スキップしてメイン コンテンツに移動

空母ギャップ----定期大修理が遅延し、米新政権に頭の痛い事態が発生か


空母打撃群一個が下手な国の空軍力海軍力を凌駕する規模ですが、それだけに空母の運用には大きな負担が発生します。そこでお約束の予算削減、国内産業基盤の問題が工事を遅延させています。さらに記事では出ていませんが、新型フォード級空母の就役も遅れる見込みなので、「空母ギャップ」の発生は必至でしょう。来年1月発足の新政権にはつらい状況が生まれそうで、米国の敵対勢力は虎視眈々と様子を見ているのでしょうね。

US Carrier Delays Continue — And Another 'Gap' Could Affect The New Administration

By: Christopher P. Cavas, October 7, 2016
WASHINGTON -- ワシントンで新政権が発足すると、米国に対抗する各国がアメリカの意思を試す動きに出るのはほぼ確実だ。ロシア、中国、イラン、北朝鮮、ISIS、アルカイダが新大統領に圧力をかけ、指導者の資質を確かめようとするだろう。問題が来年発生すれば、新指導層が「空母はどこにいるのか」と尋ねるのは必至だ。
  1. 残念ながら国民が耳にしたくない答えが少なくとも新政権発足直後に出てくるだろう。
  2. 空母USSドワイト・D・アイゼンハワーはペルシア湾を哨戒中で米中央軍で唯一の強力な装備となっている。ISIS勢力をシリア、イラク国内で数ヶ月に渡り空爆したあと、同艦は来年一月にUSSジョージ・H・W・ブッシュと交代する予定だ。アイクはその後ノーフォークへ帰港し7ヶ月間の航海を終える。ここまで長い配備は海軍の目標どおりで、配備がさらに9から10ヶ月と長くなると人員、装備ともに消耗が激しくなる。
  3. だが問題がある。ブッシュの配備は予定より遅れており、保守点検期間が伸びたことが原因だ。ノーフォーク海軍工廠での工期は六ヶ月の予定だったのが13ヶ月になった。その間、乗員と搭載航空部隊は訓練を積み、12月にアイゼンハワーとの交替に備えていた。だが当初の10ヶ月訓練期間は2ヶ月短縮され、さらに4ヶ月削られている。
  4. 海軍当局はブッシュ打撃群は十分な練度を確保しているがこの遅れを取り戻す対応が間に合っていないようだ。
  5. 派遣が遅れたことでアイゼンハワーの哨戒活動を延長する必要が生まれたが、アイクが予定通り帰港していたら中央軍、欧州地域で空母ギャップが生まれていただろう。これはロシア、ISIS、アルカイダ、イランが挑発の動きを示しかねない中でいかにも望ましくない状況だ。
  6. ブッシュ派遣でも太平洋には影響は出ない。太平洋艦隊所属の空母各艦は中央軍任務を大西洋配備の打撃群に任せ、西太平洋や南シナ海に専念できるようになったためだ。
  7. ブッシュの大修理が大幅に遅れた原因には海軍工廠が予算削減の影響で人員を減らしている事があり、太平洋、大西洋の各部隊にも影響が今後出てくる。10月5日にUSSニミッツがピュージェットサウンド海軍工廠(ワシントン州ブレマートン)で20ヶ月の工事を完了し海上公試に出発した。これも予定より4ヶ月の遅延となった。ただし遅延現象が西海岸配備の空母に今後も影響を与えるかはまだわからない。
  8. この問題は新しい現象ではない。2014年10月に艦隊部隊本部からアイゼンハワーの大修理は2013年から2015年までの予定と発表していた。またUSSハリー・S・トルーマンがアイクが使えない間をカバーするとしていた。アイゼンハワーの再就役は結局2016年6月1日になった。
  9. 海軍工廠は四ヶ所あり、ノーフォーク、ピュージェット・サウンド、パールハーバー、ポーツマスの各所で海軍はここ数年間問題があると訴えている。上層部は予算削減で四箇所全てで作業員が減員されているとし、予算手当も遅れがちだという。そうなると艦隊は悪循環に陥る。作戦テンポが高まると艦艇は定期点検修理を先送りする。海軍工廠にやってくる艦船は予定より作業量が増えるので他艦の作業がそれだけ遅れることになる。訓練計画も影響を受け、艦の投入時期が数ヶ月遅れる。
  10. 海軍海洋システムズ本部(NAVSEA)が海軍工廠の管理元であるが、この問題の存在自体を認めていない。
  11. 「ブッシュの供用再開が遅れた大きな理由は海軍工廠の作業量が能力を超え、作業で難題に直面したため」とNAVSEA広報官ローリー・オコナーは語る。
  12. 「海軍工廠四ヶ所の作業量はここ数年増加傾向にある。海軍は人員増を量ったが作業量の伸びに追いつかず、ノーフォーク海軍工廠は優先順位をつけて投入資源を割り振った結果、人員不足が発生し作業が日程から遅れた」
  13. 同様の状況がピュージェット・サウンドでも発生しUSSニミッツに影響が出た。
  14. 「ニミッツの場合も工廠の対応能力不足で影響が出た。配備期間が延長され当初予定になかった作業が必要となったこともある」(オコナー)
  15. オコナーは四ヶ所で人員増を図っているという。それによると2013年以来、「海軍はおよそ14千名もの新規作業員を採用した」としている。
  16. ノーフォーク、ピュージェット・サウンド両工廠の民間人作業員は残る二箇所の二倍程度の規模となてとり、2013年から増加している。ノーフォークでは1,425名採用して10,542名に、ピュージェット・サウンドでは2,549名増で13,425名になっている。
  17. ただ人員増で問題が解決するほど簡単ではない。「採用しても訓練が必要」とオコナーも認め、「経験を積むのには時間が必要」という。
  18. そのため各海軍工廠では原子力潜水艦の定期修理作業を民間に外注することとし、これまで原子力関連の大修理はすべて海軍工廠で行ってきたのと大きく変化している。実施はジェネラルダイナミックスのエレクトリックボート事業部(コネチカット州グロートン)およびハンティントン・インガルス・インダストリーズ(HII)のニューポート・ニューズ造船(ヴァージニア州ニューポート・ニューズ)で四隻が作業中あるいは今後作業を開始する。
  19. 大修理の遅れは作業内容の困難度だけが理由ではない。他にも計画作業の問題もある。総じて各海軍工廠は年間実施計画を立てて、必要な作業内容を把握し、工程を編成し、必要な部品資材を先に発注し、作業員を確保する。ここで人員減が計画を狂わせる要因となるし、熟練度が想定より低いことも影響する。
  20. ノーフォークではブッシュの2015年から2016年にかけての作業を予定していた。一部筋によれば計画の一部がHIIに移管されて問題が発生したという。HIIでも問題が発生していたのだとする。
  21. HIIはジェネラル・ダイナミクス傘下のNASSCOとブッシュ工事の相当部分を請負ったが契約は個別作業別だったという。
  22. だがオコナーによればノーフォーク工廠が一貫して工事を統括していたとする。
  23. ノーフォークでは「ブッシュの工期計画作成を2014年に開始し、管理していた」とオコナーは説明。「HIIはじめ民間企業がノーフォークの作業量の一部を受け持ち、個別具体的な作業を担当した」
  24. HIIは23.8百万ドル契約を2015年6月に公布受け、「原子量推進系統はじめ複雑な改修作業を受け持ったが工期管理は対象外だった」とオコナーは説明している。
  25. GD NASSCOは42.4百万ドル契約でブッシュ工事を請け負った。
  26. 海軍工廠が空母工事の完了で遅延し2016年までずれ込んだことで艦隊戦力本部が訓練期間を短縮する選択をしたのかは不明だ。
  27. 艦隊戦力本部(USFFC)には空母部隊を緊急時に増強することを図る案があり、最適艦隊即応案 Optimized Fleet Response Plan (OFRP) で空母打撃群の配備準備に必要な装備、部隊を調整するとしている。
  28. ただUSFFCはブッシュの工事状況については同艦がノーフォークを出港した7月23日以降沈黙したままでそれまで喧伝していたOFRPが機能したのかも言及していない。海軍筋によれば8月に会議がありブッシュ打撃群の今後を検討したというがその結果は一切公表されていない。
  29. USFFC,NAVSEA、ノーフォーク工廠はブッシュ大修理期間中に定期的に連絡していたはずと同筋は説明している。ただ大修理完了後の配備日程ははっきりしていない。USFFCがブッシュ修理の延長でも状況に対応できなかったのではとの観測は否定しているが、関係者はこの問題を公に検討することを拒否している。
  30. ブッシュは洋上訓練ののち10月3日にノーフォークに帰港している。海軍筋によれば同艦の一部不具合がまだ解決していないという。次回長期訓練と合同訓練艦艇演習がないと乗員と艦上装備の即応体制は認証されず、航空部隊や随行する水上艦艇でも同様だ。
  31. 海軍は同艦が空母派遣のギャップができないように派遣してアイゼンハワーと交代できるのか明言を避けている。非公式ながら消息筋によればブッシュは2017年早々には派遣可能となるというが、アイゼンハワーの派遣期間を延長する決定はまだ出ていない。■

コメント

このブログの人気の投稿

★★★F-35とF-105の意外な類似性、戦闘爆撃機でドッグファイトは不得手

THE BUZZ America's F-105 Thunderchief Fighter-Bomber: The F-35 of the Vietnam War?
David Axe July 3, 2016 http://nationalinterest.org/blog/the-buzz/americas-f-105-thunderchief-fighter-the-f-35-the-vietnam-war-16839
War Is BoringによればF-35はF-16との模擬空戦で旋回速度が遅すぎて勝てなかったとテストパイロットが語っている。
これからの米空軍で最多の戦闘機材になるF-35が数で優勢なロシアや中国の機体と戦って残存できるのだろうか。 答えは歴史の中にある。50年前にも米空軍は同じ予測をしている。攻撃の主力F-105サンダーチーフは重量級ハイテク地上攻撃機で敵戦闘機も同時に撃退できるはず、とF-35と同様だった。 だが事実はF-105も旋回速度が遅くロシア製MiG-21に太刀打ちできず、空軍はF-105の損失を防ぐ特別な戦法を編み出した。同様の措置はF-35でも必要だろう。 F-35とF-105は驚くほど似ている。「F-105とJSFは大型、単座機、単発の戦闘攻撃機で、その時点で最強力なエンジンを搭載、空虚重量は27千ポンド級で翼幅もほぼ同じ35フィートだ」とオーストラリア航空宇宙専門家カーロ・コップが2004年に指摘していた。 http://www.ausairpower.net/Analysis-JSF-Thud-2004.html © 2005, 2007 Carlo Kopp

「両機種とも機内兵装庫があり機外パイロンで燃料と兵装を運べる」とコップは指摘し、「ともに戦闘半径400カイリクラスを目指し推力重量比、高機動操縦性能で制空戦闘機や迎撃機より劣っていた」 http://www.ausairpower.net/Analysis-JSF-Thud-2004.html

★★★米空軍次期戦闘機はもう戦闘機の形状となることはない---第六戦闘機の用語は駆逐

米空軍は次期戦闘機材の姿を未来から考えていますね。目的は航空優勢の確立であり、ドッグファイトは目的ではないと分析し、宇宙やサイバーも含めた多様なシステム構造の一貫として次期機材を捉えております。また、アジア太平洋での作戦をにらみ足の長い機体となると現在の戦闘機と相当形状が異なってくるとし、現状の姿の延長線上に次期機材を想定する勢力の生み出す結果と全く異なる結果を生み出そうとしています。改めて空軍の構成、運用がシステムで成り立っていることを痛感させられる内容です。 Air Force Prepares to Hash Out Future Fighter RequirementsBy: Valerie Insinna, August 28, 2016 (Photo Credit: Northrop Grumman)http://www.defensenews.com/articles/air-force-future-fighter-jet-penetrating-counter-air-next-generation-air-dominance
WASHINGTON — 一年をかけて将来の制空任務に必要な戦術や技術を検討した米空軍が次期戦闘機を実現する第一歩を踏もうとしている。2017年予定の代替策検討(AOA)に先立ち、空軍は予備作業を開始している。AOAはF-35に続く機体の要求条件、調達戦略に焦点をあてる。空軍は次期戦闘機をNGAD次世代航空優勢とかPCA侵攻制空用機材と呼んでいる。
だがアレクサス・グリンケウィッチ准将はAir Superiority 2030による戦力連携チーム(ECCT)を率い、NGADは従来の戦闘ジェット機と大きな違いが2つあると強調する。ひとつめが調達期間を比較的短くすることだ。
「2020年代末までに何らかの形が必要です」と准将はDefense News取材で発言している。「現実的な日程として2028年頃に中心的な技術分野で大幅な投資があれば侵攻制空性能で初期作戦能力が実現します
第二の相違点に関係するのがこのたびまとめられたAir Superiority 2030研究で将来の米空軍の航空優勢で決め手になるのは単一機種としての第六世代戦闘機のような機体ではなく、統合ネットワーク化された一連のシステムの集合だとする。この組み合わせの中に侵攻能…

★★★F-3事業に参画意欲を見せるボーイング、ロッキード・マーティン

Boeing, Lockheed Martin emerge as early rivals for Japan's fighter contest
Jon Grevatt, Bangkok - IHS Jane's Defence Weekly 19 July 2016 http://www.janes.com/article/62368/boeing-lockheed-martin-emerge-as-early-rivals-for-japan-s-fighter-contest Japan's Mitsubishi F-2 multirole fighter aircraft. Source: Japanese Air Self-Defense Force
航空自衛隊JASDFがめざすF-2多用途戦闘機の後継機種をめぐり、ボーイングとロッキード・マーティンがともに参画の意向を表明した。 IHS Jane’sが両社へ7月19日照会したところ、ともに日本での実績をもとに同事業参入を目指していることがわかった。事業規模は200億ドルといわれる。 防衛省は情報提供要求RfIを発出済みで、2018年4月までに「次期戦闘機」の決断を下すとみられる。 F-2は2000年代に三菱重工業MHIとロッキード・マーティンの共同事業で製造され、2027年ごろまでに全機退役する。 ボーイング広報によれば同社はF-2後継機の要求内容を検討中だという。「日本で当社の存在意義を大きくする方策は常に考えており、日本での安全保障ニーズに応えたい」 ロッキード・マーティン広報は「日本から各社に情報の要求が出ているが、当社もこれまでの日本との関係をさらに強化する今回の機会を活用したい」とし、「F-35事業とF-2でMHIと実績が成果を生んでいることは誇り」とする。 RfIは6月に出ており、各国の戦闘航空機メーカー宛に送付されている。RfIは7月はじめに締め切られており、米二社に加えユーロファイターSaabもプレゼンを8月末に行う見込みだ。 RfIは既存機種での検討の一助にするほか、各社の事業参加への意欲をさぐることのがねらいだ。MoDはF-2後継機を純国産あるいは共同開発ですすめるかの決断を下すが、後者の場合は既存機種を原型にするとみられる。■