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2022年2月11日金曜日

新登場の中国通常型潜水艦は小型ながらPLANのA2AD構想を支える新鋭艦になりそう。合わせ039型C元級の改良にも注目。

 

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NEW_CHINESE_SUBMARINE

VIA CHINESE INTERNET

 

型潜水艦が中国に登場した。この前に別の通常型「セイルなし」艦が関心を集めていたが、今回新たに出現した艦との関係は不明だ。

 

 

ビデオ映像には新型艦が初期テストらしき運用をされる姿があり、ソーシャルメディアに流出した。小型艦で039型元級(250フィート)よりはるかに小さく、潜水艦に詳しいH・I・サットンの試算では全長160フィートだ。

 

サットンは今回登場した新型艦は3年前に現れたセイルなし艦と何らかの関連があるとする。衛星画像では同艦の全長は150フィートと今回登場の新型艦と近い。サットンは新型艦は単船殻構造とし、前回登場したセイルなし艦に共通する。なお、039型は双船殻型だ。

 

今回はセイルがついており、設計の違いが明白だ。今回のセイル構造は艦体にスムーズに一体化されており、ドイツの212型、214型に通じるものがあり、中国では今回が初めてだ。ただし、中国でもMS200潜航艇、S600小型警戒潜水艦、S1100艦でも試行されており、すべて中国船舶重工業China Shipbuilding Industry Corporation( CSIC)が建造している。ただし、今回の新型艦もCSIC建造かは不明だ。

 

その他の目立つ特徴として潜舵が艦本体前方についており、これも214型と共通している。また、セイルには白色マーキングがあり、試験中の中国潜水艦に共通の特攻だ。サットンはこの潜水艦の武装は魚雷発射管4本で再充填用魚雷は搭載していないとする。

 

全体として新型艦でわかっている情報は皆無に近いが、中国が小型通常型潜水艦も大型原子力推進艦と並行して整備を続ける状況を示している。

 

昨年は元級の新型が登場し、西側は非公式名称039C型とした。同艦の特徴としてセイルが設計変更され、ステルス性能を意識した、あるいはソナーか通信装置を搭載した可能性がある。

 

VIA TWITTER

いわゆる039C 型ではセイルの形状が特徴的だ

 

これに対し039A/B型艦は17隻が人民解放軍海軍PLANで供用中で、中国通常型潜水艦部隊の中核となっており、パキスタン、タイへも輸出されている。

 

039A/B型が輸出にもまわされたことで、新型艦の登場が予想される。中国はハイテク艦を輸出し、フランス、ロシア、スウェーデン等と競合しようとしている。

 

新型間の推進方式は現時点では断定できないが、039A/B型は大気非依存型(AIP)を搭載していると言われる。039A/B型のスターリングエンジンは液体酸素とディーゼル燃料で発電し、推進力を得ていると予想される。これにより潜航時間が従来の艦より長くなり、浮上あるいはスノーケル潜航の必要が減る。

 

U.S. NAVY

039A 型元級潜水艦

 

中国はさらに高度な推進方式も開発中と見られており、リチウムイオン電池技術もそのひとつだ。日本がそうりゅう級後期でこれを実用化している。AIPに対する利点として潜航中の高速移動が持続できること、充電時間が短いこと、電池寿命が長くなること、保守整備が簡略化できることがある。電池のみで移動すれば最高の静粛度が実現する。039C型でリチウムイオン電池が導入されているとの観測があり、試験艦としてその他新技術も導入され、今後の建造艦に道をひらく意義があるのだろう。

 

中国は通常型潜水艦が国内用あるいは輸出用の需要があると認識しているようだ。原子力潜水艦のみ運用する米海軍と対照的だ。通常動力艦は建造費が安いため、急速な拡大をめざすPLANのニーズに合うが、同時に中国が想定する戦闘状況にぴったりだと言って良い。

 

原子力潜水艦より静粛度に優れる新鋭通常型AIP潜水艦は浅海域での運用に適しており、PLANは広範な接近阻止領域拒否戦略に投入するつもりなのだろう。今回の新型艦は小型艦体はこの想定似理想的だ。更に建造費が安価となれば中国は数で優位に立てる。

 

米議会に提出された中国海軍力整備に関する報告書では2025年までに元級を25隻配備すると予測しており、あらためて中国の建造能力の高さを印象づけている。今回の新型艦、さらに039C型あるいは開発中の艦が実際に第一線部隊に配備されるかは不明だが、PLANは数と質の双方で潜水艦戦力を整備していくのは明らかだ。■

 

 

New Chinese Diesel-Electric Submarine Breaks Cover 

The latest Chinese submarine design to emerge remains enigmatic but seems to utilize a notably small hull.

BY THOMAS NEWDICK FEBRUARY 8, 2022

THE WAR ZONE

 


2019年4月30日火曜日

米海軍に無人給油機が実現すると航空戦力にどんな変化が生まれるのか

New Navy Carrier-Launched Drone to Fly This Year - Change Attack Strategy 米海軍の新型空母運用無人機の初飛行が今年中に実現しそう-登場で海軍の航空攻撃戦略はどう変わるのか


海軍初の空母搭載無人機が高度な地上テスト中で、初飛行は早ければ今年中になりそうだ。導入で海軍航空戦力に新戦術が実現し、機材の攻撃距離が大幅に伸びる効果を生む。

無人給油機の登場でF-35CおよびF/A-18各型の攻撃半径はほぼ倍増し、空母戦略、技術に展望が開く。ボーイング製作のMQ-25試作機は現在各種テスト中で同社によれば飛行テスト実施も早期実施になる。海軍は昨年ボーイングを選定し次の開発段階に進めた。

テスト準備段階は業界の呼ぶ技術製造開発段階で地上テストから始まる。この段階から空母運用想定で難易度が上がる。

「政府と業界でチームを組みテスト日程をこなし2021年までの初飛行、初期運用能力獲得の2024年という目標を目指す」とMQ-25事業主幹のチャド・リード大佐がWarrior Mavenに伝えてきた。初飛行を2021年とするが海軍は今年中に実現できると述べている。

リード大佐はテスト段階を最長6年とするが、迅速開発方式で短縮化されるとSeapower Magazineが伝えたのは「デジタルモデリング」を多用した調達方式になったためだ。「機体に関すること全てをデジタル環境で再現しています」とブライアン・コリー少将海軍航空システムズ本部航空攻撃装備担当が同誌で述べていた。
Boeing image MQ-25 Stingray


無人機の空母運用では複雑な条件克服が課題だった。風速、艦の速力、海面状況、天候条件で無人機着艦は影響を受ける。

有人機の場合は「フレネルレンズ」が伝える照明ライトを見てパイロットが即座に調整し機体を「グライドスロープ」に乗せ安全に着艦できる。この作業は遠隔操作では困難でほぼ自律運用型の無人機でも同様だ。空母着艦とはヒトの解決能力と認知能力があって可能とされてきた。

とはいえ給油機で空母搭載機の攻撃半径が大幅に伸び、中国の「空母キラー」対艦ミサイルDF-21DやDF-26の射程範囲900マイルの外で発艦できるるようになる。

一例として現状の空母搭載戦闘機の有効行動半径は300から500カイリだが、これが二倍になれば兵力投射の選択肢も広がる。これで空母は敵沿岸地帯から離れた地点でも航空機発艦が可能となり、敵地内部への侵攻攻撃能力も実現する。

次世代の空母用「多重」防御手段が開発中で、電子戦能力、レーザー、長距離センサーは空母を困難な状況でも有効運用できる。同時にここ数年にわたるショック試験の結果からミサイルが艦の近辺に命中しただけでも艦に重大な影響が生まれる事が判明した。そのためDF-21Dのような対艦ミサイルで艦が損傷を受ける事態は直撃でなくても覚悟する必要がある。そこで敵ミサイルの誘導装置を妨害することで進路を外したり、空母近辺で迎撃してもはやり相当のリスクが残る。

2007年実施のショック試験結果を非営利団体MITREコーポレーションが解析したが「非接触型爆発で高圧衝撃波が艦に向かう」のが最大の脅威だと判明した。

MITRE報告書が興味をひくのはショック試験の発想は第二次大戦時にあるとの指摘だ。

「第二次大戦中の『ニアミス』爆発で艦体や上部構造物に損傷は生まれないもののショックや振動で重要装備が使えなくなる被害が生まれることがわかった」とMITREは指摘している。

MITRE分析ではさらに近接地点での爆発で隔壁が共鳴し艦が上方へ動くことがわかった。「局部的に大きく変形する」

こうした中で空母運用給油機の投入が今後の攻撃方法の選択肢に不可欠な存在となる。空母防御能力があらゆる段階で実現したとしても給油機により空母搭載機材の攻撃対象が全く新しくなるからだ。■

-- Kris Osborn is a Senior Fellow at The Lexington Institute --
Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army - Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has a Masters in Comparative Literature from Columbia University.

2019年1月22日火曜日

地政学で考える。 中国のA2AD戦略を中国に向け使えばどうなるか


Time to Use China's A2/AD Military Strategy Against Them

中国のA2/AD戦略を逆に中国に使う時が来た

A U.S. access-denial strategy, then, would impose a hard fate on China. Which is the point. Threatening fearful consequences could deter Beijing from aggression tomorrow morning, and the next.
米国が接近阻止戦略を取れば、中国に深刻な影響を与え、強硬な態度は取れなくなる
January 20, 2019  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: ChinaAmericaA2/adSouth China SeaU.S. Navy

週はペンタゴンから中国に関する資料が二点続けて公開された。まず国防情報局(DIA)が中国の軍事力報告を冷戦時のソ連の軍事力評価にならう形で発表した。人民解放軍(PLA)に詳しい筋には同報告書には驚く内容は少ないが初心者やしばらく情報に接していない方には有益だろう。興味のある向きは下リンクを参照してもらいたい。
DIA報告に続きペンタゴンが「中国のグローバルアクセス拡大に対応する米国防体制の評価」を発表し、中国の「大戦略」を評価している。こちらのほうが短く、一読の価値はあるだろう。
「大戦略」の言葉を編み出したのは英国の軍人著述家B・H・リデル=ハートで大作「戦略論」(1954年)で大戦略とは外交力、経済力、文化、軍事力を使いこなして「平和状態」を向上していくことにあり、武力を用いずにこれを実現するのが望ましいとした。大戦略思考では高所から大局を捉える。
「中国のグローバルアクセス」の編者は「アクセス」の用語を正しく選んでいる。中国の大戦略は世界各地につながるアクセスを確保することにかかっているからだ。中国も海上輸送での物資輸送に依存する点で他の交易国と変わらない。貨物船には海外の寄港先がなければ貨物の積み下ろしができず本国への輸送もできない。
海洋戦略とは大戦略を海上で展開することにほかならない。
そこでアルフレッド・セイヤー・マハン大佐が登場する。中国の海洋戦略の先祖と言って良い大佐にとって海洋戦略の目的ならびに原動力はアクセスそのものだ。米国を海洋国家に導いた思想家としてマハンは商業、政治、軍事それぞれのアクセスを重要な交易相手に確保しておくことが海洋戦略の目的と説いた。
マハンは商業取引を最上段においた。海上交通を重要視する各国は交易アクセスに有益なアクセスを外交で求めるが、軍事アクセスで外交、交易のアクセスが容易になることもある。アクセスにより動きのサイクルが生まれる。国内製造業は海外市場で製品を関税を払ってでも販売して収入を確保し、これを海軍力整備にまわす。海軍は商品の海上輸送を守り、敵対勢力には海上交通路を閉鎖する。
大戦略での海上交通関連部分ではこの相互作用が産業、外交、軍事各面の活動に見られる。中国政府はこれを骨身にしみるほど熟知している。
マハンの時代のアメリカと違い中国にとってアクセスは容易ではない。当時も今と同じく、政治地図では米国は大西洋、太平洋で邪悪な隣国から自由であった。逆に中国には地理が逆作用となる。当時でも中国は上海や天津に遠隔地から到来する船舶に苛立っていたはずだ。
それは中国の船舶往来は必ず「第一列島線」として日本南部から台湾、フィリピン、インドネシアにつながる島しょを通過する必要があるからだ。この島しょ部分に強力な米海軍空軍部隊が駐留しており、各国は米国の同盟国友邦国であり、中国の敵となる。
言い換えれば、中国に経済、地政学の恩恵をもたらすはずの船舶航空機は敵性国の軍事力の影を意識して往来する必要がある。戦略地図では大国としては珍しい形で中国の野望が妨害を受けているのだ。
.PLA海軍創設時の戦略家劉華清Liu Huaqing提督たちが第一列島線を「金属の鎖」と表現し、これを突破しないと習近平主席が好んで使う「中国の夢」は達成できないと考えたのは当然だろう。第一列島線を突破すべく一部の占領や台湾あるいは米国の同盟国を外交手段ででたらしこむことが戦略的勝利に欠かせない。
アクセスが成功を呼ぶ。このマハン流の考えは「中国のグローバルアクセス」に一貫して流れている。
植民地時代を扱う歴史家は交易が先で国旗が続いたのか、国旗に交易が続いたのかを問うことが多い。商業上の利益追求から交易地につながるアクセスが生まれ、外交軍事面の保護が必要となった、つまり国旗だが、あるいは外交団や軍人が先に乗り込んで安全を確保してから商業活動が続いたのかという議論である。
マハンは同時に実現可能と主張していたようだ。米国が産業基盤と商業活動を確立し、商船隊と海軍部隊を建造し遠隔地の海港へのアクセスを追求すべきと熱く説いた。また商業活動、艦船、港湾拠点を海洋力の「鎖」の3つの「リンク」と好んで呼んでいた。3つを同時にリンクしたかったのだ。
今回の報告書をまとめた専門家は意図的かは別に中国がマハン教義を忠実に守る立場を捨てたと暗示している。中国が外交経済両面で外界へのアクセス確保をめざしているのは事実だが軍事アクセスがその後を追うこともある。その例としてPLA海軍がアデン湾に戦隊を十年近く配備しており、また世界各地に遠洋航海をしている。ただし西インド洋を除けば中国海軍はプレゼンスを常時確保できていない。
そこで中国の東アジア以遠での大戦略の護り手は非軍事手段である、いまのところは。
このパターンは地理条件から生まれた。中国が「遠隔海域」のインド洋や地中海でなにか達成しようとれば商船隊や海軍艦艇を本国周辺の「近海」から現地に派遣する必要がある。遠隔地での活動を考えると中国周辺海域から西太平洋へのアクセスの確保が必須と判明した。
.興味深いことに「中国のグローバルアクセス」は米国による戦略対応策に触れていない。当然必要だろう。ユーラシアへの商業、政治、軍事各面のアクセスこそマハン時代から一貫して米国の大戦略の中心課題であり、マハン自身がこれを主張していた。
中国、ロシア、その他沿岸国が「接近阻止領域拒否」に役立つ兵器を展開し米海軍を近づけまいとしているためアクセスが今や危険に立たされている。在日米軍基地他列島線上の軍事施設へのアクセスがなければ米国は意味のある戦略上の役割を果たせなくなる。
アクセス確保こそ米軍の最重要課題と考えるだろう。
.逆にペンタゴンが接近阻止領域拒否戦略を打ち出せば良い。PLAと中国共産党が海洋アクセス確保に必死になるのは列島線でアクセスを否定されれば中国は世界と貿易できなくなるためだ。
マハン教義を応用して列島線内の水路を封鎖すれば植物の根を枯らすと同じ効果になる。中国の商船隊やPLA海軍が外洋に出られなくなる。中国の夢の実現には貿易が死活的な意味を持つのだ。
  • この過程で地理上の利点は消える。
  • 米国がアクセス拒否戦略を取れば中国の運命は悲惨だ。これが重要だ。恐ろしい結果をちらつかせれば中国は強硬策を翌日に引っ込める。その次の日も。習近平一味が忍耐するしかないと気づくのではないか。中国、アジア、世界は共存に向かう。
  • アクセスの重要性を再認識することで道は開く。■
  • James Holmes is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College, coauthor of Red Star over the Pacific (new in print last month), and author of A Brief Guide to Maritime Strategy (forthcoming this November). The views voiced here are his alone.​
  • Image: Flickr

コメント: マハン、なつかしいですね。米国よりも熱心にマハンの著作を貪るように呼んでいたのは帝国海軍士官でしたが、PLAでも熱心な読者がいたのですね。中国があれほど強硬な態度に出るのはそれだけ自国が不利な条件にあるからであり、自由主義圏はこれを意識した「封じ込め」で中国を「正しい」方向に導き、軍拡をやめ、経済の活性化に資源をまわす、というシナリオでしょうか。

2018年10月28日日曜日

INF条約脱退の真意を取り違えるな

日本でもINF条約脱退はトランプの誤った政策であり、軍拡競争を招く愚策、みたいな報道が目立つと思いますが、地政学の見識がないとこうなるのでしょうね。一方で中間選挙ではロシア、中国が選挙結果を操作しようとするはずですが、それだけトランプが目障りであることの証左であり、逆に言えばトランプ政権の方向が自由世界に望ましいと言えるのでは。少なくとも旧政権よりは望ましいでしょう。

Why America Leaving the INF Treaty is China's New Nightmare 米国のINF条約脱退が中国の悪夢になる理由

It would allow Washington to finally compete with Beijing in building similar weapons previously banned under the treaty.米国は以前禁止されていた兵器開発が可能となり中国と同等の兵力を整備できる。
国が10月20日に1987年締結の中距離核兵力(INF)条約脱退の意思を示し、ドナルド・トランプ大統領はロシアが「長年に渡り同条約を違反してきた」とし「このまま核合意違反を続けこちらが保有できない兵器の整備に向かうのは看過できない」と述べた。
だがロシアの違反事例(2008年初めにロシアは禁止対象の巡航ミサイルの飛翔テストを開始していた)への批判とは別に、米国がINF条約から脱退する理由はロシアではなく、かつ核兵器が理由でもない。戦略的な競争構造が新しくなっている今日、米国の動きはアジア太平洋での中国を睨んだものなのだ。
中国はINF条約に調印しておらず、核・非核の地上発射弾道ミサイル・巡航ミサイルで射程500キロから5,500キロの兵器開発・配備を禁止した条約と無縁だ。このため中国は通常型接近阻止領域拒否(A2/AD) 兵器多数を開発し、中にはDF-21「空母キラー」(射程1,500キロ)もある。米国はこうした各種兵器を開発配備できない。
このため米国は緊張が高まる西太平洋で海上空中での「射程距離競争」に大きく取り残されている。ハイエンド武力衝突が発生の場合、米海軍水上艦艇は不利な状況に気付かされ、旧式スタンドオフミサイルのトマホークや対地攻撃ミサイルしか使えず、脆弱な空母配備航空兵力は強力なA2/AD兵器が中国内陸部から発射されても手も足も出ない。
CIAで中国問題の主任分析官を勤めたクリストファー・ジョンソンはThe Economistで「いかなる有事でも最初の数日は米軍は相当の威力を発揮する」が「その後に全部隊は日本へ退避させる必要があり、中国本土への攻撃を十分行えなくなる」と述べている。また中国国内の対艦兵器を攻撃できないまま中国沿岸へ空母が接近すれば甘受できない規模の危険が生まれる」
ただしINF条約脱退で米国はこれまでの流れを逆転し中国にとって悪夢のシナリオが実現する。
新規整備の米軍の通常兵器の皮切りは地上発射型トマホークになり、最終的にはDF-21やDF-26に匹敵する弾道ミサイルが生まれ、不沈空母たる日本、グアムや南部フィリピン、あるいはオーストラリア北部に配備されるだろう。
こうした新型装備は西太平洋での新たな米軍事戦略の屋台骨になる可能性がある。新戦略とは米国もA2/AD装備で中国を「第一列島線」内部に閉じ込めることで、マイケル・スウェインはじめ識者が有事に「占拠できない島」をつくることだとしている。この戦略をアンドリュー・クレピネビッチは「列島線防衛」と呼び、米軍の機体、艦艇に多大なリスクを発生させず中国の軍事侵攻を阻止・封じ込めることとする。それだけではなくこの戦略には著しく高価な(かつ多数の人員が乗る)空母戦闘部隊を投入するよりはるかに安価に制海権を維持できる可能性がある。
中国はこうしたシナリオが現実になることを以前から警戒しており、米国・同盟国の防衛体制で中国海軍が第一列島線を突破することが困難になれば中国は海洋兵力を遠距離に投射できなくなってしまう。
一方で軍備管理専門家の間に米国がINF条約を脱退すれば新たな「ミサイル競争」が始まるとの警告を出す動きがあり、ロシア政治家アレクセイ・プシュコフは脱退は「世界の戦略的安定に大きな打撃となる」とまで述べている。しかし、米中両国の範囲で見れば、脱退に戦略的安定度は以前より高まる。以下2つの理由を述べる。
第一に、米国が列島防衛戦略構想を現実に移せば、「喪失が耐えられないほど重要な装備」の空母を有事に中国兵器射程内に移動させる必要が消える。空母を喪失すれば米国への打撃はあまりに大きく(空母一隻で6千名が搭乗している)、米指導部もそのまま引き下がれなくなり状況は一気にエスカレートの危険がある。逆に、安価で無人の長距離攻撃兵器が空母の代わりを務めればエスカレートの可能性が減る。
第二に、米水上艦を中国に接近させる必要が減れば、中国国内のミサイル陣地攻撃を実施する必要も減る。この意味は大きく、ケイトリン・タルマッジがForeign Affairsに寄稿したように中国の核兵器は通常ミサイル部隊に混合配備されており、米軍が通常兵器へ攻撃を加えれば中国の核抑止力の破壊を避けることがほぼ不可能となる。そのため中国指導層は核兵器投入をためらわず事態は「一気に核戦争に向かう」と指摘している。
報道では大部分がロシアの対応や欧州各国の反応に注意を払っているが、米国のINF条約脱退はアジアで真の意味を示すことになる。■
Nathan Levine is a U.S.-China fellow at the Asia Society Policy Institute and an associate of Harvard's Belfer Center for Science and International Affairs.
Image: Wikimedia Commons

2018年3月13日火曜日

★21世紀に必要なのは戦艦だ...といっても大鑑巨砲主義ではなく中国の攻撃を跳ね返す新発想の戦闘艦です

記事でいう戦艦とはノスタルジックな大型戦艦ではなく、中国の猛攻撃に耐えられる十分な装甲を持つ水上艦で、著者の主張は最前線に投入すべきる全損製高い艦として、巨艦である必要はないでしょう。ズムワルト級の理論的延長かも知れません。それだけ中国の軍事力を評価していることであり、主敵を中国に想定していることがよくわかります。ところでBattleship を戦艦と訳すのであればBattle plane (小型戦闘機では不可能な攻撃能力、フルステルス性能を盛り込んだ大型機構想)は戦機?悩むところです。



 

The Case for a 21st-Century Battleship 21世紀型戦艦を想定する





March 8, 2018


第二次大戦中の日本の超大型戦艦大和と武蔵はともに海軍史上最大の18.1インチ主砲9門を搭載したもののアメリカ海軍戦艦を一隻も沈めていない。海戦の勝敗は航空戦力が決定し、大和・武蔵は旗艦でありながら輸送任務にも投入された。これだけ重武装をしながら両艦は過去の歴史をひきづったいわば鋼鉄の恐竜になってしまったのだ。
だが鋼鉄の恐竜をどうやって沈めたのか。容易ではなかった。大和には魚雷11本爆弾6発を命中させた。武蔵は魚雷19本爆弾17発が必要だった。しかも沈没時点で両艦は先に受けた損害を応急措置していた。戦略的には無用の存在だったが、大和・武蔵は不沈艦に近かった。
海軍艦艇建造には長期の事前準備が必要なため計画部門は直近戦役のイメージから自由になれないリスクがある。第二次大戦後の米海軍は空母中心の体制になった。だが世界規模の戦役は発生せず別の形のミッションが多数発生中だ。中国の台頭に対抗して頻度が増えているのがFONOPsすなわち航行の自由作戦だがここで戦闘は全く必要ない。
ここ数年にわたり中国の法的根拠のない南シナ海領有の主張の声は大きくなるばかりである。対抗して米国は定期的にFONOPsを実施し駆逐艦を中国が作った人工島から12カイリ以内を航行させ、北京の主権主張に挑戦している。今のところ中国は作戦の妨害などは示していない。
だが駆逐艦は脆弱だ。昨年6月のUSSフィッツジェラルド事故ではコンテ貨物船と衝突し駆逐艦乗員7名が犠牲となり作戦行動できなくなった。8月にはUSSジョン・S・マケインが原油タンカーと衝突し沈没寸前となり10名が犠牲となったがタンカーに人的損害はない。操艦のまずさは別としても衝突事故二件から今日の海軍艦艇の欠点である残存性の低さが浮かび上がる。原油タンカーに海軍艦艇は脅威であったのであり、逆ではない。
米海軍には空母打撃群による攻撃力が必要だし、打撃群には装甲が薄っぺらい誘導ミサイル駆逐艦がある。だが敵攻撃を受けても航行可能な艦が必要だ。強靭なら中国が精密攻撃能力を開発する中で重要な性能になる。南シナ海の航行は装甲がない艦船では危険になりそうだ。
攻撃を避ける意味でステルスは一つの解決策で米海軍はステルス駆逐艦の開発で先端を走る。しかしステルスではFONOPの目的に合わない。視認されることに意味があるのだ。昔ながらの戦艦なら視認されることを前提にしている。だが21世紀にわざわざ昔通りの戦艦を建造する必要はない。新発想の戦艦をかわりに作ればよい。
現代版戦艦は高性能装甲素材に自動損傷復旧機能を付け事実上不沈艦となる。攻撃兵装はミッション別に想定するがカギは残存性だ。危険戦域に派遣しても何とか帰港できる艦となるだろう。
この「未来の戦艦」があれば接近阻止領域拒否 (A2/AD) で米国を西太平洋から追い出す中国戦略へ対抗策になる。中国は陸上、洋上、海中、宇宙に配備したセンサー多数を接続し第一列島線の日本、沖縄、台湾、フィリピンを通過する存在すべての探知を中国本土からめざしているが、精密攻撃兵器体系の能力向上もあり探知標的をすべて攻撃する能力が実現しそうだ。
米国の対応はエアシーバトル、JAM-GC、第三相殺の各構想と変化してきた。共通するのは最良の防衛は有効な攻撃力と見ることで、中国のA2/AD攻撃から防御するのではなく、米国がまず指揮統制系統を破壊しセンサーと精密誘導兵器の連携を切断する。問題はこれだと全面戦争にエスカレートすることだ。
ここに将来型戦艦の活躍の余地があり、限定戦で米国に選択肢が生まれる。たとえば中国の海中センサーを無力にしたり海底ケーブルを切断することで中国の挑発行為に対抗する。中国や北朝鮮が多用する体当たり戦術だでもこの艦なら耐えられる。またA2/ADが撃ち合い戦に拡大しても同艦なら危険地帯で作戦を遂行しながら米攻撃部隊が戦局を好転するまで踏みとどまれる。
米海軍が往時の大艦巨砲主義に復帰することは決してないが、艦艇の装甲性能を再検討すべき時に来ている。最前線での攻勢作戦には敵攻撃を受けても平気なラインズマンが少数でも必要だ。将来型戦艦により米海軍並びにその延長で大統領に敵の完全殲滅以外の軍事オプションが生まれる。通常のFONOPsでこのオプションの必要性が痛感されている。A2/AD脅威によりさらに危険なミッションが生まれそうな中、任務達成できそうなのは頑健な将来型戦艦しかない。■
Salvatore Babones is an associate professor of Sociology and Social Policy at the University of Sydney.
Image: Wikimedia Commons

2017年11月18日土曜日

中国の台湾侵攻等野望を止めるのは周辺国のA2/AD戦略だ



うーん、この通りなら中国の軍拡が進んでも日本含む周辺国がA2/ADを独自に整備すれば、中国はさらに軍事支出をふやしいつか破綻するのではないでしょうか。もちろん周辺国も侵攻を受けるリスクが増えるわけですし、中国の既得権も認めることになるわけですが。一種の開き治り戦略ともいえるでしょうね。両陣営が戦わずに勝利をそれぞれめざすことになります。それにしても中国に同盟国がないことが救いで、それだけにふらふらする韓国の動向が非常に気になるところです。


Why China Can't Conquer Taiwan in a War

中国が台湾を背圧武力制圧できない理由
November 17, 2017


第19回党大会で権力基盤を固めた習近平主席が内向きになる米国を見てアジア太平洋を中国の思いのままにする好機と見ているかもしれない。この度発表された研究成果ではこの点に触れつつ、北京に周辺国を敗退させる軍事力はないと分析し、とくに台湾占領は無理だとする。
  1. 研究をまとめたのはマイケル・ベックリー Michael Beckley(タフツ大准教授(政治学))で学術誌International Securityに掲載した。ベックリーは米軍支援が最小限でも中国周辺国が各国で接近阻止領域拒否戦略を取れば中国軍の阻害は可能と主張。
  2. 「東アジアで新しい軍事力バランスが出現の兆候があり、米国は中程度のリスクで兵力増強が可能だ」「このバランスは今後も安定したままとなる。各国のA2/AD効果を打ち破る兵力投射能力は中国に実現しないためだ。根拠は兵力投射部隊の整備はA2/AD部隊整備よりはるかに大規模な予算が必要となるからだ」と述べている。
  3. A2/ADは米国の介入をさせない中国戦略として語られているが、ジェイムズ・ホームズ、トシ・ヨシハラ、アンドリュー・クレピネヴィッチ等は米国はアジア同盟国とともにこの戦略を中国相手に展開すべきと主張している。中国を困難にさせればよいというのだ。ベックリーは「この戦略では米国は東アジア制海権は断念するかわりに周辺国を助けて中国の制海権制空権確立を困難にすればよい」と説明。
  4. ベックリーは新戦略を想定される軍事衝突シナリオ数点で試した。その一つが台湾海峡からの中国侵攻だ。そもそも揚陸侵攻作戦は難易度が一番高いが、侵攻部隊の移動途中を狙える精密誘導兵器の時代では一層困難になる。
  5. 台湾侵攻作戦の成功には中国は航空優勢、海上制圧の完璧な確立が必須だ。「台湾に防空体制や攻撃手段が温存されれば中国の侵攻は不可能となる。台湾海峡を移動中の中国艦艇を攻撃できる制海権を台湾が維持するからだ」とし、中国にはミサイル相当数があり開戦直後に台湾防空体制を破壊するといわれるが、台湾を無力化するには完全な奇襲攻撃でない限り無理とする。台湾の早期警戒が有効なら作戦機材を国内36箇所の航空基地、民間空港さらに高速道路に分散させ緊急運用体制を整えるだろう。台湾には移動式ミサイル発射機、対空兵器もあり艦船潜水艦も巡航ミサイルで中国部隊を攻撃するだろう。
  6. ベックリーが指摘するように中国が防衛体制を先制攻撃ですべて壊滅させるとは考えにくい。まず台湾には高性能早期警戒防空体制がある。米国でさえ第一湾岸戦争でここまでの実力がないイラク防空網や1999年のセルビアで完全破壊できなかったではないか。
  7. 当時の米国を上回る実力を中国が示したとしても揚陸作戦の成功は確実とは言えない。例えばベックリーは上陸に適した地点は台湾海岸線の1割しかないと指摘し、台湾は一部地点に重点的に防御態勢を敷けばよく中国上陸部隊は数の上でも劣勢になるという。
  8. そうなると最大限に楽観的な評価(北京の視点)をつかってまでも中国は台湾占領に躍起となるだろう。ベックリーは「米国は侵攻部隊を失敗させ戦況を一変させるべく米軍艦船や非ステルス機を中国のA2/ADに晒せる必要のない対応方法多数がある」と述べている。具体的には米軍による試算では「台湾の沿岸部に1万ないし2万ポンドを投下してPLA侵攻部隊をなぶり殺しにする」必要がある。この役目にはB-2爆撃機一機あるいはオハイオ級潜水艦一隻を投入すればよい。
  9. さらにベックリーは東シナ海、南シナ海の制海権を中国は簡単に確立すできないと指摘する。ヴィエトナムや日本の抵抗をその理由にあげる。中国が地域内で軍事優位性を手に入れる可能性がは一般に考えられるより低い。このため中国は戦わずに勝利する戦略をとっているのであり、今までのところ比較的成功していると言える。■
Zachary Keck (@ZacharyKeck) is a former managing editor of The National Interest.
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