スキップしてメイン コンテンツに移動

北朝鮮は米核攻撃に耐えられる---地図からの抹消は不可能では


政治家がえてして好戦的な発言をし、軍人が軍事作戦に及び腰に見えることがありますが、現実を知っているかいないかの違いです。今回の危機がどこまで続くかわかりませんが、北朝鮮が開戦数十分で地図から消えることはないようです。このブログの読者の皆さんは現実感をいつも維持してくださいね。


Why It Might Be Nearly Impossible to Destroy North Korea's Nuclear Weapons

北朝鮮核戦力の排除は実は不可能に近いという事実

October 4, 2017


  1. 状況がさらに悪化しホワイトハウスの目指す経済外交圧力が機能せず朝鮮半島の非核化が遠のけば、いよいよドナルド・トランプ大統領は自ら口にした「世界のだれも見たことのない炎、怒り、軍事力で」北朝鮮に対決せざるを得なくなるかもしれない。
  2. 大統領が北朝鮮に核先制攻撃を実施する選択をしても平壌の核兵器を発射前に確実に殲滅する保証はない。とはいえトランプが開戦を選択すれば北朝鮮の核一次攻撃力あるいは通常兵力をもぎ取ることがワシントンの課題となるはずだ。
  3. 巡航ミサイル多数を投入した通常兵力攻撃で平壌の有する固定式核兵力は大部分を除去できるはずだ、ただし米情報機関が正しい攻撃対象の位置を把握している前提だ。だが移動式発射装置の除去は難易度が高い。さらに超強固に固めた地下施設もある。ノースロップ・グラマンB-2Aスピリットは30千ポンドGBU-57大型貫通型爆弾二発を搭載するが、この爆弾でも最大限の強度を実現した北朝鮮地下施設の完全破壊はむずかしいだろう。
  4. GBU-57は厚さ200フィートの強化コンクリート壁を貫通するといわれるが実際の性能は機密事項であり、流布している情報は多分に楽観的と見る専門家は多い。さらに北朝鮮施設が地下200フィートより深く構築されている可能性は高い。問題をさらに複雑にするのは米国が有するGBU-57は20発しかなく、北朝鮮は施設をもっと多く構築すればよいのだ。
  5. このため核兵器投入が北朝鮮核施設除去の有力な選択肢になる。米国の核兵器備蓄量は相当なものがあるが、そもそもは第三次世界大戦を予期してソ連を相手に想定して整備されたものだ。朝鮮半島の地理条件を考えるとミニットマンIII大陸間弾道ミサイルは投入に適さないだろう。というのは飛翔軌道がロシア、中国上空を通過する必要があるためだ。この二国との核対立を招けばもっと危険な事態になる。
  6. 潜水艦発射の弾道ミサイルを投入すれば中国が北朝鮮に近いこともあり快く思わないはずだ。SLBMが自国を狙ったものではないと中国を納得させるのは至難の業だ。このため、核兵器を北朝鮮に投入する手段で一番確かなのがB-2になる。B-2は北朝鮮に侵入し目標をさがしB61熱核爆弾を北朝鮮核兵器上に投下する。だが核兵器と言えども地下深くの目標への威力が十分ではない。
  7. 「核兵器でも地下深くの施設に対しては効果が限定される」と2005年観光の憂慮する科学者連盟による報告書は指摘している。「例として地中貫通型兵器に米最大規模の1.2メガトンB83弾頭を付けた場合、地下1,000フィート施設の破壊は可能だ。だが対抗して地下壕をもっと深くに構築すれば核攻撃にも対応可能となる」
  8. 仮に米国が北朝鮮の固定式核装備を除去したとしても移動式発射装置の追跡が残る。砂漠の嵐作戦で判明したように移動式弾道ミサイル発射装置の捜索破壊は極めて困難で時間もかかる。砂漠の地形でもくこうなので北朝鮮の地形を考えると状況は厳しい。そうなると北朝鮮は報復攻撃の実施に踏み切る可能性が出てくる。残存する核ミサイルが一発でも発射されれば大変な混乱が生まれる。
  9. 先制攻撃に踏み切れば別の可能性が生まれる。米国は国際社会でのけものにされ、日本、韓国との同盟関係は破たんし、ワシントンは中国ロシアの怒りを買い、簡単に収まることはない。さらに自由世界の指導的立場などアメリカにとって過去の話となり、世界の文明国はこぞってワシントンを敬遠するだろう。
  10. そうなると抑止効果の模索が今後のとるべき行動としてすぐれていることになる。■
Dave Majumdar is the defense editor for the National Interest. You can follow him on Twitter: @davemajumdar.

コメント

  1. ご挨拶が遅くなってしまった事をお詫びいたします
    度々、記事を引用させていただいております
    お礼を申し上げます

    私の既に終了したブログにて、号外的に書いた北朝鮮に関する記事(下記リンク)にて、航空宇宙ビジネス短信・T2:様の記事に対して、少し批判的な記事を書きました
    記事の選択が絶妙で質も高く、愛読させて頂いておりますので、一言断っておきたいと思いコメントしました

    "http://heartwarmer.blog33.fc2.com/blog-entry-518.html"
    [号外]北朝鮮情勢についての考察

    返信削除

コメントを投稿

コメントをどうぞ。

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...