スキップしてメイン コンテンツに移動

戦略輸送機Y-20はグローバル規模での拡大を目指すPLAの野望を実現する手段だ。その他空中給油機、電子戦機などへの応用も要注意。

 

A Chinese People's Liberation Army Air Force Y-20 transport aircraft

2018年珠海航空ショーで飛行展示されたY-20。

November 7, 2018. AP Photo/Kin Cheung



国の軍事力の拡張として新型艦船、航空機が次々と加わっているが成長ぶりが最も著しいのが輸送機で、とくに大型輸送機の拡張ぶりが目立つ。


中国が運用する戦略級輸送機数は現時点で世界の11パーセント相当だが2020年代末に18%に増え、世界最速で機材規模が成長している。


その他中国の軍事装備品と同じく輸送機部隊もソ連時代の原設計が中心だ。1990年代以降、少数ながらIl-76やその派生型を輸送他のミッションに投入している。


中国の輸送機部門は「極めて低い水準から」拡大しているとRANDコーポレーション(シンクタンク)の国際防衛部門上級研究員ティモシー・ヒースが評している。


グローバルな活動へ


中国初の国産大型輸送機が西安Y-20で開発は2000年代中ごろ始まった。2013年に初飛行し、2016年より供用を開始した。実機数は不明だが、少なくとも20機が稼働中とみられる。


Y-20は全長約150フィート、全高50フィート、翼幅160フィートの機体で航続距離は5千マイルほどだ。公式正式名称はKunpengとされ、神話で何千マイルを一気に飛んだ鳥とされるが、ふっくらした機体から「丸ぽちゃ娘」の愛称もついている。


Y-20は空中指揮統制機、空中投下、空中給油、戦略偵察、人道援助災害救難用途への利用も想定しているとペンタゴンは分析している。


だが、ヒースは中国輸送機の基本任務は兵員を長距離迅速移動させることにあるという。


A Chinese Y-20 airlifter

A Y-20 at the Zhuhai air show, October 31, 2016. Dickson Lee/South China Morning Post via Getty Images



中国の海外基地はジブチが唯一だが、世界各地で新たな基地確保を目指している。大型輸送力が実現すれば人民解放軍は「危機状況が遠隔地で発生しても迅速対応できる」選択肢を確保でき、兵員輸送から非戦闘員の国外退避まで実施可能とヒースは見ている。


「こうしたミッションで影響力を強められる」とヒースは付け加え、「PLAはグローバルな軍事プレゼンスを確実に実現する」


Y-20は中国西部を飛行しており、「地理慣熟効果」を目指すとし、インド国境近くまで飛行することもあり、極寒地、山地の環境や高高度での運行を試しているほか、南シナ海でも海上飛行を行っているとヒースは指摘した。


Y-20の一機がフィアリークロス礁の滑走路に昨年12月に見つかっているが、同機のスプラトリー諸島方面への初めての飛行だった。


今年5月にマレーシアが南シナ海上空で同国領空侵犯があったと抗議し、Il-76とY-20の編隊だったと述べた。中国軍事筋はチャイナモーニングポストで「南シナ海の天候状況等に」慣熟するための飛行と認めた。


野望はさらに拡大する



A Chinese People's Liberation Army Air Force Y-20 transport aircraft

A Y-20 at Airshow China 2018 in Zhuhai city, November 7, 2018. AP Photo/Kin Cheung



Y-20のミッション内容はさらに拡大する。中国は落下傘兵降下を重視しており、旧式Y-8やY-9に代わり投入され、情報収集任務も想定されているとヒースは指摘した。また、同機で空中給油機能が実現すれば大きな意味があり、中国の戦闘作戦範囲が広がる。


中国には空中給油機として爆撃機の改装型やIl-78が計25機あるが、Y-20Uが今後こうした機材に交代していく。


Y-20Uは2018年12月に初の空中給油に成功したといわれ、量産に入ったようだ。

Chinese Y-20 cargo planes delivering medical supplies to Wuhan

Y-20の11機が医療従事者・補給品を武漢へ搬送した。February 13, 2020. TPG/Getty Images


中国国内アナリストにはY-20Uは西側給油機より性能が劣るとの見方があるが、「わが軍の長距離戦闘能力実現という喫緊の課題にこたえる装備だ」との意見もある。


だがその他中国製機材と共通し、エンジンがY-20の欠点だ。これまでソ連時代のエンジンが搭載されてきたが、新型国産エンジンのテストが始まったとの報道があり、推力、航続距離ともに伸び、ペイロードが150千ポンドに拡大するとの見方がある。


報道内容から最新の西側及びロシア製エンジンと比較してソ連時代のエンジンは「信頼性が著しく劣り、相対的に性能不足」とヒースは述べている。「そのため機体は中国にとって一歩前進だが、まだ高性能機材にはなっていない」


中国が輸送機の航続距離を伸ばそうとするのは軍事面での野望の反映であり、補給品やノウハウ提供を頼ってきたロシアを追い越す勢いだ。


「中国はロシアでさえ達成できなかった方面へ向かおうとしている。航空機による長距離兵員展開がその例だ。ロシアにはない資源が中国にはあり、ロシアの後を追ってきたが、今や指導役だったロシアを追い越そうとしている」■


この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmailまでご連絡ください。


China's Fast-Growing Airlift Fleet Reflects Beijing's Military Goals

Christopher Woody Jul 8, 2021, 2:35 AM


コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ