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★★LRS-B>これがノースロップ・グラマンの勝因だ



一日経つと予想が大きく外れノースロップ・グラマンが受注決定業者になていました。以下その勝因の分析です。

LRS-B: Why Northrop Grumman Won Next U.S. Bomber

Oct 27, 2015Bill Sweetman | Aviation Week & Space Technology
ノースロップ・グラマンが長距離打撃爆撃機(LRS-B)の受注企業に決まり、年商で合わせて6倍の規模を有する競争相手チームを打ち負かす結果になった。
  1. 米空軍は10月27日に選定結果を発表し、ノースロップ・グラマンがボーイング/ロッキード・マーティンを破り新型爆撃機100機の生産を担当する。初期作戦能力の獲得は2020年代中頃が目標だ。ペンタゴンによると次は技術製造開発(EMD)段階で2010年価格で214億ドル設定でテスト機材(機数不詳)を生産する。
  2. これと別に190億ドルがリスク低減策に支出ずみで両陣営は初期設計を完了していた。2016年価格でのEMD経費見積もりは235億ドルとペンタゴンが発表。なお、2016年価格で換算するとB-2の開発には372億ドルかかっている。
  3. 空軍はノースロップ・グラマンの新型爆撃機(正式名称は未定)の調達単価は2010年価格で100機購入を前提で511百万ドルとしている。ペンタゴンも二種類の試算をおこない、550百万ドル(2010年価格)という目標水準を下回る見込みを確認した。この目標は2011年に当時のロバート・ゲイツ国防長官が承認した。
  4. ノースロップ・グラマンの受注契約では固定価格制かつ報奨金を最初の低率初期生産5ロット分に認めている。初期生産機材は総平均機体価格を上回るはずだがその価格は公表されていない。生産が順調に進めば、800億ドルの事業規模になる。LRS-Bの運用開始は2020年代中頃の予定だ。ただし正確な予定は初期作戦能力の設定水準に左右され、今後空軍のグローバル打撃軍団が詳細を決定する。
  5. 事業規模が大きいため、業界ではかねてから敗れた側が結果に不服を訴えるのではないかと見ていた。ボーイングには前例がある。2008年に給油機選定がノースロップ・EADS陣営に流れたことに抗議し、結果として同社が二回目の選定で採択されている。ボーイングとロッキード・マーティンは共同声明で両社が「本日の発表内容に落胆し、選定がどのように行われたのかぜひ知りたい」と表明している。空軍は選定で敗れた側には30日に説明するとしているが、不服申し立ては100日間可能だ。
  6. 一方、ノースロップ・グラマンの社長、会長兼CEOウェス・ブッシュは「空軍は正しい判断で我が国の安全保障を確保した」と表明した。「重大事業を執行する資源は確保済み」.
  7. ただ現時点でノースロップ・グラマン側に参加する企業名は秘匿されており、エンジン調達先も不明だが、空軍によれば重要構成部分の供給先はすべて確保済みだという。業界アナリスト陣によれば機体はB-2の小型版という姿になり、主翼胴体一体型で双発で空中給油なしで2,500カイリの飛行半径だというが、詳細は確認できていない。
  8. 選定手順の詳細は秘匿情報扱いのままだが、ノースロップ・グラマンの広帯域全面ステルス技術がB-2で実証されていること、またこれも極秘のRQ-180情報収集監視偵察(ISR)用無人機の実績が高評価された可能性が大だ。
  9. 選定の決め手はステルス性、航続距離での差であろう。LRS-Bではリスク低減、オープンアーキテクチャア、機動性の高い管理生産技術が求められている。
  10. LRS-B競合は以下の三点で独特であった。まず要求内容は取り消しされた次世代爆撃機(NGB)事業から継承している。当初の目標水準を引き下げる一方、作業工程を伸ばし、機体単価を中核性能内容(KPP)に設定した。
  11. 二番目に実証機に予算を回さずにペンタゴンは双方の事業者に初期設計の審査(PDR)を行わせている。これはおそらく2013年から2年間を費やしている。
  12. 三番目にLRS-Bの事業統括を空軍内の迅速戦力開発室(RCO)に任せたことがだ。空軍調達担当のウィリアム・ラプランテ次官は目を見張る性能を実現してきた実績があり、しかも単なる実験機ではなく本生産につながっている」とRCOを評価している。.
  13. 注目すべきはラプランテがRCO内にできたLRS-B事業担当部門はロッキードF-117ステルス機を35年前に開発したのと同様のチームになっていると発言している点だ。RCOの業績として公認ずみなのはボーイングX-37B宇宙機案件しかないが、2012年にRCOが公表した室次長の要件として「相当の経験を...低視認性技術、低視認性機体対抗技術および電子戦に有するもの」と想定していることからどんな技術を重視しているのかが伺われる。F-117と同様にLRS-Bは目標水準の実現のため成熟したサブシステムを新設計機体に搭載する構想であろう。
  14. ただしラプランテはさらにつづけており、RCOチームはペンタゴン、議会、会計検査院の監督を受け、内部にはレッドチーム、ブルーチームで考えられる脅威に対抗できるか検証したという。.
  15. LRS-Bの設定平均調達単価は550百万ドル(2010年価格、100機生産前提)でこれがKPPになった。
  16. LRS-Bで採用される中核技術は非公開だが成熟している。「風洞テストを受けているほか、試作型を作成し、実際に飛行しているものもあり中にはすでに実用化されているものがある」とラプランテは10月21日に語っている。
  17. ただし、ラプランテは遅延や費用超過が今後発生しないとは見ていない。「技術の統合には必ずリスクが有り、工程表には適度な余裕を入れ込んで一部の遅延をカバーする構造になっているが」
  18. LRS-Bは容易に性能改修ができる構造で、「現時点では想像さえできない将来の装備を搭載する場所と重量を設定している」(ラプランテ)は言う。オープン・アーキテクチャアで新型サブシステムを調達できることで「たえず性能を高く維持し、統合を期待できる」(ラプランテ) 低視認性を維持するコストとともに性能改修がライフサイクルコストの相当部分に想定されており、調達コストより相当大きくなるはずだ。
  19. もうひとつLRS-Bがこれまでの事業と異なるのは生産ペースだ。想定は「予算獲得可能な範囲でF-35のような急増想定はしていない」とラプランテは言う。「弾力的に設定している」とし、実現可能な年間予算配分を前提としている。「年間7機から8機というところか」(ラプランテ) この数は他の軍用機より相当少ないが、逆に生産ラインは2040年頃まで稼働することになる。爆撃機推進派にはLRS-Bの配備が始まり、アジア太平洋作戦が引き続き重要であれば、100機では足りないと見る向きがある。
  20. ノースロップ・グラマンはボーイング、ロッキード・マーティン、レイセオン陣営の合計年間売上1,600億ドルと比較すると6分の一未満の規模しかない。ボーイングとロッキード・マーティンは2007年時点でNGB事業で連携をしていた。LRS-Bで仕切りなおし再びチームを組み、レイセオンを加えた。ロッキード、ボーイングはそれぞれ米軍の主要機材をほぼ全数供給している。
  21. 一方で選定のルールも変更されている。ラプランテは10月21日の記者会見で価格試算を独立して行うことを重視している。これはペンタゴン内部にある費用試算事業効率評価(CAPE)部門の仕事で2009年のウェポンシステムズ超厚改革法により生まれた組織だ。「すべての事業に費用試算を独立部門が行い、その結果で予算を配分する」とラプランテは言う。また試算も一本ではない。事業推進室からCAPE試算担当者へ今回の事業内容を最初から説明している。.
  22. 開発コストとして現在引用されているのは独立部門による費用試算結果であり、受注企業あるいは事業推進部門による試算結果ではない。目標とするのは低価格入札をしにくくすることだ。
  23. ボーイング、ロッキード・マーティンは競合相手を価格で勝とうとしただけではなく、政府資金による実証機材(次世代長距離打撃機材実証機、NGLRS-D)製作をNGB時代の早期からはじめていた。ボーイングのファントムワークスが低視認性機体の開発を先導し、ロッキード・マーティンのスカンクワークスが機体を生産している。
  24. ステルスだけでなく、ファントムワークスは新生産技術の応用でも先陣を切っている。これはボーイングが全社的に導入を図るブラック・ダイヤモンド技術としてLRS-B選定でも有力な要素になると見られていた。
  25. ロッキード・マーティンは自社のステルス技術での知見を応用してきた。だがF-22では機体構造が窮屈なため性能改修が成約を受けて、変更が必要となると都度その他の技術に影響が出ないことを確認する必要があった。このためLRS-Bではオープン・アーキテクチャーの採用でこの再発を回避しようとした。.
  26. ノースロップ・グラマンもNGLRS-Dで採用された技術の一部を共有していた可能性があるが、最大の要素は同社がRQ-180で実用化した技術内容だろう。業界筋によれば同機は高度にステルス性を有した高高度飛行UAVとして機体設計が飛躍的な進歩を示しており、推進系でも空力的に洗練され、流体力学計算(CFD)や電磁気学計算(CEM)の進展による効果が大といわれる。.
  27. B-2はで高いステルス性を実現したが、機体設計ではステルスと空力特性の両立で困難を極めた。また機体中央部と主翼の設計は複雑で三次元風流、ショックのパターンから当時のコンピュータモデリングとテストの最先端結果を応用している。同機は燃料消費効率が優秀で給油なしで6,000カイリを飛行半径としているが、実はB-52と同様の効率しかない。
  28. これとは対照的に2000年に入ったばかりのノースロップ・グラマンの設計案は「グライダー並み」の飛行効率を有していたという。RQ-180はLRS-Bよりはるかに軽量のはずだが、翼巾はほぼ同じで設計段階でCFDおよびCEMが大幅導入されていることを伺わせる。また新型レーダー吸収剤や塗装も採用されている。このUAVから新規のステルス技術の知見が展開されるはずで、ノースロップ・グラマンはLRS-Bの運用コストの試算根拠としても使うはずだ。
  29. ロッキード・マーティンのRQ-170もRCOによる事業統括の成果だと広く信じられており、今回LRS-Bに参画した大手3社はすべてRCOとの接点があるが、なかでもRQ-180での知見が一番大きな意味があると見られる。
  30. B-2は高コストで知られるが、ノースロップ・グラマンによれば逆に同機の経験がプラスに働くという。同機の飛行時間あたりコストがその他大型機材で少数機を運用する際のコストと全く異なる構造で、通常機材であれば固定費用が中心で保守管理コストはゆっくりと上昇するという。現在運用中のB-2各機は各9年で丸まる一年間の保守管理施設入をする。また新素材の採用でB-2の探知特性は大幅に改善しているという。
  31. ノースロップ・グラマンはコストを抑えるため大胆な策に出てきた。プロジェクト・マジェランの社内コードでメルボーン(フロリダ州)に有人機の研究拠点を設置した。これまで研究拠点をロサンジェルス・パサデナ地区、セントルイス、フォート・ワースの三地点に分散してきた流れに逆行する。メルボーンでは新規建屋が完成しているが、さらに追加建設し、2019年までに1,500名規模の施設となる。■


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