スキップしてメイン コンテンツに移動

F-22はシリアで何をしているのか



シリアの不毛の地の上空に投入するとはちょっともったいない気もしますが、ステルス機の利点を生かして圧倒的な情報優位を確保している分だけ地上部隊初め僚機も安心して作戦実施できるのでしょう。であれば戦闘機を投入する必要がない気もしますが。それはともかくこれから半世紀近く供用しなければならないので米空軍も慎重なのでしょう。一時は生産ライン再開の話もありましたが計算すると非経済的な結果しか得られないためいつの間にか消えたようです。しかしF-Xが失敗したりするとなりふりかまわず近代化F-22の生産再開の話がいつ生まれるかわかりません。

F-22s Act as Flying Scouts Over Syria

Sensor fusion puts stealth fighters in a leading role

シリア上空のF-22の役割は空の監視兵
センサー融合機能でステルス機の優位性を発揮
F-22s Act as Flying Scouts Over Syria
WIB AIR October 4, 2017 Robert Beckhusen

三年前のこと、F-22ラプター四機が米主導多国籍軍によるシリア国内のISIS空爆第二波に加わり、爆弾投下した。ステルス第五世代戦闘機の同機で初の実戦投入となった。多国籍軍の作戦立案部門はF-22の低視認性と高性能センサーを生かす方法を模索しながら通常型機材の護衛にもあたらせシリアの戦闘機や防空装備が稼働した場合に備えていた。幸運にもシリア軍は動かなかった。
いきなり現在に飛ぶとF-22は今もシリア、イラク上空を飛んでいるが任務は護衛にほぼ集中している。「初めて当地に投入された際は95%が精密爆撃だったが今や95%が航空優勢の確保になっている」と「シェル」(コールサイン)中佐(第27派遣戦闘機隊)が語っている。
航空優勢確保こそロッキード・マーティンと米空軍がF-22に当初から期待する役割である。だが中東ではこのミッションは通常は偵察任務を意味する。「シェル」中佐によればラプター編隊は空域の「戦闘回避」効果に投入され、ロシアやシリア機を米軍やシリア民主軍(クルド人民防護部隊が中心の戦闘員部隊)から引き離すのが役割だ。
F-22がこの任務に最適なのはアクティブ・パッシブ両方の高性能センサーで各データを「融合」させパイロットの前の画面に映し出すせるからだ。またこれによりラプターはE-3AWACS同様の指揮統制機となっており、友軍各機に該当地区の情報を送り突然の脅威出現をいち早く知らせている。同時にロシア機には接近しすぎないよう無線で警告を与えている。多国籍軍機が標的近くまで接近するとラプターが誘導を助ける。
Above, at top and below — F-22 Raptors over the Middle East in 2017. U.S. Air Force photos

F-22は狙撃手の存在だ。自機の搭載する戦力も投入できるが、中東での主要な仕事は上空監視だ。2016年8月にはシリア北部で展開する米特殊部隊にシリアSu-24機が接近しすぎたためF-22編隊が追い払ったこともある。ステルス性能により敵になる可能性のある機体や地対空ミサイル陣地に接近しても探知される危険が少ない。
F-22は完成度が高い機体になっており、初飛行は1997年だったが、米空軍が少なくとも今後43年間供用する予定にしているのは機体に十分がある一方で、累積稼働時間がさほど長くないためだ。
航空戦闘軍団のアナリスト、トム・マッキンタイヤーは下院軍人員会で2017年6月に証言している。「ラプターは1990年代からさほど酷使されておらず構造試験においても積極的な寿命延長策をしなくても大体2060年までは十分に供用できるとわかっています」

とはいえラプターの生産は終了しており、生産再開した場合は恐ろしく高費用になりそうだ。コンピュータハードウェアは1990年代製で部品の大部分は生産終了している。空軍の言い分はF-22再生産は非合理的とし、結局、F-22の調達は予定381機が187機で停止した。
F-22が2060年代まで飛ぶには大規模性能改修はどうしても必要だ。2018会計年度予算では10億ドルが計上され、レーダー他アンテナの換装、新型エイビオニクスとしてディスプレイ、データリンクや暗号化ソフトウェアの導入が予定されている。
またF-35のステルス機構をF-22に流用する策もある。ヘルメット搭載型の標的捕捉システムが導入され、パイロットはどの方向を見ていても兵装を敵に向かわせることが可能となる。このハイテクヘルメットはスコーピオンと呼ばれるが、F-35ではヘルメットが重いこと、射出脱出の際に危険になることからF-22パイロットが果たしてこのヘルメットを希望するか疑問の声もある。
だがパイロットはラプターが気にいっておりイラク、シリアにおける監視任務で十分な機能を発揮していることから米空軍も高評価を与えている。■

コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...