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2024年10月23日水曜日

グアムの陸上イージス・ミサイル防衛システムを初公開(The War Zone)―協力な防空体制によるグアムの死守は西太平洋における米軍プレゼンスで至上命令だ

 Satellite view of the island of Guam plus Mk 41 VLS from Aegis Ashore air defense system.  

Stocktrek Images via Getty Images/U.S. Navy photo by William J. Busby III


イージスシステム陸上版がグアムに到着したが、これは非常に野心的な同島の防空能力向上計画の一部に過ぎない

平洋に浮かぶ戦略上重要な米領グアム島に配備された地対空防衛システム「イージス・アショア」用の垂直発射システム(VLS)Mk 41の画像が初公開された。陸上配備型Mk 41ランチャーは、同島内の米軍基地の脆弱性解消の一歩となる。特に中国は、この地域で全面的な紛争が発生した場合について言及している。最終的には、グアムのイージス・アショアは、同島を地球上で最も厳重に守る計画の一要素となる。

10月17日、地上構造物に設置されたVLSアレイを示す写真が、国防省の動画・画像配信サービス(DVIDS)で公開された。この画像は、トム・マンチェネリ海軍次官代行によるグアム訪問の様子を伝えるミクロネシア統合任務部隊のシリーズの一部だ。

DVIDSが提供した情報によると、マンチネリは軍の指導者から「インド太平洋地域における重要な防衛インフラ、戦力準備態勢、新たな脅威」に関する説明を受けた。

マンチネリはまた、米海軍のMH-60シーホークヘリコプターで島の上空を飛行した。これらはすべて、「島内の主要な戦略的要所を総合的に理解し、米軍の作戦と地域安全保障におけるグアムの重要な役割を強調する」ための一環であった。

しかし、最も興味深いのは、Mk 41 VLSアレイを示す写真だ。その写真のキャプションには、マンチネリが別の防空システムである米軍の島における終末高高度防衛ミサイル(THAAD)のバッテリーを見学したことが記されている。

本誌が以前にも述べたように、THAADは長年にわたって継続的に島に配備されてきた。特に北朝鮮からの攻撃の可能性やその他の潜在的な不測の事態に備えて配備されたものだが、中国からの脅威は北朝鮮のそれをはるかに凌駕している。

グアム防衛を大幅に強化する取り組みの一環として、米海軍はポーランドとルーマニアにとハワイの専用試験場に加えて、イージス・アショアシステムのバージョンをグアムに設置している。

通常、イージス・アショア施設は、メインの「デッキハウス」と関連サポートビルディング、そして冒頭の写真にあるようなVLSアレイで構成されている。

デッキハウスには、イージス・コンバット・システムやAN/SPY-1レーダーなどが収容されており、一部はアーレイ・バーク級駆逐艦のフライトIIA型を模したものとなっている。これは、イージス・アショアが海上配備型イージス弾道ミサイル防衛(BMD)システムを継承していることを反映したものだ。

イージス・アショアは、主に大気圏外における弾道ミサイルの中間段階において、SM-3迎撃ミサイルで脅威に対処するように設計されている。しかし、Mk 41はモジュール式ランチャーであるため、終末段階迎撃および対空SM-6や、今後導入されるグライドフェーズ・インターセプター(GPI)などの追加の対ミサイル迎撃ミサイルも追加することができる。GPIは、特定の飛来する極超音速の脅威やその他の兵器を撃墜する能力があるため、グアム防衛には特に適している可能性がある。追加のランチャーを島全体に分散配置すれば、改良型シー・スパロー・ミサイル(ESSM)ブロックIIや最新型のSM-2などの短距離ミサイルで、巡航ミサイルや無人機などの空中から飛来する脅威に対する防御も実現可能だ。ペイトリオット迎撃ミサイルの導入も可能性がある。

その能力は非常に需要が高いものの、グアムに従来のイージス・アショアを設置するには、さまざまな問題がある。

同島には、レーダーや無線システムに適した施設のスペースが限られているだけでなく、地形は山が多い。基本構成では、イージス・アショアは比較的大きな平らなスペースを必要とし、潜在的な脅威に対するレーダーのカバー範囲を最大化するように配置されなければならない。このような環境にイージス・アショアを設置することの難しさが、日本が独自のイージス・アショア計画実現を断念する決定を下す要因となった。

2013年時点でのポーランドにおけるイージス・アショアの想定レイアウトを示すMDAのブリーフィングスライドは、物理的なスペース要件の感覚を掴むのに役立つ。MDA

米軍は以前、2026年までに同基地を稼働させる計画であると発表していた。最終的には、イージス・アショアはグアムの特定の要件に適応し、計画中の強化統合防空ミサイル防衛Enhanced Integrated Air and Missile Defense (EIAMD)システムの一部分となるべきだ。昨年、米軍は、EIAMDの下で、地対空迎撃ミサイル、レーダーなどを配備する候補地として、現在20箇所を検討中であると明らかにした。

グアムで検討されている、強化統合防空ミサイル防衛システムの要素を収容する20の候補地を示した地図。 MDA

分散型で段階的な「システム・オブ・システムズ」アプローチを採用するEIAMDは、グアム全域をカバーする防空およびミサイル防衛を提供し、広範囲にわたる空中の脅威に対処する能力を備えることが計画されている。

先週撮影されたVLSアレイには見覚えがあるかもしれないが、全体的には、グアムのイージス・アショアは、おそらく東ヨーロッパのサイトとは大きく異なるはずだ。

多用途のMk 41VLSに追加のミサイルを統合する可能性があるだけでなく、グアムのイージス・アショアは、重要な要素を分散させることができ、生存性を向上させ、島の厳しい地形をより有効に活用する。

以前は、グアムのイージス・アショアの敷地の一部を地下の掩蔽壕や移動式プラットフォーム、あるいは船舶に設置する可能性について議論されていた。この1枚の写真を見る限り、敷地には少なくとも現時点では、VLS用の標準的な地上構造物が使用されている。

「イージスシステムが地下や移動式になる可能性がある」と、ミサイル防衛庁(MDA)のジョン・ヒル米海軍中将は2021年に語っていた。「レーダーと兵器を分離することは新しい技術ではありません」。

地上の固定施設には潜在的な脆弱性があることを米国防総省は十分に認識しており、特に中国のようなほぼ同等の能力を持つ敵対国との大規模な紛争においては、将来的にもその選択肢が残されているかもしれない

EIAMDには、以前は国土防衛レーダー・グアムとして知られていたAN/TPY-6レーダーが少なくとも4基含まれる。このレーダーは、アラスカで使用されているロッキード・マーティン製長距離識別レーダー(LRDR)で開発された技術を利用している。

アラスカ州クリア宇宙基地の長距離識別レーダー。MDA

以前にも述べたように、基本システムの静的かつ地上設置型という性質に内在する脆弱性に関わらず、イージス・アショアは主に、イランのような小規模な「ならず者」国家による限定的な弾道ミサイル攻撃に対する追加的な防衛ラインの提供を目的としている。より広範な戦略的抑止力や、同等の競争相手との全面戦争に対するより強固なミサイル防衛能力として見なされているわけではない。

イージス・アショア単独では、中国の攻撃に脆弱だ。中国は、弾道ミサイル兵器で島内の米軍基地を標的に飽和攻撃で圧倒するだろう。

しかし、グアムでは、イージス・アショア単独で、前述のTHAADを含む他のミサイル防衛システムを補完する役割を果たすことになるだろう。このシステムには限界があり、弾道ミサイルの終末段階での迎撃しかできない。同時に、AN/TYP-2レーダーは単方向であるため、脅威となる飛来物に対して360度範囲をカバーすることはできない。しかし、同島の防衛が急速に進化するにつれ、地上イージスは、拡張統合防空ミサイル防衛システム(EIDM)の中核となるはずだ。ペイトリオット、指向性エネルギーシステム、陸軍の新型下位層防空システム「Enduring Shield」など、さまざまなシステムが役割を果たすことになる。 

これらを総合すると、高度なまで多様で分散化されたシステムは、軍艦や航空機、特に宇宙ベースの監視システムともリンクすることが可能であり、グアムは地球上で最高度なまで防御された土地となるだろう。

 THAADシステムに関連する迎撃ミサイル用の輸送・設置・発射機。国防総省

同時に、最高の防空システムを導入してもなお、米軍は、グアムのような確立された基地に代わる選択肢として、太平洋全域に基地を展開する取り組みを進めている。これには、マリアナ諸島近隣の島々における代替運用場所も含まれる。

グアムにおけるイージス・アショアが最終的にどんな外観になるのか、また、より生存性の高いその他の要素が防空体制全体にどのように組み込まれるのかは依然として疑問のままだが、新型VLSの写真が示すように、国防総省は現在、同島の防衛体制を大幅に強化する方向に向かっている。最終的にそうした動きがあまりにも遅すぎず、また、不十分なものではないことを願うばかりだ。■

Our First Look At Land-Based Aegis Missile Defense System In Guam

Elements of the land-based version of the Aegis system are now in Guam, but they are just part of a very ambitious air defense upgrade for the island.

Thomas Newdick, Tyler Rogoway

Posted on Oct 21, 2024 3:23 PM EDT


https://www.twz.com/news-features/our-first-look-at-land-based-aegis-missile-defense-system-in-guam


2021年11月11日木曜日

グアム防衛にイージスアショアのかわりに退役巡洋艦タイコンデロガのイージスシステムが使えないか。意外に費用対効果が高い解決案になる? 日本でもイージス艦退役後の用途に参考にならないか。

 

USN

 

退役タイコンデロガ級巡洋艦をグアム周辺に配備すれば効率よくグアムのミサイル防衛の傘を拡げる効果が生まれるのではないか。

陸軍がイスラエル製アイアンドーム装備をグアムに配備し始めているが、数ある脅威の中でも巡航ミサイル相手に同装備が使えるかが焦点だ。同時に米軍にとってはさらに広範かつ多層構造のミサイル防衛の盾を戦略上重要なグアム島に展開することが課題だ。しかも迅速かつ安価に。そこでこの難題の解決策としてタイコンデロガ級巡洋艦を再活用できないか。米海軍は同級を退役させたいとしている。

現時点でグアムに展開中のミサイル防衛装備には陸軍のTHAADもあり、弾道ミサイルを最終段階で迎撃する。また前述のアイアンドームもある。陸軍は今回のアイアンドーム展開は短期間に限定し、実弾発射の予定もないとしている。

グアムに固定式イージスアショア施設を構築する案が昨年浮上してきた。米海軍はルーマニアで同様の施設を運用中だ。提案の背景には中国の航空部隊やミサイルの脅威がハイエンド戦にいったん発展すれば現実のものとなることもあり悠長なことは言ってられない事情がある。ただし、今年三月にミサイル防衛庁長官ジョン・ヒル海軍中将は地上配備装備では対航空機、ミサイル防衛の必要に対応できないと発言し、分散型防衛システムを提案し、地下施設や移動式装備の採用を提言した。

10月にMDAは議会に極秘扱いの報告書を送付し、グアム防衛システムの選択肢を提示した。本稿執筆時点で公になっているのは「装備構造研究」の部分のみで、かつ内容はごく少ないものの、機密解除版は非公開のままだ。

「追加研究の提言として、移動式装備に限った要求内容の検討があり、国際日付線以西の脅威に前方配備マルチドメイン指揮統制機能が対応する際の複雑性と緊急性はあえて無視している」とフィリップ・デイヴィッドソン海軍大将(インド太平洋軍INDOPACOM)司令官が退役前の3月に議会にて発言していた。デイヴィッドソンはイージスアショアのグアム配備を強く主張し、2026年以前に展開を完了し、太平洋での中国の動きを抑止すべきと口に衣着せず発言していた。

そこでタイコンデロガ級巡洋艦がからんでくる。現在同級は21隻が海軍にあるが、2022年度予算要求案では最古参の7隻を退役させるとある。各艦にはイージス戦闘システムが搭載され、強力な AN/SPY-1A/B多機能レーダーとMk 41垂直発射システム(VLS)122セルで各種ミサイルに対応する。SM-2、SM-6の対空ミサイル、SM-3弾道ミサイル迎撃ミサイルなどだ。このうちSM-2、SM-6は水上艦艇も二次攻撃対象とする。海軍はSM-6の大型派生型の開発も進めており、Mk41VLSで運用可能となり、MDAは対極超音速兵器の迎撃手段としてテストしたいとしている。

現在の標準型イージスアショア施設に同様の装備品が使われており、フライトIIAアーレイ・バーク級駆逐艦並みの機能を陸上に展開している。アーレイ・バーク級のイージス戦闘システムにはAN/SPY-1Dが採用されMk 41VLSは96セルになっている。

MDA

MDAの説明資料ではフライトIIA仕様のアーレイバーク級駆逐艦と陸上配備のイージスアショアの共通点を示している。

 

であれば、退役タイコンデロガ級巡洋艦を固定停泊させればイージスアショアと同様の有効範囲と性能が実現するはずだ。二隻以上定置させればさらに大きな防衛力が低コストで実現しそうだ。

今年八月にはヘリテージ財団がワシントンDCで海軍戦と高度技術が専門の主任研究員ブレント・サドラーがまとめた白書を公開し、まさしく同じ構想を展開した。サドラーは海軍が退役しようとするタイコンデロガ級7隻のうち3隻、すなわちUSSシャイロー、USSエリー、USSポートロイヤルにはイージス弾道ミサイル防衛装備が搭載されており、SM-3迎撃ミサイル他との組み合わせICBM含む大型ミサイル対応が可能と主張し、中間飛翔段階の大気圏外で迎撃できるとある。

「BMD対応の巡洋艦を退役させようという海軍の根拠は外洋運航するとこれまで保守管理をあとまわしにしてきたため高コストとなるからというものだ。とくに燃料タンクで漏れが発生している」(サドラー)「グアムには係留地が数か所ありBMD対応巡洋艦が短時間で場所を移動できるし、外洋では曳航移動も可能だろう。そのため艦の推進機関への高度対応体制は不要となり、乗組員削減も可能だ」

サドラーは自力移動力を限定しても曳航して移動でき、各艦の乗組員は最小限に絞ったまま、域内を移動しながら各種兵器を発射できると主張。

HERITAGE FOUNDATION

 

ヘリテージ財団による地図ではタイコンデロガ級巡洋艦三隻をグアムや米領サイパン付近や独立国パラオに配備した場合のミサイル防衛範囲を示している。

さらにグアムには戦略上重要な航空基地海軍施設があり、太平洋における米国の軍事力投射の中心地とされるので、同島への脅威を受け、近隣のティニアン島でも施設拡張の作業が必要となっている。また島しょ国のパラオとは防衛安全保障面での協力の仕組みづくりが進んでいる。退役後のタイコンデロガ級はこうした島しょ部の防衛にも役立つ。

ただし実施には費用とともに困難なハードルが立ちふさがる。「一部艦にはSPY-1Aレーダーが搭載されているが、アナログ装備だ」と海軍作戦部長マイケル・ギルディ大将が7月の海軍連盟イベントで述べており、「その他艦のレーダーも初期型SPY-1Bだ」と指摘した。

U.S. NAVY

タイコンデロガ級巡洋艦USSチャンセラーヴィルが2016年グアムに寄港した。

「こうした装備品は老朽化しており、敵ミサイルの速力に対応できず探知できなくなる事態が想定される」「巡洋艦自体の近代化改修は数千万ドルと当初想定を上回る額になっており、とくに供用開始後三十年が経過した艦体補修が大きな要素だ」(ギルディー作戦部長)

海軍では各種艦艇向けに新型かつミサイル防衛対応レーダーの導入を進めており、イージス戦闘システムも新しいバージョンに発展している。イージスのメーカーはロッキード・マーティンでAN/SPY-7(V)1長距離識別レーダー(LRDR) をタイコンデロガ級の AN/SPY-1 の後継装備として提案している。

係留状態のタイコンデロガ級ではかつての運用要求は不要となり、艦内センサーだけに依存しなくても脅威に対応できる。洋上展開する他艦や地上、空中、宇宙とネットワーク接続すればよい。ペンタゴンはすでにLRDRをハワイに設置する企画に取り組んでおり、戦術複合ミッション用水平線越えレーダーを独立国パラオに設置し、空中及びミサイルの脅威の探知能力向上をめざしている。これと別にグアムにも設置の話がある。衛星ベースのレーダー探知網を太平洋に実現する構想もある。

このからみでタイコンデロガ級が武装バージとしてVLSを活用し多層構造のミサイル防衛の一部になりうる。艦を不定期に移動すれば敵軍は位置把握に苦労するだろう。

「レーダーと兵装類の一体化の解除は前からある考え方だ」とMDAのヒル長官は3月にグアム防衛手段としてイージスアショア以外の可能性に触れていた。「リモート交戦」や「リモート発射」のコンセプトがミサイル防衛にあり、追尾照準データは外部から迎撃ミサイル発射装備に伝えられる。この考え方は確立済みだ。またネットワーク化センサー構造により標的の捕捉追尾が迅速になり、迎撃手段を確実に脅威に振り向けられる。

艦のレーダー他ミッション支援装備、主エンジンなど重整備が必要となる装備システムは除去するか廃棄する。指揮統制機能や主要センサー類は遠隔から行う。これで各艦を島しょ部防衛に投入しながら費用面で大きな訴求力が生まれる。

このような形でタイコンデロガ級を使用する承認を議会が出すかも落とし穴だ。議員連はいかなる理由にせよ巡洋艦退役に今後も反対し、各艦の能力とともに当面代替となる艦の出現が見えないのを理由とするはずだ。下院軍事委員会シーパワー及び兵力投射小委員会は今年始めにこうした反対意見が勢いを失いつつある兆候があるとしたが、下院上院ともに巡洋艦退役で生まれる穴を埋める海軍の案に懐疑的だ。

下院歳出委員会では別個に今後のグアム防衛システム予算を2022年度国防予算案から削除する動議を出している。ペンタゴンが正確な支出規模を伝えられないためとする。10月のMDA報告書では1.183億ドルでグアム向け新型防空ミサイル防衛体制の開発を開始するとあるが議員連が同じ要求を出していた。

老朽化してきたタイコンデロガ級巡洋艦群を再使用すれば、海軍としては装備品の整理にもなり、係留したまま防空ミサイル防衛拠点となりグアム周辺の防衛の傘を大きく広げる効果が生まれ、新しい解決策として関係者全員に魅力に映るはずなのだが。■

Decommissioned Navy Cruisers Could Be The Answer To Guam's Missile Defense Needs

BY JOSEPH TREVITHICK NOVEMBER 10, 2021



2019年1月30日水曜日

速報 日本向けイージス・アショアの販売が承認された





米国防安全保障協力庁が1月29日付で以下発表しましたので早速お伝えします。

https://www.dsca.mil/major-arms-sales/japan-aegis-weapon-system

海外軍事装備販売制度を利用する日本向け装備売却を国務省が以下の通り承認した。
  1. AEGIS ウェポンシステム (AIS) 2セット
  2. 多任務信号処理装置(MMSP) 2セット
  3. 指揮統制処理装置(C2P)更新 2セット
総額21.5億ドルで、日本政府の要望により審査していたもの。

上記金額には海軍仕様無線航法装置、敵味方識別装置(IFF)2セット、グローバル指揮統制装備海上仕様(GCCS-M) 2セット、慣性航法装置2セットを含む。

米国政府は契約企業とともに垂直発射装置6組のモジュール筐体、通信装置その他関連予備部品の導入で技術、工学、補給支援、設営支援、訓練、建設工事、非公開資料、ソフトウェアを提供する。この総額を21.5億ドルとする。

とあり、イージス・アショアと直接言及していませんが、垂直発射施設の構築があるのでイージス・アショアであることは明らかです。

なお、主契約企業はLockheed Martin Rotary and Mission Systemsがイージス戦闘システムと多任務信号処理装置(コンピュータですね)、General Dynamicsが指揮統制装置更新分となっています。

国内ではすでに反対運動に火をつけようという動きが見られますので、政府には十分な説明の上、住民理解を得て事業を迅速に進めていただきたいと思います。


2015年11月28日土曜日

★進化し続けるイージス、ルーマニアのイージスアショア稼動開始近づく、ベースライン9、各国の動向

カタカナ表記が嫌いなためこれまで陸上イージスなどとお伝えしてきましたが、今回からイージスアショアと記すことにします。イージスはどんどん進化してきているのですね。それにしても日本がミサイル防衛の最前線基地になっていることはわれわれも改めて認識しないといけません。

「USNI News」の画像検索結果Aegis Ashore in Romania Set For Dec. 31 Lightoff; BMD, SM-6 Nearing Full Fielding

November 27, 2015 7:35 AM            
                                   
A Raytheon SM-6 launched from an Aegis guided missile destroyer. US Navy Photo
レイセオン製SM-6の米海軍イージス艦からの発射テスト。 US Navy Photo

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イージス戦闘システム事業に重要な転換点が訪れそうだ。初の陸上配備イージスアショアの稼動開始、ベースライン9の配備開始、海外向け有償軍事援助(FMS)が数件進行中だ。
  1. イージスアショア初の設置はルーマニアで12月31日に電源を入れると統合戦闘システムズを統括するジョン・ヒル海軍少将はUSNI Newsに11月24日述べた。
  2. ヒル少将によれば同イージスシステムは認証ずみで実弾装てんの準備ができた。
  3. 「艦艇と同じ扱いをしている」と同少将は述べた。陸上設置工事はすでに検査試行が終わっており、残る機械類用スペースも完成しているという。最終検査終了後にいよいよ施設が稼動開始となる。またミサイル防衛庁が技術能力宣言(TCD)を行う予定で、これは初期作戦能力獲得(IOC)と同等とヒルは説明した。
  4. これとは別にイージスシステム全体があたらしい段階に移行する。ペースライン9の配備が始まるためだ。ベースライン9には統合防空・ミサイル迎撃 Integrated Air and Missile Defense (IAMD) 能力が加わり、弾道ミサイル迎撃と対空戦を同時に行うことが可能となり、海軍統合火器管制防空(NIFC-CA) 関連の装備にも接続される。
  5. 「配備準備ができた。まずUSSベンフォールド(DDG-65)とUSSバリー(DDG-52)が搭載し横須賀に向け航行中だ」(同少将)
  6. 「横須賀にはUSSチャンセラーズヴィル(CG-62)がすでに展開中で、運用テスト結果にたいへん喜んでいる」と上記駆逐艦二隻が作戦行動に入れるようになったことをさしている。
  7. 同時に「スタンダードミサイル-6の継続作戦能力テスト評価をまとめようとしており、来年春までにベースライン9は完全に稼動開始する」とヒル少将は続けた。
  8. 「艦隊には昨年から導入開始しているが、今回の能力向上は内容から見て大きな一歩だ」
  9. イージスの能力向上を目指すのは米海軍だけではないとヒル少将は述べ、進行中のFMS案件に注意を喚起した。日本のイージス駆逐艦近代改修事業が取り上げられることが多いが、スペインとオーストラリア各海軍の改修も半ばに差しかかっている。
  10. ヒル少将によれば米海軍はオーストラリア・アデレードに米海軍士官を常駐させており、来年春に予定されるオーストラリア初のイージス艦のシステム稼動開始を支援しているという。
  11. またスペイン海軍は時刻イージス艦にBMD能力を付与す改修を検討中だ。ヒル少将はスペイン海軍にはイージス戦闘システムを搭載した艦があり、そのうち一隻に応急改修をして弾道ミサイル追尾の海上公試を行わたという。その結果が良好だったため、スペイン海軍はBMD能力付与に関心を示しているのだという。FMSにより改修を実施するのは「ほぼ確実」とヒル少将は見ている。■


2015年5月19日火曜日

☆ 日本も陸上イージス導入か 米下院の国防法案修正に見る可能性



ミサイル防衛の整備は当然必要ですが、陸上配置型イージスシステムの導入を日本がまだ発表していない段階で米議会がこの動きをしたのは水面下で日本が導入を決めて米側と交渉している証拠なのでしょうか。また、東欧で先行して導入する施設は米軍が運用するのに対して、日本設置施設は日本単独あるいは日米共同運用と想定が異なっていますね。問題は設置箇所でしょうね。

House Paves the Way for Japan to Buy Aegis Ashore; Adds Anti-Air Warfare to European Sites

By: Megan Eckstein
May 18, 2015 4:45 AM • Updated: May 17, 2015 9:09 PM

The Japan Maritime Self-Defense Force Kongo-class guided-missile destroyer JDS Myoko (DDG 175) pulls out of Joint Base Pearl Harbor-Hickam to support Rim of the Pacific (RIMPAC) 2012. US Navy Photo
海上自衛隊のこんごう級誘導ミサイル駆逐艦JDSみょうこう(DDG-175)、パールハーバー・ヒッカム合同基地施設から出港し、リムパック2012演習に向かうところ。 US Navy Photo

国家防衛認可法案National Defense Authorization Act が5月15日に下院を通過し、米軍のイージス陸上型ミサイル防衛システム(陸上イージス Aegis Ashore)の性能向上とともに同様のシステムの同盟国向け売却が含まれている。

  1. 下院軍事委員会(HASC)の戦略兵力小委員会の委員長マイク・ロジャース議員(共、アラバマ州)が修正案を議場に堤出し、国防総省に陸上イージスの日本向売却を急ぐよう求めた。
  2. 「日本政府が陸上イージス導入を決定すれば、同国がすでに海軍艦船でイージス武装システムを導入していることから、相互運用能力ならびに対空、対ミサイル防衛の統合が密接な同盟である同国と更に進む大きな機会となり、戦力増強効果が生まれることから、多用途装備への配備を緩和する効果が期待される」と修正案は述べている。
  3. この措置は国防法案の一部としてHASC所属の共和、民主両党議員が賛同した。
  4. この修正案で日米のミサイル防衛がさらに強化されると内部筋がUSNI Newsに語った。日本はイージス艦を運用中であり、米軍のミサイル防衛用レーダー施設を二箇所に受入れており、米国とはスタンダードミサイル3ブロックIIA迎撃体を共同開発中。
  5. 日本は陸上イージス導入を正式に決定していないが、消息筋によると有償海外軍事援助では陸上イージスの販売はできないという。
 The deckhouse for the Aegis Ashore system at the Pacific Missile Range Facility. This is the test asset for the Aegis Ashore system on Jan. 8, 2014. US Navy Photo
テスト用の陸上イージスシステムの建屋、太平洋ミサイル試射場にて。 Jan. 8, 2014. US Navy Photo
  1. 同筋によれば米海軍は売却案を一年以上前から検討中だが修正案で売却が遅延している理由を問われる格好だという。海軍がHASCと連絡をとっているのを認めつつ、FMSが進まないのは「お役所仕事のせい」と同筋は見ており、銀行借入の例にたとえる。大口借入れ審査が通った申請者なら自動車程度の借入れなら簡単に処理するべきだという。
  2. 修正案は海軍にすべての手順順守を求めつつ迅速な処理を求めている。
  3. これとは別に法案に以下の条項が入っている。「政策担当海軍次官ならびに国務長官は協力して陸上イージスあるいは追加陸上イージス導入のための資金づくりで障害を取り除くものとする。そのための検討内容、としてその他連邦政府省庁機関と適切な調整をすること、受入国による運用または米国と受入国の共同運用の実現可能性を含むこととする」
  4. さらに「大統領は陸上イージス設置箇所につき受入国と協定を結び、もし設置箇所が作戦司令部の要求に合致すれば必要に応じ共同財政負担ならびに共同開発でも協定するものとする」とある。
  5. 現在企画中の陸上イージス設置場所はルーマニアとポーランドで、同法案ではこの双方に防空能力の追加を求めている。このうちルーマニアは今年後半に稼働開始するので2018年までに装備追加する必要がある。またポーランドでは建設前から能力追加した上で、2018年に稼働開始する。
  6. 同上筋によれば法案中のこの部分はHASC内で超党派的支持を受けており、一部反対の理由はロシアを刺激することだったという。東欧二箇所のミサイル防衛施設は中東から飛来する弾道ミサイルからヨーロッパ同盟各国を防衛することが目的だが、ロシアは脅威だと受け止めている。
  7. 同上筋によればロジャーズ議員、戦略兵力小委員会、HASC所属議員多数が在外米軍部隊の防衛は道義上必要と感じ、可能な手段はすべて使うべきだとしている。ロシアが東欧の両施設を脅威対象と認識するのであれば、同施設運営に当たる数百名の米軍要員の防護手段が必要となる。
  8. なお下院法案は上院軍事委員会が賛同しないと成立しない。


2014年9月18日木曜日

★★日本も陸上配備イージス導入か。海自イージス艦も性能改修へ



イージスはヨーロッパ向けに陸上配備の整備計画も進んでおり、日本も導入したいというのが今回の背景でしょう。なお、いつもながら防衛省の使っている「護衛艦」は駆逐艦と訳しています。ちゃんとDDGとなっていますからね。



Report: Japan Interested in Aegis Ashore for Ballistic Missile Defense

By: Sam LaGrone
September 16, 2014 1:23 PM
 The deckhouse for the Aegis Ashore system at the Pacific Missile Range Facility. This is the test asset for the Aegis Ashore system on Jan. 8, 2014. US Navy Photo
テスト用のイージス陸上型の指令制御建家が太平洋ミサイル試射場内に設置されている。 Jan. 8, 2014. US Navy Photo


防衛省がロッキード・マーティンのイージス陸上型 Aegis Ashore 弾道ミサイル防衛装備調達に関心を示していると毎日新聞が報道している。

  1. 記事では平成27年度に防衛省は数千万円規模の研究費を要求する。イージス陸上型はロッキード・マーティンのSPY-1Dレーダーとレイセオンのスタンダードミサイル-3を組み合わせる。

  1. 防衛省は導入済みの艦船搭載SM-3に加え、地上発射型SM-3で弾道ミサイル防衛(BMD)の実効性を上げる意向、と記事は伝えている。

  1. USNI Newsはロッキード・マーティンと米ミサイル防衛庁(MDA)に問い合わせたが、同記事について双方から言及がなかった。

  1. 日本関連で実施中なのはレイセオンの陸軍・海軍共用レーダー監視BMDレーダ(AN/TPY-2) が唯一の事例とMDA報道官はUSNI Newsに述べている。

  1. 日本はこんごう級イージス搭載誘導ミサイル駆逐艦4隻にSM-3を搭載し、長距離弾道ミサイルに対応しているほか、ロッキード・マーティンのペイトリオット性能向上型 (PAC-3) 移動式地上発射迎撃ミサイルを極地防衛用に運営している。さらにイージス艦を2018年までに8隻に増強する予定と報じられている。
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  1. 「大量のミサイルが同時に飛来すればPAC3では対応しきれないとの懸念がある」と記事は伝えている。

Japanese Aegis Destroyer JS Kongo (DDG-173) launches a SM-3 in 2007. U.S. Navy Photo
こんごう (DDG-173) のSM-3発射 (2007年)US Navy Photo

  1. ただし、こんごう級のイージスBMD装備は旧式化しており、BMD対応と防空戦を同時に実施できない欠陥がある。

  1. そこで一部艦船をベイスライン9仕様に改修し、BMDと対空対応(AAW)を同時に行えるようにする計画がある。

  1. イージス陸上型はベイスライン9で作動してもAAW装備は付随していないが、日米海軍艦艇で運用中のイージス装備が似通っていることから、将来的には能力拡大の余地があるとみられる。

  1. 「艦艇用イージス装備を流用することで、AAW以外に最終飛行段階や中間飛行段階防衛も可能だ」とジェフ・ウェストン海軍大佐Capt. Jeff Weston(陸上イージス計画主幹)が昨年行われたUSNI News取材で答えている。ウェストン大佐は米国向け陸上イージスはBMDを中心に対応する、とも述べている。

  1. ただし日本向けのイージス陸上型にAAW能力を追加し、BMDと同時に防空作戦を複数目標向けに行う可能性が出てくるだろう。■



2014年5月25日日曜日

イージスは陸上へ 初の陸上イージス実弾発射テストが実施されました


米海軍協会が伝えるイージスが陸上運用にも転用されるというお話です。海軍が陸上での運用はあたるとすると海軍の活動範囲は広がりますね。航空関係の拡充など海軍の存在が大きくなっていますね。一方、陸軍は陸上イージス施設の防護に当たるという立場に変わるのでは。

U.S. Conducts First Aegis Ashore Live Missile Test

USNI News By: Sam LaGrone
May 21, 2014 1:34 PM
 The deckhouse for the Aegis Ashore system at the Pacific Missile Range Facility. This is the test asset for the Aegis Ashore system on Jan. 8, 2014. US Navy Photo
The deckhouse for the Aegis Ashore system at the Pacific Missile Range Facility. This is the test asset for the Aegis Ashore system on Jan. 8, 2014. US Navy Photo
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米海軍とミサイル防衛庁が陸上イージス  Aegis Ashore テスト施設(ハワイ州カウアイ島)で初の発射テストを実施したとロッキード・マーティンからUSNIに明らかにされた、
  1. テストは5月20日でレイセオン製SM-3Bミサイルで模擬目標を迎撃した。海軍のベイスライン9イージスミサイル性能改修では初の実弾発射テストになった。

  1. 今回のテストはルーマニアで初のイージス陸上施設を建設する数ヶ月前というタイミングで行った。

  1. テスト二回目は2015年5月予定。次回は弾道ミサイル目標を使用する。

  1. 陸上イージス開発は4年前に始まっている。2009年に米国はミサイル防衛システムの構成を恒久的地上配備から誘導ミサイル艦船のシステムを流用して地上イージスシステム(移動式)に変更した。
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  1. 欧州のBMD対策を段階的適応アプローチ European Phased Adaptive Approach (EPAA)で実施するべく海軍はアーレー・バーク級誘導ミサイル駆逐艦4隻をスペイン・ロタへ派遣し、地中海で定期的パトロールを実施しており、これと平行して陸上イージス開発を急いできた。

  1. 陸上イージスでは艦と同じSPY-1DレーダーとMk-41垂直発射システムでSM-3ミサイルを使用する。ロッキードによる最新のベイスライン9イージスソフトウェア、ハードウェア構成を使う。アーレー・バーク級駆逐艦では弾道ミサイルに加え航空機も迎撃できるが、陸上イージスでは同様の対応は想定していない。

  1. ロッキード・マーティンはニュージャージーの同社施設内にあった陸上イージスを解体しており、ルーマニアに搬入する。

  1. 陸上イージスは海軍兵員11名と民間支援スタッフが運用する。■