今後の米空母を検討しての結論は、何事にも代償がつきまとう、ということだった。
米海軍は従来より小型で安価な空母を調達できる、建造中の130億ドルのフォード級巨艦を導入する必要はない、というのがRANDコーポレーションによる最新の検討内容だ。だが、小型で安価な空母は性能も低くなり、地上部隊への航空支援を行えず、敵が優勢な海域では戦闘がままならなくなる。
議会からフォード級空母に代わる選択肢の検討を求められたRANDは2016年に米海軍向け極秘検討を行い、今回発表されたのは差しさわりのない部分だ。当時は。
RANDは四つの選択肢を提示した。
-CVN-8X は排水量10万トンのフォード級から装備を省略した版で、原子炉は40年間燃料交換が不要とした。フォード級は25年で燃料交換が必要となる。カタパルトもフォード級の四基を三基に変えた。
-CVN LX は7万トンと1950年代の初の「スーパー空母」フォレスタル級に近い。ハイブリッドの原子力通常動力推進方式とし、原子炉をニミッツ級フォード級の二基から一基にする。大規模規模の航空戦力を搭載でき、ニミッツ級を上回る効率を実現するが、速力生存力ともにフォード級を下回り、航空団のソーティ数も劣る。
-CV LX は43千トンの通常方式推進艦で強襲揚陸艦アメリカ級の派生型とする。カタパルトを有さず、搭載はF-35Bの25機に限られ、一日50ソーティーしか対応できない。空中早期警戒機や電子戦機がなく、「従来型空母あるいは陸上の機材から支援を受ける前提。敵の脅威が深刻でない場所あるいは戦闘集団の一部として行動可能となる。CV LXは第一撃を加える装備とならない。統合航空団を搭載できないからで、特にAEWおよびEW(空中早期警戒機、電子戦機)の不在が大きい」
-CV EX は2万トンの超小型空母で通常動力推進方式。搭載は短距離離陸機が6機から10機に限られる。イタリア空母カボールに似る。建造単価は25億ドルと最も低く、RANDはCV LX空母4隻でフォード級1隻と同じソーティ数を確保できると試算した。「CV EXにもCV LXと同じ制約がつき、飛行甲板はさらに小さい。燃料、弾薬の搭載量も同様で、低レベル緊急事態への投入、あるいは従来型CVNとの連携でしか運用できない」とRANDは結論づけた。
選択肢は示したもののRANDは特定の推奨はしていない。だが、報告書を見ると建造費が低いと性能も劣ることが明確だ。通常型の固定翼機F-35Cを発艦させようとすると空母にはカタパルト、拘束着艦装置を置ける大規模な飛行甲板が必要だ。小型艦ではF-35Bやヘリコプターの運用なら可能だが、E-2早期警戒機やEA-18電子戦機は運用できない。
そうなると低性能空母では米国の戦闘機能に制約が生まれ、米本土から遠く離れた地点で空母航空支援を展開する際に影響が生まれる。フォード級への予算投入について、退役海軍大佐でRAND研究員のブラッド・マーティンはこう語る。「代替策は低価格だが海軍が必要とする戦力は犠牲となる。一部の機能はなくなっても大きな影響は出ない。ソーティー生成数が例だが、その他は大きな代償につく」
RANDが提唱する大型原子力空母案はいずれも海軍に大きな変化をもたらさない。だが小型の二案は通常型推進方式で変化は避けられない。「通常型動力艦をニミッツ級の後継艦とした場合、海軍の運用コンセプトに大きな影響が生まれる」「統合航空戦力を運用できなくなるからだ。攻撃、防御、制空任務はいいとしても、外部からの支援に依存することになる。現在はすべて単艦で実現している」(マーティン)
では最良の選択はどうなるか。実はない。海軍がこのまま巨大空母路線を継続しフォード級と大差ない艦を建造するのか、それとも小型艦として戦力は思い切って断念するか、のいずれかだ。■
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Smaller Aircraft Carriers: Is There Any Point?
by Michael Peck
July 6, 2021 Blog Brand: The Reboot Tags: U.S. NavyCarrierChinaMilitaryTechnologyTrumpRAND
Michael Peck is a contributing writer for the National Interest. He can be found on Twitter and Facebook. This first appeared earlier and is being reposted due to reader interest.
Image: Flickr
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