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60年も供用され続けるAC-130ガンシップ。戦闘中喪失は一機のみ。最新型AC-130Jゴーストライダーが日本へも飛来。

 Air Force AC-130 Gunship

 

AC-130Uがフレアを放出している。フロリダ州ハールバートフィールド上空。August 20, 2008. US Air Force

 

  • 1960年代からAC-130ガンシップは近接航空支援を世界各地で展開してきた

  • AC-130の使い勝手の良さと戦力は定評があり、現在は第六代目の型式が供用されている

  • 「搭載兵器の数だけで戦場に大きな効果が生まれる」と空軍で戦闘統制官を務めた人物が語っている


殊作戦隊員にお気に入りの近接航空支援機材を尋ねれば、A-10サンダーボルトとAC-130ガンシップの名前をあげるはずだ。だ。


ともに特殊部隊のみならず通常部隊隊員から人気が高いのは強力な火力によるところが大きいが、AC-130ガンシップにはA-10より有利な点がある。標的に向け砲撃を連続実施できることだ。


空飛ぶ砲兵隊というべきAC-130は「パイロンターン」戦術で標的上空で大きく弧を描くことで安定した砲撃が可能だが、A-10では旋回して再度標的に向かうしかない。


AC-130はかれこれ60年にわたり地上部隊を支援し、アジア、南米、アフリカ、ヨーロッパ、中東に展開してきた。最新型がAC-130Jでやはり多用されている。今年3月には初めて日本に展開し、5月にはルーマニアでの演習にこれも初めて参加した。


AC-130の戦闘投入はベトナム戦争時だった。


それまで投入されていたのはAC-47スプーキーで夜間戦力装備としては初歩的だったが数で優位な北ベトナム軍やベトコンにから地上部隊・特殊部隊を救った。


AC-130では40mm、105mm砲を使い、AC-47とあわせ敵車両1万台以上を撃破したとされる。有益さを買った空軍は機種を拡大し、AC-130はA型から、E、H、U、W、Jの各型に発展した。供用中なのはこのうちW型J型のみである。

AC-130 firing cannons

 

AC-130が旋回飛行しながら回転砲を発射し、発射煙が払暁の空にくっきりと見える。March 1, 1988. US Air Force/Tech. Sgt. Lee Schading


AC-130の主任務は近接航空支援、航空制圧、武装偵察だが戦闘捜索救難にも対応する。前線航空統制任務もこなせる。AC-130が重宝されるのは火力、滞空時間、各種任務遂行能力が理由だ。


最新型AC-130Jゴーストライダーは30mm、105mm砲を搭載し、「スマート兵器」としてGBU-39小直径爆弾やAGM-114ヘルファイヤ、AGM-176グリフィンも搭載できる。


戦闘行動半径が3千マイルで、空中給油にも対応したAC-130は長時間にわたり戦闘場面に滞空できる。


搭載センサーにより地上部隊はAC-130からリアルタイムで情報を得ることが可能だ。司令部にも送信できる情報収集能力も火力に劣らず重要だ。

Aircrew load cannon aboard AC-130

AC-130Uの搭乗員が40 mm ボフォース砲(後ろ)と 105 mm りゅう弾砲(前)の装填訓練をしている。September 22, 2003. US Air Force/Staff Sgt. Greg Davis


「AC-130のユニークな点は近接航空支援を各種火砲で実現し、二つの標的を同時に狙えること、ISR(情報収集監視偵察)で各種ミッションをこなせること」とAC-130砲手を務めた元隊員が語っている。


特殊作戦隊員がAC-130に連絡要員として搭乗することは多い。


アフタにスタン侵攻の開始直後に米陸軍第160特殊作戦航空連隊「ナイトストーカーズ」及び海軍のSEALチーム6の隊員がAC-130に分かれて搭乗し、砲撃効果を上げるため調整した。


連絡要員はAC-130搭乗員に地上隊員の視点がわかり、敵の抵抗の様子を教えてくれる重要な存在だ。


「AC-130Wが頭上にあらわれるや、搭載兵装数だけで戦場の様子が一変した」と空軍戦闘統制官として近接航空支援を調整していた人物が語っている。「ペイロードには砲以外に滑空爆弾、グリフィンミサイルもあり、現場に長時間滞空し、搭乗員はCASをやり遂げたい一心で必要以上に現場に留まっていた」

Air Force AC-130J Ghostrider gunship

An AC-130J "Ghostrider." Air Force/Courtesy photo



AC-130は精密で圧倒的な火力で窮地を救うが、搭乗員は無名の英雄となることが多く、戦績を公に認められることは少ない。


「SOF(特殊作戦部隊)支援はやりがいのあるミッションだった。各国選りすぐりの精鋭部隊と一緒に戦うのは本当に栄誉ある仕事だった」と前出の砲手が回想している。「地上部隊も命を預けるこちらを信頼してくれた。現場では時間や距離の感覚がなくなり、地上の仲間を無事帰還させることがミッションだと理解していた」


米軍の航空優勢によりAC-130の損害はごくわずかに留まっている。戦闘能力があるものの、低速で操縦性も劣るため敵戦闘機や防空装備の前に格好の標的となる。


AC-130の戦闘喪失事例は1991年湾岸戦争時の一機のみだ。AC-130Hスペクター「スピリット03」が地上部隊を支援し、クウェートを移動中にイラク携行地対空ミサイルで撃墜され、搭乗員全員が死亡し、米空軍特殊作戦軍団の歴史で一回の喪失で最多の犠牲者を生んだ。■


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The AC-130 Has Provided Close Air Support to Troops for 55 Years

Stavros Atlamazoglou


Stavros Atlamazoglou is a defense journalist specializing in special operations, a Hellenic Army veteran (national service with the 575th Marine Battalion and Army HQ), and a Johns Hopkins University graduate.


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