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2026年1月14日水曜日

ヴェネズエラ作戦の余波:軍用ヘリコプターの有効性、ロ・中製防空装備に関する議論が活発化へ

 

ヴェネズエラ作戦がヘリコプターやロシア・中国製防空装備の有効性で防衛論議に変化をもたらす

Avition Week 

スティーブ・トリムブル ブライアン・エバースタイン トニー・オズボーン ロバート・ウォール

2026年1月9日

U.S. Air Force Lockheed Martin F-35A Lightning IIs taxiing at sunrise

ロッキード・マーティンのF-35戦闘機などは、ヴェネズエラへの特殊作戦部隊投入を支援するため、プエルトリコ他から運用された。クレジット:上級空軍兵ケイトリン・ジャクソン/米空軍

重に警備された施設からヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領と夫人を拉致した米軍の作戦は、数十年にわたる空挺特殊作戦の研鑽の集大成で、その影響は多方面に及んだ。

夜間襲撃の数日後、米国はカリブ海と北大西洋で船を押収し、同地域での支配力を強化するトランプ政権の計画を強調した。

  • 極秘 RQ-170 がヴェネズエラ作戦の米国側の計画を支援していた

  • ロシアの防空体制は不十分だった

最初の作戦は、ドナルド・トランプ米大統領が 1 月 2 日午後 10 時 46 分(米国東部標準時間)に実行を許可してから 5 時間以内に展開された。シコースキー MH-60 ブラックホークやボーイング MH-47 チヌークなど米陸軍特殊作戦ヘリコプターは、ロッキード・マーティン F-22 および F-35、ボーイング F/A-18、EA-18、B-1 爆撃機、そして多数の無人航空機など、150 機以上の戦闘機および支援航空機の支援を受けた。極秘のロッキード・マーティン RQ-170 センチネルは、戦闘機やその他の資産とともに、プエルトリコから作戦活動を行っていたようだ。

統合参謀本部議長ダン・ケイン大将は、これらすべてが「単一の目的、すなわち、戦術的な驚きの要素を維持しながら、カラカス都心部に阻止部隊を送り込むため、効果を重ね時間と場所を合わせて」実施されたと述べた。

ケイン議長によると、この「絶対の決意作戦」と呼ばれる作戦は数週間前に承認されていたが、実行には一連の事象が重なるのを待っていたという。この作戦は数十年にわたる対テロ作戦の成果を基盤としていると同大将は付け加えた。米国は夏の終わりから、この地域への艦船や航空機の配備を開始していた。

トランプ大統領の承認後、20か所から資産が展開されたとケイン議長は説明。米陸軍特殊作戦部隊と攻撃ヘリコプターはカリブ海上空を水面から100フィート(約30メートル)の高度で飛行した。ケイン議長によれば、各機は「完全に」奇襲要素を維持したまま、東部標準時午前1時1分にマドゥロ大統領を拘束するため施設上空に到着した。

ヘリコプターは銃撃を受け、1機が被弾し損傷したが、飛行を継続し任務を完遂できたとケイン議長は述べた。ヘリコプターは「圧倒的な火力」で応戦したとケイン議長は指摘した。東部標準時午前3時29分までに、襲撃部隊はマドゥロ大統領と妻シリア・フローレスを乗せ、帰還し、強襲揚陸艦「イオージマ」へ移送した。

作戦の中核を担ったのは、1980年のイラン人質救出作戦「イーグル・クロー作戦」の惨事を受け創設された米陸軍第160特殊作戦航空連隊(空挺)部隊であった。この極秘部隊はその後、1990年1月にパナマの独裁者マヌエル・ノリエガの降伏で終結した追放作戦や、1993年にソマリアの軍閥指導者モハメド・ファラ・アイディッドを捕らえようとしたが失敗に終わり隊員数名が死亡した作戦など、様々な作戦に参加してきた。2001年以降、同部隊はアフガニスタンで大規模な活動を行い、2011年にはパキスタンでの襲撃作戦でオサマ・ビン・ラディンを殺害した。

カラカス襲撃作戦の意義はヴェネズエラをはるかに超える。ロシアのウクライナ侵攻により、携帯式地対空ミサイル(MANPADS)やその他の防空システム、爆発物を搭載した滞空型ドローンの拡散が現代戦場におけるヘリコプター作戦の実行可能性を疑問視させていた。

しかし米軍のヴェネズエラ作戦は、効果的な航空戦力と防空抑圧を組み合わせれば、紛争地域へのヘリコプターによる効果的な襲撃が依然可能であることを示した。

この米軍の作戦は、ヴェネズエラ防衛の要となるロシア・中国製軍事装備の信頼性にも疑問を投げかける。わずか数週間前の10月2日、カラカスで国営テレビのカメラの前に立ったヴェネズエラのウラジミール・パドリノ国防相は、米海軍・空軍・特殊部隊がカリブ海地域に集結し自国を標的にしているにもかかわらず、自信に満ちた態度を見せていた。

その日、同国防空レーダー(中国・ロシアの最新鋭システムを含む)は、沿岸から約74km北方にステルス戦闘機F-35Bを捕捉したと彼は述べた。高度35,000フィート、速度400ノットで飛行中だったという。

「我々は監視している」とパドリノは付け加えた。「そして知っておいてほしい。これは我々を脅威に感じさせない」

今回の米軍の襲撃は、ヴェネズエラ空軍が戦力を誇示して2カ月も経たないうちに発生した。外部では、同空軍の老朽化した米製ロッキードF-16A/B戦闘機と、近年導入したスホーイSu-30MK2戦闘機が、もはや耐空性評価を通過できないのではないかと推測されていた。しかしヴェネズエラは11月14日、両戦闘機の分遣隊をカラカス北方160マイル(約257キロ)のラ・オルヒラ島に展開させた。スホーイSu-30MK2がカリブ海上空で対艦ミサイルKh-31Aを搭載しているのが確認されたのは、米空母ジェラルド・R・フォード打撃群が同海域で活動中だった時期と重なる。

老朽化しているにもかかわらずヴェネズエラ空軍は、依然としてラテンアメリカで最も有能な空軍の一つと見なされていたが、米国の航空攻撃パッケージには全く太刀打ちできなかった。F-22やF-35に対しほぼ全ての面で劣るヴェネズエラ戦闘機は、ロシア製空対空ミサイルで空中の米軍侵入機に対抗したり、ロシア製またはイラン製対艦ミサイルで海上支援艦を脅かしたりできたはずだ。しかし、この作戦中にヴェネズエラ戦闘機が緊急発進した証拠はない。

地上においても、主に中国とロシアから供給されたヴェネズエラの装備は反応しなかった。ソーシャルメディアに投稿された動画クリップでは、地上から空へと弧を描く一筋の炎が、携帯式防空ミサイルの発射を示していた。おそらく、マドゥロの前任者ウゴ・チャベスが20年前にロシアから発注した5,000発のイグラミサイルと発射装置の1発であろう。しかし、ロシア製の移動式 S-300 や Buk-M2 などのヴェネズエラの地対空ミサイルシステムは、まったく姿を見せなかった。ケイン議長は、米国のサイバーおよび宇宙システムが、ヴェネズエラの防空脅威を無力化するのに役立ったと述べた。この攻撃には、レーダー妨害および EA-18G による破壊も含まれていた。

「ロシアの防空システムはうまく機能しなかったようですね」と、ピート・ヘグセス米国防長官は 1 月 5 日、皮肉っぽく述べた。

この襲撃は、武器供給国としてのモスクワの評判に新たな打撃を与えた。昨年、イスラエルは、ロシア装備を中心に構築されたイランの防空システムを綿密に破壊した。

公開データだけからこの襲撃の結果を過大評価する可能性がある。ヴェネズエラは、まさにこの種の攻撃を阻止するため、2019年に中国が誇るJY-27Aステルス対策レーダーを購入した。中国の輸出規制により、輸出顧客に提供される機能は低下されていた可能性がある。いずれにせよ、北京は2025年5月にJY-27Vと呼ばれる最新の国内版を発売した。ヴェネズエラの防空要員は、この新型レーダーの操作に習熟していなかった可能性がある。あるいは、圧倒的な米空軍力の前で慎重さが勇気より良いと判断したのかもしれない。

1月3日、マー・ア・ラゴでの記者会見でトランプ大統領は、必要に応じて米軍はさらに大規模な攻撃を実施する態勢にあると述べた。

米国は1月7日、北大西洋でタンカー「ベラ1」を拿捕した。同船は航行中にロシア船籍へ改名・改旗されていた。ロシア系メディアRTが入手した画像によれば、この拿捕作戦には陸軍特殊作戦部隊のボーイングMH-6リトルバードヘリコプターが少なくとも1機投入されていた。MH-6は同船を追尾中の米国沿岸警備隊カッターから出撃した模様だ。

同時期に米国はカリブ海で小型タンカー「M/Tソフィア」にも乗船検査を実施した。■

スティーブ・トリムブル

スティーブはワシントンD.C.を拠点に、アビエーション・ウィーク・ネットワークで軍事航空・ミサイル・宇宙分野を担当。

ブライアン・エバースティーン

ブライアン・エバースティーンはワシントンD.C.を拠点とするアビエーション・ウィークの国防総省担当編集者。

トニー・オズボーン

ロンドンを拠点に欧州防衛プログラムを担当。2012年11月にアビエーション・ウィーク入社前は、シェパード・メディア・グループにて『ローターハブ』誌および『ディフェンス・ヘリコプター』誌の副編集長を務めた。

ロバート・ウォール

ロバート・ウォールは防衛・宇宙担当エグゼクティブ・エディター。ロンドンを拠点に、米国・欧州・アジア太平洋地域の軍事・宇宙ジャーナリストチームを統括している。


U.S. Operation In Venezuela Shifts Defense Narrative

Steve Trimble Brian Everstine Tony Osborne Robert Wall January 09, 2026

https://aviationweek.com/defense/budget-policy-operations/us-operation-venezuela-shifts-defense-narrative





2025年5月16日金曜日

フーシ派の防空システムがF-35も脅かされていた(The War Zone)—実戦からのフィードバックで米軍は成長できるのですが、防空技術の進展で安全な空の作戦はますます困難になっていきますね


高機動性の地対空ミサイル(SAM)と、受動式赤外線センサーを使用したフーシ派の防空システムは、米国製の先進戦闘機にとっても深刻な課題となっていた

  F-35 was nearly downed by Houthi air defenses.

(米国空軍写真:シニア・エアマン・ニコラス・ルピパー)

細な情報は限られるが、フーシ派は今年春、イエメンの標的に対する空爆の急増中に、米軍F-35統合打撃戦闘機さらに複数の米軍F-16ヴァイパーを撃墜寸前まで追い詰めていたと報じられている。フーシ派の防空能力は原始的なものだが、これが米軍戦闘機にとって厄介な課題となっている。特に移動式システムは、ほぼどこにでも出現可能で、慎重に計画されたミッションを妨害した。多くのシステムが即席で作成されており、非伝統的なパッシブ赤外線センサーや即席の空対空ミサイルを使用し、脅威の早期警告はほとんどなく、攻撃の接近を検知できなかった。

 先月、本誌はイエメンの武装勢力の防空兵器庫に関する詳細な特集記事を掲載した。また、今年初めにフーシ派が米軍有人戦闘機に対する迎撃を試みた件に関する初期の報道をしていた。

 フーシ派の防空システムのため、特にイエメン内の標的への直接攻撃や高コストのスタンドオフ弾薬の使用を増加させる要因となり、F-35のようなステルス機が最近数ヶ月間でより頻繁に投入されていた。米軍は3月、フーシ派の標的に対する攻撃を拡大した「オペレーション・ラフライダー」と名付けた作戦を開始した。先週、米国政府はオマーン当局が仲介した和平合意に基づき、フーシ派との停戦を発表した。

 現時点では、フーシ派がF-35に対して発射したミサイルの種類は不明だ。F-35との交戦に関する詳細な評価や、F-16に対する迎撃未遂の報告に関する追加情報は、まだ明らかになっていない。

 F-35で一般背景を説明すると、ステルス設計に加え、強力な内蔵電子戦システム、消耗型対抗措置の展開能力、牽引式デコイの使用能力を備えている。しかし、これはF-35が探知や迎撃に対して無敵であることを意味するものではない。本誌は以前指摘していた。「F-35は、高度に統合された高度なAN/ASQ-239電子戦システムを独自に搭載しています。このシステムは、アクティブ電子スキャンアレイ(AESA)レーダーと、翼の端や制御面、機体表面下に埋め込まれたアンテナを活用しています。この能力により、F-35は目標区域への「自己護衛」飛行が可能となり、敵の電子発信源を電子的に攻撃しながら、完全に回避するために十分な距離を保てない場合にも対応できる。同じ電子戦システムとジェットの高度なセンサー融合により、F-35のパイロットは生存性を判断するための迅速な意思決定を飛行中に実行できる。パイロットは、進路上に現れる脅威となる発信源を破壊するかどうかを判断でき、この目的のために、比較的長距離で迅速に攻撃可能な新兵器の開発が進められている。または、脅威を回避するか、電子攻撃で盲目化・混乱させ、F-35が無傷で通過できるようにする選択肢もある。

 「この電子戦能力は、ジェットの生存性を向上させ、低可視化設計への依存を補完します。低可視化設計には弱点があり、特にXバンド周辺で動作する高周波数火器管制レーダーに対抗するように最適化されています。しかし、F-35の後部については、レーダー断面積が一部で懸念されるほど大きく、後方からの探知や攻撃のリスクがある点が議論の的となっています。」

 最もステルス性の高い構成でも、F-35は空対空や空対地兵器を投下するために兵装庫を開く必要があり、これにより敵はレーダーでより遠距離から一時的に探知される可能性がある。

 既に指摘したように、フーシ派が過去10年ほどで構築した防空兵器体系の核心的な要素は、目標の探知、追跡、誘導に赤外線センサーを使用し、さらに迎撃ミサイルの誘導装置としても活用している点だ。

 フーシ派は、赤外線誘導式R-73とR-27空対空ミサイルを地対空用途に改造した在庫を保有しており、現地ではタキブThaqib-1とThaqib-2と呼ばれている。また、一定程度の滞空能力を有する赤外線ホーミング式地対空ミサイルであるサクルSaqrシリーズも保有している。これらはイランの設計を基にした「358」モデルを基盤としている。サクル/358ミサイルの高高度・高速戦闘機への対応能力は限定的とはいえ、タキブ-1/2は過去において戦闘機を脅威にさらす能力を示しており、後述するようにこの点に注目する必要がある。

フーシ派のThaqib-1地対空ミサイル(R-73の改造品)がThaqib-2(R-27の改造品)の前方に配置された。後方には他のフーシ派の防空ミサイルも確認されている。フーシ派が支配するメディア

2024年に米国防情報局(DIA)が発表した機密解除報告書における358/サクル地対空ミサイルのインフォグラフィック。同報告書では、米国ドローンへの使用も言及されている。DIA

 フーシ派は、米国やその他の外国の有人および無人航空機を地対空で迎撃したと主張した後、赤外線カメラによる映像を定期的に公開している。これは、イエメンの過激派が、赤外線ミサイルだけでなく、近年イランの支援を受けて導入されたより近代的なタイプを含む、さまざまなレーダー誘導型地対空ミサイルシステムなど、目標の検出、追跡、および誘導にも赤外線センサーを使用している可能性を示している。

パレードで披露された、フーシ派のバークシリーズレーダー誘導地対空ミサイル。MOHAMMED HUWAIS/AFP via Getty Images MOHAMMED HUWAIS

 

 アクティブレーダーと異なり、赤外線センサーおよびシーカーは本質的にパッシブです。つまり、AN/ASQ-239 などの電子戦システムやその他の RF 警告センサーが、脅威の存在、特にミサイル発射の前後に航空機が発見され、標的にされていることをパイロットに警告するために検出できる信号を発しないということだ。これは、ステルス機と非ステルス機双方に課題となる。

 ミサイル発射時にF-35は、航空機のさまざまな場所に設置された 6 台の赤外線カメラで構成される AN/AAQ-37 分散開口システム (DAS) を使用し、飛来するミサイルを検出できるはずだ。しかし、その時点でパイロットが反応できる時間は、特に事前の警告がほとんどまたはまったくなかった場合、非常に短くなる可能性がある。電子光学・赤外線ミサイル発射検出/接近警告能力を持たない航空機は、回避行動を試みる前に、赤外線誘導脅威を視覚的に検出する必要がある。

 赤外線センサーとレーダー誘導式地対空ミサイルシステムを組み合わせることで、交戦サイクルの非常に遅い段階まで放射を開始する必要がないため、隠蔽性を維持することが可能となる。これにより、標的となった航空機の反応時間が短縮される。また、ステルス目標への火器管制レーダーの照準を助ける効果もある。

 「フーシ派とイランが電子光学システムを採用したのは、完全に受動的なシステムだからです」と、ワシントンD.C.のシンクタンク「ワシントン近東政策研究所」のシニアフェロー、マイケル・ナイツは、昨年9月にCBSニュースに述べている。当時MQ-9ドローンの損失が続いていた。「捕捉するのは難しい。発射前にシグネチャがないからだ」。

 ここで重要な点は、フーシ派の防空システムが低性能な赤外線能力を活用して、自身の能力を超える性能を発揮する能力は新しいものではなく、上述の理由から彼らにとって長年の優位性だった点だ。イエメン武装勢力は、2010年代後半から2020年代初頭にかけての戦闘で、サウジアラビア主導の部隊に所属するトーネード、F-15、F-16の有人戦闘機およびドローンを損傷または破壊したと主張している。

 確実な集計は確立されていないが、フーシ派による米軍MQ-9リーパードローンの損失事例は、現在までに十分に文書化され、他の証拠も裏付けている。

 赤外線センサーの支援の有無にかかわらず、道路移動式レーダー誘導システムは、イエメンだけでなく世界中で米軍および同盟軍の戦闘機にとっての問題となっている。3月の下院情報特別委員会公聴会で、国防情報局(DIA)局長であるジェフリー・クルース米空軍少将は、フーシ派がソ連製移動式2K12クブ(SA-6ガドリー)レーダー誘導式地対空ミサイルシステムを米軍機に対して「使用を試みた」と認めたが、詳細は明かしていない。

 2K12/SA-6を含む移動式システムは、フーシ派の防空能力の大部分を占めるとされており、これにより彼らが予期せぬ場所に突然出現する可能性が高まり、さらに課題が増大する。さらに、これらは彼らを積極的に標的化し、最も効果的で安全なミッションルートを計画するのを困難にする。この状況はF-35が本来持つ優位性を一部損なう。これは、敵の防空システムや最近の諜報情報の詳細なデータに基づき、最適なルートを策定するための高度なミッション計画支援システムを活用しているからだ。また、航空機のシグネチャや防御能力なども考慮されている。これらの要素はすべて、『ブルーライン』ルートとして計算され、生存率とミッション全体の成功率を最大化する最良の経路として導き出される。このルートは、移動式地対空ミサイルや即席の赤外線脅威システムが存在する場合、効果は低下する。

 米軍は、ステルス機が敵の防空網に対して不可視または無敵ではないことは十分に認識している。セルビアの防空部隊は1999年に、レーダー断面を低減する設計特徴がリスクを排除しないことを証明し、当時のソ連製地対空ミサイルでF-117ナイトホークステルス戦闘機を撃墜し、別の機体を損傷させたからだ。当時、F-117のミッションは既にEF-111レイブンとEA-6Bプロウラー電子戦機による支援を受けて定期的に実施されていたが、ナイトホークが失われた夜にはこれらの支援機は不在だった。セルビア側は、F-117編隊が接近中であるという事前情報を得ており、戦闘機は標的地域への既知のルートを再利用したため、待ち伏せ攻撃を容易にしていた。

 現在でも、F-35やB-2爆撃機のような米国のステルス機は、ミッションが可能な場合、非ステルス機が提供する機外電子戦および敵防空網の抑圧・破壊(SEAD/DEAD)支援を活用している。運の要素を含む数多くの要因が重なり、撃墜される可能性は依然として存在するす。もしフーシ派がF-35を撃墜したり、非ステルス型の米軍戦闘機を撃墜または重大な損傷を与えていたら、その理由はどのような組み合わせであっても、米国にとって屈辱的な出来事となったでしょう。パイロットが死亡または捕虜となった場合、その事件はさらに屈辱的な次元を加えることになっていただろう。

 米軍全体は、フーシ派に対する作戦が重要な教訓を得る機会を提供したと既に認めている。イエメンの武装勢力にF-35や他の有人航空機を失う可能性は、状況に関わらず徹底的に検証すべき問題だ。

 また、イエメン上空でのジェット機の損失は、戦闘捜索救助(CSAR)作戦を必要とし、多大な人的・物的資源を要する事態を引き起こしていただろう。低空・低速飛行のヘリコプターやオスプレイ・ティルトローターを、戦闘機で支援しながら、既に米軍の最も生存性の高い航空機の一つを撃墜した防空脅威が存在する地域に部隊を派遣することは、巨大な追加リスクを伴う。将来の高強度紛争においてステルス機を失った場合の対応計画について、既に多くの疑問が投げかけられている。

 興味深いことに、先週末、中央軍司令部(CENTCOM)は、中東で活動する空軍HH-60Wジョリー・グリーンII CSARヘリコプターの写真を公開していた。

 これらすべては、米軍にとって重大な影響を及ぼす。敵機やプラットフォームに搭載された赤外線探知追尾システム(IRST)、その他の赤外線センサー、赤外線誘導弾頭を備えた長距離対空ミサイル——いずれもフーシ派が使用しているものよりはるかに高度な技術——は、空中脅威生態系の主要な構成要素として普及している。これらのシステムは、より大規模で深くネットワーク化された統合防空システム(IADS)にも結びつき、レーダーを、特にステルス機などの関心のある目標に誘導するために活用されるようになる。

 赤外線センサーがステルス目標を識別すると、オペレーターはレーダーを従来とは異なる方法、あるいは自動化された方法で連携して使用し、目標の品質にふさわしい追跡情報を作成することができる。すぐロックオンできない場合、目標の位置は航空機や、これまで問題が多かった道路移動式防空システムなど、迎撃に適した位置にある他の資産に中継される。また、パッシブセンサーを使用して、ロックするためのより良い条件(すなわち、火器管制レーダーまたは IADS ネットワークに接続された複数のレーダーに接近すること)が現れるまで、ターゲットの追跡を継続することもできる。

 赤外線およびその他のパッシブセンサーの能力の重視は、世界中でますます多くの国々が、有人および無人のステルス航空機やミサイルを配備し続けることで、さらに加速されるう。米空軍が少なくとも過去に「スペクトル戦争」および「スペクトル優位性」と呼んでいたものは、すでに長年にわたり、同軍の次世代航空優位性(NGAD)イニシアチブの重要な側面となっている。IRSTなどの赤外線センサーから航空機を保護する技術は、その「優位性」を実現するための重要な要素だ。

 中国やロシアなどの潜在的な敵国も、イエメン周辺での最近の戦闘や、ウクライナで続く紛争からの観察結果を参考にし、同様の教訓を学んでいる。

 フーシ派が F-35やその他の有人米国航空機を実際に撃墜する寸前まで迫った状況の詳細は、これから明らかになるだろう。すでに明らかになっていることは、移動式防空システム、特に赤外線探知および追跡機能を活用したシステムが、高性能ステルス航空機に対しても真の脅威となるとイエメンの過激派が実証したことだ。■


How The Houthis’ Rickety Air Defenses Threaten Even The F-35

Highly mobile Houthi SAM systems and ones that use passive infrared sensors present a vexing problem for even advanced U.S. combat aircraft.

Joseph Trevithick, Tyler Rogoway

Updated May 14, 2025 3:07 PM EDT

https://www.twz.com/air/how-the-houthis-rickety-air-defenses-can-threaten-the-stealthy-f-35


ジョセフ・トレヴィシック

副編集長

ジョセフは2017年初頭から『ザ・ウォー・ゾーン』チームの一員です。以前は『ウォー・イズ・ボーリング』の副編集長を務め、その執筆記事は『スモールアームズ・レビュー』『スモールアームズ・ディフェンス・ジャーナル』『ロイター』『ウィ・アー・ザ・マイティ』『タスク・アンド・パーパス』などにも掲載されています。


2019年9月19日木曜日

今回の襲撃を阻止できなかった防空システムは新時代に対応できていない


Did U.S. Missile Defenses Fail During Saudi Oil Attack?

サウジ石油施設への攻撃は米ミサイル防衛の失策か

by David Axe 
September 17, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: OilSaudiArabiaIranMilitaryTechnology

2019年9月14日、サウジアラビアの主要原油施設に大被害を与えたミサイル攻撃の実態は一般には謎のままだ。
イエメンのフーシ反乱勢力はサウジと首長国の連合軍と2015年以来交戦中で、今回の攻撃を実施したと名乗り出た。サウジのアラムコの施設二箇所が攻撃を受けたがフーシが単独で長距離精密誘導攻撃を実施できるのか明確な答えがみつかっていない。
攻撃に長距離無人機が投入され、小火器や誘導弾を発射した可能性は残る。アラムコ施設はサウジとイエメンの国境線から約800マイルの距離だ。イラン強硬派の革命防衛隊がフーシに兵器を供与していることが判明しており、無人機や弾道ミサイル部品も含まれている。
一つ明確なことがある。高性能とされてきたサウジアラビアの防空体制が限界を示したことである。サウジは巨額予算を投入し米製ペイトリオット地対空ミサイル部隊六個とレーダー装備を整備してきた。ペイトリオットは今回の襲撃の前に何ら機能していない。
サウジアラビアのペイトリオットが迎撃に失敗したのは今回が初めてではない。2018年3月25日に首都リヤドを狙ったロケットには、少なくとも5発のペイトリオットが迎撃に失敗、作動不良あるいはその他の原因で故障している。
フーシはサウジアラビアへ7発のロケットを発射した。サウジ軍はペイトリオット性能向上版PAC-2を発射し、フーシのロケットを空中で破壊しようとした。サウジ軍発表ではペイトリオット7発が迎撃に成功したとある。
だがアマチュア映像がウェブ上で公開され、ペイトリオットの多くが空中で爆発するか、コースを外れる様子が暴露された。ここから1991年の湾岸戦争で米軍が発射したペイトリオットや2003年のイラク侵攻の記憶を呼び起こされたものも多い
サウジアラビア政府もミサイル防衛の改良に気づいているようだ。「サウジアラビアがS-400高性能防空装備の取得を交渉している。トルコがロシアから調達したのと同じ装備だ」とマーク・チャンピオンがブルームバーグに以下寄稿している
ロシア製装備は実戦で効果をほとんど証明していないものの技術上は米ペイトリオットより優れている。射程は400キロで、ペイトリオットの160キロより長い。ペイトリオットの二倍以上の飛行速度で飛ぶ標的を捕捉し再装填は5分で足りるが、ペイトリオット部隊では一時間が必要だ。
ロシアはS-400に一回り小型のパンツィールS1を組み合わせで低空を飛翔する短距離ミサイルへの対応を中心とし、大型弾道ミサイルは視野に入れていない。ロシアはシリア北西部にS-400を展開し、無人機にはパンツィールで対応している。
「理想的にはサウジは多層防衛体制が必要で、短距離局地防衛装備としてドイツのスカイヒエルドあるいはロシアのパンツィールで小型脅威に迅速対応すればよい。ペイトリオットで対応するのは費用対効果で意味がない」とジャスティン・ブロンク英王立合同軍研究所主任研究員が述べている。
従来型の防空体制が各所で小型かつ安価な無人機がさらに安価になってきた精密兵器を発射する現実への対応に苦慮している。
「防空の実際を理解できている人が皆無に近いのが冷酷な現実で、防衛部門の専門家とて例外でない、航空分野の進展がどこまでで、技術統合がどこまで深化しているかは事実であり魔法ではないのだ」とタイラー・ロゴウェイがThe War Zoneに寄稿している。「地上のセンサーに主に依存する考え方が大きな制約となっている」
我々は誰もが地球上のほぼ全地点の高解像度衛星画像を見られる時代に生きている。冷戦終結後にここまで進展するとは考えにくかった。一個人が手にするスマートフォンやラップトップコンピュータで一国の情報機関の有する情報すべて見ることができる時代であり、しかも無料で手に入る。
GPSはもっと革命的な機能だ。正確な位置がわかることからホビーとしての無人機業界が爆発的な成長を遂げ、今やGPSを使う無人機操縦があたりまえとなり、世界各地で手に入る。邪悪な考えを持つ勢力が情報を得て、精密攻撃を企てるのは無理もない。従来に比べればただ同然の負担で手に入る。
今回発生したような襲撃はどこからでも実施できるのであり、精密誘導攻撃や無人機への考え方を切り替える必要がある。さらに今回のような事件から非常に高価な軍事装備を近くに配備すべきと短絡的に考えてはならない。世界各国で歩調を合わせ、規制を整備しながら情報を大量に共有すべきだ。今後、こうした攻撃を皆無にする最善の策は発生の前に手を打つことだ」

David Axe serves as Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels  War Fix, War Is Boring and Machete Squad.