SPY-6はドイツ海軍の新鋭F127級フリゲート艦(写真)に選定された。TKMS提供画像。
レイセオンはドイツ海軍の次世代F127フリゲート艦に選定されたSPY-6レーダーシステムに、日本企業が製造した部品が組み込まれることを本誌に明らかにした。
レイセオンが開発・製造するAN/SPY-6は、米海軍の最新艦載防空レーダーである。各辺60cmの立方体形状のレーダーモジュラーアセンブリ(RMA)を組み合わせることで構成され、レゴブロックのように様々なサイズのレーダーアレイを組み立てることが可能となった。RMAの数に応じて、SPY-6ファミリーはSPY-6(V)1(37基)、SPY-6(V)2/(V)3(9基)、SPY-6(V)4(24基)に分類される。米海軍は今後数年間で、アーレイ・バーク級駆逐艦(Flight IIAおよびFlight III型)、空母、強襲揚陸艦など60隻以上の艦艇に本システムを搭載する計画だ。
2025年10月、SPY-6は初の国際輸出契約を獲得した。同システムはドイツ海軍の新鋭F127級フリゲート艦に選定された。同艦は8隻の建造が計画されている。レイセオンの海軍部門社長バーバラ・ボルゴノビはSPY-6が選ばれた5つの主要な理由を本誌に説明した。
「第一に、これは米国の公式プログラムで、米国艦艇との相互運用性・互換性を保証する。第二に、これは低リスクなアプローチを意味する。ドイツのフリゲート艦に特化した適応は必要だが、その調整作業は極めてリスクが低い。第三に、既に米海軍向けに生産中だ。計画段階ではなく、実際に製造が進んでいる。2艦は既に就役しており、生産と納入は予定を前倒しして進んでいる。第四に、これは海上レーダーだ。陸上レーダーを海上環境に移設したものではない。本レーダーは海上で性能を発揮するよう設計されている。海上試験を含む厳格な試験を複数地点で実施済みだ。最後に、訓練も極めて重要である。単にレーダーを納入するだけでなく、顧客と乗組員が当社の能力を適切に運用できることを保証する。これにはSPY-6の訓練インフラも含まれる」。
マサチューセッツ州アンドーバーにあるレイセオン・ミサイルズ&ディフェンスのレーダー開発施設で製造中のSPY-6レーダーアレイ。SPY-6は米海軍のレーダーファミリーであり、7種類の艦艇で統合防空・ミサイル防衛を担う。レイセオン提供画像。
日本企業がSPY-6部品生産に参加
SPY-6で注目すべきは、日本企業が部品製造に参加している点だ。2024年、三菱電機(MELCO)と三波工業(さんぱこうぎょう)は、SPY-6システムの特定部品を生産する供給契約をレイセオンと締結した。両社はレーダー関連製品で豊富な経験を持ち、レイセオンとの協業を電源装置及び関連サブシステムの製造から開始し、作業範囲を段階的に拡大する計画だ。レイセオンによれば、MELCOと三波工業での部品生産は2026年に開始される。
これまで公表されていたのは、日本製部品が米海軍艦艇向けSPY-6レーダーに組み込まれるという事実のみであった。しかしレイセオンの海軍システム・サステインメント担当副社長ジェニファー・ゴーティエはこれらの部品がドイツのF127級フリゲート艦に選定されたSPY-6システムにも組み込まれると本誌に述べた:
「契約での最近の進展で特に注目すべきは、サンパとMELCOが米国向けだけでなく世界中の艦隊向けにもSPY-6の部品を生産する点だ。ドイツが最初の事例となる。そしてグローバルなSPY-6ファミリーが拡大するにつれ、両社が世界中のシステム向けに部品を生産するようになる構想だ」。
これまで日本の防衛産業は、主に自衛隊向けの装備・部品を製造・供給してきた。そのため、長年、低収益で成長産業とは見なされてこなかった。しかし、レイセオンとの協業で始まったSPY-6部品生産は、日本企業が世界的な顧客基盤向けに部品を製造する初めての真の機会となる。したがって、この取り組みは製造施設の拡張や先進的な生産ノウハウの獲得など、複数の分野で大きな利益をもたらすと期待されている。
稲葉義泰
稲葉義泰は、静岡県在住のフリーランスライター。日本で数少ない若手軍事ライターの一人であり、現在は日本の大学院で国際法(特に自衛と武力行使)を研究している学生である。特に陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊に精通している。
Japan to Supply Components for German F127 Frigate’s Radar
Published on 18/11/2025
By Yoshihiro Inaba