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2022年7月4日月曜日

歴史に残る機体(34) AC-130ガンシップは米軍作戦あるところ、上空を飛んでいたが、中露都の対決では出番がなくなるのか。

 

AC-130 Gunship. Image Credit: Creative Commons.

 

ッキードAC-130は、ユニークな機体だ。ビデオゲーム「Call of Duty」シリーズで有名になったAC-130は、長時間滞空し、地上攻撃を行うため設計されたガンシップだ。AC-130は、各種ミッション・プロファイル標的対応に適した、幅広い地上攻撃兵器が搭載されている。

 

真の戦士

AC-130は、輸送機C-130ハーキュリーズを原型に、舷側から帆走戦列艦のように巨大な砲を突き出した外観が特徴的な機体だ。1966年のデビュー以来、各型、さまざまな兵器を持つAC-130が使用されてきた。J型は、30mm ATK GAU-23/A自動砲、105mm M102榴弾砲、AGM-176グリフィンミサイルおよびGBU-44/Bバイパーストライク弾の武器システムを装備する。AC-130は、主翼にAGM-114ヘルファイアミサイル、GBU-39小口径爆弾(SDB)、GBU-53/Bの搭載も可能だ。旧型機では40mm L60 ボフォース砲も搭載していた。

 近接航空支援、航空阻止、輸送船団護衛、市街地作戦、部隊防護などに対応し、パイロンを反時計回りに回転しながら目標を旋回するため、地上の定点に正確な射撃が可能で、従来の空爆より大幅に改善された効果を発揮する。

 他の軍用機とは異なり、AC-130は非加圧キャビンで、低高度で運用され、通常は高度7,000フィートから武器システムを発射する。AC-130は低高度で運用されるため、通常、夜間に暗闇にまぎれて近接航空支援任務を遂行する。

 ターゲットを特定し、精密射撃やエリア飽和射撃を成功させるため、AC-130は電気光学画像センサー、赤外線センサー、レーダーなどの高度なセンサー群を使用する。多様なセンサー群によって、AC-130の乗員7人名は、悪天候下でも敵味方の区別がつく。

 

戦闘投入

AC-130は、ベトナム戦争でデビューし、3機のF-4ファントムIIを護衛につけた。ベトナム戦争では、6機のAC-130が敵の攻撃で喪失した。1969年5月、最初の喪失となった。高度6,500フィートで「トラック・ハンティング」中、37mm対空砲火を浴びた。この事件は、その後5機のAC-130の損失と似ている。ほとんどがトラック・ハンティング中に失われ、すべて対空ミサイルか地対空ミサイル(SAM)で撃墜された。AC-130の墜落で、計52名の乗組員が死亡している。一方でAC-130は1万台以上の敵のトラックを破壊した。

 1975年4月30日、サイゴンからの最後の避難というアメリカ史に残る瞬間にも、ガンシップは上空待機していた。

 それ以来、左旋回のAC-130は、アメリカの戦争に欠かせない存在となっている。グレナダ戦では、AC-130は敵防空システムを制圧し、地上軍を攻撃した。パナマ侵攻では、パナマ防衛軍司令部を破壊し、地上部隊の近接航空支援も行った。

 デザートストーム、そして対テロ戦争と、AC-130はその威力を発揮し続けてきたのである。

 

戦線離脱?

しかし、50年を経た今、AC-130の未来が問われている。敵の防空システムが向上するにつれ、レーダー断面積が高く、低速のAC-130は、ロシアや中国のような高度な敵との現代の紛争に生き残ることはできない。

 戦略予算評価センター(CSBA)は、空軍にAC-130から軸足を移し、代わりにステルス機と無人機の組み合わせでガンシップの役割を埋める提言をしている。■

 

 

The AC-130 Gunship Could Kill Anything On The Ground (But Is Now Obsolete?)

 

ByHarrison Kass

https://www.19fortyfive.com/2022/07/the-ac-130-gunship-could-kill-anything-on-the-ground-but-is-now-obsolete/

 

 Harrison Kass is the Senior Defense Editor at 19FortyFive. An attorney, pilot, guitarist, and minor pro hockey player, he joined the US Air Force as a Pilot Trainee but was medically discharged. Harrison has degrees from Lake Forest College, the University of Oregon, and New York University. He lives in Oregon and listens to Dokken. Follow him on Twitter @harrison_kass.

 


2022年1月8日土曜日

無害な輸送機が恐るべきガンシップに進化した。AC-130のこれまでの推移、実戦経験と中国ロシア相手の将来の戦闘場面での役割について。

 




間の近接航空支援で米軍特殊部隊の最高の友、敵にとっては最悪の相手はAC-130ガンシップ以外にない。


60年近くにわたりAC-130の多様な型式が特殊作戦、通常部隊をほぼあらゆる戦場で支援してきた。


空軍が中国、ロシアとの将来の対決を想定して現実を重視する中、AC-130への関心がまた高まっている。


インドシナのジャングルからすべてはじまった


AC-130のルーツはヴィエトナム、カンボジア、ラオスのジャングルにさかのぼる。そこに最初のAC-130EスペクターがAC-47「マジックドラゴン・パフ」とともに初の実戦を体験し、地上部隊を支援した。


AC-47のヴィエトナム上空での活躍からニックネームが生まれた (YouTube).


その後、夜間性能が向上し、地上部隊が北ヴィエトナム軍やヴィエトコン部隊により壊滅されそうな場合を救う場面が増えた。ヴィエトナム戦争中にガンシップにより敵車両10千台を撃破している。


ヴィエトナム戦が終わったが、AC-130の供用は続き、他では得難い夜間近接航空支援の威力を発揮した。これまで6型式が生まれた。AC-130A、AC-130E、AC-130H、AC-130U、AC-130Jである。


特殊作戦で大活躍  


AC-130には三通りの主ミッションが設定されている。航空制圧、武装偵察、近接航空支援で、さらに二次的ミッションとして戦闘捜索救難、前線航空管制、情報収集監視偵察任務がある。


端的に言ってAC-130は空飛ぶ砲兵陣地となり、「パイロンターン」操縦で目標上空を大きな輪を描いて飛ぶ。これにより大量の砲火を標的に浴びせる。この方法だと機体に危険が及び、夜間運用にも制約が生まれるのは容易に地上から攻撃の的になってしまうからだ。


搭載する火力とセンサーが強力なためAC-130は火力の雨を降らせ、同時に貴重な情報を地上部隊に伝えるといった活躍ぶりを発揮する。AC-130Jゴーストライダーが最新型ガンシップで30mm、105mm砲を搭載し、スマート弾としてGBU-39小口径爆弾、GBU-69小型滑空弾、AGM-114ヘルファイヤミサイル、AGM-176グリフィンミサイルを発射する。


これだけ多様な兵装類を機内に収めると、一つ選ぶのが大変だ。通常は作戦の必要に応じ選択している。


「AC-130U時代の経験だが、25mmGAU、40mmボフォース砲、105mmりゅう弾砲を使う醍醐味を感じていた」とかつてAC-130で砲手を務めた元隊員が匿名で取材に応じてくれた。「その後の新型では新装備が開発されているね。だがなんといっても105mm砲が今も使用されている。105mm砲では使う砲弾により地上部隊支援の効果が違うが、敵に最大の被害を与えることが可能だ。物理的損害とともに心理的な効果も大きい。最も重要なのは、機内で砲弾を装てんし、ロックし、射撃し、次の装填へ移る作業の楽しかったことだね」


AC-130機内の強力なセンサー装備で有益な情報収集監視偵察機能が実現する。 (Wikimedia.org).


最新のAC-130の最高時速は415マイルで行動半径は3,000マイルでさらに空中給油を受けられる。


近接航空支援では現地上空での滞空時間が長いほど望ましい結果が生まれる。このため共用現地航空統制機Joint Terminal Air Controllers (JTACs) がAC-130ガンシップを誘導し、空中給油によりさらに滞空時間を延長できる機能を活用している。F-16では火力が少ないことに加え現地上空で滞空時間は30分しか期待できない。


第四特殊作戦飛行隊のAC-130Uガンシップ。AC-130U「スプーキー」はH型の改良型で機体側面から25mm、40mm、105mm火砲を運用する


AC-130の存在意義は地上戦闘部隊の支援につきる。正確、ときには接近し航空支援を提供することだ。AC-130乗員にとって米軍エリート特殊部隊への支援は特別な体験となる。「電子メールでは実際の体験だをとても伝えられない。昼間に起床してフライトスーツを着用し、装備をつかみ、搭乗すると離陸だ。一時間後にはストレスいっぱいの任務が待っている」と上記匿名の元乗組員が語る。


「ことにTIC(連絡先部隊)に対応し、こちらが現地に到着するまで米軍や同盟国軍部隊が抹殺されかねない状態だった」

AC-130の火砲に装てんする乗員(Wikimedia.org).


「現地に到着するや敵へ向かい、一時間かそこらで105mmを100発、40mmを256発発射すると、バグラム基地に帰投する。アドレナリンが大量に出る体験となった。味方を助けたものの、全員が無事帰還できることにならないんだ」「結局こんな感じだ。爽快感、やりがい感とともに罪の意識だね」


AC-130の今後の供用で大きな懸念が一つある。米軍や同盟軍が制空権を確保できない環境で同機が生き残り活躍できるのか。米軍はここ20年にわたり航空優勢があるのが当たり前の環境に浸ってきた。


「空の支配を敵と分け合うような状態になってもAC-130は有効な兵器となると信じている」「高速の敵機との交戦となればAC-130に勝ち目がないので、高速機編隊を低速爆撃機の援護にあたらせたWW2の再現となる」


空軍特殊作戦軍団(AFSOC)では特殊作戦用機材の限界を理解したうえで、敵が高性能機材や優秀な対空装備を展開する状況を想定し、AC-130の弱点を覆す装備品の開発が進行中だ。


一例としてAFSOCはAC-130で運用する巡航ミサイルの開発に取り組んでおり、ガンシップの輸送型MC-130コマンドーIIでも運用を想定する。巡航ミサイルが実用化されれば、AC-130の攻撃距離が大きく伸び、敵の対空戦範囲外からの攻撃に道が開く。これによりAC-130の生存性が高まる。


地上に連絡相手となる部隊が展開し、夜闇の中で圧倒的優位な敵を前に勝ち目がないと思われるとき、AC-130ほど頼りになる機材は他になく、105mm砲を機体から突き出した姿がすべてを物語る。■


AC-130: The cargo plane that became an arsenal in the sky - Sandboxx

Stavros Atlamazoglou | January 4, 2022


Stavros Atlamazoglou

Greek Army veteran (National service with 575th Marines Battalion and Army HQ). Johns Hopkins University. You will usually find him on the top of a mountain admiring the view and wondering how he got there.


2021年7月17日土曜日

60年も供用され続けるAC-130ガンシップ。戦闘中喪失は一機のみ。最新型AC-130Jゴーストライダーが日本へも飛来。

 Air Force AC-130 Gunship

 

AC-130Uがフレアを放出している。フロリダ州ハールバートフィールド上空。August 20, 2008. US Air Force

 

  • 1960年代からAC-130ガンシップは近接航空支援を世界各地で展開してきた

  • AC-130の使い勝手の良さと戦力は定評があり、現在は第六代目の型式が供用されている

  • 「搭載兵器の数だけで戦場に大きな効果が生まれる」と空軍で戦闘統制官を務めた人物が語っている


殊作戦隊員にお気に入りの近接航空支援機材を尋ねれば、A-10サンダーボルトとAC-130ガンシップの名前をあげるはずだ。だ。


ともに特殊部隊のみならず通常部隊隊員から人気が高いのは強力な火力によるところが大きいが、AC-130ガンシップにはA-10より有利な点がある。標的に向け砲撃を連続実施できることだ。


空飛ぶ砲兵隊というべきAC-130は「パイロンターン」戦術で標的上空で大きく弧を描くことで安定した砲撃が可能だが、A-10では旋回して再度標的に向かうしかない。


AC-130はかれこれ60年にわたり地上部隊を支援し、アジア、南米、アフリカ、ヨーロッパ、中東に展開してきた。最新型がAC-130Jでやはり多用されている。今年3月には初めて日本に展開し、5月にはルーマニアでの演習にこれも初めて参加した。


AC-130の戦闘投入はベトナム戦争時だった。


それまで投入されていたのはAC-47スプーキーで夜間戦力装備としては初歩的だったが数で優位な北ベトナム軍やベトコンにから地上部隊・特殊部隊を救った。


AC-130では40mm、105mm砲を使い、AC-47とあわせ敵車両1万台以上を撃破したとされる。有益さを買った空軍は機種を拡大し、AC-130はA型から、E、H、U、W、Jの各型に発展した。供用中なのはこのうちW型J型のみである。

AC-130 firing cannons

 

AC-130が旋回飛行しながら回転砲を発射し、発射煙が払暁の空にくっきりと見える。March 1, 1988. US Air Force/Tech. Sgt. Lee Schading


AC-130の主任務は近接航空支援、航空制圧、武装偵察だが戦闘捜索救難にも対応する。前線航空統制任務もこなせる。AC-130が重宝されるのは火力、滞空時間、各種任務遂行能力が理由だ。


最新型AC-130Jゴーストライダーは30mm、105mm砲を搭載し、「スマート兵器」としてGBU-39小直径爆弾やAGM-114ヘルファイヤ、AGM-176グリフィンも搭載できる。


戦闘行動半径が3千マイルで、空中給油にも対応したAC-130は長時間にわたり戦闘場面に滞空できる。


搭載センサーにより地上部隊はAC-130からリアルタイムで情報を得ることが可能だ。司令部にも送信できる情報収集能力も火力に劣らず重要だ。

Aircrew load cannon aboard AC-130

AC-130Uの搭乗員が40 mm ボフォース砲(後ろ)と 105 mm りゅう弾砲(前)の装填訓練をしている。September 22, 2003. US Air Force/Staff Sgt. Greg Davis


「AC-130のユニークな点は近接航空支援を各種火砲で実現し、二つの標的を同時に狙えること、ISR(情報収集監視偵察)で各種ミッションをこなせること」とAC-130砲手を務めた元隊員が語っている。


特殊作戦隊員がAC-130に連絡要員として搭乗することは多い。


アフタにスタン侵攻の開始直後に米陸軍第160特殊作戦航空連隊「ナイトストーカーズ」及び海軍のSEALチーム6の隊員がAC-130に分かれて搭乗し、砲撃効果を上げるため調整した。


連絡要員はAC-130搭乗員に地上隊員の視点がわかり、敵の抵抗の様子を教えてくれる重要な存在だ。


「AC-130Wが頭上にあらわれるや、搭載兵装数だけで戦場の様子が一変した」と空軍戦闘統制官として近接航空支援を調整していた人物が語っている。「ペイロードには砲以外に滑空爆弾、グリフィンミサイルもあり、現場に長時間滞空し、搭乗員はCASをやり遂げたい一心で必要以上に現場に留まっていた」

Air Force AC-130J Ghostrider gunship

An AC-130J "Ghostrider." Air Force/Courtesy photo



AC-130は精密で圧倒的な火力で窮地を救うが、搭乗員は無名の英雄となることが多く、戦績を公に認められることは少ない。


「SOF(特殊作戦部隊)支援はやりがいのあるミッションだった。各国選りすぐりの精鋭部隊と一緒に戦うのは本当に栄誉ある仕事だった」と前出の砲手が回想している。「地上部隊も命を預けるこちらを信頼してくれた。現場では時間や距離の感覚がなくなり、地上の仲間を無事帰還させることがミッションだと理解していた」


米軍の航空優勢によりAC-130の損害はごくわずかに留まっている。戦闘能力があるものの、低速で操縦性も劣るため敵戦闘機や防空装備の前に格好の標的となる。


AC-130の戦闘喪失事例は1991年湾岸戦争時の一機のみだ。AC-130Hスペクター「スピリット03」が地上部隊を支援し、クウェートを移動中にイラク携行地対空ミサイルで撃墜され、搭乗員全員が死亡し、米空軍特殊作戦軍団の歴史で一回の喪失で最多の犠牲者を生んだ。■


この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmailまでご連絡ください。


The AC-130 Has Provided Close Air Support to Troops for 55 Years

Stavros Atlamazoglou


Stavros Atlamazoglou is a defense journalist specializing in special operations, a Hellenic Army veteran (national service with the 575th Marine Battalion and Army HQ), and a Johns Hopkins University graduate.


2021年2月13日土曜日

AC-130が、30年間撃墜されていない背景に湾岸戦争のスピリット03の尊い犠牲の教訓があった。

あなたの知らない戦史(7)1991年湾岸戦争で散ったAC-130H  

ロリダのまぶしい陽光の中、ハールバートフィールド基地の記念碑にひと束のブーケが捧げられた。2021年1月29日、第一特殊作戦航空団が砂漠の嵐作戦中に発生した空軍最大の人員喪失事件の日が今年もやってきた。

 

30年前の1991年1月31日、カフジの戦いでAC-130Hスペクター・ガンシップ、コールサイン・スピリット03がイラクの地対空ミサイルで撃墜された。

 

搭乗員14名全員が戦死し、空軍将官のひとりは各自の犠牲がAC-130の新時代を開いたと述べている。新技術や戦術の導入でその後の戦闘で同機喪失は皆無となった。

 

「スピリット03搭乗員の尊い犠牲で、AC-130改良が始まり新世紀が到来した」とマーク・ヒックス退役少将が2014年夏号のAir Commando Journalに記した。ヒックスは経験豊かな元ガンシップ・パイロットだ。スピリット03撃墜後に出た風説をヒックスは否定している。

 

No enemy has downed an Air Force AC-130 gunship in 30 years. Here’s whyスピリット03慰霊祭が2021年1月29日にフロリダ州ハールバートフィールド基地で執り行われた。スピリット03はAC-130Hガンシップのコールサインでカフジの戦いで撃墜され14名の乗員全員が戦死し、砂漠の嵐作戦中最大の空軍喪失事案となった。(Air Force photo / Senior Airman Miranda Mahoney)

 

 

まず何が起こったかを見てみよう。1991年1月29日、イラク軍がクウェイトから南方のサウジアラビア国境の町カフジを攻撃してきた。襲撃部隊は戦車40両と500名の規模とスピリット03撃墜の記録を2012年の Air Commando Journal に記したAC-130歴42年の砂漠の嵐帰還兵ビル・ウォルター上級曹長が述べている。

 

連合軍部隊は数で圧倒され、カフジに後退したが、米海兵隊偵察チーム2個が取り残された。1月30日夜から1月31日朝にかけ、AC-130ガンシップ二機がスピリット01、スピリット02のコールサインでイラク装甲部隊を攻撃したが、強烈な対空砲火をあびた。

 

三機目のAC-130がスピリット03で数時間後に現場に到着し、上空を周回飛行し待機した。スピリット01および02は帰投することとし、03に対空火砲が手強いと伝えたが、3号機は海兵隊前方航空管制官の要請を受け標的策定を続けた。

 

スピリット03はイラク陣地を攻撃したが、 6:00 a.mに燃料残量が少なくなった。それでも搭乗員は標的への砲撃をやめず、ついに「ビンゴ」燃料になった。基地帰還ギリギリの燃料しかないことを意味する。だが、海兵隊航空管制官が海兵隊へ脅威になるロケット発射装備があるとしたので、スピリット03は捜索を始めた。

 

そして事態は急進展した。

 

No enemy has downed an Air Force AC-130 gunship in 30 years. Here’s whyAC-130 が機体を傾け、回転式機関砲の煙が薄暮の中で目視できる。 1988年撮影。 (Air Force photo / Tech. Sgt. Lee Schading)

 

 

なんの警告なくイラクの小型地対空ミサイルが同機の左主翼に命中し、外部燃料タンク近くが出火しはじめた。パイロットのトーマス・ブランド大尉、ポール・ウィーバー少佐は当初は機体を制御できたが、燃焼が広がり、左主翼3分の2が脱落すると機体はスピンしはじめ制御不能となった。大きなGがかかり、機外脱出は不可能のまま、機体はペルシア湾の浅瀬に墜落した。

 

墜落地点を突き止めるのに一ヶ月かかり、この遅れのため当時の状況で憶測を呼んだとヒックスは記している。「憶測に不満、怒りが加わり今も続く伝説が生まれた」

 

伝説の一つがパイロットで、ウィーバー少佐は1989年のパナマ侵攻作戦に加われなかったため実戦現場を見たいとの思いが強すぎたという風評があるとヒックスは記している。また乗員が燃料低下を気にせず海兵隊部隊を守り戦死したというのも伝説だ。

 

ともに真実ではない、とヒックスは述べている。「ともに部分的には正しいが、誤解につながりやすい」とヒックスは書いている。「スピリット03は敵防空装備で撃墜されたが、その時点で訓練内容通りの業務をしていた」

 

乗員の行動に能力不足や無鉄砲な英雄気取りの兆候は見られなかった、とヒックスは記し、敵ロケット砲装備をすぐ探知する必要もなかったとする。乗員が高脅威地区に日昇後も残るのはリスクで説明がつかない。ただ撃墜の背景に訓練、技術、戦術の不足もあった。

 

技術面ではセンサー、火器管制が旧式のままで高度、飛行速度以外は精度が低かったとヒックスは記している。これが戦術に影響し、敵砲火にさらされる危険が増えるフライトパスをとってしまったという。悪いことにスピリット03が敵攻撃にさらされた際のフレア投射装置が旧式でレーザー方式の携帯型地対空ミサイルには対応できなかった。機体防御装備の改良が長年後回しになったつけを払わされた格好だ。だが「砂漠の嵐終了後に改修がおこなわれ、チャフ、フレア放出装置が新型になり、赤外線ミサイル発射警報装置がつき、電子対抗装置も一新した」という。

 

No enemy has downed an Air Force AC-130 gunship in 30 years. Here’s whyAn AC-130 スペクター・ガンシップがフレアを放出している。June 3, 2011, Cannon Air Force Base, New Mexico. (Air Force photo / Airman 1st Class Ericka Engblom)

 

 

ビル・ウォルター上級曹長は Task & Purposeへのメールで砂漠の嵐作戦後のAC-130全機にAN/AAR-44 ミサイル接近警報装置が導入されたと述べている。これは携行式防空装備 (MANPADS) のミサイル発射を探知し、乗員に危険を伝え、フレアを自動放出する機能がある。作動には乗員の介入が不要なので、攻撃下での貴重な数秒を無駄にしなくてすむ。

 

スピリット03撃墜を受け各種技術で改良が進んだとヒックスは記しているが、戦術を変えないままでは効果が限定された。乗員は予測不能な飛行経路をとり、機体を敵に晒す時間を最小限にしながら、戦闘地点付近を高度を上げて飛行し、敵弾命中の確率を下げるようになった。

 

不要な通信手順を減らし、航法装置の機能を改良し、暗視ゴーグルを導入した他、酸素マスクをつけたままで高高度飛行に対応した。AC-130機内は与圧していない。

 

「火器管制機能とセンサー機能の向上で本当に助かったが、あくまでも戦術面を重視し、意味のある結果を求めるためだだった」(ヒックス)

 

ウォルターも同様の意見だ。

「教訓の本質は飛行中は常時攻撃を受ける覚悟がいることだ。スピリット03搭乗員はこの点で訓練を受けていたとはいえ、太陽が上る状態でMANPADSミサイルの目視照準を回避するのは無理だっただろう」「ミサイル接近が見えていたら、回避行動とデコイフレアが現場にいた他の2機同様に防御してくれたのではないか。残念ながらミサイルを見つけた乗員は皆無だった」

 

とはいえ、過剰対応も防ぐべきだとヒックスは警句を鳴らす。スピリット03喪失を受けAC-130部隊に昼間のミッションを放棄するものがあらわれたという。低速のスペクターは日中は敵に狙われやすい。だが昼間ミッションを中止したため、アフガニスタンで航空支援を受けられず地上部隊に死傷者が発生した。砂漠の嵐作戦の前年にスペクターが作戦投入されていた事実をヒックスは指摘しており、また夜間飛行が完全に安全と言い切れないという。

 

だがスピリット03後にもAC-130の被害が発生している。1994年に、第16特殊作戦飛行隊のスペクターがケニア沖合に墜落した。機関砲の高性能弾薬が発射前に機内爆発したためで、乗員8名が即死、9人目も負傷がもとでその後死亡している。この痛い犠牲の教訓をもとに以後30年間にわたりAC-130はテロ戦闘に数千時間も投入されながら、戦闘中喪失が皆無となっている。

 

スペクター全機は2015年に退役したが、スプーキー、スティンガーII、ゴーストライダーの各型がスピリット03撃墜の教訓を活かし、活動を続けている。

 

「AC-130部隊は準備不足のまま砂漠の嵐作戦に投入された。その後は平時活動に戻り、容易な環境のもと、近代化改修も後回しにされていたが、スピリット03喪失の衝撃が牽引力となり、戦術方法の再編でAC-130はアフガニスタン、イラク双方で黄金時代を迎えた」とヒックスが記している。

 

「一連の事態がスピリット03喪失につながり、長時間の研究結果がAC-130搭乗員の訓練シラバスにつながっている。あの運命の日の教訓が乗員訓練に生かされていることこそスピリット03の遺産だ」

 

スピリット03の乗員全員は以下の通り。

Maj. Paul Weaver

Capt. Thomas Bland Jr.

Capt. Arthur Galvan

Capt. William Grimm

Capt. Dixon Walters, Jr.

Senior Master Sgt. Paul Buege

Senior Master Sgt. James May II

Tech. Sgt. Robert Hodges

Tech Sgt. John Oelschlager

Staff Sgt. John Blessinger

Staff Sgt. Timothy Harrison

Staff Sgt. Damon Kanuha

Staff Sgt. Mark Schmauss

Sgt. Barry Clark

 

 

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No enemy has downed an Air Force AC-130 gunship in 30 years. Here's why

No enemy has downed an Air Force AC-130 gunship in 30 years. Here’s why

“The lessons passed on to crews trained since that fateful day are the true legacy of Spirit 03.”

BY DAVID ROZA FEBRUARY 05, 2021

David Roza covers the Air Force and anything Star Wars-related. He joined Task & Purpose in 2019, after covering local news in Maine and then FDA policy in Washington D.C. He loves referring to himself in the third-person, but he loves hearing the stories of individual airmen and their families even more. He also holds the unpopular opinion that Imperial stormtroopers are actually excellent marksmen. 


2017年12月1日金曜日

70年使ってきたボフォース40mm砲を最後に使うAC-130

The USAF Is Rebuilding World War II-Era 40mm Shells for its AC-130U Gunship

米空軍が第二次大戦時と同じ40mm砲弾をAC-130Uガンシップ用に再生産させる

The service is the last user of the Bofors cannon in the US military and has had to go hunting for more ammunition. 

空軍がボフォース砲最後のユーザーになり砲弾探しに苦労する

CLEMENS VASTERS VIA WIKIMEDIA
BY JOSEPH TREVITHICKNOVEMBER 29, 2017


空軍が第二次大戦中の40mm機関砲の砲弾数万発を調達する。AC-130UスプーキーII用だ。同装備は兵站上の悪夢になり空軍は使用停止の予定だったが、旧式とは言えあまりにも効果があり引き続き稼働させている。
  1. 2017年11月、米空軍は第780試験装備飛行隊(フロリダ州エグリン空軍基地)が改良版40mm高性能弾PGU-9D/Bのテストを開始したと発表。新型弾は信管を変え安全度を増した。真鍮製薬きょうには製造年が1944年のものもある。
  2. 空軍は旧式弾およそ80千発を新仕様に転換する予定だ。780飛行隊が作業工程を開発した。空軍特殊軍団(AFSOC)がAC-130ガンシップ全機を運用しており、U型以外に新しいAC-130WスティンガーIIと開発中AC-130Jゴーストライダーも含む。
  3. この事からAC-130Uと搭載する40mmボフォース砲の有益さが分かる。空軍公式記録によれば第四特殊作戦飛行隊配属の四機だけで2013年11月から2014年6月にかけ4,000戦闘時間投入され機体と乗員はのべ1,175日も戦闘地区を飛んだ。
  4. 2017年10月に第四飛行隊のAC-130Uの一機コールサイン・スプーキー43の乗員が空軍殊勲賞を2016年のアフガニスタンでのミッションを理由に授与された。同機は特殊部隊を三方向から待ち伏せ攻撃してきた戦闘員集団を蹴散らし、40mm砲や105mm榴弾砲の威力を上げようと友軍に危険なほど接近飛行した。
  5. 現時点でスプーキーIIは米軍で同装備を使う唯一の機材で、PGU-9弾に加え、爆発焼夷弾、装甲貫徹弾を織り交ぜて運用している。
  6. 米軍は原設計スウェーデンの同装備を第二次大戦中に対空火砲に採用した。クライスラーがライセンス生産で60千門を供給し、対空火砲として1970年代末まで使われていた。
  7. だが1969年に空軍は全く別の用途で同装備を調達した。AC-130A、AC-119K両ガンシップがラオスのホーチミン街道の南北を飛び北ベトナムから南ベトナムへ移動する人員、兵器、物資の移動をくいとめようとしていた。
  8. 北ベトナムは街道を確保し防空装備まで準備し、37mm、57mm砲を設置した。このため低空低速飛行の輸送機には特に脅威になる。
  9. 20mmヴァルカン砲二門を40mm砲に取換えたAC-130は高高度で敵防空兵力から自由に飛びながら地上のトラックや人員を狙った。間に合わせの兵装が効果抜群だったのでC-130Eも強力な兵装に変えられた。
  10. その後E型で40mmボフォース砲はさらに大きな105mm榴弾砲に変更され、AC-130H、AC-130Uに継承された。空軍はH型を2015年に全廃しこの兵装を搭載するのはU型だけになって今日に至っている。
  11. 空軍は2007年に実験でスプーキーIIの40mm砲と25mmGAU-12/U回転砲のかわりに30mm二門を搭載したがテストは予期通りの成果を生まず、精度が落ちる弊害が生まれ機体は元の使用に戻された。
  12. 30mm砲はAC-130Wで採用されAC-130Jでも同様だ。当War Zoneでは同装備で依然として精度と信頼性の問題が残ると2017年10月に指摘している。
  13. ボフォース砲も供用開始から70年、ガンシップ搭載から50年たち保守管理が大変になってきた。ボフォースは現在英BAEシステムズの事業部で、今も40mm砲を製造するが現モデルは以前と違う砲弾を使う。
  14. 旧式弾の確保が一層難しくなっており、空軍は既存余剰弾の再生産を決めたのはこのためだが、弾薬の確保だけが問題ではない。砲身は永久に使えるわけではなく長年の酷使で照準精度が落ち使用に危険が感じられるほどになった。2013年までに空軍は砲身を単価130万ドルで特注調達せざるを得なくなった。
  15. その前年にAFSOCはギリシアにチームを送り2005年に第一線を退いた余剰装備の買い付けを試みた。その結果、140門近くの砲身他骨董品を安価に購入し、装備を維持し、節約効果14百万ドルを生んだ。
  16. この状況は長く続かなかった。2015年に空軍はAC-130Uの退役を開始した。今後は廃棄機材からの回収が、新型AC-130Jが初期作戦能力を獲得する2018年まで続くことになる。
  17. スプーキーIIの用途廃止で同機の長い活躍に幕が下りるとともにボフォース砲も75年にわたる米軍での供用を終えることになる。■

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