日本でもINF条約脱退はトランプの誤った政策であり、軍拡競争を招く愚策、みたいな報道が目立つと思いますが、地政学の見識がないとこうなるのでしょうね。一方で中間選挙ではロシア、中国が選挙結果を操作しようとするはずですが、それだけトランプが目障りであることの証左であり、逆に言えばトランプ政権の方向が自由世界に望ましいと言えるのでは。少なくとも旧政権よりは望ましいでしょう。
Why America Leaving the INF Treaty is China's New Nightmare 米国のINF条約脱退が中国の悪夢になる理由
It would allow Washington to finally compete with Beijing in building similar weapons previously banned under the treaty.米国は以前禁止されていた兵器開発が可能となり中国と同等の兵力を整備できる。
米国が10月20日に1987年締結の中距離核兵力(INF)条約脱退の意思を示し、ドナルド・トランプ大統領はロシアが「長年に渡り同条約を違反してきた」とし「このまま核合意違反を続けこちらが保有できない兵器の整備に向かうのは看過できない」と述べた。
だがロシアの違反事例(2008年初めにロシアは禁止対象の巡航ミサイルの飛翔テストを開始していた)への批判とは別に、米国がINF条約から脱退する理由はロシアではなく、かつ核兵器が理由でもない。戦略的な競争構造が新しくなっている今日、米国の動きはアジア太平洋での中国を睨んだものなのだ。
中国はINF条約に調印しておらず、核・非核の地上発射弾道ミサイル・巡航ミサイルで射程500キロから5,500キロの兵器開発・配備を禁止した条約と無縁だ。このため中国は通常型接近阻止領域拒否(A2/AD) 兵器多数を開発し、中にはDF-21「空母キラー」(射程1,500キロ)もある。米国はこうした各種兵器を開発配備できない。
このため米国は緊張が高まる西太平洋で海上空中での「射程距離競争」に大きく取り残されている。ハイエンド武力衝突が発生の場合、米海軍水上艦艇は不利な状況に気付かされ、旧式スタンドオフミサイルのトマホークや対地攻撃ミサイルしか使えず、脆弱な空母配備航空兵力は強力なA2/AD兵器が中国内陸部から発射されても手も足も出ない。
CIAで中国問題の主任分析官を勤めたクリストファー・ジョンソンはThe Economistで「いかなる有事でも最初の数日は米軍は相当の威力を発揮する」が「その後に全部隊は日本へ退避させる必要があり、中国本土への攻撃を十分行えなくなる」と述べている。また中国国内の対艦兵器を攻撃できないまま中国沿岸へ空母が接近すれば甘受できない規模の危険が生まれる」
ただしINF条約脱退で米国はこれまでの流れを逆転し中国にとって悪夢のシナリオが実現する。
新規整備の米軍の通常兵器の皮切りは地上発射型トマホークになり、最終的にはDF-21やDF-26に匹敵する弾道ミサイルが生まれ、不沈空母たる日本、グアムや南部フィリピン、あるいはオーストラリア北部に配備されるだろう。
こうした新型装備は西太平洋での新たな米軍事戦略の屋台骨になる可能性がある。新戦略とは米国もA2/AD装備で中国を「第一列島線」内部に閉じ込めることで、マイケル・スウェインはじめ識者が有事に「占拠できない島」をつくることだとしている。この戦略をアンドリュー・クレピネビッチは「列島線防衛」と呼び、米軍の機体、艦艇に多大なリスクを発生させず中国の軍事侵攻を阻止・封じ込めることとする。それだけではなくこの戦略には著しく高価な(かつ多数の人員が乗る)空母戦闘部隊を投入するよりはるかに安価に制海権を維持できる可能性がある。
中国はこうしたシナリオが現実になることを以前から警戒しており、米国・同盟国の防衛体制で中国海軍が第一列島線を突破することが困難になれば中国は海洋兵力を遠距離に投射できなくなってしまう。
一方で軍備管理専門家の間に米国がINF条約を脱退すれば新たな「ミサイル競争」が始まるとの警告を出す動きがあり、ロシア政治家アレクセイ・プシュコフは脱退は「世界の戦略的安定に大きな打撃となる」とまで述べている。しかし、米中両国の範囲で見れば、脱退に戦略的安定度は以前より高まる。以下2つの理由を述べる。
第一に、米国が列島防衛戦略構想を現実に移せば、「喪失が耐えられないほど重要な装備」の空母を有事に中国兵器射程内に移動させる必要が消える。空母を喪失すれば米国への打撃はあまりに大きく(空母一隻で6千名が搭乗している)、米指導部もそのまま引き下がれなくなり状況は一気にエスカレートの危険がある。逆に、安価で無人の長距離攻撃兵器が空母の代わりを務めればエスカレートの可能性が減る。
第二に、米水上艦を中国に接近させる必要が減れば、中国国内のミサイル陣地攻撃を実施する必要も減る。この意味は大きく、ケイトリン・タルマッジがForeign Affairsに寄稿したように中国の核兵器は通常ミサイル部隊に混合配備されており、米軍が通常兵器へ攻撃を加えれば中国の核抑止力の破壊を避けることがほぼ不可能となる。そのため中国指導層は核兵器投入をためらわず事態は「一気に核戦争に向かう」と指摘している。
報道では大部分がロシアの対応や欧州各国の反応に注意を払っているが、米国のINF条約脱退はアジアで真の意味を示すことになる。■
Nathan Levine is a U.S.-China fellow at the Asia Society Policy Institute and an associate of Harvard's Belfer Center for Science and International Affairs.
Image: Wikimedia Commons
moneyfreedom 様、また記事を引用させて頂きたいのですが宜しくお願い致します。
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