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2025年6月26日木曜日

日本のレイルガン開発状況に関心が高まる(National Defense Magazine) — 日本の技術力が世界を驚かせる兵器の実用化を生みそうです。こうした底力を支える意味でも「理系」技術陣にもっと支援が必要です

 


海上自衛隊


国が4年以上前にレイルガン技術の開発を中止したのに対し、日本はゲームチェンジになりそうな武装技術を追求し続けている。

 レイルガンは電磁パルスで弾丸を発射するもので、速度はマッハ6.5以上に達する可能性がある。

 米国防総省は2021年に2つの非機密プログラム(1つは地上軍向け、もう1つは海軍向け)を中止したが、日本の防衛省はこの技術を断念しておらず、先ごろ開催されたDSEIジャパン展示会のブースでレイルガンのモックアップとプログラムを宣伝するビデオを展示した。

 一方、海上自衛隊は4月、試験艦JSあすかに搭載されたレイルガンの画像を公開した。砲身を製造する日本製鋼所が主契約者である。

 防衛装備庁の伊藤和美装備政策課長は、展示会のパネルディスカッションで、日米がレイルガンに関する技術情報の交換を続けていることを認めた。また、フランス、ドイツとも情報交換協定を結んでいる、と防衛省は報告している。

 開発は "進捗中"と伊藤は通訳を介して語ったが、"様々な課題がある "という。

 レイルガンを実用化するハードルはよく知られている。砲身の過熱や磨耗、システムに電力を供給するのに十分なエナジーの確保、発射によって生じる余分な熱の除去などだ。高速に対応できる照準システムの開発も課題だ。

 しかし、その見返りは非常に大きいと専門家は言う。

 高エナジー・レーザーとは異なり、レイルガンは地平線を越えて発射でき、大気や悪天候の影響を受けない。

 弾丸は高速で移動するため、運動エナジーだけで甚大な損害を与えることができ、弾薬は単純な金属スラグにかわる可能性がある。 防衛省ブースで上映されたアニメーションでは、弾丸が船体を貫通し、反対側に出ていく様子が実演されていた。

 この技術は、極超音速兵器に対抗する手段としても注目されている。

 伊藤は、米国との広範なパートナーシップの可能性を示唆し「配備に近づけば、協力の範囲は広がっていくと思います」と語った。■


Japan Soldiers On with Railgun Development

6/25/2025

By Stew Magnuson

https://www.nationaldefensemagazine.org/articles/2025/6/25/japan-soldiers-on-with-railgun-development





2025年4月19日土曜日

日本の試験艦に搭載されたレイルガンに注目(The War Zone)―当ブログでは原語の発音に近いレイルを採用しています。とはいえ、艦艇や地上部隊の電力需要の増大にどう答えるかが課題ですね

 The Japan Self-Defense Forces have offered an official look at the turret-mounted electromagnetic railgun now installed on the test ship JS Asuka.  

JMSDF


米海軍が開発を中止した海軍用電磁レイルガンの開発を日本が推進している


本の自衛隊は、試験艦JSあすかカに搭載された砲塔搭載型電磁レイルガンの公式画像を公開した。防衛装備庁(ATLA)は2010年代半ばからレイルガンの開発を進めており、日本海軍の艦艇で将来の武装として採用される可能性があり、地上配備型としても活用される可能性がある。これは米国海軍が2020年代初頭に開発を凍結した武器のカテゴリーに該当し、当初有望な成果を示したものの、技術的な課題に直面していた。

 JSあすかに搭載されたレイルガンの写真は、4月9日に自衛艦隊司令官大町克士海将が同艦を訪問した際に撮影されたものだ。日本の船舶観測者は、今月早々からJSあすかに搭載された新装備の画像を投稿し始めた。あすかは6,200トンで、戦闘艦のような設計の専用試験艦として、1995年の就役以来、武器や他の海軍システムの開発支援に活用されている。

 「4月9日、海上自衛艦隊司令官(COMSDFLT)の大町克士海将は、海上自衛隊艦隊研究開発司令部(FRDC)所属の『あすか』を訪問し、防衛装備庁(ATLA)で開発中の『レイルガン』の最新の状況を視察しました」と、海上自衛隊は短い声明で述べている。「将来の戦闘に備え、海上自衛隊はATLAはじめとする関係機関と緊密に連携し、海上自衛隊が必要とする装備の研究開発と早期導入を推進するとともに、日本国民と領海を守るための防衛態勢の強化を継続しています」。


JSあすかのストック画像。海上自衛隊


 2023年、ATLAは未公開のプラットフォームからレイルガン原型機の海上試射に成功したと発表し、世界初の成果だと主張した。ATLAが当時公開した画像では、武器はJSあすかに現在搭載されている完全な海軍砲塔ではなく、試験用マウントに設置された状態だった。


2023年に海上試験で発射された日本のレイルガン原型機。ATLA


2023年以降、日本のレイルガンの設計がどのように進化したかは不明だが、現在JSあすかに搭載されている武器の見た目は、ATLAが過去公開した原型機の画像と一致する特徴を示している。ATLAは、過去の試験で5メガジュール(MJ、500万ジュール)の充電エネルギーを使用し、時速約4,988マイル(2,230メートル/秒;マッハ6.5)の速度で弾丸を発射する能力を実証したと報じられている。

JSあすかに搭載されたレイルガンの銃口部と後部の詳細を写した合成画像(上)と、ATLAが過去に公開したプロトタイプレイルガンの画像。JMSDF/ATLA


 Naval Newsによると、口径速度4,473マイル/時(2,000メートル/秒)以上と砲身寿命120発の達成が過去の試験目標の一つだった。また、ATLAは艦内電力要件の削減にも取り組んでいると報じられています。

レイルガンは、化学推進剤ではなく電磁石を使用し弾頭を非常に高い速度で発射するシステムで、技術的な課題が数多く存在する。最も直面する課題は、莫大な電力需要を要することだ。特に、比較的連射可能な能力を付与する場合、システム部品の冷却が必要となり、さらに電力需要が増加する。

 非常に高い速度で弾頭を継続的に発射することは、砲身の摩耗率を増加させる。摩耗した砲身から弾頭を発射すると射程や精度に影響を与えるだけでなく、安全上のリスクも伴う。

 さらに、レイルガンは、大規模なエネルギー貯蔵バッテリーと冷却システムが必要であるため、物理的に非常に大型化しやすい。JSあすかに搭載されたレイルガンは、船尾の飛行甲板に固定され、十分なスペースを確保している。伝統的な配置で戦闘艦に武器を統合する場合、他のコンポーネントを艦内に配置するスペースを確保する必要がある。日本が将来取得する可能性のあるレイルガンをどのように配備するかは、まだ不明確だ。武器を収容する完全な砲塔を建造することは、設計の運用化と一致する。

 昨年イギリスで開催された「Combined Naval Event 2024」展示会でのプレゼンテーションで、海上自衛隊のATLA(航空宇宙技術研究開発機構)海軍システム局長である今吉信一海将は、2030年代に就役開始が予定されている日本の次世代駆逐艦「13DDX」にレイルガンを統合する計画を明らかにした。ATLAは以前、レイルガンを搭載した「まや級」駆逐艦(27DDG級)の概念図を公開していた。


まや級または27DDG級駆逐艦にレイルガンを搭載した想定のグラフィック。日本防衛省


 ATLAは以前、以下のコンピュータ生成動画も公開しており、トラック搭載型レイルガンの使用シーンが示されています。


 実用的な電磁レイルガンは、海上、陸上、さらには空中における広範な目標を迅速に攻撃できる高度な能力と柔軟性を備えた兵器システムとなる。日本は、この能力を超音速脅威からの防衛に活用する意向を表明している。このような兵器は、個々の弾薬の小型化と単価の低さから、従来の地対空・地対地ミサイルと比較して、弾薬庫の容量とコストの両面で優位性を発揮する。

 特に戦闘艦のように物理的スペースが限られ、海上でのミサイル再装填が極めて困難な環境では、大容量弾倉から低コスト弾薬を発射し、広範な目標群を攻撃できる武器システムは明らかな利点となる。

 レイルガンを開発しているのは日本が唯一の国ではなく、過去にも同様の取り組みが行われてきた。特に海上用途での開発は、上述の理由から特に注目されている。2005年から2022年にかけて、米海軍は将来の艦艇に搭載するレイルガン開発を積極的に進めていたが、技術的な課題により中止された。プログラムが終了する段階で、海上試験は何度も延期されていた。

 レイルガン用に開発された超高速弾薬は、従来型の海軍用や地上配備型砲兵システムへの応用を目指して継続されている。興味深い点として、米国陸軍は現在、伝統的な155mm榴弾砲を基にした新たな移動式対空防衛システムにこれらの弾薬を応用する計画を進めている。



米海軍のレイルガンプログラムの失敗に終わったプロジェクトに関するブリーフィングスライド。スライドでは、レイルガン装備艦(および同じ弾薬を使用する従来型砲)が、巡航ミサイルを含む多様な空中脅威や水上目標と交戦する可能性を示している。


 昨年ATLAは、米国海軍との間でこの分野における過去の研究成果を活用する可能性について協議していたと確認した。日本当局は2024年に、フランスとドイツの当局とレイルガン開発協力に関する協定を締結した。

 中国人民解放軍も海軍用レイルガンの開発を進めており、2018年に同国で船上に搭載された砲塔式設計が初めて公開された。この武器や他の中国製レイルガンの開発状況は不明だ。


2018年に公開された中国の海軍用レイルガン。中国インターネット


 日本にとって、レイルガン開発は、新たな超音速ミサイルを含む同国軍の能力拡大と近代化を目的とした広範な努力の一環という位置づけで北朝鮮、中国、ロシアから発する地域的・国際的な安全保障上の課題が深刻化する中で進められている。

 北朝鮮は近年、新型の弾道ミサイルと巡航ミサイル、および超音速能力を主張するタイプのミサイルの開発を加速させている。一部は、日本上空や周辺で試験発射されている。

 日本は中国とロシアとの間で領土紛争を抱えており、自衛隊は近年、周辺諸島における存在感を強化する取り組みを進めている。また、中国が台湾に軍事介入した場合、特に米軍の大量展開が日本にも及ぶ可能性があり、地域での全面的な高強度戦闘において主要な標的となることから、懸念が高まっている。これらの状況を踏まえ、自衛隊は同盟国・パートナー国との連携を強化し、インド太平洋地域における活動を拡大している。特に、中国を念頭に置いた取り組みが進められている。

 「自衛隊は、日本の防衛だけでなく、同盟国や志を同じくする海軍と協力して『自由で開かれたインド太平洋』の実現に貢献するため、インド太平洋地域の平和と安定を維持すべく備えています」と、海上自衛隊は述べている。

 実用的なレイルガンが艦艇や他のプラットフォームに搭載され、日本軍で運用される時期や可能性については、多くの疑問が残ったままだが、JSあすかに設置されたレイルガン搭載砲塔は、日本が電磁兵器の開発を継続している姿を示している。■



Railgun Installed On Japanese Warship Testbed

Japan is now pushing ahead with naval electromagnetic railguns, which the U.S. Navy has shelved.

Joseph Trevithick

Published Apr 18, 2025 1:38 PM EDT

https://www.twz.com/sea/railgun-installed-on-japanese-warship-testbed


2024年6月13日木曜日

日本が縮小の一途だった防衛産業の立て直しへ動いているものの、防衛産業参入で企業イメージの悪化を恐れる空気がこの国にある

 


防衛産業に関与すると企業の評判に悪影響が生まれる、という日本の感じ方は海外には理解できないかもしれません。「死の商人」はすでに廃れたことばですが、防衛=人殺しと短絡的に捉える向きにはすべてがネガティブに捉えられるのでしょう。一国の防衛に国民の意識、思考が大きな要素となっています


スティムソン・センターの日本プログラム・ディレクター辰巳由紀は、「日本の防衛産業は2次、3次サプライヤーの空洞化で大きな打撃を受けている」と語った

働力の高齢化、サプライチェーンの不振、防衛産業基盤の縮小に直面している日本は、防衛産業を活性化させ、新規参入を誘致する措置を講じていると、日本の防衛装備庁が本誌に語った。

2023年6月、日本の国会は「防衛生産・技術基盤強化法」として知られる画期的な法案を可決した。これは、日本の兵器メーカーとそのサプライチェーンに資金注入する仕組みを作ることによって、日本の防衛産業基盤の再活性化をねらったものだ。

防衛省装備品政策部の中辻良太主席調整官は、東京の防衛省本部で取材に応じ、この法律が10月に施行されて以来、日本は経営難に陥ったサプライヤーに約100億円、つまり約6400万ドル相当の契約を交付したと語った。

同法が成立するまで、防衛省は元請け企業との契約のみに制限されていたため、サプライチェーンに対する可視性が低く、問題のあるサプライヤーに対処するのが難しかった、と中辻は語った。新政策の下では、防衛省は元請け企業だけでなく、サイバーセキュリティや製造業を改善するための提案のためサプライチェーン企業にも資金を提供することが可能となった。

例えば、「外国から輸入していた部品の一部を国産に切り替える」ことによって、「サプライチェーンの回復力を高める」ための資金を確保することができる、と中辻は言う。「これにより、日本企業の観点ではリスクを軽減することができる」。「多くの企業が、生産効率を高めるために新しい生産ラインの導入計画を提出している。以前は、サプライヤーや大手防衛関連企業でさえ、サプライヤーの問題を解決につながる手段を持っていなかった」。

新政策のもう一つの重要な点は、防衛省がインフレ調整を契約に組み込むことを可能にすることだ、と中辻は説明した。また、利益率を10%に引き上げることで、コストやスケジュール、パフォーマンス目標を達成するよう防衛省の主契約企業に金銭的なインセンティブを与える。

戦略国際問題研究所の元客員研究員松尾美樹は今年5月の論文で、過去20年で100社以上の日本の大手企業が防衛産業から縮小または撤退してきたと述べている。

防衛産業から企業が撤退するもう一つの理由として、日本政府が過去10年間、外国技術の取得支出を増やし、自国産業を縮小させてきたことがある、とスティムソン・センターの日本プログラム・ディレクター辰巳由紀は言う。

三菱重工業や川崎重工業のような日本の大手防衛企業にとって、防衛契約は企業全体の収益のごく一部でしかなく、圧倒的に民生売上が多いと辰巳は言う。しかし、こうした防衛元請企業にとって商業的な売上が、低収益防衛契約のによる財務的な不安定さを乗り切ることを防衛契約の可能にしている一方で、第二次、第三次サプライヤーは防衛予算の変動をより鋭く感じている。

「日本の防衛産業は全体として、二次、三次サプライヤーの空洞化によって大きな打撃を受けている。「日本の防衛産業基盤は)とても貧しく、とても脆弱だ」。

新政策は「間違いなく有益」だが、辰巳は、日本がまだ世界第2位の経済大国であり、戦略情勢が不安定でなかった2000年から2010年の間こそ、このような改革の理想的な時期だったと語った。

しかし日本の防衛省は、二次三次サプライヤーを防衛部門に呼び戻す新たな機会を得ることができる、と辰巳は付け加えた。岸田文雄首相が4月にホワイトハウスを訪問した際、ワシントンと東京は「防衛産業協力・取得・維持フォーラム」(DICAS)を新設すると発表した。ジャパンタイムズによれば、最初のDICAS協議が月曜日に終了した。

もし日本が共同生産や共同維持の機会を活用できれば、防衛プロジェクトにサプライヤーを呼び戻せる需要シグナルが生み出せるかもしれない、と辰巳は語った。

「防衛省は、(生産ラインの)立ち上げにかかる初期費用を負担するため、インフラ整備のためこ各社にある程度の投資を行うことができる。「このような(政策)措置は、二次三次企業に復帰を説得する際に、非常に有効です」。

日本では防衛産業基盤の縮小だけが問題ではない。防衛産業の近代化を目指す米国や他の国々が取り組んでいる課題もある。

米国と同様、日本の製造業全体が労働問題に取り組んでいる。熟練ブルーカラー労働者の世代が定年を迎え、あるいはパンデミック(世界的大流行)で離職し、企業に経験豊富な従業員が少なくなっているからだ。日本では、急速に高齢化が進んでいるため、防衛産業も「いつかは」労働力不足に直面することになるだろう。

同時に、人工知能、ロボット工学、デジタル・ツインといった技術は、一流テクノロジー企業では一般的だが、防衛製品の製造にはまだ十分に取り入れられていない。

「だからこそ、もっと効率的な機械や生産レーンなどを導入することが非常に重要なのです。あるいは、AIや新技術にもっと依存する必要があるかもしれません」と中辻は言う。「伝統的な防衛産業だけでなく、新興企業を含む防衛産業への新規参入者にも依存する必要がある」。

防衛省は2023年6月に約200社の新興企業と面会し、防衛プロジェクトに参加するよう奨励したと、日経新聞は報じている。

しかし中辻は、防衛省による新興企業との関わりは初期段階で、日本の防衛費の増加や世界的な安全保障問題への関与の強化に反対する顧客が遠ざかるのを見たくない企業経営者たちの懸念を克服しなければならないと注意を促した。

「これは新興企業に限ったことではないが、一般的に言って、日本で防衛ビジネスを行うことは、民間企業にとって評判の面でリスクがあると認識されかねない」というのだ。■

Japan looks to revamp defense industry after years of downsizing

By   VALERIE INSINNA

on June 12, 2024 at 7:32 AM


2018年4月25日水曜日

F-3開発:X-2の飛行再開はありうると防衛装備庁は見ている

たしかにX-2のフライトは50回想定のところ途中で終わったままですし、その気になれば追加テストも可能でしょうが、海外向けにはあまり意味がない機体になっているのでは。皆様ご指摘の通り米側に慮りすぎるとろくな結果にならないのでX-2と言うシンボルで国産技術水準をデモするつもりなのでしょうか。今年は重要な決定の年になりそうですね。

​Tokyo eyes multiple routes for new fighter jet

23 APRIL, 2018
SOURCE: FLIGHTGLOBAL.COM
BY: GREG WALDRON
SINGAPORE
防衛装備庁(ATLA)は三菱F-2後継機構想各案の是非を検討中だ。
「RFIが継続中で、課題も変化している」と制式名F-3となりそうな新型機開発に詳しい同庁関係者は語っている。
ロイター記事でロッキード・マーティンがF-22とF-35のハイブリッド版を日本向けに売り込みたいとしているが、同関係者はコメントを避けている。
ただし同上関係者は各種提案をはかりにかけており、日本と英国が共同で「次世代戦闘機実現の可能性」を検討していると述べている。
新型戦闘機の方向性を日本は模索しているところで選択肢には完全国産機の新型開発、海外パートナーとの共同開発、既存機種の改良がある。
米製戦闘機を基にした開発ではF-16の原型から生れたF-2の事例があるが、大型ペイロード搭載で対艦兵器の運用が要求内容のためF-2の主翼面積はF-16より25%大きいし、複合材料の多用などの改良点もある。
ただいかんせんF-2は高価格になり当初の144機調達が94機で止まったのが現実だ。F-35とF-22の特徴を兼ね備えた機体でも価格高騰が危惧される。
もともと日本はF-22調達を希望していたのだが1998年に米議会が海外販売に待ったをかけ、実現できなくなった。劣化版の輸出仕様構想が2006年に一時浮上したものの、日本からイージス戦闘システム関連情報が漏洩した2002年の事件が発生していた。
三菱重工はライセンス契約でF-35を名古屋で42機製造中だが、F-22/F-35ハイブリッド機の生産が実現しても米政府がどこまでの技術移転を許すのかは不明だ。
他方で同上ATLA関係者はX-2高度技術実証機のフライトが34回で終了していると認める。同機は当初50回までフライト予定だった。
「予定のテストは完了している。X-2の今後は未定だ。テスト続行もありうる」
同機は岐阜航空基地に置かれている。当初ATDXと呼ばれ、日本産業界にジャンプスタートさせる目的とステルス第五世代や第六世代機の開発に必要な技術の探求も目的とされた。新型機開発では15項目もの技術開発が同時並行で進み、兵装庫、センサー技術、データリンク他があり高性能戦闘機にそれぞれ必要な技術だ。
.X-2では同国内の航空宇宙技術陣の知見を次世代に継承することも目的とされていた。■

2017年11月28日火曜日

★★F-3を目指す最新26DMUから浮かび上がる設計思想



ラプターみたいな想像図ですね。米記者による図のためでしょうか。2030年代以降の投入を考えると先送りは困るのですが、これだけの規模の新型戦闘機開発事業は今後はなかなか現れないはずなので、当然海外メーカーも注目しているのでしょう。国産開発、共同開発それぞれ優劣はありますが、合理的な決断を期待したいところです。F-3には無人機の運用能力も必要となるのでしょうね。

Aviation Week & Space Technology

Japan Refines Design For Indigenous Future Fighter

日本が次期国産戦闘機に磨きを入れる
A Japanese combat aircraft may have become more conventional
日本製戦闘機は通常の姿になったようだ

Nov 23, 2017Bradley Perrett | Aviation Week & Space Technology


  1. 日本が目指す国産戦闘機は長距離航続力を重視する方向に変更したようだ。平成26年度の設計案26DMU(デジタルモックアップ)が最新版だ。
  2. 平成30年中に国産開発、国際共同開発のいずれかを選択する予定だ。次世代戦闘機は三菱重工F-2の2030年代退役に備える狙いがあるが、防衛省は事業先送りも匂わせている。
26DMUの特徴
  1. 26DMUの姿がこれまでも部分的に現れているが防衛省の公開セミナーで出た想像図で明確になった。以前の25DMUとの大きな違いは翼幅が縮まりアスペクト比が高くなったことだ。
  2. 26DMUの後縁形状は以前は後方だったが今度は前方角がつく。この変更で翼付け根の琴線が延長されているようでこれもアスペクト比を増やす。高アスペクト比で航続距離は伸びるが、超音速飛行では抗力が増える効果が出る。
  3. 防衛省は航続距離と長時間飛行性能で妥協しないようだ。防衛装備庁(ALTA)で次世代戦闘機を主管する土井博史は2016年にAviation Weekに当時未発表の26DMUは長距離飛行性能を重視しその他性能は中程度で甘受すると語っていた。
  4. 25DMUからこの設計思想が採用されたのは分析結果で長距離性能が重要と分かったためだ。この効果が空戦性能より重視された。
  5. 25DMUで長距離ミサイル6発の機内搭載が示され26DMUも継承している。MBDAのメテオと短距離ミサイルの混合搭載が考えられ、長距離交戦の想定だ。25DMUでは機関銃一門も想定した。
  6. 想像だが、26DMUで機体構造や推進系の改良で主翼変更による巡航時空力特性の劣化を補うのだろう。技術陣はF-2よりファスナーではなく接着剤の大幅採用で10%の重量削減を狙う。
  7. 26DMUの各フィンは鋭くなり延長されている。尾翼も変更された他、主翼後縁部に可動部分が二か所と以前の一か所より増えた。
X-2の成果
  1. 他方で次期戦闘機技術の実証機X-2は目標を達成した。三菱重工が同機を初飛行させたのは2016年4月でその後同機はALTAに引き渡された。当初はフライトテスト50回予定だったが、データが良好のため一部を割愛できたと関係者が同上セミナーで述べていた。結局34回で各1時間で完結した。
  2. 同上関係者はレーダー特性がすぐれていたというがそれ以上の言及は避けた。IHIのXF5エンジンも高迎え角でも性能は予想以上だったという。
  3. X-2はステルス、高機動性、低速での取り扱いの実証が主な目的だった。推力偏向エンジンノズルを搭載し、高迎え角はXF5に難易度が高かったがエンジンは難なく作動したと同上関係者は述べた。推力も想定より若干高かった。その他の条件でもエンジン推力は予想以上だった。X-2の最高速度記録は高度6千メートル(20千フィート)でマッハ0.8だった。
  4. X-2で迎え角がどこまで試されたかは不明だが、同上関係者によれば米独共同開発X-31実験機が1992年に70度を試している。その状態で飛行すると運動エネルギーが急速に失われ、空戦時に不利だが、巧みに操縦すればミサイル回避も可能でドップラー手法でレーダー追尾もかわせる。■

2017年8月11日金曜日

フィリピン向けヘリ部品供与<日本は東南アジア防衛協力関係強化を目指す



Exclusive: Japan seeks Southeast Asia clout with chopper parts for Philippines military - sources

フィリピン軍向けヘリコプター部品提供は東南アジア各国向け安全保障協力の第一歩


TOKYO (Reuters) - 陸上自衛隊がヘリコプター部品多数をフィリピンに譲渡し同国軍ヘリコプター機材の稼働を支援することで中国への対抗を後追ししながら戦略的に重要な南シナ海への影響力を確保するねらいがあることが複数筋から判明した。
  1. 今回のフィリピン向け部品はUH-1多用途ヘリコプター用で陸上自衛隊はH型ヒューイを2012年に用途廃止したが予備部品を保管している。
  2. 軍事外交による中国の南シナ海進出対抗は日本にとって新しい手段で、安倍晋三首相は従来の日本の姿勢をあらため域内でしかるべき役目を追求している。
  3. 東南アジアに対する軍事外交の強化を目指す日本にとり今回のフィリピン協定は第一歩で、各国が求める哨戒機、艦船他防衛装備の提供が続くはずだ。
  4. 「二国間の強固な戦略提携協力関係の象徴」とフィリピン空軍上層部はロイターに語り、日本はおよそ4万点の部品を提供すると述べている。
  5. 供与合意は日本として初の軍事援助となるが、6月に国会で余剰防衛装備の他国向け無償贈与が可能となっていた。
  6. 「予備部品の取り扱いを検討しているが具体的なことは決まっていない」と防衛装備庁関係者は語っている。「安全保障強化につながる防衛装備協力は今後も進めていきたい」
  7. マレイシア、フィリピン、ヴィエトナムの三国がP-3C哨戒機導入で日本と協議をはじめている。川崎重工製P-1の導入で余剰機材になっているためだ。
  8. これに先立ち日本は使用済みビーチクラフトTC-90キングエア3機をフィリピンにリース契約で供与している。
  9. 防衛上のつながりを構築するその他の動きとして南シナ海を航行したヘリコプター空母いずもにASEAN東南アジア連合の軍関係者が四日間体験航海している。
  10. インドネシア、マレイシア、フィリピン、シンガポール、タイランド、ヴィエトナムの軍関係者は日本で行われた災害救助演習を視察している。
  11. 安倍政権は東南アジアを中国の影響から守るには日本の方が米国より有利と認識している。米国では非民主政権下のタイランドやヴィエトナムには完全関与できない制限があるためだ。
  12. また米国内の条件によりフィリピンは中国やロシアに武器供給を頼らざるを得なくなっっているいうのが同国国防相の見解だ。
  13. 中国はすでにフィリピンに対し総額14百万ドル相当の軍事ハードウェアを寄贈しており、そのほかにも5億ドルのソフトローン枠を中国製武器購入用に設定している。■
Reporting by Tim Kelly and Nobuhiro Kubo in TOKYO; Additional reporting by Manuel Mogato in MANILA; Editing by Clarence Fernandez

2017年6月22日木曜日

パリ航空ショー P-1展示をした日本の軍用装備輸出の方向性



 

今一内容がわかりにくいのですが、中古機の再生輸出で米国の力を借りることなのか、P-1等新型機の輸出で米国等の技術力を応用するのでしょうか。いずれにせよ輸出で安全保障上のつながりが海外で生まれればよいニュースとなりますね。また内向きだけでよかった日本の防衛産業、行政の姿勢が外向きに変わることも長期に見ればよい効果を生みますが、中国は神経をいらだたせ、日本国内でも同調する動きが足を引っ張ろうとしてくるのでしょうね。

 

Japan looks to US to partner on used aircraft resale

日本が中古機材の対外販売で米国との提携を模索中

By: Jill Aitoro, June 21, 2017 (Photo Credit: TED ALJIBE/AFP/Getty Images)
  1. 防衛装備輸出の拡大を目指す日本が東南アジア向け中古機輸出で米国の協力を求めようとしている。
  2. 今回の方針はTC-90をフィリピンに供与する事業が成功したことから出てきたもので、フィリピンはイスラム国との戦闘に同機を投入しているといわれる。事業成立のため防衛装備庁の吉田孝弘事業監理官(航空機担当)はフィリピンを8回訪問したという。
  3. 「中古機のASEAN向け輸出は支援をパッケージにいして可能性を探って生きた。国名は出せないが数カ国と対話を続けており、米国をまじえASEANとの協力関係を模索する」と吉田はパリ航空ショーでDefense Newsに語った。「TC-90はすでに現地に引き渡し済みだ。次は用途廃止済みヘリコプター含む機材の部品輸出を目指している」
  4. この背景に防衛産業の輸出基盤を作る狙いがあり、日本が進める戦闘機開発事業も関係する。防衛省によれば日本はF-2後継機の決断時期が近付く中「多数国と協議中」で機材海外調達、国産開発、国際共同開発の委sれかの選択に向かうという。
  5. F-2の用途廃止は2030年代中頃以降となる。来年夏までに後継機の選択が必要だが中国が影を落とす。
  6. 「もちろん中国の次世代戦闘機開発は承知しており、中国技術の先をいつも目指し中国に対する技術優越性はいつも必要だ」
  7. 国防産業は日本に比較的なじみのない分野で、従来は制約が強く研究開発では米国依存色が強かった。方針は最近方向転換され日本も国際共同を模索できるようになった。
  8. 「無論のこと政策を決めるのは政治家であり、われわれではありませんが、日本政府全体として輸出や海外向け装備品供与を進めていきたいと考えています」
  9. パリ航空ショーではP-1哨戒機が展示されている。P-3Cオライオン後継機として供用開始している機体だ。
  10. 「P-3は優れたセンサー技術を搭載しているので輸出には慎重な対応が必要です。P-1輸出の相手国要件は機体改修に必要な技術があり情報保全体制がしっかりしていること、さらに日本のパートナー国であることです」■


2016年4月27日水曜日

★★X-2テストフライトは50回程度で一年を想定、初飛行写真をお楽しみください



とても一年でテストが完了するとは思えませんので、防衛装備庁も予算構造を意識した説明に終始しているのでしょう。今後は航空自衛隊岐阜基地が同機のホームグランドですね。着実なデータ収集に期待しましょう。写真はすべて航空自衛隊撮影のものです。
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PICTURES: Tokyo plans 50 X-2 flights in coming year

26 APRIL, 2016
BY: GREG WALDRON
SINGAPORE
日本は三菱重工X-2技術実証機のテストに一年間合計50回程度のフライトを想定している。
  1. 同機の初飛行は4月22日に約25分間行われ高度12,000ftまで到達し最高速度は200ktだったと防衛装備庁(ALTA)が明らかにしている。
  2. 天候によるが二回目の飛行が今週実施されそうだ。次回は降着装置を引き込ませ高速度へ加速する。
Asset ImageJapan Air Self-Defense Force
  1. 予定通り一年間のテスト期間となれば防衛装備庁はステルス性、推力偏向、データリンク他の高性能技術のデータ収集が可能となる。テスト期間は必要により延長もありうる。
  2. 同機では斜めにとりつけた尾翼や空気取り入れ口の工夫などで低視認性を目指しているが、機体表面にステルス塗装は施されていない。ただしキャノピー表面のみに特殊ステルス加工がしてあると防衛装備庁は述べている。
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  1. X-2は旧称ATD-Xとして1990年代から日本が進めてきた第五世代あるいは第六世代戦闘機に必要な技術を確立する事業の一部分である。合計15の案件あるうちでX-2が一番目立つ存在だ。その他には兵装庫の形状、データリンクなど高性能戦闘機に求められる要素に関連する技術の研究がある。
  2. 最終目標は得られた成果をF-3(仮称)新型戦闘機につなげることだ。新型機の製造決定は2018年に予定され、国産開発あるいは国際共同開発にするかの分かれ道となる。
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  1. 日本がF-3を外国と共同開発すると決めた場合、共同開発国はX-2で集めたデータやほかの研究成果を共有できる。単独開発、国際開発と関係なく、F-3は相当高額な機体になりそうだが、それだけの価値はあると防衛装備庁担当官はみている。
  2. 日本はロッキード・マーティンF-35の導入を決めており、三菱重工業がライセンス生産するが、最も重要な戦闘機技術そのものは移転されない。このため国内開発により技術力の向上、製造技術の進展を図ろうとしている。■