数々の紛争で、履帯式の水陸両用強襲車両は海兵隊作戦の主力だった。
USMC
米海兵隊はこのほど、50年以上にわたる運用を経て、履帯式水陸両用強襲車両(AAV)シリーズの正式退役を宣言した。2018年以降、海兵隊はAAVを新型の水陸両用戦闘車両(ACV)(8×8車輪式設計)で置き換える作業を進めてきた。
海兵隊は9月26日、カリフォーニア州キャンプ・ペンドルトンの水陸両用攻撃学校にてAAVの退役式典を行い、公式発表が昨日発表された。退役計画の最終調整が続く中、部隊に配備されたままのAAVが存在するかは不明である。
9月26日の退役式典でキャンプ・ペンドルトンを機動するAAV。USMC
キャンプ・ペンドルトンでの退役式典では車両の小規模なパレードが行われ、冒頭の写真のようにハッチを開けた車両にワニの着ぐるみを着た人物が立っていた。アリゲーター(ワニ)やゲーターは、第二次世界大戦中に米軍に導入されて以来、履帯式水陸両用車両の通称として用いられてきた。また、水陸両用トラクター(Amphibious Tractor)の合成語である「アムトラック(amtrac)」も、米国ではこの種の車両を指す言葉として広く使用されている。
水陸両用車学校司令官のリン・ベレンセン海兵隊大佐は式典で「AAVファミリーは、艦船と海岸を結ぶ架け橋、装甲戦闘車両、兵員輸送車、兵站プラットフォーム、時には救命艇としても機能してきた」と述べた。「最も重要なのは、海兵隊員が戦闘、任務遂行、そして犠牲においてその名を刻んだ舞台であったことだ」
海兵隊は1972年、当初上陸用装輪車両7号(LVTP-7)として知られる車両の配備を開始した。LVTP-7は1956年に配備された前世代のLVTP-5よりも小型・軽量で、収容人員も少なかったが、陸上・水上での速度が向上し、無給油航続距離も拡大した。水中の推進力を履帯に依存していた前世代とは異なり、LVTP-7は船体後部両側に一対の水噴射推進装置を備えていた。武装は車体前部上部の砲塔に搭載された1挺の.50口径M85機関銃(右側にオフセット配置)であった。海兵隊はさらに指揮統制任務用(LVTC-7)および回収任務用(LVTR-7)の特殊派生型も配備した。
1982年の演習中に撮影された海兵隊のLVTP-7。DOD
LVTP-7はベトナム戦争には間に合わなかったが、1980年代初頭のレバノンにおける多国籍平和維持活動で実際に運用された。また1983年のグレナダ侵攻作戦では水陸両用強襲車両として投入されている。なおLVTP-7は輸出もされており、アルゼンチン軍が1982年のフォークランド紛争初期段階で運用した事例がある。
1983年、レバノン首都ベイルートでLVTP-7の車体上に座る海兵隊員。DOD
1980年代初頭から、海兵隊のLVTP-7艦隊は大規模な改修プログラムを実施。新型エンジン・トランスミッションの搭載、ウォータージェットポンプの更新など多数の改良が施され、改修後はAAVP-7と再指定された。LVTC-7とLVTR-7も同様に新仕様に更新され、それぞれAAVC-7とAAVR-7となった。1980年代後半には、AAVに搭載されていた従来のM85武装砲塔も、より一般的なM2 50口径機関銃と40mm Mk 19自動グレネードランチャーを装備した全く新しい砲塔へと交換され始めた。
2003年クウェートで、海兵隊員が左側のAAVR7を用いて右側のAAVP7の砲塔を操作している様子。DOD
海兵隊は改良型AAVを1991年の湾岸戦争で実戦投入した。冷戦終結後の1990年代初頭のソマリア作戦を含む、その他の作戦にも投入された。この時期には強化装甲キット(EAAK)の開発・配備も行われ、小火器や榴弾に対する防護性能が向上した。
強化装甲キットを装着した AAV。USMC
AAV は 1990 年代後半から、エンジン交換やサスペンションの改良など、新たな大規模なアップグレードが実施された。その結果、A1 型は、米陸軍のブラッドリー戦闘車両と同じエンジンやその他の部品を採用し、兵站や供給網の面でさらなるメリットをもたらした。
海兵隊は 2003 年に AAV をイラクに持ち込んだが、その性能、特に乗員と兵員の保護レベルについて大きな批判に直面した。ナシリヤの戦いでは、8 台が損傷または破壊され、少なくとも 1 台は、味方である米空軍の A-10 ウォートホグ 地上攻撃機の攻撃を受けた。
ナシリヤの戦いで破壊された AAV の 1 台。DOD
「2005年、ファルージャとその周辺で、何度も銃撃を受け、車両の側面で弾丸が跳ね返ったことを思い出します。しかし、必要な時にはいつでも確実に動作することを知っていました」と、水陸両用攻撃部隊の司令官ベレンセン大佐は、昨日のインタビューでTask & Purpose の記者団にこう語った。「あの車両は、どんな状況でも確実に任務を遂行してくれると確信していた。まさに安心して運用できる装備の一つだった」
2012年以降、海兵隊はAAVをより近代的な水陸両用「遠征戦闘車両(EFV)」への更新を進めてきた。EFVは特に、水上でハイドロプレーニングにより時速約30マイル(約48km)で移動できる設計だ。これにより米海軍の揚陸艦艇は、より沖合から車両を展開できるようになり、特に沿岸に配備された対艦巡航ミサイル部隊など、増大する脅威から車両を保護できるはずだった。EFVはまた、30mm自動砲を備えた砲塔を特徴とし、火力を大幅に強化している。
しかしこれらには代償が伴い、EFVの推定単価は約2000万ドルに達し、当時のM1エイブラムス戦車の最新型より高価となった。当初は2015年の初配備を目標としていたが、コスト増大により2011年に計画は中止された。AAVのさらなる改良計画(特に生存性向上に重点を置いたもの)は2015年に開始されたが、新型ACVの調達決定に伴い2018年に中止となった。
2018年に中止となった「強襲水陸両用車生存性向上パッケージ」試験中の改造AAV。USMC
この時点で老朽化したAAVは、火災や車両沈没による乗員閉じ込め事故など、致命的な事故を頻発するようになっていた。特に悪名高い2020年7月の事故では、カリフォーニア州サンクレメンテ島沖太平洋での訓練中に1両が沈没し、搭乗中の海兵隊員8名と米海軍水兵1名が死亡した。2021年末、海兵隊はAAVの通常配備を停止し、緊急危機対応作戦支援時を除き水域への進入を禁止した。車両は先月まで海外を含む陸上演習で引き続き使用されていた。
2025年9月、エジプトで行われた演習「ブライトスター25」で確認された海兵隊AAV。USMC
後継のACVも配備初期に相次ぐ事故に見舞われた。海兵隊はその原因解明から、履帯式AAVと大きく異なる8×8車輪式設計にした。現在ACVは世界中の作戦支援で通常運用されており、30mm自動砲塔装備型を含む追加バリエーションの調達を進めている。
ACV3台。左から、指揮統制型水陸両用戦闘車両(ACV-C)、30mm砲装備型ACV-30、標準人員輸送型ACV(ACV-P)。USMC/アレクシス・サンチェス軍曹
海兵隊が当初、履帯式ではなく車輪式設計を選択した判断は、多くの議論を呼んだ。特に、履帯式車両と比較すると、車輪式装甲車両は砂浜のような軟弱な地盤で性能が不安定になる一方、特に舗装道路などの硬い地盤では高速走行が可能という特徴がある。また、ACVの水上速度はAAV(水陸両用戦闘車両)と比べて特に速くない。
2020年以降、海兵隊の装甲車両に対する全体的な見方も劇的に変化している。海兵隊は現在も、新たな遠征型・分散型作戦構想(CONOPS)に沿った戦力構造の全面見直し中で、特に重装備部隊を従来型大型揚陸艦艇で展開する作戦への依存度を大幅に低減している。この方針転換により、M1エイブラムス戦車の全廃が決定した。ACVの計画総配備数も1,122両から632両へ削減された。
AAVは世界中の多くの軍隊で引き続き運用されており、現在の主要製造元である英国BAEシステムズは販売を継続している。米国の同盟国やパートナー国も海兵隊で退役した中古車両を調達している。
海兵隊のACVやその他の装甲車両計画が今後どう進化しようと、海兵隊でのAAVの時代は終わった。■
USMC’s Amphibious Assault Vehicle Retired After Over 50 Years Of Service
For decades and across multiple conflicts, the tracked Amphibious Assault Vehicles were a staple of Marine Corps operations.
Published Oct 3, 2025 12:05 PM EDT
https://www.twz.com/sea/usmcs-amphibious-assault-vehicle-retired-after-over-50-years-of-service