ラベル 2026年2月28日 壮絶な怒りイラン攻撃作戦 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
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2026年7月6日月曜日

イラン作戦は米航空戦史でもっとも「成功した失敗」だった ― 破壊線と撹乱戦とは

 

 

米航空戦史上でイラン戦は最も「成功した失敗」となった

米国は破壊戦war of destructionに綿密な計画を立て紛争に突入したが、イランによる撹乱戦war of disruptionへの本格的な対策は講じていなかった

https://breakingdefense.com/2026/07/iran-was-the-most-successful-failure-in-us-airpower-history/

国がイラン攻撃を開始して4か月で、イラク侵攻の「ショック・アンド・オー」作戦以来、最も激烈な空爆作戦が6週間にわたり繰り広げられた。しかし、その結果で生まれた合意は、まだ最終交渉の段階にあるものの、せいぜい引き分けに過ぎず、多くの点でイランに有利な内容となっている。ドナルド・トランプ大統領が爆撃再開をほのめかすことは、その理由を誤解している。

米国は2つの空戦を同時に展開していた――1つは破壊のための空戦、もう1つは機能麻痺のための空戦だ。そして、最も重要だった方の空戦に敗れた。

前者――破壊のための空戦――は、米国とイスラエルがイラン上空の高高度空域を制圧し、それを活用して大規模な攻撃を仕掛けることに重点が置かれていた。ステルス機や精密誘導弾が勝敗を左右する高度2万フィート以上において、米軍はまさに想定通りの戦果を上げた。米国はイラン南部・西部の広大な空域で制空権を確立し、防空体制を弱体化させ、イラン海軍の大部分を撃沈し、ミサイルおよびドローン能力に損害を与えた。破壊戦争の成果は、命中した標的(軍事用語でDMPI、すなわち「目標平均着弾点」 “desired mean points of impact”)と破壊された能力で測定された。その指標で言えば、米国は勝利した。

しかし、イランはホルムズ海峡を事実上封鎖し続けることに成功した。第二の空戦――破壊ではなく混乱を目的とし、戦闘が政治的に耐え難くなるまで心理的・経済的コストを課す戦い――が、その決定的な要因となった。

紛争の初日から、イランのドローンやミサイルは、テヘラン上空における米軍の制空権を阻止するのではなく、それを無意味なものにすることを狙っていた。高高度領域をほぼ放棄したテヘランは、軍事作戦の焦点を下方、すなわちホルムズ海峡上空および周辺の沿岸空域――低高度空域――へ移した。そこでは、、世界最重要のエナジー要衝を通過することを、商船にとっても米海軍にとっても、あまりにもコストがかかり危険なものにするのに安価なドローンやミサイルが十分な効果を発揮できることが証明された。

言い換えれば、イランは破壊戦争で勝利する必要はなかった。米国にとって勝利する価値がないと感じさせれば十分だったのである。

テヘランの戦略は、単純な非対称性に基づいていた。すなわち、人々にとって慢性的な不便や増大する不便より、一時的な甚大な破壊の方が耐えやすいという事実だ。存亡をかけた戦争を戦うイランにとって、破壊は耐え忍ぶべきものだった――殉教した指導者や将軍、爆撃された飛行場、沈められた艦船は、むしろ政権の決意を強固にした。一方、限定的な利益しかかかっていなかった米国にとって、不便は逃れなければならないものとなった。

米国の空軍力が、イランの空軍力によって封鎖された要衝を開くことに失敗すると、米国は経済的圧力を用いたより広範な作戦へと拡大した。イランの石油輸出に対する海上封鎖は、テヘランの経済に相応の圧力をかけ、破壊的な空戦では得られなかった影響力を獲得することを目的としていた。しかし、封鎖は「時間軸の勝負」となり、米国にはそれを勝ち抜く態勢が整っていなかった。情報機関の分析によればイランは少なくとも90日から120日、あるいはそれ以上も封鎖に耐えうるという結論が導き出された。その一方で、ガソリン価格高騰を目の当たりにする米国の消費者、自国経済へのコストを計算する欧州やアジアの政府、そしてこの状況がいつまで続くのかとワシントンにひそかに問いかける湾岸諸国などからの政治的・経済的圧力は高まる一方だった。

イランの主要な撹乱兵器はシャヘドドローンだった。米国の基準からすれば、これは大したものではない。低速で、低空を飛行し、撃墜されやすく、コストも数億ドルではなく数万ドル程度に過ぎない。しかし、このドローンは、はるかに高価なレーダーや指揮統制施設を破壊し、石油生産を妨害し、地域全域の港湾飛行場を攻撃した。

イランは、この戦略に偶然たどり着いたわけではない。イランは、紅海でのフーシ派による攻撃やイラク民兵組織による作戦を通じて、長年にわたりこの手法を試験・洗練させてきた――安価で使い捨て可能なシステムが、不釣り合いなほどのコストを相手に強いることができるかを学んだのである。また、ロシアに2万ドルのドローンを供給した際、その価値が実証されるのを目の当たりにした。この紛争が始まった時点で、イランはすでに何が有効かを把握していた。

この脅威により米軍は後退を余儀なくされた――それ自体が、イランの成功の尺度であった。2003年、米軍の戦闘機および支援機の大半は、クウェート、カタール、UAE、バーレーン、サウジアラビアに前方展開されており、空母は地中海とペルシャ湾から作戦を行っていた。しかし、イラン戦で状況は一変した。イランによる攻撃の脅威により、作戦指揮権はアル・ウデイドの統合航空作戦センターから移管され、空母、ステルス戦闘機、給油機はイスラエルヨルダン、そしてアラビア海へ後退させられるようになった。

米国はそうした距離からイラン全土の標的を攻撃することは可能だ。しかし、その距離からは、幅21マイルの海峡を警備できなかった。航路を確保し続けるには、持続的かつ至近距離での警戒が必要である――脅威が到達する前にそれを検知し、対応できるほど近くに配置された部隊が求められる。イラン沿岸から発射されたドローンは、数分で石油タンカーに到達する。米軍は、敵の活動を妨害する「妨害戦」への態勢を整えていない。

そのギャップを埋めるには、米国が体系的に軽視してきた、あるいは開発さえしてこなかった能力が必要となる。例えば、比較的低高度で長時間滞空できる大容量弾倉を備えた航空機、機動性の高い防空システム、そして飛来するドローンやミサイルから艦船を守るための量産型兵器などである。これらはまさに、イランの「妨害戦」が要求していた能力そのものであり、米国が大規模に投入できなかったものそのものであった。

海峡封鎖が長引くほど、「どの空戦が重要か」というイランの主張は強まった。海峡通過のための戦争リスク保険は事実上機能しなくなり、数百隻の船舶がペルシャ湾で足止めを食らった。世界最強の軍隊はイラン全土の標的を攻撃できたが、世界で最も重要な水路で安全を保証することはできなかった。イランは、局地的な兵器で世界的な影響力を発揮する方法を見出した。

これこそが、今回の紛争から得られる核心的な教訓だ。長年にわたり、破壊戦争――長距離精密攻撃、ステルス技術、遠距離からの統合防空網の無力化能力――に最適化された調達方針が、近接かつ消耗戦を遂行する米国の能力に隙間を残してしまった。米国に欠けているのは、生存性や射程より持続性と数こそが重要となる、地表付近で低コストのシステムを大量に生産する能力である。イラン独自の「シャヘド」設計を模倣した「ルーカス」は正しい方向性を示しているものの、数百機のドローンを生産する3000万ドルの契約では、数万機を生産するイランのような敵対勢力に対して、米国は依然として力及ばない。

この問題を解決するには、国防総省がこれまで抵抗してきた調達方針を優先する必要がある。すなわち、長時間滞空可能なドローン、大容量の弾薬搭載能力を持つプラットフォーム、移動式防空システム、そして大規模配備が可能な安価な量産型迎撃手段である。

しかし、より根本的な問題は概念だ。米国はこの紛争に、破壊戦争のための詳細な計画を持って参戦したが、撹乱戦争のための真剣な計画は持っていなかった。米国は、イランのミサイルやドローンを、上空での本格的な作戦が進行する中で対処すべき厄介者として扱った。その誤算のため、テヘラン上空で制空権は確保できたものの、実際に重要な局面で敵を打ち負かすことはできなかった。次回も、撹乱戦を主要な計画シナリオの一部とし、国防総省が好む戦いの「後付け」として扱わなければ、状況は変わらないだろう。

現在進行中の枠組み合意は、どちらの空戦がより重要だったかを示す指標である。トランプが「再び、しかもさらに激しく」イランを攻撃すると脅したのは、本質を見失っている。米国の空爆作戦が失敗したのは、空爆の強度が不十分だったからではない。戦いの行方を決定づけない空戦を優先してしまったからである。爆弾をもっと投下したところで、真に重要な戦争に勝利できない。

問題は、テヘラン上空の制空権を誰が掌握するかなどではなかった。常に、その下で行われる「破壊作戦」の戦いを誰が制するか、ということだったのだ。■

マキシミリアン・K・ブレマーは、米空軍退役大佐であり、スティムソン・センターの「米国の大戦略の再構築(Reimagining US Grand Strategy Program)」プログラムの非居住フェロー、およびアトロポス・グループのミッション・エンジニアリング・アンド・ストラテジー部門長を務めている。

ケリー・A・グリエコは、スティムソン・センターの「米国の大戦略の再構築(Reimagining US Grand Strategy Program)」プログラムのシニアフェローであり、ジョージタウン大学安全保障研究センターの客員教授を務めている。

2026年6月22日月曜日

イラン和平:ヴァンス副大統領のイスラエル批判は大切なポイントを見逃している。イスラエルの特別な立場を尊重すべきだ

 

2025年7月、ペンシルベニア州ルザーン郡での選挙集会で演説するJ・D・ヴァンス不k大統領。ヴァンスはトランプ大統領とイランとの間で結ばれた停戦合意に公然と反対したイスラエル指導部を批判した。(Shutterstock/Joey Sussman)

J.D.ヴァンスの誤解。イスラエルは通常の同盟国と異なる存在

JD Vance Is Wrong: Israel Is Not Just Another Ally


https://nationalinterest.org/feature/jd-vance-is-wrong-israel-is-not-just-another-ally


副大統領は、イランとの合意へのイスラエルの懸念を一蹴し、逆にエルサレムが盲目的に従わなかったと非難した

JD・ヴァンス副大統領のイスラエルへの見解は間違っている。

イスラエルを「他の同盟国と同じ存在」だと示唆するのは誤りだ。米国にとって中東で最も信頼できるパートナー、イスラエルへの懸念を、政治的な厄介事として扱うのも誤りだ。そして、「アメリカ・ファースト」の名の下に、イスラエルや湾岸諸国には公然と苛立ちを見せつつ、イランには外交的な寛容さを示すべきだと考えているのであれば、それも誤りである。

これは、大国が友好国を安心させるべき態度ではない。これは、米国が抑止力を維持すべき方法ではない。そして、イスラエル、アラブ首長国連邦、バーレーン、クウェートの安全保障が危機に瀕する状況において、米国副大統領が取るべき発言の仕方ではない。

副大統領の言葉には計り知れない重みがある

筆者は、アメリカ・イスラエル双方の友人として、そして平和を信じる者としてこう述べる。米国には、終わりのない戦争を拒絶するあらゆる権利がある。アメリカ国民には、指導者たちに自制、慎重さ、規律を求めるあらゆる権利がある。しかし、自制と無関心はちがう。慎重さは、同盟国に公に叱責することではない。そして、「アメリカ・ファースト」が「同盟国は最後」を意味してはならない。

副大統領閣下、あなたは拍手数を競うポッドキャスターではありません。マイクやカメラの前で互いに張り合うコメンテーターでもありません。あなたはアメリカ合衆国の副大統領なのです。あなたの言葉は、メディアサイクルの喧騒の中に消え去るものではありません。それらは大使館、作戦室、諜報機関、王室、議会、市場、軍事司令部へ伝わっていきます。同盟国を安心させるか、あるいは不安に陥れるかのどちらかです。敵を牽制することもあれば、鼓舞することもあるのです。

米国副大統領がイスラエル、イラン、そして中東の未来について語る時、その言葉は国内の政治的な聴衆だけに向けられているわけではない。それは、安全が脅かされている人々、平和のためにリスクを冒してきた国々、そして米国のリーダーシップに信頼を寄せている同盟国に向けて語られているのだ。

危険な地域において、ワシントンからの発言は単なる意見ではない。それらは戦略的なシグナルとなる。

『エルサレム・ポスト』紙の最近の記事で、筆者は「イスラエルは米国との関係を損なわずに自国を守らなければならない」と書いた。その言葉の一つひとつは本気だ。イスラエルには、国民を守る権利と義務がある。しかし同時に、イスラエルは、長年にわたりその国家安全保障の中核を成してきた米国の政治的、道義的、戦略的、そして感情的な支援も守らなければならないのだ。米国との絆は、単なる形式的な同盟ではない。それは生きた資産である。それは尊重され、維持され、強化されなければならない。

米国とイスラエルは切っても切れない同盟国

筆者はその真実のもう半分を述べたい。米国は、同盟国の信頼を失うことなく主導権を握らなければならないのだ。

イスラエルは、一時的なパートナーでも、戦術的な便宜でも、官僚の机の上の書類でもない。米国とイスラエルの関係は、戦略的、民主的、文化的、道徳的、科学的、軍事的、歴史的なものである。イスラエルは米国の物語に織り込まれており、同様に米国もまたイスラエルの物語に織り込まれている。

アメリカのユダヤ人コミュニティは、アメリカの文化的・市民的偉大さの一部である。イスラエルは、何世代にもわたり、民主主義が稀で、危険が常態化し、誤算の代償が存亡に関わる可能性のある地域において、民主主義の同盟国として立ち続けてきた。イスラエルを単に「他の同盟国と同じような存在」と表現すれば、特定の政治的聴衆が喜ぶかもしれないが、この関係を特徴づける歴史の深み、犠牲、情報協力、共有された価値観、戦略的相互依存を反映していない。

イランの勢力拡大による影響に直面しているのは、イスラエルだけではない。イランとの最前線に立つ国々は、ワシントンの国内政治劇の観客などではない。イスラエル、アラブ首長国連邦、バーレーン、クウェートは、イランを抽象的な存在として捉えているわけではない。各国は、ミサイル、ドローン、代理戦争ネットワーク、防空警報、海上航路への脅威、さらに「不安定化」を国家運営の手法としてきた体制による恒常的な圧力を通じて、イランの実態を肌で感じているのだ。

これら各国には、声を聞いてもらう権利がある。疑問を投げかける権利がある。自分たちの頭越しに交渉された合意の結果を甘受するよう求められる前に、明確な説明を求める権利がある。

「エイブラハム合意」は単なる広報イベントではなかった。それは戦略的な勇気の表れだった。各国が平和、近代化、共存、開放を選んだのは、米国のリーダーシップが新たな地域秩序の構築に寄与すると信じていたからだ。関係各国はトランプ大統領のビジョンと、平和が不確実性や見捨てられたものではなく、安全保障と繁栄をもたらすという約束を信頼したのだ。

その平和の枠組みは、式典だけでは維持できない。もし米国が、地域のパートナー諸国に、過激主義より穏健な道、拒絶より関係正常化、イデオロギー的な暗黒より近代化を選択してほしいと望むのであれば、ワシントンは、そうした選択が尊重、協議、保護の形で報われることを示すべきである。危険が迫った際、米国が敵よりも友に厳しい口調で接すると信じる国が、平和のためにリスクを冒すことは決してないだろう。

不信を抱くべきはイスラエルではなくイランだ

副大統領閣下、無視できない矛盾がここにある。

貴殿は誰も信用しないと述べている。結構なことだ。外交における慎重さは弱さではない。しかし、中東におけるアメリカの最も信頼できる同盟国イスラエルに対して、なぜ貴殿の懐疑的な姿勢がイラン政権に対するよりも鋭く表れているのか?アメリカの国益のために共に戦ってきた民主主義同盟国が疑いの目で公然と見られる一方で、代理勢力を武装させ、ミサイルを輸出し、湾岸地域の安全を脅かし、イスラエルの破壊を呼びかける独裁政権に時間とプロセス、曖昧さ、外交的な忍耐が与えられるのはなぜか?

最前線の同盟国に対し、「君たちの判断は重要ではない」と告げておきながら、「プロセス」を信頼するよう求めることはできない。

イスラエルが存亡の危機にさらされている状況で、「落ち着け」と言うことはできない。アラブ首長国連邦、バーレーン、クウェートに対し、イランの力が外交の場で交渉されるだけでなく、ドローン、民兵組織、ミサイル、破壊工作、威嚇を通じて投影されていることを各国が知っている以上、「沈黙を守れ」などと言えない。そして、同盟国の人々の安全保障を、米国内の選挙で選ばれた少数派の感情の機微に左右されるものにしてはならない。

アメリカ国民が戦争に疲れるのは当然の権利だ。アメリカの指導者に対し、まずアメリカの国益を守るよう要求するのも当然の権利だ。しかし、真摯なアメリカ人は次のことも理解しなければならない。アメリカの同盟関係は慈善活動ではない。アメリカの力の手段である。

イスラエルの安全保障は、アメリカの抑止力の強化につながる。湾岸地域の安定は、世界のエナジー市場とアメリカの戦略的リーチを守る。「エイブラハム合意」で切り開かれた平和は、中東における近代化と共存に向けた最も有望な道の一つであり続ける。その道への信頼を弱めることは、米国をより強くすることにはならない。イランをさらに大胆にし、同盟国をより不安にさせ、地域をより危険なものにするだけだ。

副大統領殿、貴殿はイスラエル指導者に同意しないかもしれない。大統領の外交的選択を擁護するかもしれない。米国が中東の新たな戦争に巻き込まれることはないと主張するかもしれない。それらはすべて正当な立場である。

しかし、公の場で同盟国を辱めないでほしい。イスラエルの懸念を政治的な厄介事として扱うべきではない。「エイブラハム合意」を過去の成果に貶めてはならない。最前線に立つ国々に対し、あたかも各国がワシントンの国内論争の傍観者であるかのように話してはならない。

米国が最も偉大であるのは、恨みではなく自信をもって、見せかけではなく明快さをもって、友への忠誠と敵への断固たる姿勢をもって指導する時である。

米国の同盟国は観客ではなく、米国副大統領職はポッドキャストではないのだ。■

著者について:アーメド・チャライ

アーメド・チャライは『The Jerusalem Strategic Tribune』の発行者であり、アトランティック・カウンシル、国際危機グループ、戦略国際問題研究所(CSIS)、外交政策研究所(FPRI)、ナショナル・インタレスト・センターの各理事も務めている。

2026年6月20日土曜日

イラン和平で米国とイスラエルがなぜ対立するのか

 

米国とイスラエルがイラン和平で対立する理由


Why the US and Israel Diverged on Iran Peace


https://nationalinterest.org/blog/middle-east-watch/why-the-us-and-israel-diverged-on-iran-peace


イラン戦争の終結は1973年のヨム・キプール戦争終結時と酷似している

東の列強がこれまで決して十分に学べなかったように、歴史がまったく同じ形で繰り返されることはない。ヨム・キプール戦争を終結させた10月の停戦と、2025年から2026年にかけてのイラン・イスラエル・米国間の大紛争に今まさに降りかかかろうとしている不安定な休戦との間には、53年の歳月が流れている。とはいえ、米国とイスラエルの「特別な関係」という独特な力学を研究してきた者にとっては、この二つの結末は不気味なほど似通っており、ワシントンの友好関係がどれほど誠実なものであっても、極小文字で書かれた注釈が常に付き物であることを思い起こさせる。

まずはその仕組みから見てみよう。1973年10月、スエズ運河の西岸でイスラエル軍戦車がエジプト第3軍を包囲し、ゴルダ・メイア首相率いるイスラエル政府が決定的な軍事的打撃を与えようとしていたその時、ニクソン政権は、後の米国の外交手法において繰り返し見られることになる行動をとった。すなわち、敵を完全な敗北から救い出し、その結果を外交上の勝利と呼んだのである。ヘンリー・キッシンジャー――彼自身が「建設的曖昧性」と呼んだかもしれないもの、あるいは批判者たちが「息をのむ冷笑主義」と呼んだものの最高の実践者――は、停戦を仲介し、エジプトのアンワル・サダト大統領の壊滅寸前の軍隊を救い、この地域において不可欠な仲介者という羨望の的となる役割をワシントンにもたらした。

イスラエルは、望んだからではなく、他に選択肢がなかったためこれを受け入れた。イスラエル軍に補給を行っていた米国の空輸作戦、「オペレーション・ニッケル・グラス」は、同時に依存関係も生み出していた。弾薬を供給する側は、受益者の作戦に対して拒否権を行使できるようになりやすい。

50年後の話だ。2025年6月、12日間にわたるイスラエルと米国の空爆(イランの核施設および軍事インフラを標的としたもの)の後、ドナルド・トランプ大統領は、エルサレムが完全合意する前から、ソーシャルメディア上で、彼らしい派手な演出を交えて、公に停戦を発表していた。イランの核開発計画を弱体化させるという中核的な目標を達成したワシントンは、満足していた。まだ攻撃すべき独自の標的リストを抱えていたイスラエルには、事実上「もう十分だ」と伝えた 。ベンヤミン・ネタニヤフ首相率いる政府は、明らかな不本意さを見せつつもこれに従った。2026年2月に紛争が再燃し、4月にパキスタンの仲介で再び停戦が最終的に成立した際も、同様の対応をとることになる。

このパターンは極めて一貫しており、もはや教義と言っても過言ではない。米国が介入し、米国が戦闘の終結時期を決定し、名目上のパートナーであるイスラエルは、その「特別な関係」には階層構造があり、それがまさに勝利の瞬間に最も鮮明に現れることに気づくのである。

1973年と2025~2026年の違いは現実のものであり、無視すべきではない。1973年、イスラエルは攻撃を受け、米国はその敗北を防ぐために武器を緊急供給した。2025~2026年には、イスラエルと米国が先制攻撃を仕掛けた。これは、両政府が20年近くの間、様々な形で検討してきた、イラン核施設に対する共同作戦であった。敵対勢力の性質も異なる。サダト政権下のエジプトは、ソ連と結託し、通常戦を主とする軍隊を擁する国家だった。一方、10月7日以降の事態で弱体化したイラン・イスラム共和国は、地域覇権国であり、その代理勢力はイスラエルによって過去数年にわたり体系的に解体されていた。

しかし、米イスラエル関係の根底構造は、頑なまで変わっていない。どちらの場合も、ワシントンは敵だけでなく同盟国も管理しなければならないという、居心地の悪い立場に立たされた。どちらの場合も、米国は、危機の最中には見事に一致していたイスラエルの戦略的目標と米国のそれが、終局が視野に入ってきた瞬間に乖離し始めることに気づいている。

キッシンジャーは、感情に流されない物事の見方で、1973年にこのことを完全に理解していた。彼は、イスラエルの戦場での勝利を「結論」としてではなく、交渉の「切り札」として利用したかったのだ。エジプト第3軍が壊滅すれば、それは一世代にわたってアラブ世論を硬化させる屈辱となっていただろう。一方、米国の介入により救われたエジプトは、モスクワから引き離され、ワシントンの影響圏に引き込まれる可能性があった。イスラエルの勝利は、アラブ世界への米国の外交の扉を開いたのである。

トランプの計算――彼らしく明示的には語られなかったが、現実味に欠けているわけではない――も、同様の論理に基づいていた。2025年にイランの核施設を攻撃した後、彼はイランを屈服させることは望んだが、破壊までは望まなかった。同様に、2026年、最高指導者アリ・ハメネイの殺害後もイスラム共和国が崩壊しないことが明らかになると、トランプは、最終的に合意に署名し、ホルムズ海峡を再開し、大統領が歴史的な合意を宣言できるようにするイランを望んでいた。イラン政権の打倒を依然として目指すイスラエルの「最大主義的」な作戦は、まさにワシントンが戦争で防ごうとしていたような混乱――権力の空白、地域的な事態の拡大、核開発計画が正体不明の勢力の手に渡ること――を招く危険性をはらんでいた。

それゆえ、両紛争を通じて、そして50年以上にわたり繰り返されてきたパターンはこうだ。米国は戦略的傘を提供し、地域への関与に伴うコストを負担し、そして自らの国益に沿って結果を形作ることを主張する。その国益は、両政府がいくらそうではないふりをしたくても、イスラエルの国益と同一にならない。

ヨム・キプール戦争の余波は、後知恵で振り返れば、逆説的に平和への扉を開いた条件付きのイスラエルの勝利として記憶されている。1979年のキャンプ・デービッド合意は、この地域の近代史で最も重要な外交的成果であると言えるが、それは1973年以降のキッシンジャーのシャトル外交によって耕された土壌から直接生まれたものである。エジプトはソ連の勢力圏から離脱し、イスラエルと個別和平を締結し、イスラエルの存亡を脅かしていたアラブ連合は修復不可能なまで崩壊した。

しかし、1973年後半のイスラエルにとって、こうした事態はまったく予見できなかった。目に見えていたのは、壊滅的な事態を招きかけた情報失敗による衝撃、2,700人近くの兵士の死、根底から揺さぶられた社会、そして、後見人であり武器供給国である米国でさえ、決定的な最後の数時間でイスラエルを「手綱で縛り付けていた」という、不安を煽るが決して非合理とは言えない感覚だった。

2025年から2026年にかけての紛争の余波も、同様に曖昧な結果をもたらす可能性が高い。一部の米情報機関の評価によれば、イランの核開発計画は数ヶ月遅れを余儀なくされており、空爆が主張どおりの効果を発揮したのであれば、その遅れはさらに長引く可能性がある。イラン政権は首脳部一掃を狙った空爆を生き延び、モジュタバ・ハメネイを最高指導者に任命し、抵抗を続けている。ホルムズ海峡での混乱は、世界のエナジー市場に波及効果をもたらした。そして、ガザ、レバノン、そして今やイランと、複数の戦線で戦ってきたイスラエルは疲弊しきっている。

2026年の停戦交渉が、仲介者らによって発表された脆弱な了解覚書で明らかにしたのは、根本問題が未解決のままであるということだ。すなわち、イランの核開発計画、弾道ミサイルの備蓄、軍事力の再建である。1973年以降、銃声は止んだが、根底にある紛争は終結したわけではなく、多大な人的・経済的犠牲を払って、単に次の政権や次の危機へと先送りされたに過ぎない。

米国内の議論の両陣営のオブザーバーは、それぞれが好む教訓を引き出すだろう。米国とイスラエルの関係を感傷的な視点で見る傾向にある人々は、パートナーシップ――1973年の空輸作戦、2025年の共同空爆、両紛争を通じて提供された外交的支援――を強調するだろう。もっと現実主義的な見方をする人々は、歴史的記録が紛れもなく示している事実に注目するだろう。すなわち、米国とイスラエルの目的が食い違うとき、譲歩を求められるのはイスラエルの方であるということだ。

これは必ずしも裏切りではなく、不可解なことでもない。世界的な責務を管理し、エナジー市場を安定させ、同盟構造を維持し、国内政治を乗り切らなければならない大国は、存亡がかかっており、時間軸も異なる小規模な同盟国に、自国の外交政策を単純に委託することはできないのだ。キッシンジャーはこれを理解していた。たとえ公の場では私的な発言よりも婉曲に表現していたとしても。取引主義を掲げ、キャタピラーD9のような繊細さとは程遠いやり方で外交の雑木林を切り開くトランプも、彼なりの表現で同じ計算を下している。

イスラエルの課題――1973年以来、イスラエルの戦略家や政治家たちが真剣に議論し続けてきた課題――は、不可欠な支援を提供し、その制約から逃れられない後見人を、いかに位置づけるかということである。実績を直視する意思のあるイスラエルの指導層にとって、答えは明らかだ。すなわち、この特別な関係は現実のものだが限界があるということだ。米国の力はイスラエルを最悪の危険から救うことはできても、イスラエルが自らの条件であらゆる戦いを完結させることを許してくれるとは期待できない; そして、米国が仲介した停戦の翌朝には、イスラエルは抑止力を再構築し、同盟関係を再編成し、停戦が防ぐことはできず、単に先送りしたに過ぎない次の戦いに備えなければならないということだ。

1973年10月のヨム・キプール戦争の停戦を迎えた中東は、長期にわたる移行期に向けて再編を進めていた。その過程で、最終的にはイスラエルとエジプトの間に冷淡ながらも持続的な平和が生まれ、イデオロギー的勢力としての汎アラブ主義は空洞化し、やがてイランが同地域で主要な破壊的勢力として台頭することとなった。2026年の停戦が、同様に長く苦しい移行期を始動させるのではないか、と疑問を抱くのは空想ではない。その移行期の終着点はまだ誰にも見通せないが、選挙戦の最中にネタニヤフやトランプの双方が掲げた過激な構想とは、おそらく大きく異なるものになるだろう。

その間、イスラエルは1948年以来繰り返し直面してきた状況に置かれている。すなわち、軍事的には強大でありながら、外交的には依存を余儀なくされ、自国の生存に不可欠だと感じるものと、不可欠な同盟国が許容する範囲との間に広がる巨大な隔たりを、どう乗り越えるかという課題に直面しているのだ。銃声が静まった翌朝は、エルサレムにとって常に「清算」の朝となる――何が達成され、何が未達成のまま残され、そしてワシントンが課した条件に対して、数年後にどのような代償を払うことになるのか、と。

53年が経過した今も、1973年の教訓は変わっていない。ただ、より大きな代償を払い、より多くの人々に知らしめられる形で、改めて確認されたに過ぎない。■

著者について:レオン・ハダル

レオン・ハダル博士は、『ザ・ナショナル・インタレスト』の寄稿編集者であり、外交政策研究所(FPRI)の元シニアフェロー、およびカト研究所の元外交政策研究フェローである。ワシントンD.C.のアメリカン大学およびメリーランド大学カレッジパーク校で、国際関係論、中東政治、コミュニケーション学を教えた。『ハアレツ』(イスラエル)のコラムニスト兼ブロガーであり、シンガポールの『ザ・ビジネス・タイムズ』のワシントン特派員を務めるほか、『エルサレム・ポスト』の元国連支局長でもある。


米海軍のイラン海上封鎖が正式に解除された

 


2026年6月18日時点でホルムズ海峡を航行する商船。画像提供:Marine Traffic

米国がイラン海上封鎖を解除

U.S. Ends Naval Blockade of Iran


中央軍は、ソーシャルメディアサイト「X」を通じ、米国によるイランの港湾および沿岸に対する海上封鎖を解除したと発表した。

封鎖解除は、ワシントンとテヘランが60日間の「米イラン間の了解覚書」に署名し、交渉担当者がイランの核開発計画について協議を続ける間、敵対行為を終了させることに伴うものである。

米中央軍(CENTCOM)の投稿によると、米海軍は「合意のあらゆる側面が遵守され、順守され、完全に効力を発揮することを確実にするため」に中東に留まるという。

封鎖の解除が報告されたものの、合同海上部隊(CMF)の合同海上情報センターからの勧告では民間商船に対しては安全な航路を確保するため、米国・NATO海軍による「海上輸送調整・指導(NATO Naval Coordination and Guidance for Shipping)」と連絡を取るよう呼びかけている。

MOU(覚書)の発表を受けて、2件目の勧告ではホルムズ海峡の安全脅威レベルが「中程度」に引き下げられた。戦争の最盛期には、安全脅威レベルは最高レベルの「危機的」であった。「中程度」は、最も低いレベルから数えて2番目のレベルである。

「ただし、掃海作戦が継続中であるため、船員は機雷の存在に注意し、海軍の存在を想定すべきである。また、航路の混雑や、自由な航行を支援するための海軍による[超短波]通信の可能性も想定すべきである」と、JMICの勧告には記されている。

同勧告では、船舶に対し、オマーン領海を通る海峡南ルートを利用するよう推奨している。このルートは以前から米国によって支援されていた。JMICが推奨していない北ルートは、イランに近い海域を通るもので、いわゆる「テヘラン・トールブース」の一部だ。

封鎖解除は、MOUに盛り込まれた14項目のうち4番目の項目であった。この合意に基づき、封鎖は30日以内に完全に解除されなければならない。

「この期間中、船舶の通行量は、イラン・イスラム共和国によって戦前の水準に回復される通行量に比例するものとする。さらに、アメリカ合衆国は、最終合意後30日以内に、イラン・イスラム共和国近隣から自国軍を撤収させることを約束する」とMOUには記されている

合意の第5項は、ホルムズ海峡の無料かつ安全な通過に言及している。60日間の間、いわゆる「テヘラン・トールブース」を運営するためにペルシャ湾国家庁(PGSA)を設立したイランは、通過料を徴収しない。この合意では、船舶が依然としてPGSAに所有権などの情報を提供しなければならないかどうかについては明記していない。

すでに船舶数隻が通過していることから、航行は直ちに開始される見込みだが、船舶は依然として潜在的な機雷の存在に注意を払わなければならない。MOUによれば、イランは30日以内に機雷の除去および軍事障害物の撤去を行うことになっている。

JMICの勧告によると、すでに機雷1個が確認されており、同勧告には安全な航路の緯度・経度の座標も記載されている。

オマーン、イラン、およびその他のペルシャ湾岸諸国は、海峡の将来の管理について引き続き協議を行う予定だ。MOUでは「適用される国際法に従う」とされているものの、イランが海峡に対する一定の支配権を維持しようとするかどうかは不明である。■

ヘザー・モンジリオ

ヘザー・モンジリオはUSNI Newsの記者である。科学ジャーナリズムの修士号を取得しており、地方裁判所、犯罪、健康、軍事問題、海軍兵学校などを取材してきた。

2026年6月18日木曜日

イラン合意を受け入れざるを得なくなった事情は石油備蓄量とミサイル在庫だ。しかし、トランプは親イスラエル派・MAGA双方からの圧力に直面している

 

President Donald Trump addresses members of the media in the James S. Brady Press Briefing Room, Tuesday, January 20, 2026. (Official White House Photo by Joyce N. Boghosian)

2026年1月20日(火)、ジェームズ・S・ブレイディ記者会見室でメディアの取材に応じるドナルド・トランプ大統領。(ホワイトハウス公式写真:ジョイス・N・ボゴシアン撮影

ドナルド・トランプがイラン合意を受け入れざるを得なくなった理由は石油とミサイルの枯渇だ

Running Out of Oil and Missiles: Why Donald Trump Had to Take the Iran Deal

イラン核合意は「力による平和」として売り込まれるだろうが、2つの数字が別の事実を物語っている。米国の戦略石油備蓄は1983年以来の最低水準まで減少しており、また、7週間でTHAADおよびペイトリオットミサイル迎撃弾の約半分が消費されてしまっている。本分析では、この合意は交渉上の優位性というよりも、備蓄と弾薬庫の枯渇によって推進されたものであると論じている。

国が金曜日、イランと直接署名する見込みの覚書は、米国政治において稀な事態をもたらした。すなわち、ドナルド・J・トランプ大統領のタカ派の同盟者たちと、反戦を掲げる支持基盤が、正反対の理由から大統領に反対して団結したのだ。タカ派は、この合意がテヘランに過度の譲歩をもたらすと考えている。一方、「アメリカ・ファースト」派は、この合意を生み出した戦争そのものを最初から望んでいなかった。いずれにせよ、トランプ大統領が署名する理由は、この文書の14項目のいずれにも明記されていない。理由は、16週間にわたって急速に減少していた2つの数値にある――米国の戦略石油備蓄量と、ミサイルおよび迎撃弾の備蓄量にある。

6月中旬までに、両者とも相当減少したため、戦争を継続すれば、石油価格の高騰による景気後退や、軍備の空洞化を招くリスクが生じていた。

2017年7月30日(米国東部夏時間)、アラスカ州コディアックにある「太平洋宇宙港コンプレックス・アラスカ」から、THAAD(高高度防衛ミサイル)迎撃弾が発射された。これは「THAAD飛行実験(FET)-01」の一環である。この試験において、THAAD兵器システムは、空中発射型の中距離弾道ミサイル(MRBM)標的の迎撃に成功した。

合意は、強気の立場で交渉した大統領の成果ではない。時間が尽きてしまった大統領の産物である。

トランプが合意を必要とした理由1️⃣:石油備蓄量が1983年以来の低水準に

最も具体的な圧力はエナジー問題だった。2月28日に米国とイスラエルがイランへ空爆を開始すると、テヘランは報復として、世界の石油の約5分の1が通過する要衝ホルムズ海峡で船舶への威嚇や攻撃を行い、3月上旬にはイラン軍が同海峡を「閉鎖」すると宣言した。タンカー向け保険は利用できなくなったり、保険料が高騰し、船舶の往来は途絶え、この水路は事実上封鎖された。戦争前は70ドル前後で取引されていたブレント原油は、1バレルあたり100ドルを突破し(2022年以来の高値)、米国のガソリン価格は1ガロンあたり4.50ドルを超えた。筆者が住むフロリダ州オーランドのすぐ南では、93オクタンガソリンを1ガロンあたり6.00ドル近くで購入した。

ワシントンの対応は緊急備蓄の放出だったが、そこで事態は容赦ない展開を見せた。米国の戦略石油備蓄は2月に約4億1500万バレルを保有していたが、今週までに3億4030万バレルへと減少し、1983年以来の最低水準となった。備蓄は単にゼロまで空にすることはできない――貯蔵用の洞窟システムの損傷を防ぐため、最低量を保持しなければならないからだ。また、全力を挙げて放出しても、石油が製油所に届くまでに数日かかるため、放出速度には限界がある。

世界の備蓄は、現代において前例のないペースで消失しつつあった。ある分析によると、世界の石油備蓄は3月上旬から4月下旬にかけて1日あたり約480万バレル減少し、四半期ごとの減少量として過去最高記録を更新したほか、ホルムズ海峡における供給損失の累計は10億バレルを超えた。

2026年5月6日(水)、ホワイトハウスのイーストルームで開催された「軍人の母の日」イベントで演説するドナルド・J・トランプ大統領。(ホワイトハウス公式写真:アンドレア・ハンクス撮影)

あと数週間戦争が続いていれば、利用可能な備蓄は底をつき、ワシントンは次の価格高騰に対抗する手段をほとんど失っていたはずだ。それに伴い、燃料費の負担ですでに逼迫していた経済において、景気後退のリスクが高まっていた。

この合意は価格に即座に影響を及ぼした。ホルムズ海峡が再開される期待から、ガソリン価格は1ガロンあたり4.06ドル付近まで下落した

理由2️⃣『空の弾倉:イラン戦争がアメリカのミサイルを枯渇させた経緯』

第二の圧力は軍事的なものであり、こちらの方が長期的に危険である。

イラン作戦を継続する中で、米国の精密誘導弾や防空用迎撃ミサイルが、産業基盤が追いつけないほどのペースで消費されていった。

戦略国際問題研究所(CSIS)の分析および国防総省の内部備蓄評価に詳しい関係者によると、 戦争開始から最初の7週間で、米国はTHAAD迎撃ミサイルの在庫の少なくとも半分、ペイトリオット迎撃ミサイルのほぼ50%、トマホークミサイルの約30%に加え、精密打撃ミサイルの少なくとも45%、SM-3およびSM-6迎撃ミサイルの約20%を消費した――そして、これらのシステムを補充するには4年から5年を要する見込みだ。ペイン研究所の推計によると、米軍は「エピック・フューリー作戦」の開始後16日間で、535発のトマホークと402発のペイトリオット迎撃ミサイルを発射した

高性能な迎撃ミサイルが真の制約要因となっている。最も製造に時間がかかり、コストも最も高いためだ。THAAD迎撃ミサイル1基あたりの価格は約1,550万ドルであり、年間数百基しか生産できない生産ラインでは、数週間で空になってしまう弾薬庫を補充することはできない。上院軍事委員会のロジャー・ウィッカー委員長は3月の公聴会で、「わが国の防衛産業基盤は需要に追いつくのに苦戦している」と述べ、トランプ大統領がメーカーに生産量を4倍に増やすよう要請する中、国防総省は購入を加速させるために資金の振り替えを急いでいる。

アナリスト陣は、現在の消耗ペースだと、米国は4~5週間で迎撃ミサイルの備蓄全体の約半分を使い果たすと警告し、ある防衛系シンクタンクは、激戦が数日続けば、高性能な迎撃ミサイルの備蓄が危険水準まで減少する可能性があると指摘した。これが、2026年度国防授権法がペイトリオット、THAAD、SM-3、SM-6、トマホークの複数年度にわたる購入を命じた理由の一部である。戦争を継続すれば、備蓄は、他のいかなる不測の事態に対しても米国の即応態勢を損なう水準にまで低下していただろう。

その不測の事態には名前がある。すなわち、戦争を迅速に終結させるべきという戦略的論拠である。THAADやSM-3の迎撃ミサイルは、中国の弾道ミサイルの脅威が月を追うごとに高まっている太平洋地域において、中国との本格的な戦闘でもっと大きな需要が見込まれる。ペルシャ湾で消費される迎撃ミサイル1発は、台湾海峡で利用できない1発を意味し、イランとの戦争は、国防総省が最優先と位置づける戦域に脆弱性の窓を開いていた。

最も精巧な兵器が枯渇していくのを目の当たりにし、その再建に数年を要する状況下にある大統領には、交渉の席でイランが何を提示しようとも関係なく、戦争を止める強力な理由があった。

両翼からの反発:レビン、カールソン、そしてグリーン

トランプがこの合意を強迫的な状況下で受け入れたことを示す最も明確な兆候は、誰がそれを攻撃しているかという点にある。

タカ派では、フォックス・ニュースの司会者マーク・レビン――数ヶ月にわたり戦争批判派を激しく非難してきた人物――が、合意そのものに矛先を向け、署名式が近づくにつれて「俺の読み・聞き間違いであることを心底願っている」と記した。親イスラエル派の保守派や著名な共和党上院議員たちは、合意がトランプの公約には程遠いものであると警告しており、その批判は鋭さを増し、トランプ自身の顧問たちでさえ、自党の議員たちに反論を迫られるほどになっている。

一方で当初から戦争に反対していた「アメリカ・ファースト」派も、決して満足しているわけではない。タッカー・カールソンは空爆開始後の数日間、この戦争を「嫌悪すべき悪」と呼び、マージョリー・テイラー・グリーンは政権が公約を破ったと激しく非難し、「我々は『アメリカ・ファースト』と『戦争ゼロ』に投票したのに」と記した。

イランへの強力な攻撃を求めていた人々からも、そもそも攻撃自体を望んでいなかった人々からも同時に非難を浴びる合意は、その定義上、立案者が「望んだから」ではなく「やむを得ず」受け入れた合意であると言える。

順序が重要:文書より怒りが先にあった

批判派が何に反応していたのかを正確に把握することは重要だ。なぜなら、そのタイミングがすべてを物語るからである。この怒りの大部分は、現在署名に向けられている文書より前から生じていた。

「アメリカ・ファースト」派は、2月下旬に戦争が始まった時点で反発していた――カールソンやグリーンの最も厳しい言葉は、交渉による条件ではなく、戦う決定そのものを標的としていた。

タカ派が態度を翻したのはその後、5月だった。政権が合意を急いでいるという報道が浮上したためで、共和党タカ派は、トランプ大統領が当初要求していた内容よりはるかに低い条件で妥協してしまうのではないかと公然と懸念を強めた。

現在でも、米政府高官が記者団に草案を読み上げたばかりで、イラン側も独自の文書を公表していない状況下で、親イスラエル派の保守派は、合意内容の詳細に反応するのではなく、合意文書の全文の開示を求めている。

言い換えれば、幅広い層にひろがっている反発は、「14項目」そのものに対する反応ではなく、戦争そのもの、軟着陸の見通し、そしてそれを取り巻く秘密主義に対する反応である。これは、合意が文書化される数ヶ月前から高まっていた反発であり、明らかになりつつある条件によって沈静化することはまずないだろう。

政権側の主張――そして、タイミングが主張の説得力を損なっている理由

ホワイトハウスは異なる見解を示しており、その主張に耳を傾ける価値はある。

同政権の主張によれば、空爆はイランの核開発計画を壊滅的な打撃を与え、テヘランは米軍事力によって他に選択肢がなくなったため交渉の席に着き、この合意は「撤退」ではなく「力による平和」であるという。

トランプは、戦闘再開を望んでいるわけではないと主張しつつも、合意の履行にはさらなる爆撃という信憑性のある脅威が不可欠だと警告している。イランに合意をどのように遵守させるのかと問われると、「もし彼らが合意に違反すれば、徹底的に爆撃する」と述べた。

また、自身が直接署名するかどうかについては曖昧な態度を示しており、これは大統領が署名すべき種類の文書ではないかもしれないと示唆し、合意が破綻すればJD・ヴァンス副大統領のせいにすると冗談を飛ばした。

この「強硬路線」という物語の問題点は、その条件やタイミングが正反対の方向を指し示していることだ。草案では、米国が広範な制裁を免除し、地域パートナーと共に少なくとも3,000億ドル規模の復興計画にコミットし、イランの濃縮活動を完全に停止させるのではなく協議することに同意し、履行の担保として拘束力のある仕組みではなく将来の空爆の脅威に依存している。

これらは、戦争の終結を望んでいた側が譲歩した内容であり、さらに草案が保証するホルムズ海峡の通行自由も、わずか60日間のみである。経済を守る緩衝力が43年ぶりの低水準にあり、軍を支える弾薬庫も半分空っぽになっている状況下で、戦争の終結を必要としている側が、それを終わらせるために譲歩しているのだ。

署名すべきかどうかについて大統領自身が曖昧な態度を示し、合意を履行させるため爆撃再開の脅威に頼っている様子は、自信というよりは、本来は避けたい立場を何とか切り抜けようとしている人物のようにも見える。

結論:圧力の下で署名された合意

トランプ大統領が金曜日に署名しようとしているイラン合意は、勝利として売り込まれるだろう。そして国にとって、これはまさに正しい結果になるかもしれない――経済と軍備を持続不可能なペースで消耗させていた戦争からの脱出路となるからだ。しかし、自由意志で選んだという本人の主張は、数字と照らし合わせると成り立たない。戦略石油備蓄は1983年以来最低水準まで落ち込み、ホルムズ海峡は封鎖され、原油価格は100ドルを上回っていた。あと数週間もすれば、米国の消費者と価格ショックとの間にある最後の緩衝材も底をついていただろう。軍はTHAADとペイトリオット迎撃ミサイルの半分、トマホークミサイルの3分の1を消費しており、これらを再建するには数年を要し、太平洋の向こう側からは中国が備蓄減少を注視していた。そして、この合意そのものは、イランを屈服させたいと願ったタカ派にも、戦争を一切望まなかった支持基盤にも、満足のいくものではなかった。

備蓄の枯渇、空っぽの弾薬庫、そして失望という一点でしか結ばれていない連合――この組み合わせは、条件を押し付ける大統領の証ではない。それは、撤退の道が必要であり、利用可能な唯一の道を選んだ大統領の証である。

トランプがこの合意に署名したのは、彼が勝利したからではない。数週間先には、国内で石油危機が、海外では空洞化した軍隊という事態が待ち受けており、それらは彼でさえ支払えない代償だったからだ。


著者について:ハリー・J・カジアニス

ハリー・J・カジアニス (@Grecianformula) は、リチャード・ニクソンによって設立され、ワシントンD.C.に拠点を置く外交政策シンクタンク「センター・フォー・ザ・ナショナル・インタレスト(CFTNI)」の元国家安全保障担当シニア・ディレクターである。ハリーは、シンクタンクおよび国家安全保障関連の出版分野において、10年以上の経験を持つ。彼の見解は掲載されたニューヨーク・タイムズワシントン・ポスト、ウォール・ストリート・ジャーナル、CNN、その他多くのメディアを通じて世界中に発信されている。CSIS、ヘリテージ財団、ノッティンガム大学、および国家安全保障の研究・調査に関連するその他の複数の機関で要職を歴任した。『ナショナル・インタレスト』および『ザ・ディプロマット』の元編集長でもある。ハーバード大学で国際関係を専攻し、修士号を取得している。