シリアの不毛の地の上空に投入するとはちょっともったいない気もしますが、ステルス機の利点を生かして圧倒的な情報優位を確保している分だけ地上部隊初め僚機も安心して作戦実施できるのでしょう。であれば戦闘機を投入する必要がない気もしますが。それはともかくこれから半世紀近く供用しなければならないので米空軍も慎重なのでしょう。一時は生産ライン再開の話もありましたが計算すると非経済的な結果しか得られないためいつの間にか消えたようです。しかしF-Xが失敗したりするとなりふりかまわず近代化F-22の生産再開の話がいつ生まれるかわかりません。
F-22s Act as Flying Scouts Over Syria
Sensor fusion puts stealth fighters in a leading role
シリア上空のF-22の役割は空の監視兵
センサー融合機能でステルス機の優位性を発揮
三年前のこと、F-22ラプター四機が米主導多国籍軍によるシリア国内のISIS空爆第二波に加わり、爆弾投下した。ステルス第五世代戦闘機の同機で初の実戦投入となった。多国籍軍の作戦立案部門はF-22の低視認性と高性能センサーを生かす方法を模索しながら通常型機材の護衛にもあたらせシリアの戦闘機や防空装備が稼働した場合に備えていた。幸運にもシリア軍は動かなかった。
いきなり現在に飛ぶとF-22は今もシリア、イラク上空を飛んでいるが任務は護衛にほぼ集中している。「初めて当地に投入された際は95%が精密爆撃だったが今や95%が航空優勢の確保になっている」と「シェル」(コールサイン)中佐(第27派遣戦闘機隊)が語っている。
航空優勢確保こそロッキード・マーティンと米空軍がF-22に当初から期待する役割である。だが中東ではこのミッションは通常は偵察任務を意味する。「シェル」中佐によればラプター編隊は空域の「戦闘回避」効果に投入され、ロシアやシリア機を米軍やシリア民主軍(クルド人民防護部隊が中心の戦闘員部隊)から引き離すのが役割だ。
F-22がこの任務に最適なのはアクティブ・パッシブ両方の高性能センサーで各データを「融合」させパイロットの前の画面に映し出すせるからだ。またこれによりラプターはE-3AWACS同様の指揮統制機となっており、友軍各機に該当地区の情報を送り突然の脅威出現をいち早く知らせている。同時にロシア機には接近しすぎないよう無線で警告を与えている。多国籍軍機が標的近くまで接近するとラプターが誘導を助ける。
Above, at top and below — F-22 Raptors over the Middle East in 2017. U.S. Air Force photos
F-22は狙撃手の存在だ。自機の搭載する戦力も投入できるが、中東での主要な仕事は上空監視だ。2016年8月にはシリア北部で展開する米特殊部隊にシリアSu-24機が接近しすぎたためF-22編隊が追い払ったこともある。ステルス性能により敵になる可能性のある機体や地対空ミサイル陣地に接近しても探知される危険が少ない。
F-22は完成度が高い機体になっており、初飛行は1997年だったが、米空軍が少なくとも今後43年間供用する予定にしているのは機体に十分がある一方で、累積稼働時間がさほど長くないためだ。
航空戦闘軍団のアナリスト、トム・マッキンタイヤーは下院軍人員会で2017年6月に証言している。「ラプターは1990年代からさほど酷使されておらず構造試験においても積極的な寿命延長策をしなくても大体2060年までは十分に供用できるとわかっています」
とはいえラプターの生産は終了しており、生産再開した場合は恐ろしく高費用になりそうだ。コンピュータハードウェアは1990年代製で部品の大部分は生産終了している。空軍の言い分はF-22再生産は非合理的とし、結局、F-22の調達は予定381機が187機で停止した。
F-22が2060年代まで飛ぶには大規模性能改修はどうしても必要だ。2018会計年度予算では10億ドルが計上され、レーダー他アンテナの換装、新型エイビオニクスとしてディスプレイ、データリンクや暗号化ソフトウェアの導入が予定されている。
またF-35のステルス機構をF-22に流用する策もある。ヘルメット搭載型の標的捕捉システムが導入され、パイロットはどの方向を見ていても兵装を敵に向かわせることが可能となる。このハイテクヘルメットはスコーピオンと呼ばれるが、F-35ではヘルメットが重いこと、射出脱出の際に危険になることからF-22パイロットが果たしてこのヘルメットを希望するか疑問の声もある。
だがパイロットはラプターが気にいっておりイラク、シリアにおける監視任務で十分な機能を発揮していることから米空軍も高評価を与えている。■
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