スキップしてメイン コンテンツに移動

KC-135ストラトタンカー運用が100年を超える可能性が出てきた(The Aviationist)―NGASが困難となる場合に備えたオプションなのですが、実行を迫られるということは新型タンカーが実現から遠ざかることを意味します



KC-135 Could Fly 100 Years

2024年2月23日、訓練の一環でピッツバーグ国際空港上空を飛行するKC-135ストラトタンカー。 (ブライアン・フーバー米空軍曹長撮影)

空軍航空機動司令部は、ボーイングKC-135ストラトタンカーが供用期間延長とアップグレードプログラムで2050年以降も使用される可能性があることを示唆している。

 初飛行から約70年、KC-135ストラトタンカーは米空軍で中心で最多の空中給油機であり続けている。現在、最も古いKC-135の一部はKC-46Aペガサスに交代しているが、179機のペガサスの発注は、現在も就航中の約376機のKC-135にはるかに及ばない。さらに、KC-10Aエクステンダーも完全退役したことで発生した不足分も考慮しなければならない。

 現在、ストラトタンカーフリートの退役時期は2050年とされており、その頃には現在就役している機体の多くが90歳を過ぎている。最も若い機体である64-14840は85歳となる。


コープノース2020演習中、グアム近郊でF-16ファイティングファルコンに給油する第909飛行隊KC-135Rストラトタンカー。(米空軍撮影:Senior Airman Gracie Lee)


現在、新型タンカーの必要性を評価する研究が進行中で、次世代空中給油システム(NGAS)ではステルス性タンカーの設計の可能性を調査している。仮にNGASの開発が進んでも、このタイプの最初のタンカーが運用を開始するまでにはまだ何年もかかるだろうし、相当数のタンカーが納入されるまでにはさらに時間がかかるだろう。

 航空機動司令部(AMC)の広報によると、研究は「KC-135の耐用年数を、現在計画されている2050年の耐用年数を超えて延長する必要があるかどうかを判断する」ものだという。延長されれば、KC-135は大規模な改修と改良を受けることになるだろう」。

 就役以来、KC-135はすでにかなりの量のアップグレードと改修プログラムを受けている。KC-135Rはフリートの大部分を占め、かつてのSR-71ブラックバードに特化したKC-135Qタンカーは現在KC-135Tとなっている。KC-135RTは希少な特殊作戦に特化したバリエーションで、空中給油能力を追加している。 これらの航空機は、第22作戦群特殊作戦空中給油(SOAR)部門(米陸軍第160特殊作戦航空連隊と混同しないように)によって運用されている。 同部隊の他のタンカーと同様、KC-135RTにも追加の通信機器が装備され、乗組員は夜間や厳密な無線の沈黙手順のもとで活動するために幅広い訓練を受けている。


別のKC-135から給油を受けるKC-135RTストラトタンカー。 (米空軍/レイチェル・ウォーラー二等軍曹)。


B-52HからB-52Jへの近代化改修のように、アップグレード機体を示す呼称がKC-135で今後増えるかどうかは、まだわからない。重要なことは、B-52とは異なり、TF33エンジンを使用する最後のKC-135は2009年に退役し、代わりに現在アメリカ空軍で使用されているすべての航空機は、より近代的な高バイパス・ターボファンCFM56(アメリカ空軍ではF108)エンジンを使用していることである。この同じエンジンは、民間ではボーイング737やエアバスA320旅客機で広く使用されており、スペアや技術的知識は十分すぎるほど供給されている。

 より多くのKC-46が納入されるにつれて、ストラトタンカー全体の一部が退役することで、すでに大量にあるスペア部品の供給がさらに増えることになるが、新型タンカーの重大な問題によって、一部の航空機は予想以上に長期間の使用を余儀なくされるかもしれない。KC-46は現在、納入準備中の機体で亀裂が発見されたため、納入が停止されている。


2021年に「エレファント・ウォーク」を行うKC-46Aペガサスタンカー。 (米空軍上級曹長ティム・ハフマン撮影)


ブリッジ・タンカー・プログラムは、75機体を購入する計画で、短期から中期的にタンカー機数を確保することを目的としているが、機材はまだ選定されていない。理論的にはKC-46が選択であろうが、現在進行中の問題が空軍の計画部門を思いとどまらせているのは確かである。

 世界市場におけるKC-46の主な競争相手はエアバスのA330 MRTTで、ボーイングが抗議に成功するまでは、KC-45として米空軍にいったん選ばれていた。エアバスとパートナーのロッキード・マーチンがこの契約で航空機を提供する可能性は低そうで、空軍では代替機が不足している。エンブラエルと共同でC-390ミレニアムのタンカー型を開発するというL3ハリスの提案も中止された。

特殊任務

KC-135は、C-135ストラトリフターの機体を使用する米空軍の航空機のうちの1つである。E-3セントリーやE-6マーキュリーのベースとなっているボーイング707と共通の祖先を持つとはいえ、C-135は実際にはまったく別の機体だ。

 C-135で最も数が多く、最も有名な非タンカー型はRC-135である。 RC-135V/Wリベットジョイントは米空軍の主要な信号情報(SIGINT)プラットフォームであり、RC-135部隊の大部分を占めている。また、弾道ミサイル発射の測定とシグネチャー情報(MASINT)の収集に特化したRC-135Sコブラボールや、レーダー放射の傍受と分析に特化したRC-135Uコンバットセントもある。 RC-135部隊は、外見上はRC-135のように見えるが、代わりに乗組員の訓練に使用される少数のTC-135Wのによって支えられている。


ノルウェー空軍のF-35AライトニングIIが手前を飛ぶ中、KC-135Rストラトタンカーから給油を受けるRC-135Wリベットジョイント。 (提供写真:米空軍提供)


3機あるWC-135Rコンスタント・フェニックス「核探知機」は、大気サンプルを採取し、核兵器実験によって放出される可能性のある放射性同位元素を監視する。WC-135はまた、原子力発電所からの放射性物質の放出を監視するためにも使用され、チェルノブイリと福島の原子力発電所事故の際にもサンプルを収集するために配備された。

 これらの特殊任務用C-135の後継機について当面の計画は存在しない。実際、2機のWC-135Rは、老朽化したWC-135Cの後継機として、つい最近就役したばかりでKC-135Rの機体を改造したものだ。

 調達の複雑な性質と、諜報任務のための機体製造のさらに複雑な性質により、特徴的な白とグレーの航空機が、今後数十年のうちに、従兄弟のタンカーと一緒に100周年を祝う可能性は確かにある。■


KC-135 Stratotanker Could Fly Past 100 Years in Service

Published on: March 24, 2025 at 1:31 PM

 Kai Greet

https://theaviationist.com/2025/03/24/kc-135-could-fly-100-years/


カイ・グリート

カイは航空愛好家であり、英国のコーンウォールを拠点とするフリーランスの写真家兼ライターである。ファルマス大学でプレス&エディトリアル写真を専攻。本人の写真作品は、国内外で認知された多くの組織やニュース出版物に取り上げられ、2022年にはコーンウォールの歴史に焦点を当てた本を自費出版した。軍事作戦/歴史、国際関係、政治、情報、宇宙とともに、航空に関するあらゆる側面に情熱を注いでいる。




コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...