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2018年10月24日水曜日

米海軍の次期攻撃型潜水艦はハンターキラー重視に復帰する

Navy’s New SSN(X) Attack Sub To Be Faster, More Lethal – And More Expenskaive 米海軍の時期攻撃型潜水艦SSN(X)は速力、威力が増し、価格も上昇

October 19, 2018 3:09 PM


シーウルフ級高速攻撃型潜水艦USSコネチカット (SSN 22) が氷を破って浮上している。2018年極地演習(ICEX) にて。. US Navy photo.


海軍が目指す次期高速攻撃型潜水艦は大洋での超大国間競争に復帰し、敵潜水艦の掃討を重視する。これは海軍の30年建艦計画から議会予算局(CBO)が読み取った内容だ。


海軍は新型潜水艦調達を2034年に始める予定だ。これまでのSSN(X)構想は現行のヴァージニア級の後継艦の位置づけだった。ヴァージニア級の最終形はヴァージニアペイロードモジュールVPMで垂直発射管でトマホーク等のミサイル発射本数をこれまでの12本から40本に増やしている他、音響含む技術上の進歩を取り入れているとCBOはまとめている。


ただし新しいSSN(X)構想はブロック7のヴァージニア級に代わり、魚雷搭載本数を増やし、VPMは搭載されない。VPMを初搭載したブロック5のヴァージニア級との比較では魚雷・トマホークが25本増えるとCBOは分析。


「具体的には海軍は次世代攻撃型潜水艦は水中速度を上げ、ステルス性を高め、同時にヴァージニア級を上回る魚雷本数を搭載すべきと考えている。全体としてシーウルフ級に近くなる」(CBO報告書)


冷戦後の世界でSSNは潜水艦ハンターの役割を引き続き期待されてきたが、情報収集偵察監視(ISR)ミッションの必要が高まり特殊部隊を発進回収する能力が重視されてきたとの報告もある。


「冷戦後の世界から大国同士の対決が起こりやすい戦略環境へ状況がシフトする中で対潜戦(ASW)をロシア、中国の潜水艦を相手に展開することが米海軍のSSN部隊に重要となってきた」(CBO)

シーウルフ級攻撃型潜水艦USSコネチカット(SSN-22) 2009年撮影。.US Navy Photo


新しいミッション構想では地上部隊を標的とする兵器運用は重視されず、CBOはSSN(X)はシーウルフ排水量9,100トンに近くなると見ている。この艦容だと建造費用は一隻55億ドルとCBOは見積もる。海軍の建造計画ではSSN(X)は一隻31億ドル近辺となっている。


これまで30年に渡る建造からヴァージニア級がSSN(X)の原型になると見られてきた。無人水中機(UUV)運用能力の追加でVPM能力を強化するはずでSSN(X)でもUUV発進能力の追加が噂されている。


「一から設計し直したほうがUUVの利用を一体で行える良い潜水艦につながるでしょう」と語るのはペンタゴンで潜水艦建造を取りまとめてきたマイケル・ジャベイリー中将だ。


新型SSN(X)が最初からUUV運用を取り込むのか不明だが、CBOの分析ではUUV運用は新型大口径次世代ペイロード用潜水艦が行う可能性があると言及している。これは次期戦略ミサイル原潜コロンビア級建造が最盛期をすぎる2036年に発注予定の艦だ。


2019年建艦計画では初めてコロンビア級のあとの新型潜水艦5隻の調達が盛り込まれている。海軍から新型艦の詳細発表はないが、艦容はコロンビア級に似てくるだろう。USNI NewsはSSGNのようなコロンビア級に続く建造計画を2017年11月に報じている。


A slide from a 2013 presentation from PEO Subs on the VPM. NAVSEA Graphic


「新型艦は現在SSGN(巡航ミサイル搭載潜水艦)が果たしている役目以外に別のミッションも実施するだろう」とCBOは予測している。
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SSN(X)が建造されても安価には実施できず、海軍の建艦計画は最初から妥当な費用を見込んだ形に修正すべきとCBOは見ている。355隻海軍の実現のためにも海軍は年間210億ドルの建艦予算が2048年まで必要としているが、CBOの海軍案分析では年間289億ドルがより正確な予測とある。SSN(X)建造は海軍とCBOの各予測の差額の40パーセントに相当する。


「289億ドルというと海軍が過去三十年間に得てきた建艦予算の平均より80パーセント多い数字だ」とCBOはまとめており、海軍の見積もりと比較している。


さらに海軍の建艦計画では今後30年で退役させる計画のスピードに合わないとCBOは指摘している。


「米海軍は2019年から2048年にかけて新規建造艦301隻の調達を計画しており、うち245隻が戦闘艦で56隻が支援艦だ。もし海軍が2019年計画で示した艦艇退役予定をそのまま実施すると、今後30年かけても355隻体制の実現は不可能だ」


アーレイ・バーク級誘導ミサイル駆逐艦の供用期間を45年へ延長する案だと355隻体制が実現するが、CBOはその場合の艦艇構成は海軍にとって必ずしも希望通りにならないと指摘。
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「耐用年数延長により艦隊規模は2034年に355隻になるが一部艦級では不足も発生する」とCBOは解説している。■

2017年8月9日水曜日

★F-22の潜水艦版シーウルフ級の建造はなぜ三隻だけになったのか



 

Why the U.S. Navy Stopped Building the 'F-22 Raptor' of Submarines

米海軍は「F-22ラプター」の潜水艦版の建造をなぜ途中で止めたのか

August 5, 2017


  1. シーウルフ級各艦は史上最強の潜水艦を目指し建造された。ロサンジェルス級攻撃潜水艦の後継艦として米海軍の水中優位性の維持をめざしたものの建造費超過とソ連崩壊で打撃を受ける。最高性能の潜水艦とはいえ隻数が削減されてしまった。多くの点で水中のF-22というべき存在だ。
  2. 1980年代の米海軍は危機的状況にあった。1980年にソ連がウォーカー一家のスパイ網から入手した情報で米海軍がソ連潜水艦のプロペラ音で追尾していると判明した。その結果、ソ連は高性能西側工作機械でプロペラ製造を狙った。1981年に東芝が現在は普通になった九軸CNCフライス加工機をノルウェー企業コングスバーグ経由でソ連に売却した。
  3. 1980年代末になるとソ連の新鋭工作機械が効果を表わし始めた。新型アクラ級は「音響ノイズ特徴が急減した」と政府関係者がロサンジェルスタイムズに語っている。「東芝製品を入手して潜水艦の静粛性が急に向上した」 潜航が静かになったのに加え、アクラ級は2千フィートまで潜航できた。これに対し米海軍の主力潜水艦ロサンジェルス級の最大潜航進度は650フィートだった。
  4. アクラ級の脅威に対抗すべく米海軍はシーウルフ級攻撃潜水艦を企画する。HY-100合金製の艦体は厚さ二インチで深度潜航に耐える設計だ。HY-100はロサンジェルス級のHY-80より20パーセント強い。これによりシーウルフの最大深度は2千フィートになり、艦体破壊深度は2,400フィートから3,000フィートと試算された。
  5. 全長353フィートとシーウルフ級はロサンジェルス級よりわずかに短いが、艦体は2割も幅広の40フィートになった。排水量は潜航時12,158トンにふえた。
  6. シーウルフ級の動力はウェスティングハウス製S6W原子炉一基で蒸気タービン二基から52千馬力を得る。ポンプジェット式推進を米潜水艦で初めて採用した。つづくヴァージニア級も採用している。その結果、シーウルフ級は水上18ノット、水中35ノットを実現し、静粛潜航時でも最大20ノット航行できる。
  7. BQQ 5Dソナーシステムを艦首に搭載し、艦の側部に高開口パッシブアレイもつける。就役後にTB-29Aえい航式アレイソナーシステムを搭載した。機雷など近接距離ではBQS24を使う。
  8. 戦闘データシステムとして当初はロッキード・マーティン製BSY-2を搭載し、モトローラ68030プロセッサー70基でネットワークを形成していた。このプロセッサーは当時のマッキントッシュコンピューターも使っていたが、現在はAN/BYG-1兵装制御システムに換装されている。
  9. シーウルフは真のハンターとして企画され魚雷発射巻数も8門と従来の2倍になった。マーク48大型魚雷、サブ-ハープーン対艦ミサイル、トマホークミサイルを組み合わせて50発まで搭載できる。また一部は機雷に変更できる。
  10. その結果誕生した同級は米海軍によればあらゆる音域で改ロサンジェルス級より10倍の静粛度があり、旧型ロサンジェルス級との比較では70倍の差があるという。静粛度を守りながら水中速度は以前の艦の二倍になった。
  11. 大幅な性能向上には大幅な価格上昇がついてきた。シーウルフ級建造計画は12隻で330億ドルの予定だったが、ソ連崩壊でアクラ級および後継艦の脅威が消えて縮小されわずか3隻を73億ドルで建造した。
  12. 極限までの静粛性を追求したシーウルフ級を見て米海軍は最終艦USSジミー・カーターを極秘作戦支援用に改装した。艦体を100フィート延長し、MMP多用途任務プラットフォームを搭載。MMPにより遠隔操作水中艇・無人水中艇やシールズ、ダイバーの運用が水中から可能となった。シールズ隊員50名まで収容できる。カーターには艦首艦尾に補助推進装置があり正確な艦の制御が可能で水中ケーブル盗聴などに活用する。
  13. 突出した性能を有するシーウルフ級潜水艦だが冷戦思想が設計に反映され高水準脅威に対応できる高性能を追求して生まれた。冷戦後に登場したヴァージニア級では従来型より性能を向上させながら建造費抑制を海軍は求められた。成功した級とは言えず三隻しかないヴァージニア級は今でも米海軍潜水艦戦力の中できわめて有用な艦でありヴァージニア級では不可能な性能を実現しているのだ。■
Kyle Mizokami is a defense and national security writer based in San Francisco who has appeared in the Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and the Daily Beast. In 2009 he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami.
This first appeared last year.