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2025年4月18日金曜日

インドネシア空軍基地へロシア爆撃機が駐留するとの報道にオーストラリアが懸念(The War Zone) ―オーストラリアにとって北に構えるインドネシアの動向は常に気になるところで、神経過敏になっているようです

 Australia is pushing back on a report that Russia asked to base its long-range bombers at an Indonesian airbase.  

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オーストラリア政府関係者は、モスクワがインドネシア空軍基地に爆撃機を駐留させるようジャカルタに要請したとの報道に反発している


ーストラリア政府関係者は、ロシアがインドネシアの空軍基地に長距離爆撃機を駐留させようとしているとの報道に反発している。月曜日、ジェーンズは「ジャカルタがモスクワから正式要請を受け、ロシア航空宇宙軍(VKS)の航空機をインドネシア最東端の州にある施設に駐留させる許可を求めている」と書いた。その場所はマヌフア空軍基地で、オーストラリアのダーウィン港の北約850マイルに位置する。

 「インドネシア政府の別の情報筋は、2025年2月にロシア連邦のセルゲイ・ショイグ安全保障理事会長官と会談した後、スジャフリー・スジャムソエディン国防大臣の事務所がこの要請を受けたことをジャネス社に確認した」と同誌は付け加えた。


インドネシアのマヌフア空軍基地とフラン・カイシエポ空港の衛星写真。 (衛星画像 ©2025 Maxar Technologies)


 ジェーンズによれば、ロシアが同基地に駐留させようとしている機体の種類についての詳細は、受け取った情報に含まれていないという。  「しかし、過去数年にわたり、VKSはツポレフTu-95爆撃機とIL-76空輸機を同空軍基地に着陸させるよう、その場しのぎの要求を何度か出してきたとジェーンズは理解している」と同誌は報じている。

 モスクワ、北京、ワシントンが南太平洋での影響力拡大を目指す中、ロシアが長距離爆撃機をオーストラリアの近くに配置したいと考えるのは想像に難くない。アメリカはオーストラリアに軍隊を駐留させており、ティンダルにあるRAAF基地をB-52爆撃機に対応できるように改良中だ。さらに、10年以上にわたって、米海兵隊は訓練のため約2500人の海兵隊員を海兵隊定期交代部隊-ダーウィン海兵航空地上任務部隊に派遣している。


 一方、オーストラリア、米国、英国は、キャンベラに原子力搭載の通常兵器潜水艦を提供するAUKUSとして知られる協定に署名した。中国が今年初め、オーストラリア周辺の国際水域で実弾演習を含む艦艇部隊を航行させるなど、太平洋における緊張の高まりを背景としたものだ。

 今回報道のあったような基地協定が結ばれれば、ロシアは全体として非常に紛争が多く、重要な地域で戦力投射の拠点を得ることになる。この地域は、米国や世界的な影響力を持つ他の大国も、一貫した兵力投射に投資している地域である。 そしてもちろん、この地域は中国の域外権益が非常に大きく立ちはだかる地域でもある。ロシアは中国の重要な同盟国であり、特に軍事的には、爆撃機部隊が太平洋全域を定期的に共同パトロールしている。


インドネシアのマヌフア空軍基地は、オーストラリアのダーウィンの北約850マイル、フィリピンの南東約850マイルに位置する。 (グーグルアース)


 ロシアが何を望んでいるかどうかにかかわらず、インドネシアがロシアの戦略的資産を自国内に置くことに同意する論理はほとんどないように思われる。そうすることは、自国地域の国々や、ロシアと同様にインドネシアに兵器を供給しているアメリカを含む、より遠い海外の同盟国との関係を大きく揺るがすことになる。また、自国軍が残忍な紛争に巻き込まれ、莫大な資源を吸い上げられている最中に、ロシアがそのようなアクセスに対して何を支払うというのだろうか。さらに重要なことは、そのような決定が地政学的な動揺を引き起こしかねないにもかかわらず、インドネシアがその補償を必要とするほど重要だと考える理由があるのだろうか?

 ロイター通信が当時報じたところによると、2020年、インドネシアはP-8ポセイドン海上偵察機の着陸と給油を認めるというアメリカの提案を拒否した。

 ともあれ、ジェーンズ報道はキャンベラに警鐘を鳴らした。 オーストラリア政府は、ロシアと中国が「ダーウィンとノーザン・テリトリーにおける米軍のプレゼンス拡大にますます注目している」と考えている、とABCは推測した。

 オーストラリアのアンソニー・アルバネーゼ首相は火曜日、「われわれは明らかに、この地域でロシアの影響力を見たくない。「我々はウクライナに味方し、ウラジーミル・プーチンを国際法を破り、ウクライナの主権を攻撃している権威主義的指導者とみなしている」。

 オーストラリア政府関係者は、ロシアが爆撃機をマヌフアに駐留させるかどうかについて疑問を投げかけている。

 「インドネシアの国防相は、モスクワがパプアの軍事基地へのアクセスを求めているとアメリカのメディアが報じたことを受け、パプア州にロシア機を駐留させることはないとオーストラリアに確約した」とオーストラリア放送協会(ABC)は火曜日に報じた。

 リチャード・マールズ副首相兼国防長官は、報道機関への声明の中で、「カウンターパートであるスジャフリー・スジャムソエディン国防相と話した』と述べた。

 スジャムソエディンはマールズに対し、ロシアから基地へのアクセス要請は受けていないと語ったものの、「より下級レベルで提起された可能性は排除できない」とABCは指摘している。これに先立ち、ペニー・ウォン外相は記者団に対し、オーストラリア政府関係者が詳しい情報をジャカルタに求めていると述べた。

 一方、ロシアもこの考えを軽視しているようだ。

 「ロシアがインドネシアに航空機の駐留許可を求めたという報道について聞かれたクレムリンは、フェイクニュースが出回っていると答えた」とABCは報じた。

 インドネシアは「長らく戦略的中立を維持してきたが、昨年プラボウォ・スビアント大統領が選出されて以来、ロシアとの安全保障・防衛関係を深めてきた」とポリティコは指摘している。

 その関係強化の一例として、ロシアとインドネシアは11月にジャワ海で海軍訓練を行ったとABCは報じている。

 当時、ロシアのセルゲイ・トルチェノフ駐インドネシア大使は、この演習は「重要な出来事」であり、「両国の海軍は、さまざまな分野で協力するために相互信頼と理解を深める用意がある」と述べた。

 このような絆があるにもかかわらず、ロシアに爆撃機配備の権利を提供するのは、行き過ぎではないか、とあるアナリストは指摘する。「ロシアがインドネシアの空軍基地の使用を提案したとしても、政府がそれを許可するとは思えない」。防衛アナリストで、ジェンデラル・アクマド・ヤニ大学の講師でもあるヨハネス・スライマンは、ガーディアン紙にこう語った。 「インドネシア軍は、インドネシア国内に他国が軍事基地を建設することを非常に嫌っている」。

 しかし、ロシアが基地に駐留した前例はある。ABCは2017年、「100人以上のロシア人職員と数機の航空機が駐留しRAAFダーウィン基地が "短期間 "の厳戒態勢に入った」と報じた。

 5日間の訪問中、2機の核搭載爆撃機Tu-95が「南太平洋上空で史上初のパトロール任務を行い、貴重な情報を収集していたのではないかという懸念が生じた」とABCは当時指摘した。

 ロシア国防省は当時、戦略爆撃機が「8時間以上の飛行で南太平洋の中立海域上空で警戒態勢を敷いた」と主張していた。

 全体として、今回の報道は、ロシアが南米、つまりベネズエラに爆撃機を前方基地に配備しているという同様の主張を彷彿とさせる。そのような報道は何度もあったが、象徴的な訪問にとどまり、そのような合意が実現することはなかった。■



Australia Casts Doubt On Russia Basing Bombers At Indonesian Air Base

Australian officials are pushing back on a report claiming Moscow has asked Jakarta to base bombers at an Indonesian air base about 850 miles from Darwin.

Howard Altman, Tyler Rogoway

Published Apr 15, 2025 1:14 PM EDT



https://www.twz.com/air/australia-casts-doubt-on-russia-basing-bombers-at-indonesian-air-base


2025年4月15日火曜日

ロシア機の日本接近で空自スクランブル発進回数が増加している(USNI News) ― このニュースは一部日本メディアも伝えておりましたが、そろそろ日本メディアでも防衛(国防)デスクを正式に設置すべきではないでしょうか

 

2024年度の中国とロシアの航空機侵入マップ。 統合幕僚監部

2024年4月1日から2025年3月31日までに日本は合計704回の戦闘機スクランブルを実施し、前年同期の669回から増加した。木曜日の統合幕僚監部(JSO)の発表によると、ロシア機に対するスクランブルが大幅に増加した一方で、中国機に対するスクランブルはわずかながら減少した。

 日本は戦闘機のスクランブル回数を月、四半期、年単位で発表しており、統合幕僚監部は中国とロシアの航空機が関与するスクランブルのうち、重要と判断されたものについては特別な報告書を発行している。

 JSOの報告によると、2013年度以降、スクランブル回数は各年度とも700回以上に近い水準で推移しており、日本と同盟関係にない外国の軍用機が日本周辺で活発に活動し続けていることを示している。スクランブル回数の大半を占めるのは中国軍機で、2024年度は464回と全体の約66%を占めたが、2023年度からは15回減少した。

 一方、ロシア機のスクランブルは237回で、全体の約34%を占め、2023年度の合計174回から63回増加した。2024年度のその他に分類されたスクランブルは3件で、全体の1%未満であった。報告書にはその他がどのような分類であったかは記載されていないが、おそらく民間機に対するスクランブルであろう。

 航空自衛隊の司令部別では、北部航空総隊が2023年度の112回に対し2024年度は152回、中部航空総隊が2023年度の46回に対し2024年度は39回、西部航空総隊が2023年度の110回に対し2024年度は102回、南西航空総隊が2023年度の401回に対し2024年度は10回増の411回と最も多くスクランブルを実施している。

 このうち南西防空司令部は、日本周辺における中国の航空活動の主要な場所であり、中国とロシアが爆撃機の共同飛行を行う場所でもあるため、日常的に最も多くのスクランブルを記録している。

 日本周辺でのロシアと中国の軍用機の飛行経路を示す地図が報道発表に添付され、中国の飛行の大半は日本の南西諸島周辺で行われ、多くの飛行が宮古島と沖縄の間の空域、または日本の与那国島と台湾の間の空域を通過し、そのうちの多くが台湾の東海岸沖を飛行していることが示された。

 ロシアの飛行の大半は、日本海上空と北海道と本州の西海岸に平行して行われた。その他の飛行には、北海道の北、日本の南西部、沖縄と宮古島の間の空域での飛行、日本一周飛行などがあった。台湾東海岸沖での中国の飛行は、情報収集機と無人航空機(UAV)で構成されていた。

 JSOの2024年度の出来事の概要によると、8月に中国軍機による領空侵犯が発生し、9月にはロシア軍機が1日に3回にわたり日本の領空を侵犯し、この事件で初めて日本の戦闘機が警告フレアを放った。また、11月にはロシアと中国の爆撃機が日本海、東シナ海、太平洋上空を共同飛行したという。 直近では、ロシアの戦闘機に護衛されたロシア爆撃機が日本海を飛行し、哨戒機が日本一周飛行を行った。 JSOによれば、中国とロシアの航空機のスクランブル対象の大部分は情報収集であった、

 JSOはまた、2024年度は、中国のWZ-10ウイング・ルー10UAVとGJ-2ウイング・ルーIIUAVが初めて日本周辺を飛行しているのが確認され、中国のUAVの飛行回数は前年度の3倍近くに増加したと発表した。

これに先立ち、中谷元・防衛大臣は4月4日の記者会見で、2024年度には日本の防衛省から中国のUAVに関する報告が合計23件出され、2021年度には報告が4件、UAVが4機であったのに対し、推定を含め30機の中国のUAVが日本周辺で探知されたと述べた。

 中谷防衛相は、中国製UAVの活動が大幅に拡大しているとし、一例として、2023年4月以降、日本の与那国島と台湾の間の空域を、これまでなかった中国製UAVが飛行していることや、2024年度には、天売大島沖の国際空域で、防衛省が3回の飛行を確認し、合計4機のUAVが確認されたことを挙げた。

 また、JSOの報道発表には、日本がスクランブルをかけたロシアと中国の航空機による45件の注目すべき飛行の詳細な表が含まれており、その中には、2024年7月に人民解放軍海軍(PLAN)の空母CNS山東(17)から運用されたJ-15戦闘機と、2024年10月に空母CNS遼寧(16)から運用されたJ-15が含まれている、 2024年7月に日本海上空を飛行したロシアのTu-95爆撃機2機と護衛の戦闘機2機、2025年1月にオホーツク海と日本海上空を飛行したロシアのTu-95爆撃機2機と護衛の戦闘機2機の爆撃機飛行。

 金曜日に発表されたJSOの報道発表では、2024年度にしばしば見られた南西地域周辺での中国軍機やUAVによる活動と同じパターンが示された。JSOの報道発表によれば、金曜日の午前と午後に、中国のY-9哨戒機が東シナ海を飛行し、沖縄と宮古島の間を通過してフィリピン海に達し、周回飛行を行った後、同じ方法で東シナ海に戻ってきたという。

 同報道発表は、同日午前と午後に、中国と推定される無人偵察機が東シナ海から飛来し、与那国島と台湾の間を通過してフィリピン海に入った後、旋回して同じ経路で東シナ海に戻ったと付け加えた。報道発表に添付の地図によると、UAVは台湾の東海岸のほぼ全長と平行に飛行した後、引き返した。

 報道発表によると、どちらの場合も航空自衛隊の南西航空防衛司令部の戦闘機が迎撃のためにスクランブルされた。■


Russian Incursions Drive Increase in Japanese Fighter Scrambles, Officials Say

Dzirhan Mahadzir

April 11, 2025 5:57 PM


https://news.usni.org/2025/04/11/russian-incursions-drive-increase-in-japanese-fighter-scrambles-officials-say

ジルハン・マハジール

Dzirhan Mahadzirはマレーシアのクアラルンプールを拠点とするフリーの防衛ジャーナリスト、アナリスト。 1998年以来、Defence Review Asia、Jane's Defence Weekly、Navy International、International Defence Review、Asian Defence Journal、Defence Helicopter、Asian Military Review、Asia-Pacific Defence Reporterなどに寄稿。


2025年4月12日土曜日

ロシアは北朝鮮にMiG-29を売却の構え。西側諸国は心配すべきか?(The National Interest)

 


Gemini



目を引くMiG-29の設計は、空中戦での勝利と必ずしも結びついていない


年12月、ロシアが北朝鮮と同盟関係を強化するため、北朝鮮空軍にMiG-29はじめとする戦闘機を売却する意向であることが報じられた。 これは、冷戦の真っ只中にソ連と中華人民共和国から譲り受けた旧式戦闘機を使い続けている北朝鮮空軍の能力を劇的に向上させるだろう。


 もちろん、MiG-29は世界最先端の飛行機ではない。しかし、さらに古い飛行機に頼り続けている北朝鮮にとっては、それでも大きなステップアップなのだ。

 平壌にMiG-29を引き渡す決定は、ロシアと北朝鮮の関係が拡大していることを示している。北朝鮮からの大砲の砲弾と引き換えに、そして最近では、明らかに大砲の餌としてクルスクに北朝鮮軍を配備することで、北朝鮮の指導者金正恩はロシアから高度軍事援助を受けている。

 興味深いことに、これは冷戦後の数十年間、ロシアが拒否していた措置だ。1990年代にロシア経済が停滞し、軍事販売が不振にあえぐエリツィン政権にとって重要な生命線となり得たにもかかわらず、である。  実際、ウクライナ戦争をめぐる大西洋諸国との関係断絶がなければ、モスクワがこのような取引を行うことはなかっただろう。

MiG-29のスペック

MiG-29は、1970年代初頭に航空優勢を達成できる新世代の戦闘機を開発するというソ連の要求から生まれた。米国は双発重戦闘機であるF-15イーグルを発表し、軽量のF-16の開発に取り組んでいた。これに対してソ連空軍は、伝説的なミコヤン設計局に、当時実用化されつつあったアメリカの新型戦闘機に追いつき、さらに追い越すことのできる、多用途で機敏な戦闘機を作るよう命じた。

 MiG-29は、ミコヤンの技術者たちの努力の結晶であった。 MiG-29は1977年10月6日に初飛行し、1982年にソビエト空軍に正式配備された。

MiG-29は、軽量戦闘機(MiG-29)と重量機(Su-27フランカー)という2つの航空機を補完的に実戦配備するソ連の広範な戦略の一部であり、多かれ少なかれ、アメリカのF-16とF-15を反映していた。Su-27が長距離交戦とマルチロールミッション用に設計されたのに対し、MiG-29は近距離空中戦に最適化された高機動ドッグファイターとして意図された。 その開発は、費用対効果と大量生産の可能性を維持しながら、NATOの技術的優位に対抗することに重点を置いたソ連の意図を反映している。

 双発の単座ジェット機で、独特な空気力学的プロフィールを持つMiG-29は、卓越した機動性を高めるために、鋭角のエアインテークを持つ流線型の混合翼設計である。2基のクリモフRD-33ターボファンエンジンを搭載したMiG-29は、最高マッハ2.25(時速1,490マイル)の速度を出し、戦闘半径は約434マイルである。外部燃料タンクで航続距離を伸ばすこともできる。また、高Gマニューバーや垂直上昇も簡単にこなすことができ、ドッグファイターとして最高の性能を発揮する。

 MiG-29の最大の特徴のひとつとして、当時としては先進的なエイビオニクス・スイートがある。初期型にはN019スロット・ブラック・レーダーが搭載され、最大距離62マイルで複数目標を追跡できた。

 このジェット機は赤外線サーチ&トラック(IRST)システムを搭載しており、レーダーだけに頼ることなく目標を探知して交戦することができた。 ヘルメットに装着された照準器は、R-73アーチャー・ミサイルと組み合わされ、照準外照準、つまり、パイロットが敵を見るだけで敵をロックでき、MiG-29は接近戦で優位に立つことができた。

 MiG-29の武装も同様に素晴らしい。R-27やR-73のような空対空ミサイル、空対地弾薬、迷走用の30mmGSh-30-1カノン砲を搭載できる。  MiG-29は主に航空優勢戦闘機であるが、後期型は地上攻撃や偵察などのマルチロールミッションに適応している。

MiG-29の複雑な記録

残念ながら、MiG-29の印象的な設計上の特徴は、常に空中戦での勝利に結びついたわけではない。特筆すべきは、MiG-29はソビエト時代に導入されたにもかかわらず、冷戦が熱くなることはなかったことである。   ユーゴスラビア戦争からエリトリア・エチオピア戦争まで、さまざまな紛争でMiG-29の存在が決定づけられた。最近では、MiG-29はリビアでイスラム過激派を相手に活動するワグネル・グループの傭兵が使用しており、進行中のウクライナ戦争では大規模な戦闘で大きな損害を被ったとされている。

 また、飛行機はパイロットと維持費があってこそのものだ。 上記のほとんどすべての紛争で、この飛行機を使用する戦闘員はメンテナンスを怠り、訓練も不十分で、戦闘結果は芳しくなかった。

 しかし、リビアのワグネル・グループのように、ロシア人パイロットの手にかかれば、同機は優れた性能を発揮する。ウクライナ戦争で失われたMiG-29でさえ、ほとんどがウクライナ側のものである。ロシアはMiG-29をウクライナ上空の非友好的な空に投入するのではなく、訓練機の役割に追いやっている。

 とはいえ、モスクワはこれらの航空機の一部を北朝鮮に売却することに興味を持っている。 この売却で北朝鮮がアメリカの支援する韓国空軍と肩を並べることはないとはいえ、北朝鮮が現在持っている装備から大幅にアップグレードされることになる。それだけでも、好戦的になりつつある北朝鮮と向き合う北アジアにとっては問題となる。


Russia Wants to Sell North Korea MiG-29s. Should the West Be Worried?

March 26, 2025

By: Brandon J. Weichert

The MiG-29’s impressive design features have not always translated to aerial victories


https://nationalinterest.org/blog/korea-watch/russia-wants-to-sell-north-korea-mig-29s-should-the-west-be-worried


著者について ブランドン・J・ワイチャート

The National Interest誌のシニア・ナショナル・セキュリティー・エディターであり、Popular Mechanics誌の寄稿者でもある。 ワシントン・タイムズ』、『ナショナル・レビュー』、『アメリカン・スペクテイター』、『MSN』、『アジア・タイムズ』など多数の出版物に寄稿。 著書に『Winning Space: How America Remains a Superpower』、『Biohacked: The Shadow War: Iran's Quest for Supremacy』などがある。最新刊『A Disaster of Our Own Making: How the West Lost Ukraine』は書店で購入可能。


2025年4月1日火曜日

ロシアを中国に対抗させるトランプの戦略にNATO同盟国が耐えられるか?(19fortyfive)―地政学の大きな狙いを見ずトランプを見下すと誤った結論に導かれます。われわれは稀有な国際構造の大きな変曲点にいると考えるべきなのですが

 

Gemini 



ナルド・トランプはロシアや中国で「逆キッシンジャー」Reverse Kissngerを実現できるか? ウクライナ戦争を通じ、ドナルド・トランプ米大統領と彼の「アメリカを再び偉大にする」政治運動は顕著な共感をロシアの立場に示してきた。

 MAGAの識者たちは、米国がロシアに有利な条件で和平を促進すべき戦略的理由を数多く提示してきた。 どれも議論の余地はある。

 しかし、これまでで最も首尾一貫しているのは、ロシアが中国に対抗する同盟国になるかもしれないという新たな考え方である。

 この主張には、他のMAGAの主張で最も不穏な要素、つまりロシアに戦争に勝たせる、あるいは少なくともウクライナ東部のかなりの部分を切り落とすという不快な意志が含まれている。

 米国がロシアの領土拡張を容認することは、冷戦や1991年の湾岸戦争を通しての米国の行動とは対照的である。ロシアの勝利を助長すれば、NATO内部にも大きな亀裂が生じる可能性が高い。

 しかし、トランプ政権が模索していると思われる論理がある。中国は今後数十年にわたる米国への最大の挑戦者であり(事実)、近年生まれたロシアと中国の同盟関係を崩すことが米国の大きな国益となる(これも事実)。

 この動きは、1970年代にヘンリー・キッシンジャーが中国をソ連から引き離し、部分的にアメリカと同盟を結んで対抗することに成功したことにちなんで、「逆キッシンジャー」と呼ばれている。 この外交クーデターはソ連の包囲網を悪化させ、1980年代後半のソ連崩壊の一因となった。

 しかし、当時と今とでは、トランプ大統領が克服するのに苦労するであろう3つの大きな違いがある:


中国とソ連は1970年代ですでに対立していた

当時と現在の最も明白な違いは、キッシンジャーとリチャード・ニクソン大統領が「中国開放」を行ったとき、開かれたドアを押していたということだ。

 1960年代後半には、中国とソ連はすでに乖離していた。マルクス・レーニン主義をめぐるイデオロギー上の相違は、中ソ国境沿いの領土紛争と重なっていた。緊張はエスカレートし、1969年には両国は核衝突寸前までいった。

 対照的に、今日の中国とロシアは、イデオロギー的にも地政学的にも目標を共有している。どちらも、民主主義の圧力を深く恐れる少数の腐敗した徒党が率いる国家主義的で全体主義的な独裁国家である。そして世界政治においては、どちらもアメリカの覇権主義に憤り、多極化と影響圏でそれに取って代わろうとしている。


この関係には緊張がある:プーチンはおそらく中国の習近平指導部が望む以上に無謀であり、中国はプーチンが望む以上に主要輸出市場である西側と結びついている。しかし、こうした亀裂は、キッシンジャーが利用した亀裂ほど大きなものではない。


中国についてプーチンは信頼できるのか?

逆キッシンジャーで困難なのは、パートナーとしてのプーチンの信頼性の低さである。この取引の基本的な概要は、短期的にはウクライナでロシアに有利な条件を提示し、中期的にはロシアが中国を助けるというものだ。この取引の順序はロシア側に有利だ。つまり、プーチンが先に取引の利益を手にし、アメリカはプーチンが後に自分の要求を実現することを信頼しなければならない。

 これは明らかに問題が多い。プーチンは信頼できる相手ではない。 実際、ウクライナをめぐる現在の和平交渉で最大の障害となっているのは、欧州とウクライナがプーチンが取引条件を守ることを信用していないことだ。

 トランプの逆キッシンジャーは、1)プーチンが数年後に再びウクライナに侵攻しないように、ウクライナに関する和平協定を守らせる、2)ロシアに少なくとも10年間は意味のある、費用のかかる反中政策を約束させる、の両方を実現するメカニズムを構築する必要がある。トランプがプーチンをこのように束縛できるかは不明だ。


中国を開放しても、他の米国との同盟でコストは発生しない

当時と現在の最後の違いは、今日の「ロシア開放」は、当時の中国開放になかった同盟のひずみを生むことだ。

 1970年代、米国の太平洋地域の同盟国、特に韓国と台湾は、米国が赤化中国とデタントすることに神経質になっていた。しかし、このような懸念は、同盟の大きな崩壊や再編成を引き起こさなかった。

 これとは対照的に、今日のトランプ大統領のロシアとの取引は、プーチンに早い段階で具体的な利益を与え、後の漠然としたロシアの援助を期待するものだが、米国の同盟ネットワークでは懐疑の壁にぶつかるだろう。米国の同盟国はプーチンを信用しておらず、そのような取引は拒否される可能性が高い。戦争終結への協力が明らかに必要なウクライナも同様だ。

 これらの同盟国はウクライナを手放すくらいなら、アメリカと決裂する可能性が高い。実際、そのような考えはすでに進行しているようだ。

 信頼できない相手国(ロシア)のためにNATOを壊し、その相手国が(おそらく?)実現しないかもしれない将来の利益を求めるのは、高リスクの提案となる。トランプは「取引の技術」の達人だと主張している。 今こそ、それを証明するときだ。■


Trump Wants Russia Against China—But Can NATO Survive It?

By

Robert Kelly


https://www.19fortyfive.com/2025/03/trump-wants-russia-against-china-but-can-nato-survive-it/?_gl=1*9mempz*_ga*Mzg0NjE1MDYuMTc0MjkzNzAyMQ..*_up*MQ..


著者について ロバート・E・ケリー博士


ロバート・E・ケリー博士(@Robert_E_Kelly; ウェブサイト)は釜山大学政治学部国際関係学科教授。 現在、1945年寄稿編集者



ロシアが木製を弾頭に詰めたドローンShahedを発射(Defence Blog) ― ロシアが爆発物の在庫が払底して苦しまぎれで木片を詰めたわけではありません

 


テレグラムによるキャプチャ


クライナに墜落したロシアのシャヘドカミカゼドローンで、弾頭の代わりに木製ブロックを装備しているのが発見され、その意図に疑問が投げかけられている。

 残骸を回収したウクライナ軍関係者は特異な構成に注目した。

 無線技術の専門家セルヒイ・ベスクレストノフによれば、ドローンには新開発の16素子アンテナが取り付けられていたという。 技術的分析で、ベスクレストノフは、このアンテナは、衛星ナビゲーション信号の妨害やなりすましに効果的であることが証明済みのウクライナによる電子戦システムに対抗するため設計されたものと示唆した。

 「可能性が最も高いのは、弾頭を木製ブロックにして軽量化し、飛行時間を延ばしたことだ。 「ウクライナ領空を飛行し、新型アンテナが電子対抗手段に機能するかのデータ収集が可能になる」。

 このドローンは、実戦的なシナリオでハードウェアをテストするロシア軍による広範な努力の一部である可能性がある。爆発性の弾頭がなく、洗練された電子機器が搭載されていることから、破壊より偵察やシステム評価が主な目的だったことがうかがえる。

 ウクライナ当局は以前から、ロシアが戦場を軍事技術開発の実戦テスト環境として利用していると非難している。 ロシアは長距離攻撃にシャヘド・シリーズのドローンを多用しているが、今回のような改造は、戦術の進化や、防空・妨害装置に対するドローンの生存性を高める新たな努力を示している可能性がある。

 このドローンの発見は、ウクライナの対ドローン能力の向上に対応してロシア軍が無人航空機システムを適応させているという複数の報告に続くものである。■


Russia launches Shahed drone with wooden warhead

News

Aviation

ByDylan Malyasov

Mar 29, 2025

Modified date: Mar 29, 2025

https://defence-blog.com/russia-sends-shahed-kamikaze-drone-with-wooden-warhead/



ディラン・マリヤソフ

ディラン・マリヤソフはディフェンス・ブログの編集長。 ジャーナリスト、公認防衛アドバイザー、コンサルタント。 防衛アドバイザー、コンサルタントとしての経歴は、ジャーナリスト活動にユニークな視点を加え、本人の報道が十分な情報と権威を持つことを保証している。



2025年3月27日木曜日

プーチンは平和を口にしつつ勝利を目論む: ロシアのウクライナ戦略で隠された真実とは(19fortyfive)―プーチンはウクライナ停戦に前向きと公言しているが、ロシアの野心を浮き彫りにした降伏条件を押し付けている

 




ロシアの停戦要求はウクライナ戦争におけるプーチンの真の野望を明らかにしている


プーチン大統領は木曜日、ウクライナとの30日間の停戦に「原則的に」同意したと述べた。しかし、プーチンが提示した条件は、敵対行為の停止に関心がないことを明らかにしてしまった。

 それどころか、戦場での戦いを続け、戦争に勝つことに関心があることを隠そうともしていない。

 だからといって、本人にトランプ大統領と外交を行う気がないわけではない。 もしプーチンが納得のいく取引に応じ、西側を確保するために必要だと思うものを交渉によって手に入れることができるのであれば、そうするだろう。 しかし、プーチンが強者の立場で外交的譲歩をすることはないと私たちははっきりと認識しなければならない。そのため、ロシアの安全保障に必要と思われる条件を提示されなければ、プーチンは自分が望むものを武力で手に入れるまで戦い続けるだろう。

 これが米国や欧州であまりにも理解者が少ない、あるいは認めようとしない重要なジレンマである: ロシアは軍事的に優位な立場にあり、政治的目的(西側国境の安全)を達成するため交渉の必要はない。 一方でウクライナは、完全な軍事的敗北を避けるため交渉による解決を必要としている。

 プーチンは、「敵対行為停止の提案にはおおむね前向きだが、長期的な平和につながり、危機の根本原因に対処するものでなければならない」と述べた。 ロシアの言い分では、根本的な原因の解決とは終戦協定が成立した場合、最低でも、a)ザポリツィア州、ケルソン州、ルハンスク州、ドネツク州の4つの行政境界線をウクライナがすべて放棄すること、b)ウクライナの「非武装化」(ウクライナが新たな大統領選挙を実施すること)、c)非武装化、つまり陸軍を8万5000人まで削減すること、d)中立宣言(NATO加盟の申し出がないこと)を行うことを意味する。

 ウクライナはこれらの条件を事実上の降伏と呼んでいる。


ウクライナ戦争ではロシアが有利


それは間違っていない。 この言葉は、西側のウクライナ支援者にとっては冷ややかなものだ。しかし、この言葉は現実を反映している。 ロシア軍は現在150万人に迫り、さらに増え続けている。 ロシア空軍はウクライナ空軍を圧倒している。 ロシアは、死傷した兵士を補充する人員で圧倒的な優位に立っている。 ロシアには、ウクライナには到底及ばない膨大な天然資源がある。そして何よりも、ロシアにはウクライナとヨーロッパ全土を合わせたものを凌駕する防衛産業基盤がある。

 プーチンはこうした現実をよく知っている。 停戦と交渉による解決を検討すると自信たっぷりに言いつつ、モスクワにだけ有利な条件を要求できるのは、外交的に問題を解決する必要がないからだ。

 アメリカとウクライナが共同でプーチンの強硬な条件に同意し、4州のすべての行政境界線を明け渡し、選挙に同意し、軍を8万5000人まで削減し、中立を誓わなければ、ロシアは単に戦い続けるだろう。プーチンが交渉で勝利できなかった場合、最も可能性の高いシナリオは、少なくともドニエプル川までの土地の接収を続けることだろう。

 ロシア国内の強硬派の多くは、4州でさえ反対している。ワシントン・ポスト紙のインタビューに応じたあるロシア軍の現場指揮官は、彼と彼の部隊に対して、「すべては我々の勝利、勝利、勝利のためだ。 「傀儡のゼレンスキーを一掃し、キーウを解放し、オデーサにたどり着き、祖国を解放するんだ」と語った。尊敬するオーストリアのマルクス・ライズナー大佐による最近のビデオ分析では、ワシントン・ポストのインタビューで司令官が言及したすべての領土を占領できる可能性があることが示された。


 正確に指摘すると、戦争が始まって3年間、欧州のNATOの大部分とバイデン政権が外交で戦争を終わらせることに断固反対し、代わりに "必要なだけ"戦い続けることを選んだために、私たちは今このような立場にいる。しかし、戦争の根幹と両陣営のパワーバランスは常にロシアにあり、西側諸国はそれを見る目がなかった。

 許しがたい無能な決断を下した最初の3年間の結果、ウクライナ国民は2つの結果のどちらかを受け入れることを余儀なくされている。つまり、プーチンの望むとおりほぼすべてをロシアに認める醜い交渉による解決か、現実を認めず戦い続けるか、そして最終的にはロシア政府が出す降伏条件に従うか。


悲しい現実と厳しい選択


西側諸国とキーウがずっと前に現実を認めていれば、2022年2月以前に外交で戦争を回避できたはずだ。2022年4月にイスタンブールで、あるいはそれ以降のどの時点でも、交渉による終結を受け入れることができたはずだ。 しかし、そうしなかったため、このような事態になっているのだ。

 ヴォロディミル・ゼレンスキーが現実を無視すればするほど、ウクライナの最終的な結末はもっと血なまぐさいものになるだろう。 米国の前政権、ヨーロッパの多くの指導者たち、そしてゼレンスキー大統領の悪行のためウクライナの男性、女性、そして子どもたち何百万人が苦い代償を払わされたことを筆者は悲しく思う。

 歴史は彼らを厳しく裁くだろう。■


Putin Talks Peace but Plans Victory: The Hidden Truth About Russia’s Ukraine Strategy

By

Daniel Davis

https://www.19fortyfive.com/2025/03/putin-talks-peace-but-plans-victory-the-hidden-truth-about-russias-ukraine-strategy/?_gl=1*x6ppyq*_ga*MzEyMzg0MjQwLjE3NDIyMDU0Njc.*_up*MQ..



著者について ダニエル・L・デイビス

ダニエル・L・デイビスは21年間の現役生活の後、米陸軍中佐として退役し、現在は19FortyFiveの寄稿編集者として毎週コラムを執筆している。 彼は現役時代に4度戦闘地域に派遣された: 1991年の砂漠の嵐作戦、2009年のイラク、そしてアフガニスタンに2度(2005年、2011年)。 1991年に73イースティングの戦いで武功により青銅星章を授与され、2011年にはアフガニスタンで青銅星章を授与された。 著書に『The Eleventh Hour in 2020 America』がある。 デイビスは2012年、アフガニスタンから帰還し、米軍幹部や文民指導者たちが米国民や議会に対し、戦争は順調に進んでいるが、実際には敗北に向かっているといかに語っていたかを詳述した報告書を発表し、国民的な評判を得た。 その後の出来事から、彼の分析が正しかったことが確認された。 デイビスはまた、真実を伝えるための2012年ライデンホール賞の受賞者でもある。 現在、ダニエル・デイビス中佐のYouTubeチャンネル「Daniel Davis Deep Dive」では、戦争、国家安全保障、政治、外交政策、ニュース速報などを専門家の解説とともに分析している。



2025年3月21日金曜日

ウクライナの正念場:トランプの条件を受け入れるか、戦場崩壊に直面するか?(19fortyfive) ― トランプの登場でウクライナの行方は全く変わってしまったと言ってよいでしょう。ここ数週間が注目されます

 


Switchblade Drone

スイッチブレード・ドローン。 画像出典:会社配布資料。


2025年5月9日のロシア戦勝記念日が近づくにつれ、ウクライナとロシアの紛争は重大な岐路に直面している。

-ウクライナのクルスク攻勢は戦略転換に失敗し、ウクライナ軍は深刻な後退を余儀なくされている

-トランプ政権下でアメリカ支援が不透明な中、ウクライナは東部の重要な領土を明け渡し、NATO加盟の野望を捨て、希少資源で負債を補填するという厳しい要求に直面している


ウクライナはロシア戦争で厳しい選択を迫られている

1945年の第二次世界大戦終結以来、5月9日(ナチスに対する赤軍の勝利の日)はロシアで最も重要な日となっている。1990年までは、11月7日(共産革命記念日)と同じく重要だった。1991年以降、ロシア人にとって重要な祝日はノヴィ・ゴッド(新年のお祝い)だけである。

 2025年5月9日までの残る数週間で、2022年2月以来ウクライナで激化している戦争で劇的な変化が生まれるだろう。

 これらの変化は、以下の2つの方向のいずれかに発展する可能性がある。 ウクライナがトランプ大統領が押し付けようとしている厳しい条件を受け入れるか、戦場で大敗を喫するかである。


領土での小競り合い

ウクライナのクルスク侵攻は、ロシア軍のバランスを崩し、ウクライナ領内から軍を撤退させ、一部ウクライナ人が期待していたように、ロシア軍がウクライナで占領した地域をクルスクで失った土地の代わりにウクライナに返還するという停戦協定に合意させるのを狙った「ワイルドカード」だった。

 この賭けは失敗に終わった。 ロシアはウクライナから軍を撤退させなかった。北朝鮮などからの傭兵を含む追加兵力を動員し、徐々に押し戻している。

 現在、ロシア軍はクルスクで失った領土のほとんどすべてを奪還し、未確認情報によれば、かなりの規模のウクライナ軍を包囲下に置いている。


ウクライナが直面する条件

トランプ大統領はウクライナに飲み込みがたい取引を持ちかけた。 ウクライナは東部領土の20%をロシアに譲渡し、希少資源の一部をアメリカへの借金返済に充て、NATO加盟を断念しなければならない。

 その見返りとして、ウクライナは戦争から解放され、アメリカの支援を受けた多額の経済援助の恩恵を受ける。

 トランプの申し出を断った場合にウクライナを待ち受けている状況はもっと悪い。プーチンはウクライナに決定的な勝利を収めるため全力を尽くし、来る5月9日の連休中にそれを発表するだろう。

 米国からの追加軍備装備品の供給がなければ、ウクライナ軍は長く持ちこたえることはできないだろう。 ロシア軍は次のどちらか、あるいは両方の方向に動くだろう。

 クルスクからウクライナ軍を追い出し終えたら(今後2週間以内と予想)、ロシア軍はハリコフ郊外から約20キロの地点に部隊を配置する。  戦前に150万人のウクライナ人が住んでいたウクライナ第2の都市を占領することは、ウクライナにとって大きな打撃となり、プーチンが5月9日を祝う良い理由となるだろう。


ロシアの第二の選択肢

あるいは、ロシア軍がオデーサに向け進軍することも考えられる。 この行動は、現在前線があるケルソンからミコライフを通り、黒海沿岸に沿ってオデッサまで200kmの陸路で行うこともできるし、軍隊を上陸させ、ピヴデンヌ(オデッサからわずか40km)付近の海岸に橋頭堡を築き、西に移動することもできる。

 このような動きによって、ウクライナは黒海へのアクセスを奪われ、ロシアとモルドバが直接陸続きとなり、モルドバはウクライナの南で「ベラルーシ」と化すだろう。

 アメリカの支援撤退でウクライナ軍が崩壊し始めれば、ロシアは同時に両戦線での「挟み撃ち」を試みるかもしれない。いずれにせよ、ウクライナにとって非常に厳しい結果となる。 このような状況下で、ゼレンスキー政権がトランプ大統領の取引を選ぶと予想する。

 しかし、指導者が常に正しい方向を選ぶとは限らないことは、歴史が示している。 エゴ、敗者とみなされた場合の自国民からの復讐への恐れなどが介在することもある。

 今回は賢明な選択がなされるよう期待したい。■


Ukraine’s Moment of Truth: Accept Trump’s Terms or Face Battlefield Collapse?


By

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Boaz Golany

Lt. Colonel (res.) Boaz Golany is an Emeritus Professor at the Technion, Israel Institute of Technology where he has served as a Dean, VP for External Relations & Resource Development and Executive VP & Director General. His research interests cover diverse areas of applied operations research.  He also serves as a member of the Board and as a strategic consultant to some companies and organizations.


イスラエル工科大学テクニオン校名誉教授、学長、渉外・資源開発担当副学長、副学長・事務局長を歴任。  応用オペレーションズ・リサーチの多様な分野を研究。  また、企業や組織の役員や戦略コンサルタントも務めている。