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「F-19」と謎の米軍部隊記章



なにかと極秘機材の話題が好きな当ブログですが、ノースロップの存在がいつもつきまとっていますね。それはそれで楽しいのですが、どうも噂の域を超えないようですね。しかし火のないところに煙はたたず、ということもあります。あと数年して機密解除される可能性がないとはかぎりません。



This USAF Intelligence Squadron's Insignia Appears to Show the "F-19 Specter"

米空軍情報隊記章に「F-19スペクター」がついている

It's officially a "generic" airplane, but it sure looks like someone got their inspiration from the fictitious design.

「一般機材」という公式説明だがどこでデザインを拾ってきたのか

DOD INSIGNIA
BY JOSEPH TREVITHICKOCTOBER 23, 2017

  1. 部隊記章には風変わりもの、ぱっとしないもの、問題になりかねないものがと同時に部隊の歴史や任務に関し重要かつ興味深い洞察を与えてくれるものがある。そのひとつに「F-19スペクター」ステルス戦闘機を題材にした記章がある。
  2. アラバマ州軍の第117情報隊の公式記章では衛星ビームが南北アメリカを照らし、F-19Aと思しき機体が信号波を発信する形にまとまっている。州軍航空隊の公式歴史管理局および米陸軍紋章記録所によればこの記章は1989年制定で、当時の第117偵察技術隊のものだ。
  3. 記章の公式説明は以下の通りだ。
「青と黄は空軍の色。青は空で空軍の活動場所で、黄は太陽であり、空軍人員に求められる優秀さを意味する。地球は世界規模での当飛行隊の運用技術を意味する。機体は飛行隊の有する空中監視偵察能力を体現している。衛星は偵察と情報を遠隔地から入手する技術の象徴だ」
  1. 州軍航空隊公式歴史部によると機体は「架空」のもので特定機材を意味する意図はないという。空軍の上位方針ではこれは正しい措置で時を超えても有効な記章にすべく、新機材導入があっても変更を不要にする措置だ。
  2. だがデザインが大衆の信じるF-19Aに酷似しているのは単なる偶然なのか。もちろんスペクターが実在する証拠でもない。事実はその反対だ。
  3. 話の全体像をご存じない方には1980年代に空軍が米軍の戦闘機公式呼称で「19」を飛ばしていることをお教えしたい。F-16はYF-17を破り採用され、その次にF-18が生まれF/A-18になった。
NORTHROP/LORAL
一番詳細なのがロラールのF-19スペクター・ステルス戦闘機の構想図だ。だがあきらかに作者の想像の産物であり、同社技術陣のインプットではない。
  1. だが1982年に空軍は機体呼称制度を使いノースロップ・グラマンのタイガーシャークをF-20と命名している。するとただちにF-19の存在を観測する動きが出て、想像の最大公約数が噂に上っていたステルス戦闘機だった。その6年後に同機はロッキードF-117ナイトホークとして登場したが、極秘機が別に存在すると信じられるようになった。
  2. だが正体は暴露されている。民間航空研究者のアンドレアス・パーシュは自身のdesignation-systems.netで公式文書を引用し、F-19が欠番になったのはノースロップの要請をおもんばかったためと解説している。タイガーシャークの国際販売をもくろんだ同社がF-20名称にこだわったのはMiG-19と混同を防ぐためでソ連が奇数の機体名称を採用していたからだ。
USAF
ノースロップF-20 タイガーシャーク
  1. 果たしてこの話題があったのか疑わしいが、米軍の航空機ミサイルの制式名称には例外が多く標準形と異なる例も多いし、順番でないものやマーケティングや政治配慮のために変えられた型式名がある。好例がC-130JハーキュリーズとC-27Jスパータンの関係で実際に両機はシステム上の共通項もエンジン含め多い。このため空軍はアルファベット8文字を飛ばしてA型のかわりにJにした。
  2. 別のステルス機が存在し途中で使われなくなった可能性は極秘の世界なら考えられる。戦場上空を飛行しながら探知されず奥地まで侵入できる機体が影のステルス機発達の歴史で存在したのかもしれないし、1990年代後半に現れたタシットブルー/BSAX実証機や同様のミッション内容を持つ無人機との間に存在するギャップを埋める機体なのかもしれない。だが同機が信じられているようなF-19の姿だったのか、そもそもF呼称がついていたのかも不明だ。
F-19 広告のひとつ

  1. 別の可能性として米空軍、情報機関、ノースロップが結託してF-20の呼称を採用させステルス機の存在で混乱させ関心をそらすため偽情報にしたという可能性もある。実際のF-117やB-2はスペクターの姿とは似ても似つかない。一般が欠番の「F-19」に関心をいだくならソ連軍情報部も明らかに興味を示すはずだ。
VIA HITECHWEB.GENEZIS.EU
この写真は空軍関係催事がラスベガスで1986年にあった際に展示されたものでノースロップ/ロラールの初期のATF設計案を表している。これに手を入れたデザインが各種広告でF-19として表れている。YF-23はステルス機としてもっと洗練されノースロップのAFT案となった。
  1. そこで第117偵察戦術飛行隊の記章だが内輪のジョークのようで同隊は記章制定時に機材を保有していなかった。当時の同隊の任務はSR-71ブラックバード、U-2ドラゴンレイディ、RF-4CファントムII各偵察機の撮影したフィルの処理、解析さらに画像情報の配信で、おそらく記章制定時に機密扱いではなかったF-19のイメージを採用するのが極秘機材と縁がある同隊に都合がよかったのではないか。
  2. 1989年はF-117公開から一年後だが、F-19の噂が航空機愛好家にまだ残っており、一般大衆も同様だった。1988年にマイクロプローズがF-19のコンピューターゲームを発売しており、ハズブロもGIジョーX-19ファントムを発表したのも同機を強く意識したものだ。
  3. 「謎の機体」のプラスチックモデルは数多く発売されている。当時最も人気のあった設計案を採用したものが多い。丸みを帯びた大きな主翼はノースロップ/ロラール広告の影響を受けており、機体が細いのはSR-71からヒントを受けたとメーカーのテスターTestorは説明していた。このテスター製品がレヴェルやイタレリからその後も販売され700千個も売れている。
  4. 第117情報隊は今日も当時同様の任務にあたっているが、情報解析には衛星画像や無人機からのフルモーション画像が使われている。湾岸戦争(1991年)以降主要作戦10ケを支援しており、ハリケーンカトリーナ(2005年)やディープウォーターホライゾンの原油漏出事故(2010年)も含まれる。
  5. 同隊は今日も同じ記章を使っている。ご紹介した背景事情以外の内容をご存知の場合はぜひEメールでお知らせいただきたい。■
Contact the author: jtrevithickpr@gmail.com


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