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2025年4月1日火曜日

シコースキー、イスラエルのCH-53Kヘリコプターにイスラエル製システムを統合へ(Breaking Defense) ― 米国製装備に自国技術を詰め込む徹底した改修こそイスラエルが求める性能水準の高さのあらわれでしょう

 


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イスラエルはロッキード・マーティン傘下のシコースキーからCH-53K大型ヘリコプターを12機購入する。 (ロッキード・マーチン)




米国務省は2021年に最大18機をイスラエルに売却する案件に同意し、イスラエルは2022年に約20億ドルの見積で12機の契約を締結した


スラエル国防省は、取得する12機のCH-53K大型ヘリコプターにイスラエル製システムを統合するため、米防衛企業シコースキー社に「数億ドル」を支払うと発表した。

 ロッキード・マーティンの子会社シコースキーは、「各機をイスラエル空軍が求める厳しい作戦任務要件に適合させるため、米海兵隊の標準的な構成から変更するため専用の生産ラインを構築する」と、国防総省の声明は月曜日に発表された。変更には「独自のミッション・システムと装備」が含まれる。

 「さらに、シコースキーはイスラエル国防省から提供されたアビオニクス、ナビゲーション・システム、電子戦スイートを統合する」と国防総省は述べた。 アップグレードの正確な費用は明らかにされていない。


革新性、回復力、卓越性で国に奉仕する人々を支援する

イスラエルはしばしば、自国のニーズに合わせてプラットフォームをカスタマイズしている。 例えば、ロッキード・マーティン製のF-35もイスラエルによって独自のシステムでアップグレードされた。 イスラエル・バージョンは「アディール」と呼ばれ、イスラエル・エアロスペース・インダストリーズが開発したC4システムなど、独自のシステムを搭載している。同様に、イスラエルはドイツで建造され取得したサアル6コルベットに独自のシステムを搭載した。

 米国務省は、2021年に最大18機のヘリコプターをイスラエルに売却する案件に同意し、イスラエルは最終的に2022年に約20億ドルの見積で12機調達の契約を締結した。当時ロッキード・マーティンは、"ロッキード・マーティンが設計・製造したCH-53Kヘリコプターは、イスラエル空軍のニーズを満たす最も能力、効率、信頼性の高いソリューションであると確信している "と述べていた。

 CH-53Kは、エルサレムが1969年以来保有しているほぼ20機のCH-53ヤスール・ヘリコプターに交代することとになる。イスラエルは、CH-53Aヘリコプターの初飛行から4年後の1968年に代表団を米国に派遣し、ヘリコプターの早期購入者となっていた。老朽化したヤスールヘリコプターは、数十年の耐用年数延命を目指して1980年代から改良が加えられてきた。2023年10月7日のハマスによるイスラエル攻撃で始まった今回の戦争でも使用されている。■


Sikorsky to integrate Israeli systems on Israel’s CH-53K helicopters

The US State Department agreed to a potential sale of up to 18 of these helicopters to Israel in 2021, and Israel eventually went ahead with a deal for an initial 12 estimated at around $2 billion in 2022.

By   Seth J. Frantzman

on March 26, 2025 at 10:03 AM

https://breakingdefense.com/2025/03/sikorsky-to-integrate-israeli-systems-on-israels-ch-53k-helicopters/


2020年12月28日月曜日

海上輸送力・兵站の軽視が米軍の南シナ海作戦を困難にする。中国の拡張を食い止めるため新たな投資が必要だ。

 

CH-53K キングスタリオンが共用軽戦術車両を吊り下げる能力を実証した。フック一つで重量l18,870ポンドの同車両を100フィート上空まで移動させた。 (U.S. Navy)


戦場で秩序・無秩序を分ける一線は補給活動にある (孫子)


 勝利の裏には検討に検討を重ね迅速対応した兵站活動があった。1944年のノーマンディ上陸作戦が好例だ。逆に補給をろくに立案せず大敗を喫したのがナポレオンのロシア侵攻だ。1959年、当時のNATO副参謀総長ヘンリー・エクレス海軍少将は兵站をこう定義した。「補給活動は一国の経済力と自国軍の戦術作戦を結ぶ橋である」。この橋の整備・強化につとめないと装備、糧食が不足し勝利はおぼつかなくなる。

 広大な海域に数千もの離島が点在し、インフラが未整備に近いアジア太平洋戦域では米本土と域内展開する米軍部隊を結ぶ課題が多数ある。各部隊は「一国の経済」とは世界最大の大洋で切り離されており、中国は東シナ海、南シナ海の裏庭で影響力を強め、領有権主張も一層激しくなっている。インフラの欠如により大型輸送機や大型補給艦が投入できない。

 中国と開戦となれば兵站活動が難題になるのは避けれない。

 

地理

中国の領土拡張運動の中心はプラトリー、パラセル両島しょにあり、豊富な水産資源、石油ガス埋蔵量が戦略的な狙いだ。また同地域を毎年数兆ドル相当の海上輸送が通過する。こうした島しょは135万平方マイルに数百もの小島・珊瑚が点在し、インフラは皆無に近い。

 CIA調べではスプラトリー諸島に飛行場は8箇所、ヘリパッド5箇所あるが港湾施設はない。中国軍はパラセルのウッデイ島に人工港と飛行場を構築し、人民解放軍1000名が駐屯している。

 中国海軍が隻数で米海軍を上回るまでになった中で、米国は新型垂直離着陸機や海上輸送力の強化でギャップを埋める必要がある。

 

脅威

中国軍は西太平洋での補給活動の重要性を理解している。東シナ海、南シナ海への進出も補給面の優位性を確立する狙いがある。同海域は中国本土への食料、燃料の補給路であり、ここだけで世界貿易の約2割をコントロールできる。南シナ海での中国の野望を放置すれば、同国の影響力が拡大し国際海洋法は形骸化する。

 シンクタンクRandコーポレーションの2020年研究成果では「(中国軍による)占拠を許せば、中国は数千マイル南方間で影響力を行使し太平洋への兵力投射が可能となる」と結論した。

 これにより域内の同盟国協力国が困るだけでなく、これまで対立と無縁だった海上交通路も安全でいられなくなる。とくに中国が接近阻止領域拒否の傘を広げるのが最大の脅威となる。

 

課題

 A2/ADの傘では長距離センサーとミサイルが中核だが、2019年1月のMedium記事では対抗策として「部隊を分散させ兵力を多数地点に展開する」とあった。米装備へのリスク分散とともに影響力を拡散するねらいがある。しかし南シナ海で部隊を移動し分散させるには対応力に富む輸送艦多数と大型垂直離着陸輸送手段が必要だ。

 残念ながら海上輸送部隊は長年に渡り軽視され、予算は空母潜水艦に回されてきた。もちろんこうした艦種が米国に戦略優位性を生んでいるが、糧食や補給部品がなければ作戦継続も不可能だ。海上輸送力整備の軽視で対応力低下が避けられない。

 1月のNational Defense記事が最近行われた海上輸送演習が取り上げ、「輸送艦で対応準備できていたのは64%に過ぎず、期待通りに機能したのは4割未満だった」とある。記事はさらに「大国同士の戦闘になれば海上輸送力が動向を決めるので、これは大問題だ」と指摘した。

 幸い10月16日のForbes記事では海上輸送力整備は中程度の予算で可能であり与野党も国防長官マーク・エスパーを支持するとあった。実現までの道筋は①即応予備部隊中で最新の艦艇の供用期間を延長する。②海外の中古船舶を購入し改修する。③国内造船所で新型補助艦艇を建造する、の3つだ。

 

陸軍の役割

陸軍は地上部隊とされてきたが2014年のRandレポートでは統合部隊の支援が「中国との大規模戦闘では陸軍の最重要任務になる可能性があり、現在の陸軍の装備運用方針では不十分になる」で結論付けていた。

 ただしインフラ未整備の環境では輸送艦に大型垂直離着陸機を搭載する必要がある。陸軍の大型機材はCH-47で、陸上作戦では実用性は実証済みだが、艦上運用では不利な点もあり、空中給油能力の欠如のため航続距離が限定される。

 海兵隊は次世代大型機CH-53Kの運用開始に向け準備を進めており、海上試験も今年6月に完了した。CH-53KはCH-47に対し海上分散地点への運用で有利となる。輸送力は50%多く、空中給油が可能で、艦載運用の想定でフライバイワイヤーのデジタル設計になっている。

 陸軍ではCH-47が引き続き大型機の中心だが、艦上運用可能な大型機があれば陸軍の輸送能力に大きな貢献となり、補給上のギャップも埋まる。

 南シナ海で補給活動のギャップが続けば、中国の拡張リスクも高まる。拡張を許せば中国が覇権を強化し、米国や同盟国が代償を払わされる。

 強靭な兵站インフラ構築は短期では不可能だ。幸いにも戦略海上輸送力の再構築方法は確立されており、陸軍のCH-47をCH-53Kに更改すればよい。ヘリコプター製造と洋上運用に向けた陸軍要員の訓練には時間がかかる。艦船建造や改修・乗員の確保、訓練はさらに長時間を要する。

 

軍の立案部門には時間切れになってきたのがわかっているのだろうか。中国は孫子の教えを守っている。「良い決定はあたかも鷹の降下のようで絶好のタイミングで獲物を襲い、撃破する」

 

 

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

How to solve logistical challenges during a South China Sea conflict

By: Scott Trail 

 

Scott Trail is a retired Marine CH-46 and V-22 developmental test pilot who now works as a senior research engineer for the Georgia Tech Research Institute. He has flown the CH-53E once and deployed twice (once to Afghanistan in 2001) with a squadron reinforced by CH-53E helicopters.

 


2017年10月16日月曜日

53歳になったCH-53の過去、現状、未来



先週沖縄で発生した事故は深刻でしたが、例によって日本側の反応は感情的でCH-53全体の飛行をやめろ、とか危険な機体扱いにしてしまいましたね。住民に被害がなくて幸いでしたが、だれも米側乗員の安否を気遣わなかったのはどういうことでしょう。また、今後新g奈多のスタリオンが登場してもやはり危険機材扱いするつもりなのでしょうか。オスプレイと重なるところがありますが、背後に政治的な動機があるのか注視する必要もありそうです。また報道機関にはCH-53E(CH53ではありません)と明記してもらいたいものです。


The CH-53's Dark Present But Bright Future On This The Chopper's 53rd Birthday

明暗分かれる現状と将来の中、53歳になったCH-53

The type has gone through a turbulent patch in recent years but a new super powerful variant could revitalize its legacy for decades to come.

近年、つらい境遇にあったが、新型機の登場で再活性化され偉業はこれからも続く


STEVEN KAETER/SIKORKSY
BY TYLER ROGOWAYOCTOBER 14, 2017

  1. 巨大なシコースキーCH-53が53歳になった。「スタリオン」の初飛行は1964年10月14日で現在は三世代目のCH-53Kキングスタリオンが登場している。CH-53に代わる機体はCH-53の改良型しかないとはよくいったものだ。この事はイスラエルが最近身をもって知ったばかりだ。
SIKORSKY ARCHIVES
YCH-53Aとして1964年10月14日に初飛行
  1. Flightglobal.comによるとイスラエル空軍はMV-22オスプレイの評価を中断したが、CH-53D後継機としてオスプレイ数機を導入するつもりだった。Flightglobal.comはこう報じている。
  2. 「イスラエル空軍はベル=ボーイングV-22オスプレイの評価作業を凍結した。同国国防筋は現在シコースキーCH-53輸送ヘリコプターでこなしているミッションの一部はオスプレイでは実施できないとしている」
  3. これは半世紀にわたり稼働しているシコースキーの設計作業への賛辞であり、MV-22も戦闘捜索救難や長距離兵力投入などで大きな効果を示す機体であるが、「デルタ」と呼ばれる双発のシースタリオンは、その他の場面では依然優秀な効果を上げていることを示すものだ。
OREN ROZEN/WIKICOMMONS
  1. イスラエル国防軍にはCH-53Dが20数機あり、長距離大量ヘリコプター輸送任務についており、とくに夜間と特殊部隊の運用が重視されている。2010年ごろからヤスール2025仕様にアップグレードされ2020年代でも十分稼働可能な機体になっている。
  2. 他方で米軍のH-53E各型には2000年代はつらい時代だった。機体は酷使され装備全体の視点がなおざりになり最初にしわ寄せが来たのがMH-53Eシースタリオン掃海ヘリ各機で運用方法の変更に伴い事故が多発した。
  3. 海軍のシードラゴン各機にも海兵隊が輸送能力で多大な期待を寄せたが実態は悲惨だった。
  4. 2016年2月時点のCH-53Eの辛い状況について筆者はこう書いていた。
  5. 「海兵隊発注の第三者評価で問題が多々見つかり、スーパースタリオンは必要な機材数より50機も少ない146機しか稼働していないと判明した。米国が戦闘に入れば、仮に短期戦でもほぼ全機を稼働させる必要がある。このほかに訓練や緊急時対応や予備機材の問題がある。
  6. さらに状況を悪化させるのが部品不足や長年にわたる保守管理の先送りだが、なんと言っても驚かされるのは即応態勢率が23パーセントしかないことだ。つまりペンタゴンが目標とする軍用機即応率75パーセントに比べ三分の一水準しかないことになる。
  7. 即応態勢にあるのが23%でCH-53E全機数が146機ということは33機しか稼働できないということではないか」
USMC
CH-53Eの「サンドブラスト」はこれまで16年間にわたり中東で健在だった
  1. 当時のCH-53Eパイロットは海外展開から帰国しても半年でわずか30飛行時間しか操縦していなかった。予備部品が払底し、海兵隊はスーパースタリオンへの投資をすっかり忘れ、予算は単価65百万ドルのオスプレイと125百万ドルのF-35B調達に集中していた。
  2. CH-53E部隊はこの15年を戦闘投入されてきた陸軍はイラクアフガニスタンで大量の機材を喪失損失し海外戦役から帰還した機材は単価1.2百万ドルで『再調整』していたが海兵隊はわずか100千ドルで機体を再整備しただけだ
  3. 海兵隊はこの予算節約のツケを今払っており、戦闘準備態勢にしわ寄せを招いた先見の明のなさの代償を支払っているのだ。
  4. そこで海兵隊の解決策は今年は300百万ドルほど確保し(F-35Bならほぼ2機分、MV-22オスプレイ5機分に相当)しCH-53E再整備にあたることだ。目標はスーパースタリオン全機を整備し乗員とともに2019年までに全機稼働状態にすることだ。さらにH-53Eで保存中だった二機をエリクソン・インコーポレイテッドにより再復帰させ部隊編入する」
  5. だがスーパースタリオン2機もたてつづけに2016年1月にオアフの訓練ミッションで喪失したことでCH-53E部隊の実態が明らかになった。ひとつに乗員の受ける訓練が圧倒的に足りないことがあり、機材の稼働率の低さも事故の原因とされた。
  6. すべてが明らかになるとNAVAIR(海軍航空システムズ本部)による三か年計画のCH-53E機材再活性化事業が大きく改良され、常時16機の大修理、訓練・予備部品への予算投入が続いた。しかし、CH-53Eが先週沖縄上空で火災を起こし、緊急着陸を迫られる事態が発生した。同機は全損状態でAクラス事案判定となった。つまり2百万ドル超の損害または人命喪失あるいは生涯にわたる障害の発生で沖縄ではスーパースタリオンの飛行が96時間停止された。
AP
2017年10月12日に沖縄で不時着したCH-53Eの残骸
  1. 事故はまだ調査中だがCH-53E部隊には改めて機体の老朽化の進行を思い起こす効果になった。同機は今でも高速飛行、大揚力、ホバリング性能の高さに加え驚異的な操縦性を誇るものの機体がミッション投入可能な状態になって初めて発揮できる性能だ。だが救いはスーパースタリオンの後継機が現れていることだ。
USMC
テスト中のCH-53K キングスタリオン
  1. そこでCH-53Kキングスタリオンが登場する。筆者はシコースキーによるH-53の次期型を見て恐ろしく高価な機材になるが性能には感銘を受ける。米海兵隊にはこの性能こそが不可欠な要素だ。
  2. タービン三基で合計22,500hpと前型からほぼ50%の出力増で最高速は200ノット近くになり、最大離陸重量は何と85千ポンドだ。機内容積は15パーセント増え、各種改良で機体の信頼性を引き上げスーパースタリオンより保守整備の必要性を引き下げている。今後登場する新技術への応用性も残している。
  3. キングスタリオンの稼働開始でも遅延はあるが、現在鋭意テスト中で開発は順調だ。米海軍は304百万ドルでCH-53Kをまず2機就役させる契約を交付した。機体は2020年に引き渡される予定でCH-53Eにもやっと引退の道筋がつく。
AP
ドイツの CH-53G
  1. 米海兵隊は200機を調達する予定だがCH-53Kは海外からも注目を集めている。イスラエルはMV-22のかわりにあるいは並行して同機を調達する可能性がある。ドイツも現行のCH-53G(D型の改修版)の後継機として関心を示しており、日本はMH-53Eシードラゴンを稼働させていた実績がありが導入国になる可能性がある。その他の国では多くがH-47チヌークを飛ばしているがキングスタリオンが今後成熟化すると購入検討する国も現れるだろう。
  2. 直近の事故を除けば、CH-53は軍事航空作戦での実績で輝かしい記録を打ち立てた機材だ。功罪両面でだ。キングスタリオンが登場してもCH-53の実績はまだつまだ続き、いつの日かスタリオンが75周年、100周年を迎える可能性も十分ある。■
USMC
Contact the author: Tyler@thedrive.com


2017年4月5日水曜日

世界一高価になったCH-53Kの機体単価の内訳


装備が高額になって米国だけで維持ができなくなってきた事例ですね。海兵隊が言う費用分担に加え、共同保有やリースなどの方式も今後あらわれるかもしれません。日本は掃海用MH-53Eを引退させたばかりで当面同機には需要がないでしょう。しかし今やロッキードの一部となったシコースキー(今後発音に近いこの呼称とします)は日本にも話を持ってくるかもしれません。スーパースタリオンは日本でかなり不評だったようなのでどうなりますかね。今度はキング・スタリオンですからね。


Total cost of CH-53K is $131 million per helicopter: Here's the breakdown 

CH-53Kの単価が131百万ドルになる理由

By: Jeff Schogol, April 3, 2017 (Photo Credit: Lockheed Martin.)

  1. もしCH-53キング・スタリオンが新車なら本体価格87.1百万ドルに諸税、登録費用などが加わり131百万ドルになると言う話だ。
  2. 米海兵隊は2029年までにCH-53Kを200機導入し、老朽化してきたCH-53Eスーパースタリオンと交代させる。CH-53Eで稼働率が深刻な問題になっている。
  3. ニキ・ツォンガス下院議員(民、マサチューセッツ)がCH-53Kの単価が87.1百万ドルから122百万ドルに膨れ上がっていると指摘している。同機はロッキード・マーティン子会社のシコースキーが製造する。
  4. 「ここまでコストが膨れるのは深刻な経費増だ」とツォンガス議員は3月10日に下院軍事委員会戦術航空陸上部隊小委員会の聴聞会で発言した。「今後にさらなる価格上昇がないとしても一機2006年価格で122百万ドルというのはF-35よりはるかに高い機体になる」
  5. 海兵隊はこれに対しCH-53K機体単価は上昇しておらず、よくあることだが初号機はエンジニアリングや工具費用が入るのでどうしても高くなると弁明。
  6. 「なんでも最初はうまくいかないものです」とヘンリー・ヴァンダーボート大佐が海軍連盟の年次海空宇宙シンポジウムで発言している。
  7. 「時が経てば熟達し、製造工程でも改良が生産が続くのと同時に実現します。素材の変更も生産中によくありますし、全て組み合わせればコストは生産とともに下がります」
  8. だが87.1百万ドルの数字には付随コスト開発コストは入っていないとヴァンダーボート大佐は指摘。大佐は海兵隊海軍向け大型ヘリコプター開発責任者だ。
  9. CH-53K事業費には192億ドルが調達関連で計上されており、付随装置としてエンジンカバーなどがあり、その他労務費、予備部品他の経費が入っているとヴァンダーボート中佐は説明。そこに69億ドルを研究開発費として加えると261億ドルになる。ここから単価131百万ドルが生まれたという。
  10. 単価は海外向け販売で下がるとヴァンダーボート大佐は説明。ドイツが41機導入の可能性があるという。
  11. 「生産量が25パーセント増えれば、製造単価は下がります」(ヴァンダーポート)
  12. ドイツ軍など海外でCH-53K導入が実現すれば、海兵隊は各国と機体維持費用を分担できると大佐は述べた。■

2014年11月2日日曜日

米海兵隊が進めるCH-53Kは大幅に性能向上した新型スーパースタリオン



Marine Corps Prepares New CH-53K for First Flight

by KRIS OSBORN on OCTOBER 21, 2014
http://defensetech.org/2014/10/21/marine-corps-prepares-new-ch-53k-for-first-flight/
Marine Corps' new MH-53K prepares for its first flight.海兵隊が新型CH-53Kスーパースタリオン大型輸送ヘリコプターの各種テストを実施中。同機は来年に初飛行の予定。
CH-53Kは現行のCH-53Eスーパースタリオンの改修型で、貨物27,000ポンドを110カイリ先に輸送し、30分滞空して出発地に戻る性能が高温環境下でも発揮できる設計だ。
  1. 同型で海兵隊空陸任務部隊Marine Air Ground Task Force(MAGTF)向けに想定した性能が実現すると海兵隊は説明している。
  2. CH-53Kは軍事作戦以外に人道援助他非軍事ミッション、強襲作戦も想定していると海兵隊エリック・パーセル少佐 Maj. Eric Purcell (海兵隊大型ヘリコプター開発部門)は説明。
  3. 「実際の飛行パターンでテストし、特に動力伝達系や駆動部分、燃料供給システムやサブシステムをテストしています」と語るのはハンク・ヴァンダーボート大佐Col. Hank Vanderborght(海軍航空システム本部所属、H-53ヘリコプター開発部門責任者)だ。
  4. 陸上テストは三分の一を消化ずみで、GE-408に過負荷・高リスクテストも行っている。
  5. 初飛行が遅れて今年から来年になったのは技術問題のせいとヴァンダーボート大佐は言う。
  6. 課題の一部は機体の供用期間を30年として部品が耐久性を持つかを確認することだという。
  7. CH-53Kだけが事業準備でつまづいて遅延した例ではない。管理室によれば2011年に会計検査院が報告書でコスト上昇と日程管理の遅延を問題視した後は順調に推移しているという。実戦配備は2019年予定で当初の予定から4年遅れる。
  8. CH-53Kは現行CH-53Eの貨物搭載量の三倍となる。これが実現できたのは機体が軽量化したためで複合材の他アルミニウムやチタニウムも使用している。.横材構造と表皮はすべて複合材でローターブレイドは新設計で先端はたわみをつけているとシコルスキーエアクラフトコーポレーションは説明している。
  9. 海兵隊の調達想定は200機で、単価約70百万ドル。2028年までに完全運用を開始し、2050年代にかけて稼働させる。なお、生産開始は2016年予定だ。
  10. 「CH-53Kはこれまでの大型ヘリコプターの延長線というだけでなく、ヘリコプター運用の姿を変えるものとなる。海兵隊は即応体制が一番高い組織として今後も残る」(パーセル)
  11. パーセルにおよれば真価が試されるのはアフガニスタンだ。CH-53Eではパイロット両名は9,000ポンドの補給物資を三回つづけて30マイルずつ前線基地に送り、毎回燃料補給をして帰還するという。
  12. 「CH-53Kではこのミッションを三基の貨物吊り下げ用フックにそれぞれ違う貨物を取り付けて一度に実施できます」
  13. CH-53Kでは「分割式トルク」“split-torque” も開発されている。分割式トルクのトランスミッションでは高馬力、高速回転のエンジン出力を低速低トルクのロータードライブに伝達できる。これにより機体重量を増やさずに高出力が得られるので効率が優れる。
  14. もう一つの特長が指向性赤外線対抗手段DIRCMでレーザーを使い飛来するミサイルの方向を変えさせる。
  15. K型はフライバイワイヤで飛行し、状況対応型保守管理を採用しており、診断機能の付いたセンサーにより機内システムを監視し、故障予知と回避を行うと海兵隊は説明している。■