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2016年2月27日土曜日

★速報 LRS-B制式名は B-21、 米空軍が発表



US Air Force Unveils New B-21 Bomber

By Lara Seligman, Defense News9:57 a.m. EST February 26, 2016
635920764844302418-B21-hires.png(Photo: Courtesy of Ann Stefanek, US Air Force Pentagon)
ORLANDO, Fla. — 米空軍長官が新型長距離打撃爆撃機の完成予想図を初公開し、制式名称はB-21だと発表した。
  1. 2月26日、空軍協会主催の航空戦シンポジウムの席上でデボラ・りー・ジェイムズ長官が次世代爆撃機予想図を披露し制式名称がB-21だと発表した。
  2. ただし愛称は未定で、長官は空軍隊員に提案を求めた。
  3. 「これが機体の完成予想図で制式名も決まりましたがまだ名称がありません」とジェイムズは紹介し、「空軍隊員の皆さんにB-21の一番ぴったりする愛称案を提案してもらいたい」と述べた。「試作機も完成しておらず、本日公開した完成想像図は初期設計概念図を基にしている」と空軍は声明を発表。制式名の由来はLRS-Bが21世紀で初めての爆撃機になるためと声明で解説している。
  4. ジェイムズ長官はB-21が同じノースロップが製造したB-2に酷似している理由にも触れている。
  5. 「B-21の設計は要求性能の実現のため最初から既存かつ成熟した技術内容を活用することに主眼を置いていた」
  6. ジェイムズ長官発表を受けてノースロップ・グラマンの広報はB-21爆撃機が与える将来への意義を強調し。
  7. 「ノースロップ・グラマンは誇りをもってB-21爆撃機製造の主契約企業を務めます。米空軍と連携し、我が国の安全保障で死活的な性能の実現に努めます。ご質問は空軍あてにお願いします」
  8. 米空軍はB-21に関し技術開発、製造準備、開発業務での契約をノースロップへ昨年10月27日付で交付していた。配備開始は2020年代中頃と見込んでいる。■


2015年11月17日火曜日

LRS-B>ボーイング等の抗議により開発業務もストップ これでいいのか?



どうしても納得がいかないボーイング=ロッキード側が正式な不服申立てをしたため、空軍も対応してその間業務の実施を棚上げすることにしました。この分だけ時間とお金が無駄になるわけですが、結果としてLRS-Bの実現が遅れれば誰が利益を得るかは明らかですよね。

USAF Orders Northrop To Stop Work on LRS-B

Nov 9, 2015 Amy Hillis | Aerospace Daily & Defense Report

LRSB

米空軍はノースロップ・グラマンに対して長距離打撃爆撃機LRS-B関連業務の停止を指示した。これは不服申し立ての対象になった契約業務での標準手順にしたがったもの。
  1. 業務停止指示は11月6日付で送付されたと空軍報道官ロバート・リース少佐が述べた。同日はボーイングおよびロッキード・マーティンが契約交付結果に対する不服申し立てを会計検査院(GAO)に起こしたのと同日。
  2. ノースロップ・グラマン側はGAOが不服申し立てを審査する間は業務を続けるか言及を避けた。.
  3. 敗退した側は空軍が提案内容に伴うリスクを適正に評価しておらず、最新の生産方法・保守管理方法で事業支出額が低減するはずのところを無視していると申し立てている。また提案内容に空軍が不当にコストを上乗せしているとも主張。
  4. 二番目の論点はともかく、同チームがもっと大きな論点を提示していることに注目すべきだ。つまり選定作業全体が最初から間違っていたのかという点で、契約が成立してもコスト削減は実現しないのではないかという点だ。あたかも議会からペンタゴンの支出には厳しい目が向けられている。GAOはこの点では裁定をくだないが、議会は注目しそうだ。
  5. あらためてGAOがボーイングやロッキード・マーティンの主張を認めるかが注目される。これまでの例ではKC-X事業で不服申立ての結果、選定が再度仕切り直しとなり、さらに数年を空費している。他の例では即座に提案内容の再採点が行われている。
  6. 空軍はLRS-Bはまず通常兵器運用仕様として2020年代中頃の就役をめざすとしている。核兵器の初期作戦能力獲得には相当のテストと認証工程が必要で、就役は遅れる。セシル・ヘイニー提督(米戦略軍司令官)によれば核運用型の就役を2030年までに実現したいという。
  7. 空軍には業務停止を回避するため猶予措置の行使という選択肢もあった。しかし、この措置はあるシステムが順調に配備されないことで国家安全保障に支障が生じる場合のみ行使できるものだ。空軍があえて猶予措置に訴えなかったのは、行使した場合に政界からの干渉を回避するためだろう。■

2015年11月14日土曜日

LRS-Bでやはり不服申し立てをしたボーイング=ロッキードチーム

やはりというか、さすがというか、受注できなかったボーイング側からLRS-B選定手続きの妥当性をめぐり不服申し立てがされました。本当にその言い分が正しいのか、今度は会計検査院が検討することになりますが、空軍が慎重かつ適正に行った選定が覆されるとしたら大問題ですね。

「defense news」の画像検索結果Boeing Protests Northrop's Long Range Strike Bomber Contract
By Andrew Clevenger and Lara Seligman10:59 a.m. EST November 6, 2015
Northrop Grumman wins US Air Force LRS-B contract(Photo: Northrop Grumman)
WASHINGTON — 11月6日ボーイングはロッキード・マーティンと共同で政府会計検査院に次期長距離打撃爆撃機入札で国防総省がノースロップ・グラマンを採択した10月27日の結果へ正式に不服申し立てをした。検査院は100日間を上限として不服申し立て内容を検討し、裁定を下すことができる。
  1. ボーイングとロッキード・マーティンはLRS-B選定手続きを「根本的に間違っている」と共同声明で指摘した。具体的には価格審査で両社チームが提出した価格上昇を防ぐ提案内容が適正に評価されていないこと、ノースロップ・グラマンの執行能力に関するリスクを適正に評価していないことを取り上げている。
  2. ノースロップ・グラマンはB-2ステルス爆撃機のメーカーとして提示した511百万ドル(2010年価格)がペンタゴンの設定した550百万ドル(2010年価格)を下回ったことが採択の理由の一部といわれる。2016年度のドル価格換算するとそれぞれ563百万ドル、606百万ドルになる。
  3. キャピタルアルファパートナーズのアナリスト、バイロン・キャランは投資家向け通信で不服申し立て自体はなんら驚くべきことではないとし、逆の結果になっていたら、ノースロップが不服を申し立てていただろうとする。
  4. キャランの見立てではボーイング等の不服申し立てが採択される確率は15%だという。
  5. 「空軍はLRSーB選定結果に抗議が出ることは最初から想定していたのだろう。ボーイングは給油機事業でEADS採択結果を不服としその後受注に成功した実績があるが今回は調達選定の顔ぶれが空軍内で変わっている」
  6. レキシントン研究所で国防産業向けコンサルタントとアナリストを兼ねるローレン・トンプソンはボーイング、ロッキード両社と強いつながりがあり、不服申し立ての背景には空軍が選定基準を誤っているとの見方があるのだという。
  7. 機体価格および製造リスクの点で両提案は適正に評価を受けていない、という。空軍は、ボーイング側提案に盛り込んだ数々の技術革新による費用節減効果を正しく認めていないという。
  8. 「空軍は両提案の相違点を考慮していません。機体価格は極めて重要でかつボーイング側が提示した数々の優れた性能が採点に反映されていません」
  9. コスト面で現実的な検討を行うため空軍はB-2実績を参照したという。
  10. 「空軍の根拠は『あるべきコスト』で開発費用を前例から推測しており現在利用可能な数々の技術革新が生まれる前のデータを参照した」ためB-2が生産終了した2000年以降の技術進歩による価格低減効果を排除したというのだ。
  11. ボーイング/ロッキードチームは110億ドルを技術・生産開発(EMD)費用として提示したが、空軍の試算はEMDに214億ドルでリスクを製造メーカーから政府に転嫁するものだとトンプソンは述べた。
  12. ボーイングとしては不服申し立てで失うものはないが、得るものは大きい。LRS-B契約は期間全般で1,000億ドルを超える規模で数十年にわたり企業収入となる。逆にLRS-B受注に失敗すればボーイングの軍用機生産拠点セントルイス(ミズーリ州)は閉鎖に追い込まれるかもしれない。
  13. だがボーイングの抗議が聞き入れられる可能性は低い。国防調達関連の実績が最近公表されたが、国防関連の不服申して立てが採択されるのは2013年に2%にとどまっている。政府調達事業全般では4%となっているので、国防関連では相当に低い。
  14. さらに空軍も10年近くもめた空中給油機のトラブルの再発を防止したいのは明らかで、LRS-Bでは念入りに準備してきた。
  15. そこで空軍は費用試算を二機関で行っている。またペンタゴンの監察官がLRS-B調達手続きを監査したことは契約交付が厳密になっていることの表れだとするアナリストがいる。
  16. 選定結果発表で空軍長官デボラ・リー・ジェイムズは選定手続きが「入念かつ厳格であった」と強調している。「交付決定は慎重かつ厳格な手続きを経ており、空軍内の専門職が両提案を比較検討し、選定基準に準拠している」とジェイムズは発表の席上で記者団に語っている。「手続き全体は極めて高い透明性を持って国防総省内の内部統制を経て進められた」
  17. 空軍が最善を尽くしたにもかかわらず、不服申し立ての結果、事業推進が遅れ醜悪な広報合戦が発生することがボーイングが議会筋に大きな影響力をもっていることから想定される。
  18. ボーイングとロッキードは強力にロビー活動を展開する構えだ。ボーイングはミズーリ州代表議員の中でも、有力な民主党上院議員クレア・マッキャスキル、共和党上院議員ロイ・ブラントをあてにし、ロッキードはテキサス州議員団とくにフォートワース選出のケイ・グレンジャー、下院軍事委員会委員長ウィリアム・ソーンベリー両下院議員ともに共和党所属に期待する。
  19. 選定結果の公表を控え、国防調達工程の合理化について公聴会を終えた段階でソーンベリー議員はLRS-Bをめぐる不服申し立ての可能性を懸念し、調達事業が訴訟合戦に見舞われることにも同様に懸念した
  20. 毎回選定結果に不服申し立てが出てくること、また抗議をしても実質的に罰則がないことを記者団に指摘し、ソーンベリーは「この現状を変えねばならないと考える議員が増えており、議論を続けていく」と語った。■


2015年10月29日木曜日

★★LRS-B>これがノースロップ・グラマンの勝因だ



一日経つと予想が大きく外れノースロップ・グラマンが受注決定業者になていました。以下その勝因の分析です。

LRS-B: Why Northrop Grumman Won Next U.S. Bomber

Oct 27, 2015Bill Sweetman | Aviation Week & Space Technology
ノースロップ・グラマンが長距離打撃爆撃機(LRS-B)の受注企業に決まり、年商で合わせて6倍の規模を有する競争相手チームを打ち負かす結果になった。
  1. 米空軍は10月27日に選定結果を発表し、ノースロップ・グラマンがボーイング/ロッキード・マーティンを破り新型爆撃機100機の生産を担当する。初期作戦能力の獲得は2020年代中頃が目標だ。ペンタゴンによると次は技術製造開発(EMD)段階で2010年価格で214億ドル設定でテスト機材(機数不詳)を生産する。
  2. これと別に190億ドルがリスク低減策に支出ずみで両陣営は初期設計を完了していた。2016年価格でのEMD経費見積もりは235億ドルとペンタゴンが発表。なお、2016年価格で換算するとB-2の開発には372億ドルかかっている。
  3. 空軍はノースロップ・グラマンの新型爆撃機(正式名称は未定)の調達単価は2010年価格で100機購入を前提で511百万ドルとしている。ペンタゴンも二種類の試算をおこない、550百万ドル(2010年価格)という目標水準を下回る見込みを確認した。この目標は2011年に当時のロバート・ゲイツ国防長官が承認した。
  4. ノースロップ・グラマンの受注契約では固定価格制かつ報奨金を最初の低率初期生産5ロット分に認めている。初期生産機材は総平均機体価格を上回るはずだがその価格は公表されていない。生産が順調に進めば、800億ドルの事業規模になる。LRS-Bの運用開始は2020年代中頃の予定だ。ただし正確な予定は初期作戦能力の設定水準に左右され、今後空軍のグローバル打撃軍団が詳細を決定する。
  5. 事業規模が大きいため、業界ではかねてから敗れた側が結果に不服を訴えるのではないかと見ていた。ボーイングには前例がある。2008年に給油機選定がノースロップ・EADS陣営に流れたことに抗議し、結果として同社が二回目の選定で採択されている。ボーイングとロッキード・マーティンは共同声明で両社が「本日の発表内容に落胆し、選定がどのように行われたのかぜひ知りたい」と表明している。空軍は選定で敗れた側には30日に説明するとしているが、不服申し立ては100日間可能だ。
  6. 一方、ノースロップ・グラマンの社長、会長兼CEOウェス・ブッシュは「空軍は正しい判断で我が国の安全保障を確保した」と表明した。「重大事業を執行する資源は確保済み」.
  7. ただ現時点でノースロップ・グラマン側に参加する企業名は秘匿されており、エンジン調達先も不明だが、空軍によれば重要構成部分の供給先はすべて確保済みだという。業界アナリスト陣によれば機体はB-2の小型版という姿になり、主翼胴体一体型で双発で空中給油なしで2,500カイリの飛行半径だというが、詳細は確認できていない。
  8. 選定手順の詳細は秘匿情報扱いのままだが、ノースロップ・グラマンの広帯域全面ステルス技術がB-2で実証されていること、またこれも極秘のRQ-180情報収集監視偵察(ISR)用無人機の実績が高評価された可能性が大だ。
  9. 選定の決め手はステルス性、航続距離での差であろう。LRS-Bではリスク低減、オープンアーキテクチャア、機動性の高い管理生産技術が求められている。
  10. LRS-B競合は以下の三点で独特であった。まず要求内容は取り消しされた次世代爆撃機(NGB)事業から継承している。当初の目標水準を引き下げる一方、作業工程を伸ばし、機体単価を中核性能内容(KPP)に設定した。
  11. 二番目に実証機に予算を回さずにペンタゴンは双方の事業者に初期設計の審査(PDR)を行わせている。これはおそらく2013年から2年間を費やしている。
  12. 三番目にLRS-Bの事業統括を空軍内の迅速戦力開発室(RCO)に任せたことがだ。空軍調達担当のウィリアム・ラプランテ次官は目を見張る性能を実現してきた実績があり、しかも単なる実験機ではなく本生産につながっている」とRCOを評価している。.
  13. 注目すべきはラプランテがRCO内にできたLRS-B事業担当部門はロッキードF-117ステルス機を35年前に開発したのと同様のチームになっていると発言している点だ。RCOの業績として公認ずみなのはボーイングX-37B宇宙機案件しかないが、2012年にRCOが公表した室次長の要件として「相当の経験を...低視認性技術、低視認性機体対抗技術および電子戦に有するもの」と想定していることからどんな技術を重視しているのかが伺われる。F-117と同様にLRS-Bは目標水準の実現のため成熟したサブシステムを新設計機体に搭載する構想であろう。
  14. ただしラプランテはさらにつづけており、RCOチームはペンタゴン、議会、会計検査院の監督を受け、内部にはレッドチーム、ブルーチームで考えられる脅威に対抗できるか検証したという。.
  15. LRS-Bの設定平均調達単価は550百万ドル(2010年価格、100機生産前提)でこれがKPPになった。
  16. LRS-Bで採用される中核技術は非公開だが成熟している。「風洞テストを受けているほか、試作型を作成し、実際に飛行しているものもあり中にはすでに実用化されているものがある」とラプランテは10月21日に語っている。
  17. ただし、ラプランテは遅延や費用超過が今後発生しないとは見ていない。「技術の統合には必ずリスクが有り、工程表には適度な余裕を入れ込んで一部の遅延をカバーする構造になっているが」
  18. LRS-Bは容易に性能改修ができる構造で、「現時点では想像さえできない将来の装備を搭載する場所と重量を設定している」(ラプランテ)は言う。オープン・アーキテクチャアで新型サブシステムを調達できることで「たえず性能を高く維持し、統合を期待できる」(ラプランテ) 低視認性を維持するコストとともに性能改修がライフサイクルコストの相当部分に想定されており、調達コストより相当大きくなるはずだ。
  19. もうひとつLRS-Bがこれまでの事業と異なるのは生産ペースだ。想定は「予算獲得可能な範囲でF-35のような急増想定はしていない」とラプランテは言う。「弾力的に設定している」とし、実現可能な年間予算配分を前提としている。「年間7機から8機というところか」(ラプランテ) この数は他の軍用機より相当少ないが、逆に生産ラインは2040年頃まで稼働することになる。爆撃機推進派にはLRS-Bの配備が始まり、アジア太平洋作戦が引き続き重要であれば、100機では足りないと見る向きがある。
  20. ノースロップ・グラマンはボーイング、ロッキード・マーティン、レイセオン陣営の合計年間売上1,600億ドルと比較すると6分の一未満の規模しかない。ボーイングとロッキード・マーティンは2007年時点でNGB事業で連携をしていた。LRS-Bで仕切りなおし再びチームを組み、レイセオンを加えた。ロッキード、ボーイングはそれぞれ米軍の主要機材をほぼ全数供給している。
  21. 一方で選定のルールも変更されている。ラプランテは10月21日の記者会見で価格試算を独立して行うことを重視している。これはペンタゴン内部にある費用試算事業効率評価(CAPE)部門の仕事で2009年のウェポンシステムズ超厚改革法により生まれた組織だ。「すべての事業に費用試算を独立部門が行い、その結果で予算を配分する」とラプランテは言う。また試算も一本ではない。事業推進室からCAPE試算担当者へ今回の事業内容を最初から説明している。.
  22. 開発コストとして現在引用されているのは独立部門による費用試算結果であり、受注企業あるいは事業推進部門による試算結果ではない。目標とするのは低価格入札をしにくくすることだ。
  23. ボーイング、ロッキード・マーティンは競合相手を価格で勝とうとしただけではなく、政府資金による実証機材(次世代長距離打撃機材実証機、NGLRS-D)製作をNGB時代の早期からはじめていた。ボーイングのファントムワークスが低視認性機体の開発を先導し、ロッキード・マーティンのスカンクワークスが機体を生産している。
  24. ステルスだけでなく、ファントムワークスは新生産技術の応用でも先陣を切っている。これはボーイングが全社的に導入を図るブラック・ダイヤモンド技術としてLRS-B選定でも有力な要素になると見られていた。
  25. ロッキード・マーティンは自社のステルス技術での知見を応用してきた。だがF-22では機体構造が窮屈なため性能改修が成約を受けて、変更が必要となると都度その他の技術に影響が出ないことを確認する必要があった。このためLRS-Bではオープン・アーキテクチャーの採用でこの再発を回避しようとした。.
  26. ノースロップ・グラマンもNGLRS-Dで採用された技術の一部を共有していた可能性があるが、最大の要素は同社がRQ-180で実用化した技術内容だろう。業界筋によれば同機は高度にステルス性を有した高高度飛行UAVとして機体設計が飛躍的な進歩を示しており、推進系でも空力的に洗練され、流体力学計算(CFD)や電磁気学計算(CEM)の進展による効果が大といわれる。.
  27. B-2はで高いステルス性を実現したが、機体設計ではステルスと空力特性の両立で困難を極めた。また機体中央部と主翼の設計は複雑で三次元風流、ショックのパターンから当時のコンピュータモデリングとテストの最先端結果を応用している。同機は燃料消費効率が優秀で給油なしで6,000カイリを飛行半径としているが、実はB-52と同様の効率しかない。
  28. これとは対照的に2000年に入ったばかりのノースロップ・グラマンの設計案は「グライダー並み」の飛行効率を有していたという。RQ-180はLRS-Bよりはるかに軽量のはずだが、翼巾はほぼ同じで設計段階でCFDおよびCEMが大幅導入されていることを伺わせる。また新型レーダー吸収剤や塗装も採用されている。このUAVから新規のステルス技術の知見が展開されるはずで、ノースロップ・グラマンはLRS-Bの運用コストの試算根拠としても使うはずだ。
  29. ロッキード・マーティンのRQ-170もRCOによる事業統括の成果だと広く信じられており、今回LRS-Bに参画した大手3社はすべてRCOとの接点があるが、なかでもRQ-180での知見が一番大きな意味があると見られる。
  30. B-2は高コストで知られるが、ノースロップ・グラマンによれば逆に同機の経験がプラスに働くという。同機の飛行時間あたりコストがその他大型機材で少数機を運用する際のコストと全く異なる構造で、通常機材であれば固定費用が中心で保守管理コストはゆっくりと上昇するという。現在運用中のB-2各機は各9年で丸まる一年間の保守管理施設入をする。また新素材の採用でB-2の探知特性は大幅に改善しているという。
  31. ノースロップ・グラマンはコストを抑えるため大胆な策に出てきた。プロジェクト・マジェランの社内コードでメルボーン(フロリダ州)に有人機の研究拠点を設置した。これまで研究拠点をロサンジェルス・パサデナ地区、セントルイス、フォート・ワースの三地点に分散してきた流れに逆行する。メルボーンでは新規建屋が完成しているが、さらに追加建設し、2019年までに1,500名規模の施設となる。■


2015年10月7日水曜日

LRS-B契約交付先の発表は間もなく?



USAF in ‘Final Closing Phase’ of Bomber Contract

By Lara Seligman5:54 p.m. EDT October 6, 2015

635797311321575465-DFN-bomber-avenger(Photo: US Navy concept/Wikimedia)
WASHINGTON — 米空軍は次世代爆撃機の契約交付先選定の最終段階に入っており、結果発表は間近に迫っている。
「最終選定の段階にあり、順調に進んでいるので、結果はまもなくわかります」とウィリアム・ラプランテ空軍次官補がDefense One主催のイベント会場で述べている。
仮に空軍が一年間におよぶ削減措置延長を受けても、長距離打撃爆撃機(LRS-B)の契約交付は予定通り実施すると同次官補は発言。
業界は息を飲んで相当遅れた契約先発表結果を待っている。ペンタゴンはまず今年夏に結果を発表する予定だったが、それが初秋になった。直近ではある空軍関係者があと数ヶ月だと見ている。
ペンタゴンはノースロップ・グラマン案、ボーイング=ロッキード・マーティン案のいずれを選択すべきかを検討中だ。
ペンタゴンはマクダネル・ダグラス/ジェネラル・ダイナミクスのA-12アヴェンジャーII事案からの教訓を得ていると現在の調達トップ、フランク・ケンドール副長官は言う。同機は全天候艦載ステルス爆撃機として海軍、海兵隊向けに計画されたもので、費用超過と遅延を理由に1991年に計画が打ち切られた。
A-12は「ブラック」つまり極秘開発計画が失敗した例だとケンドールは見る。ペンタゴンが「事業段取りで失敗」したためだという。契約受注2社は開発を目的にチームを組み、製造契約であらためて競争するはずだった。同時に両社とも最先端機に必要な技術開発に懸命だった。
A-12の失敗で固定価格開発契約方式が封じられたとケンドールは解説する。
そこでペンタゴンはLRS-BがA-12の轍を踏まないよう、成熟技術を多様することで新規開発の途を選択肢なかった。ただし、同事業は設計、テストの点では既存事業より先を言っている。空軍は両陣営による試作機を受領している。■

2015年9月3日木曜日

★米空軍>LRS-B設計2案はすでにテスト実施済みで完成度高いと判明


まもなくと言われ続けてきたLRS-B受注企業の選定も本当にまもなくのようです。ここにきて空軍から意図的に次期爆撃機の情報が開示されてきました。すべて真実であればLRS-Bの開発課程はこれまでと相当違うようで、しかも両案とも完成度が高いので選択はむずかしそうですね。一方で新型機の開発調達で相当の失敗が続いていますので、今回の案件が成功すれば、空軍も自信をつけるでしょうね。ゲイツ元長官の置き土産としても高く評価されるのではないでしょうか。

LRS-B Details Emerge: Major Testing, Risk Reduction Complete

By Aaron Mehta11:26 a.m. EDT September 2, 2015

635570048174454101-AIR-BTN-New-bomber(Photo: Northrop Grumman)
WASHINGTON — 米空軍向け次期爆撃機で採用を狙う設計二案はすでに空軍が相当のテストを行っており、これまで理解されていたよりも完成度が高いことがわかった。ペンタゴンが契約の交付前にここまで行うのは異例だ。
各設計案にはかなり高度なステルス性能があり、B-2から相当の改善となっており、核兵器運用の認証は将来取得し、任意で有人操縦となる。
長距離打撃爆撃機(LRS-B)は空軍にとって三大調達案件の最上位とされ、これまで秘密のベールに覆われてきた。空軍は二案から選択を迫られる。ノースロップ・グラマン案とボーイング=ロッキード・マーティン共同案だ。契約交付はまもなくと見られ、9月中だろう。
9月1日に空軍は外部関係者を招いた会合を開催し、新情報を開示している。同会合について詳しい関係者2名から空軍が設計二案をかなりの範囲でテストずみであることがわかってきた。
そのうちひとつの筋から空軍関係者が両案とも「非常に完成度が高い」と述べ、風洞テストや生存性テストを実施し全角度から設計案の評価が進んでいると明らかにしたとのこと。ただし両案で実機飛行は行っていないと両方の筋が述べた。
要求性能は2013年5月に最終版とされたと同上筋は言う。そのあとで二社の設計チームは開発テストを開始し、空軍はリスク低減策に注力している。
二人目の筋は空軍のブリーフィング担当者が二社の設計案は大きく異なり、エンジン、電子戦装備、通信システムなどのサブシステムでも類似性はないと発言していたという。サブシステムの契約企業名は発注先が決まっても公表されないと二人目の筋は見ている。
「EMD(技術製造開発段階)以前でここまで完成度の高い事案はなかった」と一人目の筋は言う。「これまでと全く違う。すでに数年間をテストに使っている」
一人目の筋は空軍関係者からリスク軽減策が「アクセスパネルまで全てに対して」実施されたとの発言があったという。
「リスク軽減が実施されている。設計案は技術的に完成度が高い」と空軍関係者が発言している。また「航空機製造でここまで完成度が高い例は見たことがない」とも述べているという。
調達プロセス初期でここまでのテストを実施するのは異例で、その理由として事業が迅速戦力整備室Rapid Capabilities Office (RCO)の担当であるためであるという。同室は空軍調達部内でX-37B宇宙機など極秘事業を担当している。
その名称どおり、RCOは空軍の通常の調達手順と異なる形で業務を進める部署で技術調達で裁量を与えられている。同室に事業を任せる決定は2011年に当時のロバート・ゲイツ国防長官が下したもので、開発中止になった次世代爆撃機事業の問題点を分析した結果だ。
RCOが関与したことでこれまで空軍が長く主張してきた次期爆撃機には既存技術を流用するとの説明が微妙になる。一部観測筋は空軍が既存民生技術を使って機体価格を抑えると見ているが、RCOには一般人が聞いたこともない技術を自由に扱える権限がある。
「EMDで想定するより三年先を行っています」と一人目の筋は解説する。「EMDにもっていくために通常より高い技術の完成度を求め、その代償を提供することにしたのです。これがRCO方式ですね」
空軍の説明者からは発注先選定の時期、選定方法では詳細説明はなかった。ただし、同機開発の今後を示す情報を開示している。
  • 契約は二部構成でEMD契約では実費プラス奨励金方式となり、低率初期生産段階の5ロット分は固定価格で奨励金はなしで21機を生産する。
  • 契約交付とともに空軍は開発コストの詳細を共有する。運用コスト維持コストの試算はマイルストーンC後に出る。
  • The bomber design will have a robust electronic attack element on board
  • 爆撃機には強力な電子攻撃装備が搭載される。
  • 核攻撃運用の認定は最初はないが、その後核攻撃用ソフトウェアとハードウェアを1号機用に製造する。認証手続には生産機材5機を同一仕様としソフトウェアが必要なので、十分な機数が製造されテスト業務に割り振る事が可能となってから始まる。
  • 構想では任意有人操縦となっているが、初飛行は有人操縦で行い、初期生産機体に無人操縦装置を組み込むのか、後日追加するのかは不明。一人目の筋は無人操縦設定は「当面の優先課題」ではないという。
  • 空軍はオープンアーキテクチャ方式の採用にこだわっており、将来の性能向上を安価に行う事を狙う
双方の筋は空軍関係者がB-2と比べ相当のステルス性があるとしており、B-2設計当時は入手不能だった生産素材画素の背景にあるという。
機体寸法については空軍説明者はあきらかに口にしたくなかったようだ。ただしUCLASSでは小さすぎ、B-2では大きすぎると明確に示している。
「発言と身のしぐさからB-2より小さいとわかる」と一人目の筋は言う。「機体の大きさはエンジン技術に左右されているようだ」
2番目の筋もこれに同意見だが、小型機だからといって航続距離が短くなるとは限らないという。ただし空軍がペイロードを航続距離のため犠牲にすれば。空軍の説明者はペイロード総重量の関係よりも同機が多様な兵器を搭載できる事のほうが重要だとしている。
三番目の筋は同上会合には参加していないが、同機に詳しく、設計案はB-2と比較すると「ペイロードは2割減、航続距離も2割減」だろうとする。同筋はどちらの企業が受注するにせよ、形状は全翼機形状でボーイング、ノースロップがそれぞれ作成したUCLASS設計案に類似しているとする。
総合すると各筋で一致するのは会合で参加者は米空軍は今回の爆撃機開発を予想をくつがえすほど巧妙に運営していることがわかったという。議会がすでに同機事業になみなみならぬ関心を示しているのでこの点は重要だ。
「空軍は実力を発揮してやろうと決意しており、実際にそれに成功していると見る」と二人目の筋は言う。「うまく運営されていると思う。コスト問題を深く意識し、むしろそれを真正面からとりあげようとしている」■



2015年7月23日木曜日

★LRS-B>受注企業の発表は9月に



いよいよということでしょうか。米空軍もかなり慎重になっているようですので、結果に期待しましょう。ただし敗れた側が承服できないと異議申立てをしてさらに混迷する事態にならないといいですね。B-2は結局史上最高額の爆撃機になると思いますが、現在空軍が想定している単価約680億円が現実劇なのか、既存技術も応用するから可能と空軍は言っているようですが、KC-46のように上限額を設定して超過分はメーカー負担という都合のよい話は今回は無理なのではないかと思えます。(輸出の可能性がなく、投資の回収が不可能)

Air Force Plans Bomber Contract for September

by KRIS OSBOR N on JULY 22, 2015

http://defensetech.org/2015/07/22/air-force-plans-bomber-contract-for-september/
米空軍は次期ステルス長距離爆撃機の契約交付先を9月に発表するとMilitary.comへ伝えてきた。
  1. 選定結果の発表は今年夏初めの予定だった。LRS-B(長距離打撃爆撃機)はB-2の後継機種となる。
  2. 空軍高官はMilitary.comに選定結果を正しいものにすべく審査を慎重に行うことで、長期に及ぶ調達で予算・時間双方の節約効果を狙うと語っている。空軍は2020年台中頃の配備を目指す。
  3. 「最終段階にあると言って良い。今後50年間の供用する機体だ。迅速に生産に移すためにもここは慎重に行きたい」とウィリアム・ラプランテ William LaPlante 空軍次官(調達)が戦略国際研究所主催の会合で発言している。
  4. 空軍は最終的に同機を80ないし100機調達する予定で、単価を550百万ドルと想定している。
  5. この数年間で空軍は一部国防企業と極秘研究開発を進めている。これまで10億ドルが技術開発に投じられた。.
  6. ノースロップ・グラマンがボーイング=ロッキード・マーティン連合と一騎打ちの様相だ。今年のスーパーボウルでノースロップ・グラマンがCMを流し、自社の空軍向け爆撃機製造での実績をアピールしていた。
  7. LRS-Bの詳細仕様は未公表だが、まず無人機としてミッションに投入し、必要に応じ有人ミッションとするとの空軍上層部の発言がある。
  8. 新型機は全世界に飛行可能とし、長距離兵器各種を運用する想定で、核・非核兵器を搭載する他、今後の新型兵装にも対応する。
  9. また防空技術の進歩でステルス機が高速プロセッサーやセンサーの高性能化の前で探知されやすくなってきた現実にも対応する技術が開発中。■


2015年7月11日土曜日

★LRS-B>選定決定は秋ごろに延期、次期JSTARS機も選定に向かう



LRS-Bの契約選定が遅れるのは結果の重大性を考えると米空軍が相当に逡巡していることの証拠です。LRS-Bは既存技術を多用したかなり「常識的」な機体になりそうですが、受注に失敗した企業にとっては辛い結果になると言われてきましたが、実態はそうでもなさそうですね。注目したいのは下にさり気なく挿入されたJSTARSの次期機体の話題です。技術の進歩でかなりダウンサイズした期待になりそうですね。

Air Force: Next-gen bomber award could slip into fall

By Brian Everstine, Staff writer3:01 p.m. EDT July 9, 2015

米空軍は新型長距離打撃爆撃機(LRS-B)の契約交付を先送りし、三ヶ月程度遅らせると発表した。
  1. 空軍次官(調達)ビル・ラプランテBill LaPlanteによれば公表時期は「でき次第」だとし、拙速より正しい結果を重視するという。導入機材は50年間の供用の予定で、発表時期を急ぐ必要はないとの考えだ。
  2. ラプランテは「正しい結果を得るべく、正しい時期に正しい方法で始めるのが肝要だ」と戦略国際研究センター(ワシントンDC)で7月9日に語った。
  3. ラプランテ発言の前に空軍長官デボラ・リー・ジェイムズがロイター通信に契約交付は9月になりそうだと伝えている。
  4. 契約獲得をめぐり争う二社は結果如何で大きな影響を受けそうだ。B-2で実績があるノースロップ・グラマンロッキード・マーティンボーイング共同事業体だ。
  5. B-52後継機として空軍は80機ないし100機の導入を希望し、導入開始を2020年、機体単価を500百万ドル、事業規模は総額800億ドルと見込んでいる。
  6. この事業は議会の批判の的となっており、下院による2016年度国防予算認可法案では460百万ドル減額されたが、実際の開発研究予算は非公開あるいは「闇の」予算に盛り込まれている。
  7. 空軍は新型爆撃機について口を閉ざしており、ステルス性以外に核・非核運用、任意で有人操縦とする、とだけわかっている。
  8. また空軍は共用監視目標捕捉攻撃レーダーシステム(JSTARS)の次期機種に関し第一選定で三社程度に絞り込む意向だ。空軍は最終的に一社に契約交付し、実機の生産を開始させるとラプランテは説明した。
  9. 米空軍は現在JSTARS18機を運用しており、各機は長距離レーダーで地上車両の探知、捕捉ができる。機体は旧式になったボーイング707-300で、ボーイングはすでに同機の生産を終了して久しく、代替機を探すのは困難かつ高価格になっている。
  10. ロッキード・マーティン、レイセオンボンバルディアは共同で長距離ボンバルディアビジネスジェットを基にした案を提案している。ノースロップ・グラマンはガルフストリームL-3の各社と組んでガルフストリームG550の改修案を発表済み。ボーイングは737で参入を図る。■


2015年5月3日日曜日

★LRS-B事業に適格なのはどちら? 米空軍の選定を前にふたつの主張



LRS-Bは先日のCBSA報告(「米空軍の主力機が大型機に統一される日が来る?」)が次世代の主力戦闘用航空機になるとみる重要な機種ですが、依然として秘密のベールの中で空軍は選定の作業を進めている模様です。以下ご紹介の応援文はそれぞれバイアスが露骨で笑えますが、事実がそれぞれ盛り込まれているのも事実です。であれば三社連合で最良のLRS-Bを実現すればいいのではないかと思えますが、選定は真剣にやってもらわないといけません。選定結果いかんで業界を去る企業が出そうというのがこれまでなかった事態ですが、さぞかし空軍関係者も胃が痛いのではないでしょうか。

Differing Views On Who Will Build The Long-Range Strike Bomber

May 1, 2015 Rupa Haria | AviationWeek.com


米空軍はステルス次期爆撃機長距離打撃爆撃機(LRS-B)の開発生産で主契約企業を今年中に選定する。ボーイングはロッキード・マーティンと組みB-2で実績を有するノースロップ・グラマンに対抗するが、勝者はどちらになるだろうか。
Aviation Week & Space Technologyはその行方を占う二つの見方を紹介する。まずローレン・トンプソン(レキシントン研究所最高業務責任理事)はボーイングとロッキード・マーティンが空軍の爆撃機・攻撃機の95%を提供している事実から両社連合が最良の選択だと主張。一方、ロバート・ハッファ(前ノースロップ・グラマン解析センター長)は空軍の要求水準からみてノースロップ・グラマンが圧倒的に有利な立場だという。

Opinion: The Boeing-Lockheed Team Is The Most Qualified

Apr 30, 2015 Loren Thompson | Aviation Week & Space Technology
米空軍は長距離打撃爆撃機の要求性能で事実上何も公表していないが、契約獲得を目指す二大勢力もともに提案内容について沈黙を保っている。外部からどちらの内容が優れているのか知る由もないが、どちらが有利なのかの評価は可能だ。
では選定の任に当たる関係者だとして、爆撃機の設計ではなく爆撃機開発チームを選ぶとして考えてみよう。選択はボーイングが主導し、ロッキード・マーティンが加わる連合とノースロップ・グラマンが率いる事業体の一騎打ちだ。これまでの実績、現在の技術水準、財務能力や業績からどちらが的確だといえるだろうか。
経験値が違う .
過去三十年間でボーイングとロッキード・マーティンは空軍向け爆撃機・攻撃機の95%を提供している。例としてF-15,F-16,F-22やF-35があり、B-1爆撃機もここに加わる。両社の納入実績は1980年以降で3,000機に上る。現在も両社は固定翼機で最大の納入実績を維持しており、2014年だけで戦闘機、輸送機、偵察機を計300機以上納入している。
対照的にノースロップ・グラマンの実績は小規模だ。この数年で同社は年間10機程度の固定翼機を納入しており、ターボプロップ機とグローバルホーク無人機(UAS)が中心だ。同社の軍事用途需要での役割はボーイングまたはロッキード・マーティン向け機体の一次組み立てが中心だ。
現在の実施能力では
ボーイングはセントルイスに戦闘機製造ラインを運営し、大型軍用機はP-8Aポセイドンのようにシアトル周辺で製造している。同社はあわせて民間商用機で世界最大規模のメーカーでもある。ロッキード・マーティンは第五世代戦闘機の量産ラインを有する唯一のメーカーである。同社のフォートワース工場は三軍向けF-35戦闘機を生産中で、その背景にはボーイングがロッキードと共同で作ったF-22の経験がある。
現状で多くの事業を展開していることで、ボーイング、ロッキード両社には技術陣多数があり、世界規模のサプライチェーンと整備ネットワークもある。ロッキード・マーティンは業界唯一の低視認性機材生産能力があり、業界の中でもソフトウェア応用技術は群を抜いている。ボーイングには複合材を使った大型機の生産では業界一の技術を有している。
ノースロップ・グラマンには以上のどれもない。パームデール工場(カリフォーニア)はUAS製造や既存機の改修にあたり、一次組み立て構造品を出荷している。同社は完成機を大量に生産していないので、サプライチェーンやコスト管理でも業界他社よりも見劣りがする。またリスク管理でも不足が目立つ。ロッキードはスカンクワークスでこの点一歩先を行っている。      
財務力はどうか
ボーイング、ロッキード・マーティンの2014年売り上げ総額は1,360億ドル。ノースロップ・グラマンは240億ドルで4年連続の減収。これだけ規模が離れるとボーイング=ロッキード・マーティンのほうが空軍の計画変更への対応に圧倒的に有利だ。空中給油機事業では空軍の度重なる要求変更にボーイングはKC-46で対応したが、ノースロップ・グラマンは撤退している。その理由は利益確保が難しいためとしていた。
実績の違い
ノースロップ・グラマンはB-2爆撃機生産の実績を強調するが、実は同機は大量の既成技術を使っており、その維持管理が大変である事実は無視している。(飛行4時間ごとにステルス性維持のため18時間の作業が必要) またB-2生産ではボーイングが最大規模の事業量を提供したことにも言及していない。ボーイングは1万人を雇用し、同機の主翼、機体後部、こう着装置、燃料系統、兵装運用部分を製造した。ボーイングはその後ロッキード・マーティンと組み第五世代戦闘機第一弾F-22を製造している。
長距離打撃爆撃機はB-2をすべての点で凌駕する性能となるだろう。要求性能の実現には成熟技術を中心に対応し、ボーイングやロッキード・マーティンには他機種の製造工程から開発製造段階に流用できる基盤がすでにある。これに対してノースロップ・グラマンはF-35のような本格ステルス機のソフトウェアを自社開発しておらず、大型機の複合材利用でも製造上のノウハウがなく各方面で相当の遅れを取り戻す必要がある。
こうしてみると結論は明らかだ。が新型爆撃機の製造で的確なのはボーイング=ロッキード・マーティンでノースロップ・グラマンの選定した場合はリスクがはるかに高くなる。
ローレン・トンプソンはレキシントン研究所の最高業務責任者である。同研究所はボーイングとロッキード・マーティンから運営費用を受け取っている。


Opinion: Stealth And Integration Experience Point To Northrop Grumman LRS-B Advantage

Apr 30, 2015 Robert Haffa | Aviation Week & Space Technology
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ステルス長距離打撃爆撃機(LRS-B)の主契約企業の米空軍による選定時期が近づいている。同機は時と場所を問わず我が国の軍事力の行使を確実にするため必須の装備だ。表面だけ見て専門家はボーイングとロッキード・マーティンの連合とノースロップ・グラマンの一騎打ちと表現しているが、空軍の要求内容を詳しく見つつ各チームの能力水準を見れば、ノースロップ・グラマンがLRS-B製造に圧倒的に有利であることがわかる。以下説明する。
真剣に専念できるのはどちらか.
F-35やKC-46給油機の調達で不手際があったことで空軍は新型爆撃機では終始一貫して集中配慮し、必要な資材を投入する責任ある対応ができる業者の選定を求めている。しかるにボーイング/ロッキード・マーティンは空軍の他機種事業で手がいっぱいだ。ボーイングは給油機案件で予想外の負担を迫られており、ロッキード・マーティンはF-35で大きく遅れを発生させておきながら性能は想定以下だ。そうなると両社にとってLRS-Bの優先順位は低くなり、量産段階に入るKC-46とF-35のほうが利益を出しているはずだ。
実績が裏付ける。空軍がF-22の追加調達を求めたところ、F-35の売り上げ減を恐れたロッキード・マーティンはF-22推進の立場を急にひっこめている。同様にLRS-BのためにロッキードがF-35を断念したり、ボーイングがKC-46生産ペースを落とすことはありえない。むしろLRS-Bをトラブル続く事業のしりぬぐいにするのではないか。これに対しノースロップ・グラマンはLRS-Bに専念し、納期予算どおりの納入が可能な体制になっている。
関連した経験則が必要だ.
空軍の調達責任者は議会に対して新型爆撃機の機体単価は2010年の貨幣価値で550百万ドル上限のままの想定と証言しており、提案競争でも据え置きとなるだろう。ノースロップ・グラマンはステルス長距離爆撃機で開発、製造、維持の経験を有する唯一の企業である。B-2では機体維持費用の削減を実現している。維持費用はウェポンシステムとしてのライフサイクルコストの8割を占めるほどだが、B-2では同程度の大きさの空軍他機種より安くなっている。反対にボーイングとロッキード・マーティンはそれぞれ大型民間機や戦闘機生産の実績を強調しているが、高性能爆撃機を製造し維持することは複雑な作業であり、一貫して責任ある体制と技術力が必要とされる。そこで実績が重要となる。B-2の生産は民間機を給油機に改造するよりはるかに複雑な工程だが、それでもボーイングはKC-46の納入に10年以上かけているがまだ実現できていない。
ステルス関連サブシステムの実績があるのはどちらか
空軍の考えるステルスとは技術と戦術の組み合わせに、サブシステム各種を加えて低視認性を実現するものだ。ノースロップはステルス用のサブシステム多数で信頼の実績がある。ロッキードもF-22およびF-35のステルスレーダーでノースロップを頼りにしたほどで、ステルス通信リンクでも同様で、F-35では別に通信航法システム、赤外線センサー、ステルス空気取り入れ口含む機体中央部もノースロップが供給している。国防総省はLRS-B無人機型も推進するが、ノースロップ・グラマンの無人機空軍向けグローバルホークや海軍向けX-47Bでの経験が有利な要素だ。
ノースロップ・グラマンが有利な理由
空軍はLRS-Bの就役を時間内予算内に実現できる契約企業を求めている。ボーイングとロッキードが連合したのは単独ではこれが実現できないからだ。ボーイングにはステルスの実績がなく、ロッキードはF-35で大幅な遅延を招いている。
全方位ステルス性能では設計がすべてだが、ボーイングが主契約企業になってどのように協力企業の設計を承認するつもりなのか。ステルス戦闘機で設計実績のあるロッキードが経験値をわざわざ提供して自らの優位性を譲ったうえで「第六世代」戦闘機競争でボーイングを有利にするはずがない。
ステルス爆撃機製造の経験が欠如していること、ボーイング/ロッキード共同事業の経営リスクならびに両社が空軍の他機種事業に経営資源を投入せざるを得ないことから両社に次世代の長距離打撃爆撃機製造を任せるのは賢明な選択とはいいがたい。ノースロップ・グラマンなら経験、実績、専念の上経済的に新型ステルス爆撃機を開発・製造・配備・維持できる事業をまとめることが可能だ。そのため同社が受注に成功するのは明らかだ。
ロバート・ハッファは退役米空軍大佐でノースロップ・グラマン解析センター長を務めた。