スキップしてメイン コンテンツに移動

★★C-17後の軍用輸送機の展望はこうだ






なるほどC-17がなくなるとA400M以外に選択肢がなくなるわけですね。そうなるとわが方のC-2では開発遅れや機体強度不足による貨物搭載量の低下が恨めしいですね。もしC-2Bとでも言うべき強化改良型が生まれれば、今後30年に渡り生産が続けられるのではないでしょうか。米国としてもC-2の存在に注目しているのでは。

Opinion: After the C-17, A Tier Of Choices

Oct 5, 2015 Richard Aboulafia | Aviation Week & Space Technology

数カ月するとボーイングはC-17輸送機の最終号機を納入する。同機事業で特筆すべきは同機が全く新しい需要を作り出し、戦略輸送機の輸出が実現したことだ。
  1. 英空軍(RAF)がC-17を四機受領したのは2001年だったが、それ以前に米国以外で西側製軍事輸送機を導入した国はあったがショート・ベルファーストが機体サイズの上限だった。例外的にソ連製輸送機を導入したインドやリビアがあったが「友好」価格での調達であり、大型輸送機といえば米空軍あるいはソ連軍だけが運用していた。それ以外の各国はC-130あるいは小型ターボプロップ機を使っていた。
  2. ただしRAFのC-17導入から二年たつとNATO加盟7カ国がエアバスA400Mを立ち上げた。C-17の貨物搭載量に及ばないが、戦略的な飛行距離を実現する。また日本も旧式C-1の後継機種としてずっと大型の川崎重工C-2の導入を決めた。C-2は来年から就役する予定で、日本は44機を調達する。同機はA400Mとほぼ同じサイズで同様に戦略級航続距離を有する。
  3. だが驚くべきことはRAF向けC-17販売に続き、ボーイングが47機を輸出したことだ。その背景には同社がC-17を訴求力のある価格で強力な顧客支援体制とともに提示したことがある。
  4. こうして軍用輸送機の市場が出現したことの意味は大きい。米、ロを除く輸送機市場の総需要はずっと年間10億ドル未満で受注の多くがロッキード・マーティンC-130Jで構成されていた。しかし、今年は60億ドル規模になり、納入機数も5年間確実に増えている。
  5. 2013年9月にボーイングは通算223号のC-17を米空軍向け最終号機として納入し、生産ラインは2015年で閉鎖すると発表している。その時点で22機の生産予定があり、うち13機は買い手がついていなかった。その後、この13機は1機除き購入先を確保した。直近ではカタールが当初の購入規模4機を倍増する発注をパリ航空ショー会場で表明した。
  6. C-17生産ライン閉鎖の決定はつらいものだっただろう。ひとつには市場が急拡大しており、同機でも受注追加が期待されていた。戦略級軍用輸送機の導入予定がある数か国のうち、サウジアラビアは10機ないし15機を買うと見られていた。一時はアルジェリアも同機を真剣に検討しているとの噂さえあった。.
  7. また現行ユーザーにも追加購入の兆候があった。8月にはインド空軍がC-17を3機追加導入すると述べたが、その時点で残った機体は一機だけだった。ただ米空軍や海外運用国の要求により、使用済み機体の再販売は認められない。つまり、ボーイングが仮に生産ラインを半年ほど維持しても数機しか売りさばけなかったのではないか。
  1. だがライン閉鎖を後押しした要因は他にもある。ボーイングはロングビーチ工場を閉鎖することができ、同地の資産価値は相当ある。またC-17最終号機はかつては航空業界の中心だったカリフォーニア州で生産される最後のジェット機にもなる。
  2. もう一つの問題はA400Mだ。エアバスは同機の海外営業に精を出しているが、お膝元の二国ドイツとスペインが運用中の26機を再販売しようとしている。販売価格は相当低くなるはずで、それだけボーイングの立場が困難になる。
  3. そもそもボーイングがライン閉鎖を決めた最大の理由は米国内でこれ以上の受注が望めないためだった。当初は米空軍の追加発注までのつなぎとして海外向けに販売し、C-17Bの提案までしていた。だが米空軍は220機のC-17と51機のエンジン換装C-5M体制を今後25年ないし30年維持するとしている。確かに海外販売は順調だが、ライン維持には規模が足りず、もっても1年ないし3年維持できるかどうかだった。
  4. C-17後の国際軍用輸送機市場は分化するだろう。戦術輸送機の候補としてエアバスC-295、アレニアC-27Jがある。戦域レベルの輸送機にはC-130Jならびにエンブラエルの新型KC-390があり、後者は2018年末に就役する。ただし戦略級輸送機を求める向きにはA400Mしかない。ただし、川崎重工がC-2輸出に踏み切れば話は変わる。
  5. もし戦争あるいは緊急事態が発生すれば、米空軍には戦略輸送能力の拡大が必要になるが、代替機開発の予算も時間的余裕もないので、A400Mを買わざるを得ないというバツの悪い立場に追いやられるかもしれない。■

コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ