらためて防衛力整備には強力な経済力が必要だと痛感させられますね。今後の日本が心配です。

USN

Royal Navy's New Supercarrier Trains Alongside Its US Counterpart For The First Time 英海軍新造超大型空母が米海軍と初めて訓練に加わった

The training mission off the coast of Scotland offers the first glimpse of future Royal Navy carrier operations. スコットランド沖合での訓練から英海軍の空母運用構想が垣間見えた

 BY JOSEPH TREVITHICK AUGUST 9, 2017

  1. 英海軍の新鋭超大型空母HMSクィーンエリザベスが随行艦とスコットランド沖合で多国間訓練演習の最終段階に入っている。同艦は米海軍USSジョージ・H・W・ブッシュ以下空母打撃群2(CSG-2)と行動をともにし、将来の二国間合同作戦のモデルを示している。
サクソンウォリアー2017演習とは
  1. 艦船15隻と6千名がドイツ、ノルウェー、スウェーデン、英国、米国5カ国から北大西洋に終結し8月1日サクソン・ウォリアー2017演習の幕が開いた。目的は各国間の海軍作戦の共同実施で目玉は空母二隻が参加したことだ。
  2. 空母2隻は随行艦、各国水上艦と対空、対艦、対潜戦の他飛行禁止区域の執行を想定した各種演習をこなしている。
  3. 小舟艇多数が襲撃してきた想定での防御策や、英米それぞれの補給艦が交代に洋上補給し相互作戦実施の効果を確認している。
空母は完成したが搭載機がない
  1. 空母での固定翼機運用はHMSアークロイヤル退役の2011年以来行っていない英海軍には空母運用訓練が重要でだ。小型ヘリコプター空母HMSオーシャンは2018年に退役する。だが両艦ともクイーンエリザベスや建造中のHMSプリンスオブウェールズに艦の規模、複雑さで劣る。
  2. 「米海軍の空母打撃群との指揮命令訓練を英本土近海で実施したいと思ってきました」と英海軍大佐ケン・ホウルバーグ(空母打撃群参謀長)が語る。「HMSクイーンエリザベスが今年後半に戦力化すると自前で空母打撃戦力が生まれます」
  3. 英海軍にはサクソンウォリアー演習で航空戦力を完全搭載した空母との共同訓練の機会が大きな意義となる。今のところクイーンエリザベスの航空戦力は不在だが、英空軍がユーロファイター・タイフーンを飛ばし航空戦力を提供した。
  4. 英国防省はあくまでもクイーンエリザベスは航空部隊と2026年までに完全戦力化すると説明している。しかし同艦の完全戦力の意味するところは明瞭ではない。War Zoneでは同艦が海上公試に出港した2017年6月の時点でこう説明している。
F-35B調達の行方
  1. 英国が調達規模を縮小する可能性は相当高い。2017年6月初めにタイムズオブロンドンは英空軍のF-35A調達費用を確保すべくF-35B調達は削減されると報じている。B型は48機に減るという。
  2. F-35Bが48機になるとクイーンエリザベスおよびプリンスオブウェールズで攻撃力が完全展開できなくなる。英海軍はまずB型42機を2023年までに運用開始し、空母に24機配備し、残り18機を訓練に投入するとする。
  3. 英空母はカタパルトや拘束装置がなく、スキージャンプと垂直着艦運用のためF-35Bに適化している。F-35B調達が予定通り進まないと英海軍に代替策がない。英海軍はアークロイヤル退役を機にハリヤー全機を用途廃止し米海兵隊が購入したため再活用は無理だ。共用打撃戦闘機がないまま英海軍要員はF-35の取扱い訓練を実物大模型で陸上で行っている。
英米共同運用に向かうのか
  1. 「当方はすば抜けて幸運です」と英海軍ジェイムズ・キャップス少佐(佐草温ウォリアー2017で海軍固定翼機作戦士官)はブッシュ艦上で語る。「ここジョージ・H・W・ブッシュにて今後の英空母打撃戦力の方向性が見えてきますし、米国がどんな体制になっているかもわかります」
  2. 英米間の軍事交流はクイーンエリザベスが戦力化し初の哨戒航海に出る2021年には通常のことになりそうだ。2016年12月に英海軍は米海兵隊F-35Bの英空母艦上運用で合意している。英米両軍の要員は相互に事前訓練したうえで共同運用に向かう。
英海軍の考える空母打撃群構想
  1. 2017年7月に英海軍の次世代フリゲートとなる26型シティ級の建造が始まった。同級は23型デューク級に交代することになる。
  2. 新型フリゲート艦に45型ダーリング級駆逐艦が加わり将来の英空母打撃群を構成する。残念ながら隻数が不足し空母打撃群の遠征作戦の支援がむずかしい。米海軍の空母打撃群では少なくとも誘導ミサイル巡洋艦一隻、誘導ミサイル駆逐艦二隻ないし三隻さらに高速攻撃潜水艦一隻以上が加わる。補給艦を必要に応じて呼び寄せる。
  3. サクソンウォリアー2017ではデューク級HMSアイアンデューク、HMSウェストミンスターの二隻がクイーンエリザベスに加わっている。この二隻だけで23型フリゲートの6分の一に相当する。
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  1. このため英海軍が米海軍に空母打撃群の共同運用を提案する可能性は十分あり、自国水上艦艇の負担を軽減するはずだ。その他同盟国にも自軍艦艇を提供する動きがある。演習の広報写真撮影でクイーンエリザベスは米海軍のジョージ・H・W・ブッシュと並列航行し英海軍のその他水上艦とタイコンデロガ級巡洋艦USSフィリピンシー、アーレイ・バーク級駆逐艦USSドナルド・クック、ノルウェー海軍フリチョフ・ナンセン級フリゲート艦HNoMSヘルゲ・イングスタッドも加わった。
  2. サクソンウォリアーは8月10日に幕を下ろすが、クイーンエリザベスはその後ポーツマスに母港を移し今月末まで留まると英国防省は発表している。その後さらに海上公試を行い、2018年中に艦隊に編入される。
  3. その時点になれば英海軍が新編成空母打撃群の運用方針が判明するはずだ。■
Contact the author: jtrevithickpr@gmail.com

2017年5月6日土曜日

★★米空母への攻撃手段四点と対抗策:空母撃沈は可能なのか




就航前艦ジェラルド・R・フォードが自力で初の建造所公試で外海に向かう。フォードは米スーパー空母の新型一号艦。Photo credit: United States Department of Defense

かつての戦艦同様に現在の航空母艦はすでに実効力を失っているのではないかと長年批判されていますが、今回の朝鮮危機で示されているように今でもその威容は十分に威嚇力があり、搭載機も北朝鮮程度の一線機材を上回る規模です。では空母は無敵なのかといわれればそうでもなく、それだけにいろいろな対策を加えればさらに巨大艦になっていきます。ロシア、中国、北朝鮮、イランが記事にあるような攻撃手段を研究しているはずなので今後さらに技術が進歩していくでしょう。

What It Would Really Take To Sink A Modern Aircraft Carrier

Robert Farley

  1. 現代の空母は米国による支配、覇権、平和、そして帝国の象徴である。しかし全長1,000フィート排水量10万トンの空母は格好の標的なのだろうか。アメリカの国力の象徴は時代遅れで脆弱な鉄の塊に過ぎないのだろうか。
  2. 米国が超大型空母運用を続けるべきかの議論があるが結論は出ていない。空母を沈めるのは困難でも不可能ではない。カギを握るのは何をどのように投入するかであり、敵が誰なのかという点だ。空母を沈めたいのであれば以下を参照されたい。対抗措置も述べる。

現代の空母の歴史


  1. 米国防部門では1940年代末から空母無用論が戦わされている。第二次大戦で空母は海軍戦で決定的な存在になった。戦後の技術開発で空母の残存性に疑問がついた。精密誘導ミサイルは無人カミカゼ攻撃といってよく潜水艦の性能向上で空母の防御は不可能と言われ始めた。さらに核兵器がここに加わった。
  2. 空母を核攻撃すればゲームオーバーである。核攻撃すればなんでもおしまいだ。
  3. 空母の将来を巡る危機の最初が1949年の「提督たちの反乱」事件で、米空軍が空母は脆弱であり予算支出は不適切と主張したため海軍首脳部が反論した。
  4. 最終的に海軍は「スーパー空母」を中心に冷戦期の戦力を構築した。一号艦がUSSフォレスタル(CV-59)で1955年のことで、最新のUSSジェラルド・R・フォード(CVN-78)まで続いている。
  5. 各艦は非常に高額となり戦力集中は脆弱性となった。冷戦中、冷戦後ともに分析が大量に行われ、海軍が巨大艦にこたわることへ批判が集まった。小型で安価な艦で同じ任務の実施が可能との議論が生まれた。
  6. 同時期にソ連は多大な時間と予算を投入して米空母攻撃手段を求めてきた。現在は中国の接近阻止領域拒否では米空母を中心にとらえている。

航空母艦の重要性


  1. 空母攻撃用に開発された兵器すべての根本的問題は偵察機材との情報リンクであり、空母を発見し攻撃部隊に伝えることだ。潜水艦、航空機、水上艦は遠距離では位置がわからなければ空母を撃破できない。そして陸上基地と違い、空母はたえず移動している。
  2. 超音速巡航ミサイルでも最大射程で発射すれば目標地点到達は20分後になり、その間に空母は最大速度なら10マイル移動する。10万トンの巨大空母は最高30ノット超と意外に高速航行が可能でここに原子力推進の意味がある。
  3. 水上艦や潜水艦の攻撃手段は独自に空母を探知できないことだ。他の手段からのデータに依存する。このため攻撃決定に時間と不確定要素が加わる。米国は三十年かけて偵察攻撃一体化をめざし、偵察通信機能を重複したキルチェーンを実用化しており、リアルタイムで情報を高性能センサー機材(衛星、海中聴音装置、無人機、警備艇等)から通信ノード(衛星、航空機)経由で艦船、航空機、潜水艦に伝えミサイルを発射し目標まで誘導するシステムを構築した。
  4. ここまでの能力を実用化している国は他にない。ただしロシア、中国も実用化を目指している。では敵勢力が空母撃沈を目指しどんな手段を講じてくるのか、その対策は何かを以下見てみよう。

魚雷


  1. 現代の魚雷の直撃を受けた空母は皆無で、9万トン艦が魚雷攻撃を受けてどうなるかを示す材料がない。米海軍は用途廃止したキティーホーク級空母USSアメリカを標的に各種水中兵器の効果を2005年に試したが、テスト結果は非公表扱いだ。
  2. 第二次大戦中に潜水艦により沈んだ空母は計8隻あり、国籍では日本、米国と英国だ。始まりは1939年のHMSカレジアスであった。冷戦時に米海軍はソ連原子力潜水艦を空母戦闘群への主要脅威ととらえていた。空母を仕留めるには潜水艦は護衛艦を回避し哨戒機に捕まらずに静止したままあるいは空母通過を待つ状態で待機する、あるいは空母に気づかれずに近づく必要がある。公海では後者はまず実施できない。空母は現在の潜水艦とほぼ同じ速度で移動するためだ。
  3. 各国海軍は標準的なホーミング魚雷の射程を公表していないが、最大35マイルから40マイルというのが大方の筋の見方だ。現代の魚雷は艦の真下で爆発することで竜骨を折り致命的な浸水を起こす。ロシア海軍は超高速魚雷を開発したが、実用化されているのかまたその効果も疑わしい。

対抗策

  1. 潜水艦対策の中心は潜水艦に攻撃位置を取らせないことだ。これまでは多様な手段で潜水艦を探知撃破する手段があり、艦載対潜哨戒機、護衛艦運用のヘリコプター、陸上発進の航空機や護衛部隊(水上艦、潜水艦)が対応してきた。
  2. 冷戦時の米海軍はソ連潜水艦探知および攻撃に相当の自信を有しており、空母を北極海や太平洋に進出させてソ連国内を攻撃する手段として活用する構想があった。
  3. だが米海軍の対潜戦(ASW)能力は冷戦後に衰退している。S-3ヴァイキング哨戒機、オリバー・ハザード・ペリー級フリゲートの退役がその口火だった。一方でロシアもソ連時代より少ない潜水艦しか運用せず、中国の原子力潜水艦は静粛性に難があり追尾は容易だった。ディーゼル潜水艦は静粛だが航続距離が短く、空母作戦海域で長時間待機できず、空母戦闘群に匹敵する速度もない。
  4. 潜水艦は指揮統制システムとリンクが困難で、航空機や水上艦とは違う。このため情報があっても対応に時間がかかりやすい。とはいえ、一定数の潜水艦を巧妙に配置すれば空母打撃群にも脅威となる。潜水艦、水上艦では最後の手段としてホーミング魚雷を混乱させるべく、ノイズメーカー、デコイで魚雷をかわそうとする。ロシアや中国はこれに対して航跡追尾型の魚雷を配備している。

巡航ミサイル


  1. 海軍向け巡航ミサイルの初の実戦投入は第二次大戦中でドイツ空軍機が精密誘導グライダー爆弾を連合軍、イタリア軍艦船を攻撃している。冷戦時にはソ連は巡航ミサイルで米空母戦闘群の攻撃を狙い、潜水艦、水上艦、航空機各種を開発した。Tu-22「バックファイヤー」爆撃機は米空母攻撃の巡航ミサイル母機として専用開発された。中国も同様に各種巡航ミサイルを各種手段で運用する構想だ。巡航ミサイルは海面すれすれを飛翔して探知を逃れ、最終段階で一気に上昇し最大限の攻撃効果を狙うことが多い。対空ミサイルや防空戦闘機による対応は不可能ではないものの困難になる。巡航ミサイルはプログラミングが発射前に必要で指定地点に向かってから標的を識別選別するのが普通であるが、一部ミサイルでは高度機能がついており長距離でも標的を自ら探知し攻撃が可能だ。

対抗策

  1. 魚雷と同様に巡航ミサイル攻撃の回避策は発射母体を空母そばに近づけないことだ。水上艦なら容易で、中国あるいはロシア水上艦が発射できる地点に近づく前に米航空戦力により撃破されるのは確実だ。潜水艦発射の巡航ミサイルの場合は複雑とはいえ、同じ考え方が適用できる。潜水艦が発射地点に到達する前に撃破する。航空機から発射の巡航ミサイルALCMsはこれと違う問題で、航空機は高度と地球の湾曲のため潜水艦や水上艦より遠隔地から空母打撃群を探知できる。航空機対策として空母打撃群は対空ミサイルや戦闘機による戦闘哨戒飛行に頼らざるを得ない。
  2. 冷戦時には米ソで手の込んだゲームになった。ソ連は爆撃機発進のため良質な情報を必要とし爆撃機多数は損失覚悟だった。米海軍はおとり戦術でソ連に大量発進をさせソ連戦力を無駄にさせる、あるいは離陸をさせまいとした。F-14トムキャットが開発されALCM対策に投入すべく巨大なレーダーと長距離空対空ミサイルを搭載し、空母戦闘群を長距離で防御する体制が生まれた。
  3. だがF-14はもはやなく、空母航空隊は航空哨戒任務を依然つづけているものの敵爆撃機迎撃以外に無人機や哨戒機にも目を光らせる必要があり空母の居場所をリアルタイムで伝わるのを防いでいる。
  4. 巡航ミサイルで空母を攻撃した事例はないが、小型艦艇では巡航ミサイル攻撃で実際の被害が生まれている。イラン-イラク戦争で対艦ミサイルが大々的に使われたが、大型石油タンカー攻撃に失敗することが多かった。だが巡航ミサイル一発で空母の飛行甲板が被害を受ければ沈没は免れても戦力は大幅に低下する。

高速艇


  1. 小型舟艇が大型艦に脅威となるとわかっていたが、ペンタゴンのまとめたミレニアムチャレンジ2002演習でこの問題が大きな関心を集めた。同演習では小舟艇に自殺攻撃をさせて米海軍部隊に大損害が発生する想定だった。「赤」軍の戦略はアルカイダによるUSSコール攻撃事例(2000年)をもとにし、イランの小舟艇活用事例(イラン-イラク戦)も参考にした。
  2. 演習の審判役はついに赤軍戦術を中止させざるを得なくなった。米軍に攻撃のチャンスを与えるためだった。相当の爆薬を搭載する小舟艇ではスーパー空母の撃沈には苦労するだろうが空母は処理に労力をとられ戦力は一定時間低下する。

対抗策

  1. 小舟艇は航続距離が足りず公海上で空母を探知攻撃するのは困難だ。空母打撃群を発見しても重装備のヘリコプターや護衛艦艇の攻撃をかいくぐって接近する必要があり、ファランクス砲が小舟艇を木っ端みじんに粉砕するだろう。そうなると小舟艇の脅威可能性は空母が静止中あるいは狭い海峡を通過中の奇襲攻撃だろう。深刻な内容ではあるが、現実問題として空母の将来そのものを左右する脅威ではない。

弾道ミサイル


  1. 2000年末に中国がDF-21中距離弾道ミサイルで移動目標攻撃技術を開発中との情報が浮上してきた。ミサイルは最終接近段階で制御可能で移動中の空母も高い精度で狙えるという触れ込みだった。米情報分析部門はDF-21D対艦弾道ミサイル(ASBM)は半径900マイルを攻撃可能と評価した。だがもっと大事なのは高速で降下する弾頭の運動エネルギーだけで空母を破壊できることでこれを受ければミッションは放棄せざるをえなくなる。そこまでの注目を集めなかったが、ロシアのイスカンダルM短距離弾道ミサイル(SRBM)も同じ狙いがあるようだ。
  2. テストされていない兵器は存在しないのと同じだ。DF-21Dの場合は発射テストこそ実施されていないものの現実的な運用テストを受けている。テストでは中国軍が空母の居場所を探知しミサイルを命中させる能力があることを示す意味がある。ただし今までのところPLAが運用に必要な訓練を行った兆候はない。中国はDF-21用と思われる偵察衛星複数を打ち上げたが戦時状況では衛星の信頼性は保証がない。中国がさらに長距離型の対艦攻撃弾道ミサイル開発に着手しても、位置捕捉関連の問題が増えるだけだろう。

対抗策
  1. 米海軍はそれでもASBM脅威を深刻にとらえて攻撃・防御手段の組み合わせで対抗する。攻撃面では敵弾道ミサイル発射基地を武力対決の初期段階で攻撃する構想があるが、標的が移動式あるいは硬化施設の場合に攻撃効果は疑問だ。電子攻撃で敵センサーを使用不可能にし目標データを発射基地に転送さえなくする方法も想定されている。
  2. 防御面では運動、電子両面でASBMへ対抗する。運動面では迎撃ミサイル(レイセオンSM-3スタンダードミサイル)をイージス装備護衛艦艇から発射し空母接近前にASBMを撃破する。電子では最終誘導システムを狙い空母接近前に無効にする。
  3. ただし実際の状況を想定したテストが実施されておらず各対抗手段の効果をあらかじめ把握することができない。戦術状況に左右される。早期警戒がどこまで可能か、目標までの距離、飛来するミサイルの数など、その場の状況で毎回条件が変わる。だがDF-21ASBMを多数発射してきた場合は一部は迎撃でき、別に被害を発生させないまま海中落下するものもあるが、一部は米艦船を直撃する可能性があるものと想定すべきだ。空母がその標的になる可能性もある。

まとめ

  1. 開戦となれば中国あるいはロシアは自国に最も有利な条件で米空母を攻撃してくるはずで奇襲攻撃になるかもしれない。米側を混乱させるべく装備多数を投入し防衛体制を圧倒するはずだ。自国への攻撃を避けるため米空母打撃群をできる限り遠隔地に追いやりたいはずだ。そうなると米海軍(さらに米政府、一般国民)は上記対抗措置をすべて真剣に検討すべきだ。
  2. 敵側に空母撃沈可能な魚雷やミサイルがあることから空母の脆弱性議論につながる。空母を狙うのは困難な仕事であり、多額の予算が必要だ。
  3. だが米空母打撃群を自軍の艦艇で攻撃しようとすれば自殺攻撃になるのは必至で、ここから米空母撃破の試行に疑問が二つ生じる。実施可能なのか、可能としても実施する価値が本当にあるのか、である。

Rob Farley teaches national security and defense courses at the Patterson School of Diplomacy and International Commerce at the University of Kentucky. He is the author of Grounded: The Case for Abolishing the United States Air Force, and the Battleship Book. Find him on twitter @drfarls.


2017年3月2日木曜日

★空母打撃群を再編せよ、CSBA提言に注目



先日のF-14の話題はここから来ていたのですね。ブライアン・クラークは元海軍士官の研究員ですね。ここではふたつの艦隊構想Deterrent ForceとManoeuvre Force(空母打撃群あらため)があり後者を機動部隊と訳しています。これまでに大戦中の帝国海軍の機動部隊に対し米海軍のTask Forceも機動部隊とされてきましたが、今後は区別が必要ですね。

US think-tank calls for stealthy, carrier-based UCAV
28 FEBRUARY, 2017
SOURCE: FLIGHTGLOBAL.COM
BY: STEPHEN TRIMBLE
WASHINGTONDC
  1. 米有力シンクタンクが海軍攻撃部隊の将来構想を発表し、各群を空母二隻、支援艦、110機で構成するとしている。機材では無人航空機(UAS)、有人機を組み合わせ空対空ミッションを重視するとしている。
  2. 2月28日に戦略予算評価センター(CSBA)が発表した報告書にはジョン・マケイン上院議員(軍事委員会委員長)が賛同している他、トランプ政権共和党指導層も注目している。
  3. ブライアン・クラークよびピーター・ヘインズが中心となったCSBA分析では現行の空母打撃群が2030年までに適切でなくなり、高度装備を有する敵勢力との戦闘では数日しか持続できなくなるとする。
  4. そのため、報告書は「米海軍力復興」“Restoring American Seapower”と題し、新発想の「機動部隊」“manoeuvre force” として空母打撃群二個を単一部隊に再編し、運用機数を現在の60機から110機に増やすと提唱。合同部隊は航空作戦を高度な敵相手でも継続実施しつつ十分な防御力をで敵の長距離対艦ミサイルにも対抗できるとする。
  5. 報告書の想定シナリオでは奇襲攻撃を受ける想定で、ロッキード・マーティンF-35Cを配備した
  6. 空母が一隻の場合の場合、戦闘二日目までに戦域を撤退することになるが機動部隊が救援に駆けつけるとしている。
  7. 抑止戦力部隊が撤退を余儀なくされても敵にプレッシャーを与えるため、CSBA報告書ではステルスUAVをノースロップ・グラマンB-2に類似した全翼機形状で想定し、機動部隊から最長2千カイリまで敵防空網を突破する性能を提言している。このステルスUCAV(無人戦闘航空機)は攻撃に特化し、空中給油や偵察機能は無視する。ただしその他任務の必要もあるので別途多用途UAVで空中給油をF-35Cに与え、機動部隊ないし抑止力部隊から最大1千カイリ範囲を警戒させる。
  8. 機動部隊には制空任務に特化させた新機材が必要としている。米海軍がボーイングF/A-18E/Fスーパーホーネット後継機の要求内容を変更していることを受け、CSBA報告書は長距離対艦巡航ミサイルを積んだ敵爆撃機、戦闘機を撃墜できる機体が必要だとしている。■


2016年10月8日土曜日

空母ギャップ----定期大修理が遅延し、米新政権に頭の痛い事態が発生か


空母打撃群一個が下手な国の空軍力海軍力を凌駕する規模ですが、それだけに空母の運用には大きな負担が発生します。そこでお約束の予算削減、国内産業基盤の問題が工事を遅延させています。さらに記事では出ていませんが、新型フォード級空母の就役も遅れる見込みなので、「空母ギャップ」の発生は必至でしょう。来年1月発足の新政権にはつらい状況が生まれそうで、米国の敵対勢力は虎視眈々と様子を見ているのでしょうね。

US Carrier Delays Continue — And Another 'Gap' Could Affect The New Administration

By: Christopher P. Cavas, October 7, 2016
WASHINGTON -- ワシントンで新政権が発足すると、米国に対抗する各国がアメリカの意思を試す動きに出るのはほぼ確実だ。ロシア、中国、イラン、北朝鮮、ISIS、アルカイダが新大統領に圧力をかけ、指導者の資質を確かめようとするだろう。問題が来年発生すれば、新指導層が「空母はどこにいるのか」と尋ねるのは必至だ。
  1. 残念ながら国民が耳にしたくない答えが少なくとも新政権発足直後に出てくるだろう。
  2. 空母USSドワイト・D・アイゼンハワーはペルシア湾を哨戒中で米中央軍で唯一の強力な装備となっている。ISIS勢力をシリア、イラク国内で数ヶ月に渡り空爆したあと、同艦は来年一月にUSSジョージ・H・W・ブッシュと交代する予定だ。アイクはその後ノーフォークへ帰港し7ヶ月間の航海を終える。ここまで長い配備は海軍の目標どおりで、配備がさらに9から10ヶ月と長くなると人員、装備ともに消耗が激しくなる。
  3. だが問題がある。ブッシュの配備は予定より遅れており、保守点検期間が伸びたことが原因だ。ノーフォーク海軍工廠での工期は六ヶ月の予定だったのが13ヶ月になった。その間、乗員と搭載航空部隊は訓練を積み、12月にアイゼンハワーとの交替に備えていた。だが当初の10ヶ月訓練期間は2ヶ月短縮され、さらに4ヶ月削られている。
  4. 海軍当局はブッシュ打撃群は十分な練度を確保しているがこの遅れを取り戻す対応が間に合っていないようだ。
  5. 派遣が遅れたことでアイゼンハワーの哨戒活動を延長する必要が生まれたが、アイクが予定通り帰港していたら中央軍、欧州地域で空母ギャップが生まれていただろう。これはロシア、ISIS、アルカイダ、イランが挑発の動きを示しかねない中でいかにも望ましくない状況だ。
  6. ブッシュ派遣でも太平洋には影響は出ない。太平洋艦隊所属の空母各艦は中央軍任務を大西洋配備の打撃群に任せ、西太平洋や南シナ海に専念できるようになったためだ。
  7. ブッシュの大修理が大幅に遅れた原因には海軍工廠が予算削減の影響で人員を減らしている事があり、太平洋、大西洋の各部隊にも影響が今後出てくる。10月5日にUSSニミッツがピュージェットサウンド海軍工廠(ワシントン州ブレマートン)で20ヶ月の工事を完了し海上公試に出発した。これも予定より4ヶ月の遅延となった。ただし遅延現象が西海岸配備の空母に今後も影響を与えるかはまだわからない。
  8. この問題は新しい現象ではない。2014年10月に艦隊部隊本部からアイゼンハワーの大修理は2013年から2015年までの予定と発表していた。またUSSハリー・S・トルーマンがアイクが使えない間をカバーするとしていた。アイゼンハワーの再就役は結局2016年6月1日になった。
  9. 海軍工廠は四ヶ所あり、ノーフォーク、ピュージェット・サウンド、パールハーバー、ポーツマスの各所で海軍はここ数年間問題があると訴えている。上層部は予算削減で四箇所全てで作業員が減員されているとし、予算手当も遅れがちだという。そうなると艦隊は悪循環に陥る。作戦テンポが高まると艦艇は定期点検修理を先送りする。海軍工廠にやってくる艦船は予定より作業量が増えるので他艦の作業がそれだけ遅れることになる。訓練計画も影響を受け、艦の投入時期が数ヶ月遅れる。
  10. 海軍海洋システムズ本部(NAVSEA)が海軍工廠の管理元であるが、この問題の存在自体を認めていない。
  11. 「ブッシュの供用再開が遅れた大きな理由は海軍工廠の作業量が能力を超え、作業で難題に直面したため」とNAVSEA広報官ローリー・オコナーは語る。
  12. 「海軍工廠四ヶ所の作業量はここ数年増加傾向にある。海軍は人員増を量ったが作業量の伸びに追いつかず、ノーフォーク海軍工廠は優先順位をつけて投入資源を割り振った結果、人員不足が発生し作業が日程から遅れた」
  13. 同様の状況がピュージェット・サウンドでも発生しUSSニミッツに影響が出た。
  14. 「ニミッツの場合も工廠の対応能力不足で影響が出た。配備期間が延長され当初予定になかった作業が必要となったこともある」(オコナー)
  15. オコナーは四ヶ所で人員増を図っているという。それによると2013年以来、「海軍はおよそ14千名もの新規作業員を採用した」としている。
  16. ノーフォーク、ピュージェット・サウンド両工廠の民間人作業員は残る二箇所の二倍程度の規模となてとり、2013年から増加している。ノーフォークでは1,425名採用して10,542名に、ピュージェット・サウンドでは2,549名増で13,425名になっている。
  17. ただ人員増で問題が解決するほど簡単ではない。「採用しても訓練が必要」とオコナーも認め、「経験を積むのには時間が必要」という。
  18. そのため各海軍工廠では原子力潜水艦の定期修理作業を民間に外注することとし、これまで原子力関連の大修理はすべて海軍工廠で行ってきたのと大きく変化している。実施はジェネラルダイナミックスのエレクトリックボート事業部(コネチカット州グロートン)およびハンティントン・インガルス・インダストリーズ(HII)のニューポート・ニューズ造船(ヴァージニア州ニューポート・ニューズ)で四隻が作業中あるいは今後作業を開始する。
  19. 大修理の遅れは作業内容の困難度だけが理由ではない。他にも計画作業の問題もある。総じて各海軍工廠は年間実施計画を立てて、必要な作業内容を把握し、工程を編成し、必要な部品資材を先に発注し、作業員を確保する。ここで人員減が計画を狂わせる要因となるし、熟練度が想定より低いことも影響する。
  20. ノーフォークではブッシュの2015年から2016年にかけての作業を予定していた。一部筋によれば計画の一部がHIIに移管されて問題が発生したという。HIIでも問題が発生していたのだとする。
  21. HIIはジェネラル・ダイナミクス傘下のNASSCOとブッシュ工事の相当部分を請負ったが契約は個別作業別だったという。
  22. だがオコナーによればノーフォーク工廠が一貫して工事を統括していたとする。
  23. ノーフォークでは「ブッシュの工期計画作成を2014年に開始し、管理していた」とオコナーは説明。「HIIはじめ民間企業がノーフォークの作業量の一部を受け持ち、個別具体的な作業を担当した」
  24. HIIは23.8百万ドル契約を2015年6月に公布受け、「原子量推進系統はじめ複雑な改修作業を受け持ったが工期管理は対象外だった」とオコナーは説明している。
  25. GD NASSCOは42.4百万ドル契約でブッシュ工事を請け負った。
  26. 海軍工廠が空母工事の完了で遅延し2016年までずれ込んだことで艦隊戦力本部が訓練期間を短縮する選択をしたのかは不明だ。
  27. 艦隊戦力本部(USFFC)には空母部隊を緊急時に増強することを図る案があり、最適艦隊即応案 Optimized Fleet Response Plan (OFRP) で空母打撃群の配備準備に必要な装備、部隊を調整するとしている。
  28. ただUSFFCはブッシュの工事状況については同艦がノーフォークを出港した7月23日以降沈黙したままでそれまで喧伝していたOFRPが機能したのかも言及していない。海軍筋によれば8月に会議がありブッシュ打撃群の今後を検討したというがその結果は一切公表されていない。
  29. USFFC,NAVSEA、ノーフォーク工廠はブッシュ大修理期間中に定期的に連絡していたはずと同筋は説明している。ただ大修理完了後の配備日程ははっきりしていない。USFFCがブッシュ修理の延長でも状況に対応できなかったのではとの観測は否定しているが、関係者はこの問題を公に検討することを拒否している。
  30. ブッシュは洋上訓練ののち10月3日にノーフォークに帰港している。海軍筋によれば同艦の一部不具合がまだ解決していないという。次回長期訓練と合同訓練艦艇演習がないと乗員と艦上装備の即応体制は認証されず、航空部隊や随行する水上艦艇でも同様だ。
  31. 海軍は同艦が空母派遣のギャップができないように派遣してアイゼンハワーと交代できるのか明言を避けている。非公式ながら消息筋によればブッシュは2017年早々には派遣可能となるというが、アイゼンハワーの派遣期間を延長する決定はまだ出ていない。■