先週沖縄で発生した事故は深刻でしたが、例によって日本側の反応は感情的でCH-53全体の飛行をやめろ、とか危険な機体扱いにしてしまいましたね。住民に被害がなくて幸いでしたが、だれも米側乗員の安否を気遣わなかったのはどういうことでしょう。また、今後新g奈多のスタリオンが登場してもやはり危険機材扱いするつもりなのでしょうか。オスプレイと重なるところがありますが、背後に政治的な動機があるのか注視する必要もありそうです。また報道機関にはCH-53E(CH53ではありません)と明記してもらいたいものです。
The CH-53's Dark Present But Bright Future On This The Chopper's 53rd Birthday
明暗分かれる現状と将来の中、53歳になったCH-53
The type has gone through a turbulent patch in recent years but a new super powerful variant could revitalize its legacy for decades to come.
近年、つらい境遇にあったが、新型機の登場で再活性化され偉業はこれからも続く
- 巨大なシコースキーCH-53が53歳になった。「スタリオン」の初飛行は1964年10月14日で現在は三世代目のCH-53Kキングスタリオンが登場している。CH-53に代わる機体はCH-53の改良型しかないとはよくいったものだ。この事はイスラエルが最近身をもって知ったばかりだ。
SIKORSKY ARCHIVES
YCH-53Aとして1964年10月14日に初飛行
- Flightglobal.comによるとイスラエル空軍はMV-22オスプレイの評価を中断したが、CH-53D後継機としてオスプレイ数機を導入するつもりだった。Flightglobal.comはこう報じている。
- 「イスラエル空軍はベル=ボーイングV-22オスプレイの評価作業を凍結した。同国国防筋は現在シコースキーCH-53輸送ヘリコプターでこなしているミッションの一部はオスプレイでは実施できないとしている」
- これは半世紀にわたり稼働しているシコースキーの設計作業への賛辞であり、MV-22も戦闘捜索救難や長距離兵力投入などで大きな効果を示す機体であるが、「デルタ」と呼ばれる双発のシースタリオンは、その他の場面では依然優秀な効果を上げていることを示すものだ。
OREN ROZEN/WIKICOMMONS
- イスラエル国防軍にはCH-53Dが20数機あり、長距離大量ヘリコプター輸送任務についており、とくに夜間と特殊部隊の運用が重視されている。2010年ごろからヤスール2025仕様にアップグレードされ2020年代でも十分稼働可能な機体になっている。
- 他方で米軍のH-53E各型には2000年代はつらい時代だった。機体は酷使され装備全体の視点がなおざりになり最初にしわ寄せが来たのがMH-53Eシースタリオン掃海ヘリ各機で運用方法の変更に伴い事故が多発した。
- 海軍のシードラゴン各機にも海兵隊が輸送能力で多大な期待を寄せたが実態は悲惨だった。
- 2016年2月時点のCH-53Eの辛い状況について筆者はこう書いていた。
- 「海兵隊発注の第三者評価で問題が多々見つかり、スーパースタリオンは必要な機材数より50機も少ない146機しか稼働していないと判明した。米国が戦闘に入れば、仮に短期戦でもほぼ全機を稼働させる必要がある。このほかに訓練や緊急時対応や予備機材の問題がある。
- さらに状況を悪化させるのが部品不足や長年にわたる保守管理の先送りだが、なんと言っても驚かされるのは即応態勢率が23パーセントしかないことだ。つまりペンタゴンが目標とする軍用機即応率75パーセントに比べ三分の一水準しかないことになる。
- 即応態勢にあるのが23%でCH-53E全機数が146機ということは33機しか稼働できないということではないか」
USMC
CH-53Eの「サンドブラスト」はこれまで16年間にわたり中東で健在だった
- 当時のCH-53Eパイロットは海外展開から帰国しても半年でわずか30飛行時間しか操縦していなかった。予備部品が払底し、海兵隊はスーパースタリオンへの投資をすっかり忘れ、予算は単価65百万ドルのオスプレイと125百万ドルのF-35B調達に集中していた。
「 CH-53E部隊はこの15年を戦闘投入されてきた。 陸軍はイラク、 アフガニスタンで大量の機材を喪失、 損失し、 海外戦役から帰還した機材は単価1. 2百万ドルで『再調整』していたが、 海兵隊はわずか100千ドルで機体を再整備しただけだ。 - 海兵隊はこの予算節約のツケを今払っており、戦闘準備態勢にしわ寄せを招いた先見の明のなさの代償を支払っているのだ。
- そこで海兵隊の解決策は今年は300百万ドルほど確保し(F-35Bならほぼ2機分、MV-22オスプレイ5機分に相当)しCH-53E再整備にあたることだ。目標はスーパースタリオン全機を整備し乗員とともに2019年までに全機稼働状態にすることだ。さらにH-53Eで保存中だった二機をエリクソン・インコーポレイテッドにより再復帰させ部隊編入する」
- だがスーパースタリオン2機もたてつづけに2016年1月にオアフの訓練ミッションで喪失したことでCH-53E部隊の実態が明らかになった。ひとつに乗員の受ける訓練が圧倒的に足りないことがあり、機材の稼働率の低さも事故の原因とされた。
- すべてが明らかになるとNAVAIR(海軍航空システムズ本部)による三か年計画のCH-53E機材再活性化事業が大きく改良され、常時16機の大修理、訓練・予備部品への予算投入が続いた。しかし、CH-53Eが先週沖縄上空で火災を起こし、緊急着陸を迫られる事態が発生した。同機は全損状態でAクラス事案判定となった。つまり2百万ドル超の損害または人命喪失あるいは生涯にわたる障害の発生で沖縄ではスーパースタリオンの飛行が96時間停止された。
AP
2017年10月12日に沖縄で不時着したCH-53Eの残骸
- 事故はまだ調査中だがCH-53E部隊には改めて機体の老朽化の進行を思い起こす効果になった。同機は今でも高速飛行、大揚力、ホバリング性能の高さに加え驚異的な操縦性を誇るものの機体がミッション投入可能な状態になって初めて発揮できる性能だ。だが救いはスーパースタリオンの後継機が現れていることだ。
USMC
テスト中のCH-53K キングスタリオン
- そこでCH-53Kキングスタリオンが登場する。筆者はシコースキーによるH-53の次期型を見て恐ろしく高価な機材になるが性能には感銘を受ける。米海兵隊にはこの性能こそが不可欠な要素だ。
- タービン三基で合計22,500hpと前型からほぼ50%の出力増で最高速は200ノット近くになり、最大離陸重量は何と85千ポンドだ。機内容積は15パーセント増え、各種改良で機体の信頼性を引き上げスーパースタリオンより保守整備の必要性を引き下げている。今後登場する新技術への応用性も残している。
- キングスタリオンの稼働開始でも遅延はあるが、現在鋭意テスト中で開発は順調だ。米海軍は304百万ドルでCH-53Kをまず2機就役させる契約を交付した。機体は2020年に引き渡される予定でCH-53Eにもやっと引退の道筋がつく。
AP
ドイツの CH-53G
- 米海兵隊は200機を調達する予定だがCH-53Kは海外からも注目を集めている。イスラエルはMV-22のかわりにあるいは並行して同機を調達する可能性がある。ドイツも現行のCH-53G(D型の改修版)の後継機として関心を示しており、日本はMH-53Eシードラゴンを稼働させていた実績がありが導入国になる可能性がある。その他の国では多くがH-47チヌークを飛ばしているがキングスタリオンが今後成熟化すると購入検討する国も現れるだろう。
- 直近の事故を除けば、CH-53は軍事航空作戦での実績で輝かしい記録を打ち立てた機材だ。功罪両面でだ。キングスタリオンが登場してもCH-53の実績はまだつまだ続き、いつの日かスタリオンが75周年、100周年を迎える可能性も十分ある。■
USMC
Contact the author: Tyler@thedrive.com
キングスタリオンは随分と高価格化していると聞きます。
返信削除私自身詳しく見ていないので何とも言えませんが果たしてアメリカ軍の懐事情で機種更新が出来るのかどうか…