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2015年8月5日水曜日

★★海上自衛隊>大胆な戦略方針転換の理由は中国



日本国内ではなかなか聞こえてこない海上自衛隊のトップの発言を米国経由で聞くというのは倒錯していると言わざるを得ません。内容自体はごく健全なものですが、このまま日本で(日本語で)発言すると問題が起こるのでしょうか。とすれば国内の言論空間にゆがみがあるということですね。日本の国益をどう捉えるかという問題ですが、思考がどこまで広がっているのかというもんだなのでしょうね。

Japan Looks South: China’s Rise Drives New Strategy

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on August 03, 2015 at 2:41 PM

WASHINGTON: 海上自衛隊トップが講演すれば話題は日本防衛についてだろうと予測するのが普通だろう。だが武居智久海上幕僚長が10ヶ月で三度目の訪米となった今回のワシントン講演で日本が戦略的視野を広げていることを示したのには、いささか驚かされた。日本がインド洋までを視野に入れ、南シナ海に特に関心を示す背景にはもちろん中国の存在がある。
  1. 日本を先に訪問していたアンドリュー・クレピネヴィックの発言を引用すると「脅威の高まりと米国への信頼のゆらぎがあいまって、また憲法第9条の再解釈により日本では安全保障への考え方が広がり、戦略的になった」のだ。
  2. 日本の新思考で特筆すべきことは何か。カーネギー平和財団の講演で武居海上幕僚長は北朝鮮、尖閣諸島、ロシアについて言及していない。幕僚長は「太平洋」とも言わず、より広範な「インド・太平洋」の語句を使っている。
  3. 東北アジアについて論じるかわりに、幕僚長はソマリアであいかわらず混乱が続いていること、イエメンの不安地度から依然アデン湾での海賊活動に現象の兆しがないこと、海上自衛隊が護衛艦艇と哨戒機を派遣していることを紹介した。また「ある国」が「不安と不信」を南シナ海で発生させていると、日本人らしからぬ強い語調で中国について話している。
  4. 「中国はスプラトリー諸島のサンゴ礁を急速に埋め立てており、各国の反対を無視している」と武居幕僚長は述べ、人工島が軍事基地として供用されるとの見解で「南シナ海全体が中国の軍事影響下に置かれる」とした。
  5. 「南シナ海はインド太平洋の経済の重心だ。シーレーンが各所に伸びており、『開かれて自由な航行』にとって南シナ海は死活的に重要な存在」と述べた。
  6. 島嶼国家である日本で戦略的に事実を認識するのは大きな一歩だ。これまで日本は憲法第9条を厳格に解釈し、戦争を放棄してきた。前の大戦の惨禍、とくに原子爆弾二発による破壊を受けて、日本の自衛隊はもっとも狭義の自国防衛に徹してきた。とくに北海道の防衛に主眼をおいたのはソ連侵攻を恐れての事だった。しかし、現在の総理大臣安倍晋三は第9条の解釈を改め「集団的安全保障」に道を開く法改正を物議を醸し出しつつ推進中だ。その狙いは日本が他国と共同して域内の脅威に対抗することにある。
  7. 「集団的自衛権が政治問題になっています。国内議論は集団的安全保障を巡って大きく意見がわかれています。民主党中心の野党は安倍を止めないと日本が戦争に巻き込まれる、果ては徴兵制につながると主張しています」と語るのは戦略国際研究所で日本専門家のニコラス・スゼチェイル Nicholas Szecheiyl だ。「ただしこれは情報がどれだけ共有されているかの問題だと見ています」とし、新法は日本をこれまで以上に他国と共同作戦できるようにするもの、単に米軍だけが想定ではない、とし、日米と東南アジア各国で「共通作戦構造」を中国の南シナ海進出に対抗するために発足させると見ている。
  8. これまでも日本艦艇を南シナ海で巡視させる案が出ているが、米第7艦隊司令官ロバート・トーマス中将自らが海上自衛隊が地域内の「安定化勢力」になると公言している。
  9. しかし中国は日本のいかなる行動に反対している。「中国は数カ月前に米海軍のプレゼンスが南シナ海にあっても共存できるが、日本は同地域に関係がないと表明している」とヘリテージ財団の中国専門家ディーン・チェンが解説している。
  10. 日本は南シナ海およびインド洋で防衛関係を構築中で、これは民主党時代からの継続。オーストラリアとは2007年に防衛協力協定を正式に締結しており、インドとも同様に2008年にしている。(チェンはこの協定にほとんど関心が集まっていないと指摘) 両国と日本は軍事演習を実施している。武居海将は西太平洋海軍シンポジウムをインド洋海軍シンポジウムと連携する提案を正式に表明している。
  11. 武居幕僚長は武器輸出が解禁され新しい協力の可能性が生まれたと強調している。フィリピンとベトナムに日本は巡視艇を供与しているが、両国とも中国と領有権をめぐり対立する最前線の国
  12. では日本自身の防衛装備はどうするのか。「今日の自衛隊は相当の実力をもっています」とチェンは見る。とくに海上自衛隊について「英海軍より規模、実力ともに大きく、例外は弾道ミサイル潜水艦だけだ」という。(英国は核兵器を保有しているが、日本は理解出来る理由のため整備していない)
  13. さらに武居海将は力強く発言している。「今や海自は質量ともに米海軍につぐ存在だ」
  14. だからといって日本が米国抜きで仕事ができるわけではない。「米軍のプレゼンスは現在も今後もインド太平洋地区での平和と安定のため必要だ」と海将は発言。どのようなプレゼンスをどうやって維持するかは米国が真剣に議論すべきことだ。■


2014年8月25日月曜日

台湾:中国の圧力に直面しつつ模索するその国家戦略





Panel: Taiwan Facing Increasing Chinese Pressure

By: John Grady
Published: August 14, 2014 8:58 AM
Updated: August 14, 2014 8:58 AM
ROC Navy Kang Ding-class (Lafayette-class) frigate with S-70C helicopter. Taiwan Ministry of National Defense Photo
中華民国海軍フリゲート艦康定 Kang Ding級とS-70SヘリコプターTaiwan Ministry of National Defense Photo


1996年の台湾危機で中国は台湾近海にミサイルを発射したが、合衆国が空母打撃群2個を派遣して対応した。その後中国は海軍力を増強し「第一列島線」付近で影響力を増大させてきた。さらに2050年までにマリアナ諸島までを勢力圏に入れるべく原子力潜水艦や空母を建造するだろう。.

  1. 台湾の海上安全保障に関するフォーラムがヘリテージ財団主催で国連の中華人民共和国承認および米国の台湾関係法成立35周年の節目に開催された。

  1. ただし「台湾周辺の作戦には中国は原子力潜水艦は不要だ」というのは国防大学校バーナード・コール Bernard Cole (中国、太平洋地区の専門家)だ。

  1. ヘリテージ財団の主任研究員ディーン・チェン Dean Cheng, senior research fellow at the Heritage Foundation は「台湾への優先順位は中国軍部では高い」と作戦面で表現し、資源を海外に頼る台湾の海上封鎖の効果は高いと見ている。

  1. ただし中国は大型揚陸艦は建造していない(コール)。
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  1. コールによれば中国の金科玉条は「台湾の独立を認めない」ことで、国民党政権を追放した1949年から一貫して台湾に圧力をかけている。台湾は中国の接近拒否領域否定能力の向上に直面している。


  1. RAND研究所の上級政策アナリスト、コーテス・クーパーCortez Cooper によれば台湾は中国対抗策として地域内外交を展開しており、東シナ海平和構築の一環として漁業、領土、資源開発などの分野で緊張緩和をめざすとともに外部からの援助が到着するまでの自国防衛能力を拡充しようとしているという。

  1. 台湾が採択した戦略は「時間稼ぎが目標」であるが、チェンによれば中国は台湾の孤立化を一貫して狙っている。中国は台湾政府と外交関係を樹立する国家を懲罰対象としている。ハワード・マッケオン下院議員(共、カリフォーニア集、下院軍事委員会委員長)の東アジア訪問で、台湾を第一訪問先としたところ中国は急きょ予定されてた会談を一つ除き取り消ししている。

  1. 台湾の直近二政権は「国内問題を重視」する姿勢を示し、次回2016年総裁選挙では台湾独立を公約とする政党もある。台湾にとって頭の痛い安全保障上の問題は全志願兵制への移行、必要な防衛装備の選定、変化する環境の中で防衛指針をどう改変し、米国との共同運用を実現するかだとクーパーは指摘する。台湾は中国問題で「これまでとはちがうアプローチを採用する必要がある」とし、地域内紛争では中国とは「合同戦線」を張らないと域内各国に示すことがその例だという。


  1. クーパーは域内各国に対し中国からこれから台頭する大国は中国であり、米国は信頼に足るパートナーの座をすべりおりるかもしれないとメッセージが出ていると述べた。また米国が台湾、日本、フィリピンと結ぶ同盟関係は「冷戦思考の色彩を強めている」と中国は指摘している。「中国は自信を深めている」(クーパー)

  1. これに対しコールは1949年以来中国は毎回米国の意図を誤解してきたという。

  1. 中国は「マラッカのジレンマ」と呼ぶ事態でまさしく再度同じことを繰り返すかもしれないとコールは言う。マラッカのジレンマとは米国がマラッカ海峡から中国本土へ移動する原油輸送を阻止する能力を指している。現在の巨大タンカーでも同海域の移動は可能な船体サイズとなっているという。

  1. しかしチェンによれば中国も同海域はじめとする衝突点になりうる各地を重視しているという。1999年にベルグラードの中国大使館が爆撃された事件がその例だという。当時米国は爆撃は誤射と弁明しているが、中国はコソヴォでのNATOによる精密攻撃能力を理由に爆撃は故意であったと主張。「中国の視点は我々と異なる」

  1. チェンによれば中国は台湾に関しては米国に対するメッセージは一貫しており、台湾への武器売却の停止、偵察活動の中止、国家防衛権限法による台湾防衛の取り消しを求めている。「中国のたくらみに負けてはいけない」(クーパー)■



2014年7月31日木曜日

米空軍のこれからの30年戦略案(総論)が発表されました。



総論としてコンパクトなつくりのようですが、議会との関係改善などお題目だけに終わっている感じですね。技術開発については空軍のこれからの動きに要注目です。ISRを抑止力でとらえる、指向性エネルギー兵器の開発などさらに注意が必要な表現もあるようです。なにかと話題が乏しい米空軍ですが、先を見越した戦略で盛り返しを見せるのか、それとも絵に描いた餅でおわってしまうのか、今後が大事ですね



New US Air Force Strategy Emphasizes Closer Ties With Industry, Congress

Jul. 30, 2014 - 01:03PM   |  
By AARON MEHTA   |  
House Armed Services Committee Holds FY2015 Air Fo
空軍参謀総長マーク・ウェルシュ大将と空軍長官デボラ・リー・ジェイムズが下院軍事委員会で3月に証言している。新戦略案では議会との関係改善を重要視している。(Chip Somodevilla/Getty Images)

WASHINGTON —米空軍は今後30年間を展望した新戦略を7月30日に発表し、産業界とは密接に協力し、議会とはよりよい関係を築き、人材と装備では柔軟性を高めたいとする。
報告書は「アメリカの航空戦力:未来に向けた選択」“America’s Air Force: A Call to the Future”の表題で参謀総長マーク・ウェルシュ大将が求めた広範な戦略検討作業の成果物である。ウェルシュ大将は従来より長期間をにらんだ作業を求めていた。
文書は22ページで大目標の設定にあてられている。これとは別に20年の視野で「戦略マスタープラン」 “Strategic Master Plan” を2014年末までに完成させ、より具体的な目標と目的を明らかにする予定。

【ロードマップの要約】
今回の30年文書ではウェルシュ大将とデボラ・リー・ジェイムズ空軍長官Air Force Secretary Deborah Lee James の考える空軍の未来へのロードマップが示されている。その特徴は以下の四点。
■ 「新技術による急速なブレイクスルー」が今後も続き、空軍は技術優位性を確保するため柔軟な対応が必要。
■ 地政学的不安定度は今後も続き、「現時点での地政学的現実だけで脅威へ準備するのは不適当」
■ 空軍が対応を迫られる「広範囲な作戦環境」に敵対的、非敵対的双方の環境で運用できる装備とともに人道救難活動でも苛酷環境に対応した装備が必要。
■ 空、サイバー、宇宙の各空間で「グローバル防衛」の必要性。
この4分野の取り扱いには「戦略的機動性」 “strategic agility” が必要で、空軍は柔軟かつ状況適合的に脅威対象に対応する必要がある。
「戦略的機動性の実現ではじめて20世紀の産業社会のパラダイムの現状から「脱する」ことが可能となる。

【人材活用と組織改編】
この機動力の源泉はいくつか考えられている。空軍人員には空軍を離れ現実世界で経験を積ませてから復帰できる制度を構築することだとし、本人の経歴に汚点とならないようにする。
「勤務中断」として常勤から非常勤に切り替えても本人の経歴上不利にならないようにする。さらに空軍外で得る経験を好意的に評価する」(同報告書より)「同様に各人の職歴開発モデルを真剣に考え、専門分野での経験機会とともに昇給昇進の機会を空軍
同報告書では同時に「個性を重視した広範な価値観」を空軍内部で認めるべきと重視しており、その目標を空軍本体、州軍、予備役の一体化におく。


開発と企画化の迅速化は同時に調達業務を軽減する一方、民間産業界との連携を一層必要とする。
「将来の調達では今以上に価格妥当性が重要要素になるので、民間産業の知見を利用すべきだ。民間では利益が動機とない競争が発生している。この競争と調達方法ならびに開発過程の改革で生き残りを目指したビジネスモデルができている」
ジェイムズ長官もこの競争機動力をファーンボロ医国際航空ショー会場でのスピーチに盛り込んでいる。
「手続き、作業の両面が硬直化したままになっている....仕事の完了にあまりにも時間がかかりすぎている。もっとお互いに自由に話し合って学びあうことが必要だ」(ジェイムズ)
報告書でもう一つ重要な強調点は「協調」で、シンクタンク、業界そして議会との関係強化である。
この数年にわたり議会と空軍の関係はぎくしゃくしてきた。このことを報告書も認め、改善を公言している。A-10などの装備退役と言う空軍の掲げる目標に対し、議会が法令審査面で妨害をとってきたが、一言に改善と言っても簡単には実現しない。.

【技術開発】
技術面では機動性の意味は科学技術分野との仕事の緊密化により新技術の開発育成をすすめることだとする。
「有望な科学技術上のブレイクスルー結果を利用することで将来の作戦能力の拡大の可能性が高まる。これとともに性能要求の定義と調達制度の中に『見直し』の機会を増やすことで内容の変更あるいは中止を途中で行えるようにする。また試作品開発を迅速化し、装備の実用化までの経費を節減する」としている。
モジュラー化で技術の実用化を加速するほか、世界で活動する各部隊に選択肢の幅がひろげられるとする。
報告書の中で特に細かく記載があるのが「根本を一変させる」“game-changing” 技術開発が進行中であり今後の空軍の方向性にも大いに関係があると説明しているくだりだ。
五つの分野を取り上げている。極超音速兵器、ナノテクノロジー、指向性エネルギー、無人機、自律技術だ。
各分野は開発中であり報告書はこれですべてではないと特記しているが、各技術は空軍研究部門だけでなく産業界トップで新規投資を決断する必要のある層にとっても重要なロードマップを示すものだと説明。
マーク・ホステジ空軍大将Gen. Mike Hostag(空中戦闘司令部司令官)は指向性エネルギーの実用化を期待しており、弾倉大の大きさにしてF-22やF-35に搭載するのが目標だとする。「指向性エネルギー兵器を開発中の各種研究施設を訪問してきた。驚くべき成果があらわれつつある」
ホステジはあわせて業界と空軍が今以上に協力して新技術開発にあたることを期待していると発言。航空戦闘軍団は研究部門、運用部門と産業界を一緒にするための「革新会議」“innovation conferences” tを開催していると説明している。「目標は民間企業に対して当方の研究結果への関心を持たせ、この技術で空軍と協力したい、と言わせることだ」
「産業界の提携先各社へはIRAD(空軍自由研究開発)資金を提供しており、各社にとって不可欠なものとなっている」とホステジは発言している。「そこから将来の利益を生む製品が生まれる。IRADから戦闘に必要な技術が生まれる。その意味で科学技術への投資で研究成果が生まれるように維持するのは大切だ。しかし同時に民間企業が同じ技術を取り入れた製品を実際に作ることが重要だ」

【抑止力】
報告書では抑止力の近代化についても触れている。「21世紀においても確実な核抑止力は絶対的に必要な存在だ」とし、
小規模な脅威(例、アルカイダのようなテロリスト)の阻止は核兵器では不可能だが、現実的にはイランのような国が合衆国にサイバー攻撃をしかけたら核による対応策の可能性が出てくる。
そうではなく新抑止政策として経済的かつ即応性の高い技術を基盤とする手段が必要だ。サイバーはここでおおきなやくわりがあるが、高性能ISR機材も忘れてはいけない。
「巨額の予算で敵を一網打尽に圧倒するのではなく、革新的かつ低価格な選択肢が必要だ。それを行使した場合敵に高額の対応が必要となる選択肢だ」と報告書は述べる。「わが方によるミサイル防衛コストが敵のミサイル製造・運用コストを大幅に下回れば、戦略上の方程式が大きく変化することになる」■