技術を一気に進める安価な方法はその技術を盗むことで、古今東西同じです。盗む側にとって棚からぼたもち状態なのは欲しい機体がこちらにやってくることで、今回のRQ-170の他にもサイドワインダーミサイルやB-29の例がありますね。今回の事例では機体そのものより内部の情報や情報収集手段が手に入った価値のほうが高いのではないでしょうか。
Iran unveils new UCAV modeled on captured U.S. RQ-170 stealth drone
Oct 02 2016
- 10月1日イランのイスラム革命防衛隊(IRGC) が新型戦闘無人航空機(UAV)セエケエSaeqeh(雷電)を公表した。
- 新型無人機は長距離型で精密誘導爆弾四個を搭載し、原型は米RQ-170センティネル(2011年にイランが捕獲)だ。
- IRGC航空宇宙部門長アミラリ・ハジザデ准将はイランは米国を上回る性能の航空装備を有するにいたり、UAV部門の工業力はミサイル部門同様に発展するだろうと述べている。
- イランはRQ-170をコピーしただけでなく、新たな性能を実現したようだ。「カンダハールの野獣」がイラン国内に不時着した背景は現在も謎のままだ。イラン機はセンティネルより微妙に主翼が小さいがRQ-170にある機体前面の空気取り入れ口がない。
- また同機に着陸装置がついているのかも不明だ。
- 本誌が2011年以来報道しているように謎の解明には多数の説がある。
- イラン側は同機をハッキングしたと主張しているが、ステルス無人機はレーダーでは探知できないはずで、イラン東部で故障のため不時着したのだろう。(また米軍は同機の捕獲防止のため派遣された特殊部隊は同機破壊ができなかった)
- イランはRQ-170の制御乗っ取りにジャミングとGPS探知攻撃を使ったと主張し、米空軍も認めるUAVの弱点に言及している。
- だが筆者は一番可能性が高い説は同機はレーダー探知されず、イランの無人砂漠地帯に何らかの故障のため不時着したと信じる。
- 米側は当初はこの事件を公表しないつもりだった。なぜなら無人機が不時着した地帯で同機の発見は不可能、あるいは機体が相当の損傷を受けていればイランが捕獲したとしても技術の獲得は困難と見ていたためだ。また公表吸えばイラン上空でのスパイ活動を認めることになり、イラン核開発を阻止しようとするイスラエル秘密作戦に与していることが暴露されてしまう。
- だが羊飼いがほぼ無傷の同機を発見すると一気にニュースがあふれ、米側も同機喪失を認めざるを得なくなった。イランには思わぬ好機となり、世界向けに宣伝戦を展開し、同国の電子サイバー戦能力の成果だと喧伝した。
- いうまでもなく、以上は同機が学校体育館の中にある写真が公表されてからの推測の一つにすぎない。このシナリオではジャミングやGPS探知、衛星リンクの暗号解読や制御リンク乗っ取りは全く関係ない。イランは確かにこの分野での技術を示しているため、一部説ではUAVをジャミングして乗っ取ったとしているが、米無人機に技術上の弱点があるのは事実だが現実とあまりにもかけ離れた解説と言わざるをえない。
- イランはさらに別のUAV二機種を入手している。RQ-11が二機と少なくとも一機のスキャンイーグルがペルシア湾からイラン国内に侵入した後に捕獲されている。
- いずれにせよ2013年2月にその二年前に捕獲したRQ-170内部のデータの暗号解除に成功していなくてもデータの一部にアクセスできた映像を公開している。
- センティネルが撮影した画像では機体下部のカメラがカンダハール飛行場に着陸する様子、C-130が一機、リーバーが少なくとも一機カンダハール基地のシェルターに入っているのが見える。
- そうなると内蔵メモリーは有益な情報を含んだままで、機体制御が失われた際に完全に自動消去されていなかったことになる。搭載するFLIRタレットが撮影した画像含めデータが入手された可能性がある。
- 2014年5月11日にイランはセンティネルをコピーしたUAVを明らかにリバースエンジニアリングの成果として公表した。イラン版のUAVは捕獲したセンティネルの隣に展示されていた。
- 2014年11月10日にIRGC航空宇宙軍司令官アミル・アリ・ハジザデ准将から同機の初飛行に成功したと発表があった。センティネルのコピー機が飛行する様子のビデオが公開されている。
- 2016年10月1日に公開された写真でイランがRQ-170のコピー機を多数整備しているのがわかる。次に来るのは何か要注意だ。
Image credit: Sepahnews, @Azematt
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