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2023年8月8日火曜日

C-2でスタンドオフミサイルを発射する構想は米空軍のラピッドドラゴンとの共通点が多い。日米の共通戦力整備につながるのではないか。

 


航空自衛隊


日本が輸送機で巡航ミサイル発射を実現しようとしており、新しいトレンドが始まりそうだ

本は長距離攻撃の選択肢を広げるべく、川崎C-2輸送機に空中発射スタンドオフ・ミサイルの搭載を検討している。実行に移せば、既存の輸送機隊にスタンドオフ攻撃オプションを追加する実験中の米軍に加わることになる。

アメリカの構想はラピッド・ドラゴンとして知ら、戦闘機、特に爆撃機を新規に獲得・配備せず、同じ能力を迅速かつコスト効率よく高めるのがねらいだ。

昨日のジャパンタイムズによると、防衛省はC-2に「長距離ミサイル」を搭載する可能性を検討しており、それは「反撃作戦でミサイル発射場などの敵基地を攻撃する」ために使われるとある。

ジャパンタイムズによれば、C-2が将来発射するミサイルの種類は明らかにされていないが、同じ情報筋は、ミサイルがエンジンがパワーアップする前に、まず飛行中に投下される発射プロセスを説明したという。この記事はまた、日本が検討しているコンセプトは 「航空機に大きな改造を必要としない」もので、「アメリカは関連技術を開発している」と説明している。

これらは、米国が開発したラピッド・ドラゴンの空中発射パレット式弾薬のコンセプトか、それによく似たものを日本が検討していることを示唆している。ラピッド・ドラゴンは、モジュール式のフレームに複数の弾薬を搭載し、大きな後部タラップを持つ貨物機にパレット状に積み込む。

ラピッド・ドラゴンはまた、コンピュータ化された照準システムも搭載しており、機外からの情報をミサイルに送り込む。このコンセプトは、拡張可能でプラットフォームにとらわれない設計で、米空軍は現在、C-17グローブマスターIIIとC-130ハーキュリーズを使用して複数回テストを行っている。

2023年度予算の一部として、防衛省はこのコンセプトを検討するために2500万ドル強を確保しており、2024年度まで技術研究を続ける。成功すれば、本格開発が行われる。

ジャパンタイムズは、C-2が搭載できるミサイルは既製品で、有力候補に米国製のAGM-158統合空対地スタンドオフ・ミサイル(JASSM)巡航ミサイル・ファミリーがあると指摘している。日本はすでにF-15イーグル戦闘機用にJASSMを調達しており、同様にスタンドオフ精密攻撃能力の導入を含むアップグレードが行われている。

もう一つの選択肢は国産ミサイルで、おそらく12式対艦ミサイルの改良型だろう。このミサイルは当初、トラック搭載型として実戦配備されたが、現在、空中発射に対応する長距離で高度な改良型の開発が進められている。新型ミサイルの射程は、トラック搭載型ミサイルの約120マイルに対し約620マイルと、はるかに長くなる見込みだ。また、探知や撃破をより困難にするため、ステルス機能も組み込まれる。しかし、空中発射ミサイルが使用可能になるのは2028年度の見込みで、短期的にはJASSMの方が現実的かもしれない。

日本はF-35の兵装庫から発射できるよう小型化された、高い能力を持つ地上・陸上攻撃兵器である統合打撃ミサイルも入手しようとしており、これも候補の一つだ。

スタンドオフ・ミサイルの発射プラットフォームとして、C-2は戦闘機や川崎P-1のような海上哨戒機よりもはるかに大きな搭載能力を提供する。また、戦闘機より長い時間滞空ができ、空中給油を必要とせず遠くまで飛ぶことができる。

欠点は、航空自衛隊(JASDF)に実際に配備されているC-2の機数が比較的少ないことである。現在供用中の機体は約13機のみで、さらに数機が保管されているか試験運用に使用されており、1機はRC-2として電子情報(ELINT)収集に転用されている。

追加調達の妨げは、C-2のコストが非常に高いことだ。開発努力に約23億ドルが投じられ、2017年現在、各機体の価格は約1億7600万ドルである。このため日本は同型機を遅いペースで購入しており、最新の防衛白書は16機の配備を目指しているに過ぎない

とはいえ、日本の防衛力整備計画では、スタンドオフ攻撃能力を強化する方法として「発射プラットフォームの多様化」を特に求めており、少なくともC-2を潜在的な「軍需トラック」として見ることは大いに意味がある。

航空自衛隊のC-2フリートにラピッド・ドラゴンのようなソリューションがあれば、あるいはラピッド・ドラゴンそのものを調達すれば、遠距離標的の攻撃で、日本の選択肢は確実に増える。これは、例えば中国やロシアと戦うような将来のハイエンドな紛争や、北朝鮮が関与するような有事で重要になる可能性がある。

JASSMファミリーや12式ミサイルを使えば、かなり遠距離の海上目標を攻撃する可能性も開ける。JASSMファミリーには、そのような任務に特化したAGM-158C長距離対艦ミサイル(LRASM)がある。

C-2のスタンドオフ弾薬能力が恒久的なものであることを示すものは何もない。ラピッド・ドラゴンに使われているのと同じようなロールオン/ロールオフ・パッケージが使われる可能性が高い。こうすることで、航空自衛隊はC-2の一部を、将来の大規模紛争の直前、あるいはその最中に、ミサイル・プラットフォームに迅速に転換できるようになる。

同時に、たとえ少数のC-2でも攻撃任務に切り替えれば、一時的にせよ空輸能力が低下する。この懸念は、ラピッド・ドラゴンに関する米国の研究でも浮上している。特に中国との本格的な紛争で、航空自衛隊の輸送機隊は主要任務を遂行するため大きな需要があるだろう。追加的なスタンドオフ攻撃任務のために必要な能力をよりよく達成するために、日本がC-2の在庫を増やすのか注目される。

日本がラピッド・ドラゴンの採用を決定した場合、即座に相互運用性が実現する。そのため、航空自衛隊は将来の共同作戦で前方配備された米軍のラピッド・ドラゴン・システムを利用できるようになるかもしれないし、日本のC-130もラピッド・ドラゴンを使用できるようになるかもしれない。最近太平洋で行われたモビリティ・ガーディアン演習では、ラピッド・ドラゴンがデモンストレーションされ、米航空機動軍団のマイク・ミニハン司令官は、同盟国のC-130との関連性を強調した。

「今、敵は限りなく大きな問題に直面している。[敵は爆撃機だけでなく、地球上のすべてのC-130を心配する必要がある。「C-130ならできる。C-130はそれができる。我々のパートナーや同盟国はすべてC-130を飛ばしているから、敵に無限のジレンマを与えることができる」。

日本のC-130は14機ほど就役しているが、米製システムを採用しなくても、日本製装備を搭載する可能性もある。

研究中のスタンドオフ・ミサイルだけでなく、モジュール式の発射システムによって、C-2が他のさまざまな格納庫、おそらくドローンの群れを発射する可能性もある。これは、米軍で支持を集めている構想で、日本も将来的にはドローンをもっと活用したいと考えている。電子戦に対応した空中発射デコイの群れの発射も選択肢のひとつだ。

日本がスタンドオフ・ミサイル・プラットフォームとしてC-2を提案し、どのような道を歩むにせよ、中国を抑止する長距離攻撃能力が、日本の防衛ドクトリンにとって重要性を増していることは明らかだ。

今年4月、日本の防衛省は4つの異なるスタンドオフ・ミサイル・プロジェクトに関する契約を発表した。

前述の改良型12式対艦ミサイルの開発・生産契約のほか、これらのプログラムには、超高速滑空弾(HVGP)の生産と潜水艦発射型スタンドオフ巡航ミサイルの開発が含まれる。潜水艦発射ミサイルもまた、改良型12式に基づく可能性が高いと考えられており、同様に陸上と海上の目標に対処する。川崎重工業(KHI)が生産する新しい沿岸型対艦巡航ミサイルの契約が発表された。

日本が輸送機をスタンドオフ兵器のトラックに使用する構想を検討しているというニュースは、本誌が航空兵器で増加傾向と推測していることを指し示している。こうした並列化されたシステムは、既存機材を、長距離戦略航空機が伝統的に担ってきた役割(長距離に大量のスタンドオフ巡航ミサイル攻撃を行う)に転用する。真の爆撃機や大型巡航ミサイルを保有している国はほとんどないが、輸送機やJASSMのような高性能スタンドオフ兵器を保有しているか、後者を獲得することはできる。ラピッド・ドラゴンは、この種の専用航空機を開発、調達、配備、維持するコストのほんの一部で、この運搬能力を提供する。ダイナミックで予測不可能、そして生存可能な性質と、これらの兵器を空から発射することによる射程距離の延長という利点も否定できない。そのため、このような任務をもっと目にするようになるはずだ。オーストラリアやヨーロッパが特に関心を寄せている。

中国の台湾に対する潜在的な作戦への懸念が高まり続ける中、尖閣諸島を含む南西諸島を防衛する必要性が重要になっている日本では、この懸念を特に強く感じている。

日本の地上、海上、航空プラットフォームはすべて、新たなスタンドオフ・ミサイル能力を導入する予定であり、日本がこの地域で増大する中国の脅威をどれほど真剣に受け止めているかは明らかだ。

空中発射ミサイルを運ぶC-2運用構想が採択されるかが注目されるだろう。■


Japan Eyes Turning C-2 Cargo Jets Into Standoff Missile Carriers

BYTHOMAS NEWDICK|PUBLISHED AUG 7, 2023 2:47 PM EDT

THE WAR ZONE


2022年7月3日日曜日

輸送機をミサイル攻撃機に変身させる米空軍のラピッドドラゴン構想に注目。

 


ラピッドドラゴンのビデオからの画面キャプチャー



距離攻撃ミサイルの空中発射でB-52はじめ古参機材に新たな意義が生まれたが、米空軍の「ラピッド・ドラゴン」プログラムは、このコンセプトを次のレベルへ引き上げる。「ラピッド・ドラゴン」は、重爆撃機や攻撃戦闘機だけに頼らず、輸送機もミサイル搭載機として戦いに参加できるようにする。太平洋で紛争が起これば、貨物機が強力な艦艇ハンターに変身する。


C-130ハーキュリーズやC-17グローブマスターのようなレーダー反射が大きい機体を、戦闘空域近くで飛ばし軍需品を搭載させるのは直感に反するように思えるかもしれないが、ラピッドドラゴンは大型機を戦闘投入する前提ではない。代わりに、AGM-158 JASSM(Joint Air-to-Surface Standoff Missile)のような射程1000マイル超のスタンドオフ兵器をパレット上で活用し、敵防空網が届かない地点から輸送機で展開する。空軍によると、これにより比較的低コストかつ低リスクで、大量の低観測性巡航ミサイルで敵空域に飽和攻撃させる道が開かれる。


ラピッド・ドラゴンの名称は、紀元950年頃の古代中国にあった "Ji Long Che"(直訳すると "快速龍車")という攻城兵器へのオマージュだ。この武器は弩級カタパルトで、一人が引き金を引くと、12本もの矢を遠距離に同時発射できた。

 

空軍研究本部はこう述べている。

「Rapid Dragonコンセプトは、米空軍の兵器運搬システムとして、ゲームを変える。パレット化した弾薬は、遠方の敵に強力な一斉射撃を約束する」。


皮肉なことに、ラピッド・ドラゴン兵器システムは、名前の由来となった国との紛争で最も価値を発揮しそうだ。JASSM巡航ミサイルのような低視認性・長距離弾薬により、貨物機は敵空域をミサイルで飽和させたり、敵艦隊を全滅させたり、広大な海域に機雷を敷設するのが可能となり、しかも中国の航空防衛システムの射程内に入らない。


Watch a C-5 Galaxy drop a Minuteman Intercontinental Ballistic Missile  during a test - The Aviationist

Air Mobile Feasibility Demonstrationプログラムでは、空中のC-5ギャラクシーからミニットマンI ICBMを発射する想定だった。 (U.S. Air Force photo)


ミサイルを輸送機に搭載するのは新しいコンセプトではない


民間機や貨物機を利用してミサイルを運搬・発射するコンセプトは以前からあったが、1970年代に注目された。1970年代初頭、戦略的軍備削減交渉に入る前に、ソ連に対する核優位性を取り戻そうとしたヘンリー・キッセンジャーの努力で、航空機動兵器実現可能性実証計画が生まれた。このタイトルは一見良さそうに見えるが、取り組みは決してそうではなかった。


1974年、わずか90日間で、このプログラムは、米国が実際に全長57フィート、87,000ポンドのLGM-30ミニットマン1核ICBMを、飛行中のC-5貨物機から、ほとんどどこからでも発射できると証明を狙った不活性ICBMの実射デモンストレーションで最高潮に達したが、この珍しい配備方法が可能なだけでなく、実現可能であると証明した後、米国はこの能力を棚上げする選択をした。


America really launched an ICBM from the back of a C-5 cargo plane -  Sandboxx

Air Mobile Feasibility Demonstrationプログラムでは、C-5ギャラクシーからミニットマンI ICBMを発射する想定だった。(U.S. Air Force photo)


米ソの軍事力拮抗の原動力として「相互確証破壊(Mutually Assured Destruction)」がよく挙げられるが、「航空機動実験計画」のようなコインの裏表のようなプログラムもある。このような計画や核搭載ミサイルSLAMは、ソ連が同技術を追求するのを防ぐため、あるいはソ連がその優位性を利用するのを防ぎ、核による先制攻撃を行うかもしれない懸念から、結局中止または無期限休止された。


貨物機を使うミサイル配備の構想は、1970年代後半、カーター政権が超音速重ペイロード爆撃機B-1B計画の中止を発表した後、再び浮上した。B-2の開発が機密扱いのため、米国には空からの兵器運搬能力に空白があるように見え、ボーイング社の747-200CにAGM-86空中発射巡航ミサイルを満載し、重武装機とする提案が生まれた。



ボーイング747CMCAは、空中発射巡航ミサイル70発以上を搭載する構想だった



B-52ストラトフォートレスが搭載可能な1,500マイル級のミサイルは20発程度だが、747CMCA(Cruise Missile Carrier Aircraft)提案は、72発を搭載するはずだった。同ミサイルは、あらかじめ目標データをプログラムし、機内のコマンドセンターで調整され、機体尾部付近のドアから1発ずつ連続発射される。





ラピッド・ドラゴンで貨物機が重武装機に変身するが、機体改修は不要

C-17AからのPalletized Munition Deployment Systemの標準的な貨物空輸の様子。デモ用に4パック構成で使用されている。


Rapid Dragon conducts palletized munition demonstration using production  long range cruise missile > ONE AFRL / TWO SERVICES > Newsラピッド・ドラゴン配備ボックスから発射される巡航ミサイル。 (U.S. Air Force)


747は広く運用され、生産ラインも稼働中だったため、この取り組みは有望かつ費用対効果に優れると思われた。747 CMCAはB-52の3倍近い本数の巡航ミサイルを搭載し、飛行時間あたりコストはほぼ1/3とされた。最終的にB-1Bランサーが復活し、B-2スピリットがその後に続いた。


Rapid Dragonコンセプトは、747 CMCAとまったく異なるものではない。CMCA計画と同様、ラピッド・ドラゴンは長距離空中発射巡航ミサイルを使用し、脆弱な重武装機を危険から遠ざける。巡航ミサイルも、ターゲットデータがインプットされた状態で持ち込まれるが、昨年末の飛行テストで実証されたように、ターゲットデータは飛行中に機内クルーが変更できる。


747CMCAのコンセプトが経済的に実現可能であったとしても、ラピッド・ドラゴンでは経済的効率性をさらに高める。


ラピッド・ドラゴンでは、特定の航空機を重武装機に専用改修するのではなく、C-130(ミサイル6発マガジン)またはC-17(ミサイル9発マガジン)各機に搭載できる「展開ボックス」と呼ぶパレット状の自己完結型弾薬を使用する。このモジュール式ボックスにより、配備する武器の種類と使用スペースに最大限のバリエーションを持たせ、製造コストを低く抑える。


展開ボックスは、他の空中投下用パレットと同様に積み込まれ、空中で展開するため、機体改修の必要がない。


展開の指示があれば、輸送機乗員は通常の空中投下と同じ作業を行い、パラシュートを展開し展開ボックスを安定させ、ミサイルを発射させる。準備が整うと、搭載するコントロールボックスから、AGM-158 JASSM巡航ミサイルが互いに衝突しないよう個別に放出され始める。各ミサイルは、小さな翼と制御面を展開し、エンジンを始動し、水平飛行経路に引き上げる。



illustration of airdropパレット化弾薬のCONOPS。ラピッド・ドラゴン実験では、パレット化兵器の空中投下部分に焦点が当てた。 (U.S. Air Force)


AGM-158 JASSMは、1,000ポンド弾頭を230マイル先の目標に運ぶ、全長14フィート、重量2,251ポンドの兵器として就役したが、2006年までに空軍は、同じ外寸で射程を575マイル伸ばしたJASSM-ERの試験を行った。


2021年には、AGM-158D JASSM-XRと呼ばれる巡航ミサイルの最新型の少量生産が開始された。XRは1,000マイル超の射程距離を誇り、ラピッドドラゴンのコンセプトを伸ばす。さらに、同ミサイルは1発200万ドル(約3億円)という低価格であり、探知されにくく、迎撃されにくい利点もある。


JASSM AGM -158


AGM-158シリーズには、AGM-158C長距離対艦ミサイル(LRASM)も含まれ、ラピッドドラゴンは、広大な太平洋上で貨物機を本格的な艦船攻撃プラットフォームに変えることができる。実際、昨年12月、空軍は同プログラムの一環として、C-130からた巡航ミサイルを発射し「海上標的」に命中させたと発表している。


現在、ラピッド・ドラゴンはC-130用の6連装武器ボックスとC-17用の9連装武器ボックスに焦点を合わせているが、将来は、より多様な任務を可能にするため採用する武器の数と種類の双方を拡大する検討がすでに始まっている。これまで、MC-130J、EC-130SJ、C-17Aの3機種で実験に成功している。


装置全体を展開ボックス内に収めた結果、月曜日は施設間の貨物輸送、火曜日は敵空域をミサイルで制圧、水曜日は貨物輸送に戻るという運用が可能になった。


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C-130に搭載されたラピッドドラゴンのテスト(U.S. Air Force)


ラピッド・ドラゴンはコストも優れている


747 CMCAコンセプトのように、ラピッド・ドラゴンは、アメリカの爆撃機部隊のお株を奪うように見える。そのため、B-21レイダーとラピッド・ドラゴン双方の開発に、価値があるのかと疑問を持つ人もいるだろう。しかし、コストや大規模紛争での機体の利用可能性など、考慮すべき重要な点がある。


米空軍は現在、約75機のB-52を保有している。大型爆撃機としてB-52は、米国の戦力構造でさまざまな役割を担っており、特に米国の核三原則の空中部隊で目立つ部分となっている。


空軍は、州兵と空軍予備軍を含めると、400機以上のC-130各種と、さらに220機ほどのC-17を戦場に持ち込める。つまり、潜在的な敵は何百もの配備システムを相手にすることになり、一度に半ダース以上のミサイルを発射可能な運用手段多数が世界中に展開することになる。


編隊飛行するC-130 (U.S. Air Force photo)


B-52の飛行コストは1時間あたり7万ドル程度だが、C-130は1万ドル以下で、爆撃機では考えられない荒涼とした滑走路で運用できる。


もちろん、これらの弾薬はその他プラットフォームでも使用できるが、それこそがラピッド・ドラゴンの価値の一部だ。アメリカの既存の低運用コストの貨物機群を空爆に活用して、爆撃機や戦闘機を解放し、専用能力を必要とする別の高価値作戦に集中できるようになる。


もちろん、運用する兵器は単価100万ドル以上と決して安くないが、中国の極超音速対艦ミサイル・システムや軍艦を破壊するため使用すれば、コストが大きな価値を生む。


プラグ・アンド・プレイで可能になるのは

空軍ラピッドドラゴンのビデオからのスクリーンキャプチャ


ラピッド・ドラゴンは、敵空域内のターゲットに巡航ミサイルを発射する能力で米国を大幅に向上させるが、技術を同盟国と共有すれば、価値はさらに高まる。同盟国の能力拡大がこのプログラムで最も輝く場所の1つになるかもしれない。


C-130は世界で最も広く運用中の軍用機

で、1950年代の製造開始以来、63カ国に2,500機以上が納入されている。ラピッド・ドラゴンの配備ボックスは、事前プログラムしたり、その場で調整できるターゲットデータを使い「ロールオン・ロールオフ」できる設計なので、米国はこのシステムを同盟国に提供すれば、各国の輸送機が船舶攻撃機になる。


大規模な戦闘をコストから考える場合、低視認性の長距離巡航ミサイルを多種多様な航空機から敵の空域に大量配備できることは良いことだ。しかし、同じ能力を、ほとんど訓練を必要とせず、既存の航空機とインフラを活用しながら、地域内の同盟軍に迅速に提供する能力は、前代未聞である。中国との紛争で、日本のC-130がアメリカの空輸機と一緒に巡航ミサイルや無人機を配備することも可能となれば、戦闘用機体やミサイルや無人機の数がさらに増える


これらの兵器は、電子戦や敵の防空網制圧にも使用できる。大量の兵器を放出し防空システムの迎撃ミサイルを使い果たさせ、ラピッドドラゴンのミサイルに続くすべての同盟国の航空機に空域をより安全にすることができる。


このシステムでAGM-158C長距離対艦ミサイルを大量配備すれば、この能力はより顕著になる。同ミサイルの射程は、JASSM-ERの575マイルに匹敵する可能性がある。太平洋における中国海軍の存在は大きく、民兵や沿岸警備隊の艦船も考慮すると、米海軍を2対1以上で上回る。最新鋭の中国長距離防空システムは、約200マイル以上に対応できないため、射程500マイル以上のLRASMを満載したC-130は、太平洋の中国海軍に深刻な脅威となる。


LRASMは1個400万ドル弱と、JASSMシリーズより高価であるため、中国のアナリストは、ラピッドドラゴンは対艦戦の手段として持続可能でないとの見ている。しかし、中国の055型駆逐艦のような先進的な軍艦の建造コストと時間を考えれば、LRASMは費用対効果が高いと言えるかもしれない。


C-130 Hercules cargo aircraft successfully lands on USS Forrestal (CV-59).  November, 1963 [1200x930] : r/WarshipPorn

USSフォレスタルに海兵隊KC-130Fを着陸させたジェームズ・フラットレー (U.S. Navy photo)


そこで、伝説の海軍提督ジェームズ・フラットレーJames Flatleyが昨年筆者に語った内容に価値がある。提督はC-130を空母に着艦させた唯一の人物だが、単に着艦させただけでなく、実用的であると証明したのである。


フラットレーはC-130による空母への補給は当時は不要と思われ、海軍はその能力をポケットにしまっておいたのだ、と明言した。

興味深い話である。■

 

Rapid Dragon: Turning America's cargo planes in missile-packed arsenal ships - Sandboxx

Alex Hollings | June 28, 2022

 

Alex Hollings

Alex Hollings is a writer, dad, and Marine veteran who specializes in foreign policy and defense technology analysis. He holds a master’s degree in Communications from Southern New Hampshire University, as well as a bachelor’s degree in Corporate and Organizational Communications from Framingham State University.

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2019年3月31日日曜日

日本が開発中の超音速対艦攻撃ミサイルに注目


Japanese MoD Moves Closer to Operationalization of ASM 3 Anti Ship Missile 2
Two XASM-3 missiles fitted on a Japan Air Self-Defense Force F-2 Fighter during recent tests (May 2017). Picture via twitter user @MR2AW11SP

Supersonic Strike: Japan Has Some Big Plans to Sink China's Navy In a War 超音速攻撃で中国艦を撃破する日本の遠大な計画

March 23, 2019  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: JapanChinaSupersonic WeaponsAnti-ship MissilesPLAN

本が空中発射式長距離対艦巡航ミサイルの開発を進めている。中国が長距離空対空ミサイルミサイルを開発中のため日本側機材は対艦兵器を遠距離地点で発射しないと撃墜されるリスクが増すためだ。
岩屋毅防衛大臣は「一部諸国」の艦船で長距離防御力 が整備されていると発言したが大臣の真意が特定国であるのは疑う余地がない。
毎日新聞は「超音速ASM-3空対艦ミサイルの射程を現在の200キロ未満から400キロ超にし、南西島しょ部の防衛力を増強する案」を伝えている。
「F-2が2030年代に退役となるが岩屋防衛相は後継機に射程距離を伸ばしたミサイルを搭載すると述べた」(毎日新聞)。日本は国産ステルス戦闘機F-3の開発中だ。
ここで興味を惹かれるのは日本はASM-3開発を昨年完了したばかりで新ミサイルを開発することだ。ASM-3はF-2からの発射想定で低高度で標的艦船に直進する、または低空で発射し標的直前で「ポップアップ」して突入することが可能だ。
Japanese MoD Moves Closer to Operationalization of ASM 3 Anti Ship Missile 1
A “concept of use” infographic published by Japanese MOD (Ben Rimland/Navy Recognition translation)
日本はノルウェイ製共用打撃ミサイルで長距離対艦攻撃手段導入を決めており、F-35に搭載し350マイルまでの射程が手に入る。
ASM-3はマッハ3で有効射程は100マイル超で10年前なら中国海軍に大打撃を与えただろうが、PLANは新世代艦艇を就役させており、052D型誘導ミサイル駆逐艦などはHHQ-9対空ミサイルを搭載する。これは陸上配備型のHQ-9の派生型だ。HQ-9の射程が75-125マイルなのでASM-3を搭載した日本機も楽に中国の防空の盾に入れない。
だが日本が長距離対艦ミサイルの開発に向かう別の理由もある。中国が空母群の整備に向かっており艦載ジェット機により防空範囲が更に伸びるためだ。
この状況には冷戦時を思い起こさせるものがある。当時はミサイル装備のソ連爆撃機のTu-22Mバックファイヤなどが米空母のF-14トムキャットと対決する想定で、米戦闘機はソ連爆撃機のミサイル発射前に迎撃を目指した。冷戦が熱い戦闘に変わっていれば、バックファイヤがミサイル攻撃で米空母部隊を圧倒するのを防ぐのが課題になっていただろう。
もう一つ興味を引くのは日本が各種装備の有効射程範囲をのばそうといていることだ。第二次大戦の惨禍を経て、極端なまで平和主義となった日本は防衛力を着々と整備しつつ日本本土を遥か離れた地点での作戦実施は目指してこなかった。だが平和主義は後退しつつあるようだ。
安倍晋三首相は昨年の国会答弁で長距離巡航ミサイルは憲法違反ではないとの考えを開示したと毎日は伝えている。
日本はF-35Bを空母そっくりの「ヘリコプター駆逐艦」で運用する方針を定めている。新規の航空戦戦略では米製スタンドオフ空対地ミサイルの導入を想定している。長距離対艦ミサイルはその延長となる。■
Michael Peck is a contributing writer for the National Interest. He can be found on Twitter and Facebook.

2018年4月27日金曜日

米B-52編隊で中国広東省へののスタンドオフ攻撃演習をした米国の狙い

US B-52 bombers fly close to Guangdong coastB-52爆撃機編隊が広東省付近を飛行した模様

Rarely had US strategic bombers been seen above waters so close to the Chinese shore米戦略爆撃機が中国本土付近まで進出するのはまれなこと

By ASIA TIMES STAFF APRIL 26, 2018 4:01 PM (UTC+8)
今週火曜日午後、米空軍B-52ストラトフォートレス戦略爆撃機二機が広東省沿岸から250キロ以内をに飛行したとの台湾報道があり、USAF機材の動向を追うツイッターグループAircraft Spotsも同様に伝えている。
登録番号57-1454と60-0360の二機がコールサインHERO01、HERO02で台湾とフィリピンの間のバシー海峡上空で確認されており、グアムを発進したと見られる。
両機は南シナ海北部を西に向かい台湾が占拠する東沙諸島(香港から南東340キロ)上空を通過し、ジグザグコースをとり嘉手納航空基地に帰投した。この様子をAircraft Spotsが示している。また二機が沖縄付近で空中給油を行ったことが判明している。
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Aircraft Spotsに出たB-52二機編隊の飛行経路 Photo: Twitter

台湾の自由時報Liberty Timesは米戦略爆撃機が中国本土付近を飛行するのは珍しいと指摘。一方でH-6Kはじめ人民解放軍の爆撃機やスパイ機がひんばんに同空域を飛行しており、台湾外周を一周飛行することも多いという。
同紙によれば今回の飛行経路から爆撃機編隊がトマホーク巡航ミサイルで広東省沿岸部を標的にした模擬攻撃を行ったのがわかるという。
トマホーク巡航ミサイル最大射程は2,500キロあり、東沙諸島付近から発射すればPLAの軍事施設多数の攻撃が可能だ。
B-52が今回投入されたのは中国が台湾領空をないがしろにすれば米国としても対応の用意があると示す狙いがあったためと見られる。
中国がいわゆる第二列島線(小笠原諸島、火山列島からマリアナ諸島)の突破を狙っているのは明らかでH-6K爆撃機の航続距離を活用しCJ-10Kはじめ対地攻撃ミサイルを空中発射するのだろう。
こうしたミサイルの実用射程は1,500キロで台湾の太平洋側を飛ぶH-6Kから発射すればグアムも狙える。
噂だがH-6Kは空中給油でグアム付近まで進出可能ともいわれ、原型がソ連時代の旧式爆撃機にステルス性能は皆無で台湾や日本のレーダーなら簡単に探知できるはずだ。
中国国防省は今回の中国防空識別圏への侵入にまだ反応していないが、中国の防空レーダーが対応したのか、軍用機が迎撃に出撃したのかは不明だ。

だが中国のニュースポータルSinaに26日評論が出ており、大型のB-52も中国の防空体制の前には脆弱であり、中国にはロシアから輸入したS-400トリウームフ防空ミサイルもあると指摘している。■

2017年7月9日日曜日

ISISを1,000キロ地点から巡航ミサイル攻撃<ロシアも長距離精密誘導攻撃能力を手に入れた模様


技術は水の流れのようなもので堰を作って止めた気になっても結局流れを止めることができません。米技術の優位性が揺らいでいます。21世紀に入りアフガニスタン、イラク等の技術格差が大きい相手に有利な戦いを展開してきた米国ですが、その間にロシア、中国さらにイラン等が着実に技術力を引き上げて、今や互角の技術を有する相手との戦いを想定せざるを得なくなっているのは皮肉な歴史の進展です。ただ米国も黙って状況を見ているわけではなく、さらに先を行く技術を実用化していくはずです。

One of Russia's Most Deadly Bombers Now Has a Scary New Capability

ロシア最強の爆撃機に恐るべき新能力が付与されている

July 5, 2017


  1. ツボレフTu-95MSベア戦略爆撃機に機内で目標再設定できる新型巡航ミサイルの導入が始まっている。飛翔中に目標変更も可能でロシア軍に新しい形の戦力が生まれる。
  2. ロシア国防省は本日の発表ではTu-95MS爆撃機隊が最新X-101巡航ミサイルでシリア国内のISISを攻撃したとし、同ミサイルの射程は4,500キロだという。
  3. 「7月5日戦略ミサイル母機Tu-95MSはロシア連邦内エンゲルス飛行場を離陸し、空中給油を受けたあと(シリアアラブ共和国の)ハマおよびホムスのISIS拠点を最新巡航ミサイルH-101で攻撃した」とロシア国防省がフェイスブックで伝えた。
  4. 「この攻撃でアケルバット近郊の武器弾薬庫三棟および指揮命令拠点が破壊された。攻撃は高精度H-101でおよそ1,000キロ地点から実施された」
  5. Tu-95MSはSVPシステムを装備し乗員が飛翔中のミサイルの標的を再設定できるようになる。同装備はまだ広く導入されておらず、何機に搭載したか不明だ。
  6. 「新装備の爆撃機導入が進んでいます」とワシリー・カシン(モスクワ高等経済学研究所内欧州国際総合研究センター主任研究員)がNational Interestに述べている。「巡航ミサイル発射の前に標的設定できます」
  7. さらに発射後にミサイルの標的再設定が可能だ。カシンはX-101の標的再設定能力を伝える複数報道があると指摘するが、実戦化はまだとはいえ開発が着実に進んでいるのは確かだ。
  8. 「米軍に倣い開発中なのだろう」とカシンは述べる。「爆撃機の側が準備できておらず性能をフルに活用できていない」
  9. SVP装備のTu-95MS搭載は、各機が定期整備改修に入るたびに実施されているようだ。
  10. この分野でのロシアの開発成果には目を見張るものがあるが「ロシア軍にとって大きな一歩で作戦の柔軟度や効果を引き上げ、戦闘状況に応じた攻撃が可能になります」とマイク・ガンジンガー(戦略予算評価センターで航空戦力アナリストを務める元B-52パイロット)がNational Interestに語る。
  11. 「発射後に標的の再設定可能な兵器が手に入ると大きな意味があります。向こうはこの能力を実用化するでしょう。さらに将来は兵器間でやり取りすることになれば戦闘の様相は大きく変わります」
  12. 長距離精密兵器は米国の独占分野ではなくなった。■

Dave Majumdar is the defense editor for The National Interest. You can follow him on Twitter: @Davemajumdar.
Image: Creative Commons.