エンジン換装して長く使うということは現行の機材を使い回す、ということですね。回転翼機でも長寿命の機体が生まれるのでしょうか。UH-60系は広範に使われている機体のため、採用されれば大きな潜在的需要が見込まれそうですね。
Battle To Reengine UH-60 Black Hawk, AH-64 Apache Begins
Does a 20,000-engine market await the winner of the U.S. Army’s ITEP contest?
Oct 7, 2015 Graham Warwick | Aviation Week & Space Technology
米陸軍向けの航空機用エンジン競作は直近が1985年でボーイング=シコルスキーRAH-66コマンチ用だったが、結局同機開発はうまく行かなかった。
- その前は1971年でジェネラル・エレクトリックT700が多用途戦術輸送航空機事業へ採用が決まり、同機はシコルスキーのUH-60ブラックホークになった。T700は高性能攻撃ヘリコプター事業でも採用が決まり、これはボーイングAH-64アパッチになった。
- 米陸軍は新たに主力エンジンの競作を開始した。これは改良型タービンエンジン開発事業(ITEP)として3,000-shp級のターボシャフトエンジンを開発するのが目標だ。ペンタゴン最大のエンジン開発事業となり、陸軍は2024年から合計6,215基を調達し、AH-64E,UH-60M,HH-60Mのエンジン換装を目論む。
- だが事業規模は遥かに大きくなるだろう。GEは11月に通算2万基目のエンジンを納入し、T700および民間向けCT7として25種類もの回転翼機、固定翼機に提供している。ITEPでも米空軍のHH-60Mや海軍のMH-60でもエンジン換装が実現するかもしれない。また他の機種でも可能性がある他、構想中の次世代垂直輸送回転翼機事業でも採用になるかもしれない。
- T700も今回のITEPが目論むのと同様の過程で生まれたが、遥かに短期間で実現している。GEとプラットアンドホイットニーが契約を1967年に交付され、1,500軸馬力級のエンジンの実証を行った。GE12が1969年に登場し、プラットのST9より優れ、ライカミングのPLT27にも1971年に勝利を収めている。そしてT700の登場が1973年で、ブラックホークは1974年に、アパッチは1975年にそれぞれ初飛行している。T700が実際に投入されたのは1979年だった。
- プラットはライカミングと組んで再度コマンチのエンジンとして採用を狙ったが、RAH-66は2004年に打ち切りとなり、エンジンはCTS800として現在も生産されている。
- この結果、プラット・アンド・ホイットニーは回転翼機市場から撤退し、カナダの関係会社を通じ例外的に供給しているだけだ。プラットはハネウェルと高性能タービンエンジン製造株式会社(ATEC)を通じ連携している。陸軍はGE単独入札は避けたく、他のメーカー参加を希望するが、ロールスロイスは参加の意向なく、フランスのチュルボメカは回答を避けている。.
- ITEPの準備段階の位置づけで陸軍の高性能経済価格タービンエンジン(AATE)事業としてGEとATECがともに2008年に契約交付を受け、3,000軸馬力級エンジンで出力は50%増、燃料消費はT700比で25%低いエンジン開発を進めている。このGE3000とATECのHPW3000地上実証エンジンは2013年に運転を行っており、AATEは2014年に終了している。
- 期間2年でITEP初期設計段階の提案要求が9月24日に発表された。契約交付は2016年9月予定で陸軍は初期設計審査用のエンジン2基分の予算を確保しており、その後一基に絞込みを2018年度に行ったあと、技術生産開発段階に移ると目論む。
- 初回エンジンテストは2021年予定で、初期低率生産が始まるのは2024年第3四半期となるが、エンジン換装したアパッチ、ブラックホークの初期作戦能力獲得は2027年以降になり、AATEが開始となってからほぼ20年後となる。
- T700開発・配備時のスピードとは対照的だが、ITEPで想定する技術課題のレベルが高いのが理由と陸軍は説明する。AATEでは出力とともに効率面でも目標達成が可能と証明する必要があったが、これを高い信頼性かつ予算内でしかもT700と同様の生産規模でできるのかはすでに実証済みであるとカート・キューテマイヤー中佐(陸軍ITEP主幹)は述べる。
- ITEPが目指す性能水準はAATEとは異なるが似ていると中佐は語る。RFPでは高度 6,000 ft.で最高出力1,850 shpとし華氏95度の昼間で空気密度が高い条件を想定すると目標は最低でも2,050 shpになる。乾燥重量の目標値は 465 lb未満で出力の目標値と異物分離器の採用も想定する。ITEPでは航続距離の延長、高温高高度性能、到達時間の短縮をUH-60およびAH-64で狙う。
- このため、遠心式圧縮機を2基備えた二重スプール方式で必要な性能を実現するとATECは見ている。GEはそこまで複雑ではなく、単スプール式エンジンとして、T700の軸方向遠心圧縮機方式とする。相当のレベルの競作となるとみられる中で、GEは圧縮機、セラミックマトリックス複合材料、タービン技術で陸軍の5,000-10,000-shp級低価格タービンエンジン用に制作した実証エンジンの経験をITEP提案内容で「関連する分だけ」応用するとしている。■
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