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4月, 2020の投稿を表示しています

新型駆逐艦ズムワルトは正式引き渡しされたが戦力化は未整備、3号艦リンドン・ジョンソンも今年完成

米 海軍がUSSズムワルトDDG-1000を正式に受領した。3隻からなる大型ステルス駆逐艦の初号艦で単価は約70億ドル。 だが単純に喜べない事情がある。ズムワルトはあと数年の公試を完了しないと第一線に配備されない。 稼働まで長時間がかかるのは米海軍が新仕様の艦船開発に苦労しているためだ。同艦は30年ぶりの新型艦のためでもある。 ズムワルトは海上公試を経て戦闘装備が利用可能となりサンディエゴで引き渡された。「引き渡しは大きな一歩だが、DDG-1000の海上テストはさらに内容を高度化して続けていく」とDDG-1000事業を統括するケビン・スミス大佐が声明文を発表した。 ズムワルトがここまで来るのに時間がかかった。メイン州のバスアイアンワークス造船所を離れたのが2016年末だった。バスは残る2隻も建造しており、2020年末に就役する。 排水量16千トンのズムワルトは即作戦投入可能とならなかった。下に向け傾斜のつく同艦の特殊艦体の機能はすべて理解されず、さらに155ミリ高性能艦砲システム用の専用砲弾はなかった。ほぼ四年が経過し、艦体は問題ないと解明されたが、高経費を理由に主砲用の砲弾調達は中止された。同艦はもともと海兵隊の上陸作戦を火砲で支援する位置づけだったが対水上艦戦用に変わった。  か わりに精密長射程誘導弾を対地攻撃に使うと2018年に決まり、対艦攻撃用にトマホークとSM-6ミサイルの搭載も決まった。ズムワルト級は対艦巡航ミサイルを各艦の発射セル80門に搭載する。 ただし各艦は実力を発揮できる状態ではない。艦隊に編入後もスミス大佐のいう「複雑かつ多様な任務の海上公試」を続けるからだ。 ズムワルトはまず試験部隊に編入され、有人・無人艦混合の戦術開発に従事する。初期作戦能力獲得は2021年後半の予定で、その後に任務投入される。 米海軍は一時はズムワルト級の32隻整備を想定したが、建造費と技術面で3隻に削減された。ズムワルト級のかわりにアーレイ・バーク級の建造再開が決まった。2号艦マイケル・マンソーは完成しており、最終艦リンドン・B・ジョンソンの建造はメイン州のバスアイアンワークスで進行中で2020年12月に引き渡し予定だ。 バーク級は10千トンとズムワルトより小さいが、単価は

最長供用期間を更新するU-2の最新改修内容について

U -2スパイ機は現時点でも米史上最長の供用機材だが、追加改修で将来の戦場でも実力が発揮できるようになる。 ロッキード・マーティン U-2の初飛行は1955年で、冷戦時にドラゴンレイディのあだ名が付いた。搭載装備の更新で将来の戦闘場面でも十分に情報収集可能となる。 ロッキード・マーティン広報資料にはスカンクワークス事業部が米空軍向けに今回の改修を行うとある。改修で搭載電子装備を一新し、パイロットのディスプレイを換装し負担軽減と意思決定が楽になる。▶「エイビオニクス装備を一新し、搭載システムも近代化し新技術を導入する。ミッションコンピータも空軍のオープンミッションシステムズ(OMS)標準となるのでU-2は陸海空さらにサイバーの各分野で高度のセキュリテイで活動可能となり、コックピット改修でパイロット負担を減らしながら収集したデータの表示方法を改良し、これまでより迅速かつ良質な意思決定が可能となる」 オープンミッションシステムズ OMS改修に最大の意義がある。OMSは情報の標準インターフェースであり、戦闘空間のデータ収集を各種機材に可能とする。OMSの狙いはデータ収集から送信までの時間を最適化し、戦闘空間内の各機にリアルタイムで情報の更新を可能にすることだ。 OMSさらに情報収集について「共通メッセージインターフェースでレーダー、通信装置等のサブシステムに応用し、さらに自動飛行経路決定や戦闘管理に応用する」と報告書にあり、戦闘空域に入る各機にOMS標準を応用するとある。「OMS標準のミッションシステムと機能が各機材で再利用できる。さらに機材への搭載時間を大幅に短縮でき、新機能が経済的に利用可能となる」▶オープンミッションシステムズはB-2ステルス爆撃機、グローバルホーク偵察無人機ですでにテストが始まっている。▶2021年中のテストを経て、ロッキード・マーティンはU-2改修を「2022年初頭」に実施したいとする。 重要性は変わらない 偵察衛星のカメラは高精度だが、地球周回軌道の制約を受ける。衛星の次回上空到達は予め計算でき対象を隠すことが可能だ。U-2ならこの問題はない。▶U-2が今後も機能を発揮していくのは、情報データ収集のスピードによるところが大きい。偵察対象を与えれば、U-2は上空まで到達できる。OMSの導入でドラ

歴史に残らなかった機体15 メッサーシュミット110

1 930年代中葉のナチドイツには問題がひとつあった。ハインケル111のような双発中距離爆撃機は1,500マイルの戦闘半径があったが、単発戦闘機メッサーシュミット Bf 109 はわずか400マイルだった。1939年当時の航空兵力信奉者は爆撃機が敵防空網を突破できると信じていたとはいえ、ドイツは目的地まで援護し帰還可能な長距離戦闘機の必要性を感じていた。 解決策がメッサーシュミット110双発戦闘機で、外観は小型爆撃機そのものだった。初期型のBf 110Cでも戦闘行動半径1,500マイルを実現し、単発機を上回る武装の機関砲4門、機関銃4本を前方に、さらに後部銃手が機関銃で後部に食いつく敵機を追い払うはずだった。最高速度350マイルは第二次大戦初期の戦闘機の多くを上回っていた。 戦闘機の設計では全てが思い通りに実現しない。燃料を大量搭載するため機体は大型化され重戦闘機となった。大型で重量がますため双発とし、重量が追加された。その結果、Bf 110 の機体重量は4トンと、Bf 109の2倍になった。 同機は駆逐戦闘機と呼ばれ、重戦闘機へのドイツの信頼の象徴となった。ドイツ空軍ではエリート部隊とされ、1939年の開戦時にはポーランドの複葉機や援護無しでドイツへ飛来した英爆撃機を駆逐した。 ところが英国の戦いが1940年夏に始まるとルフトバッフェはそれまでの地上部隊への航空支援と全く異なる状況に入った。フランスやノルウェイを離陸した攻撃部隊に対しBf 109は航続距離が圧倒的に足りず、ロンドン上空で10分しか余裕がない始末だったので爆撃機部隊は英空軍の迎撃を食らった。 長距離援護戦闘機の必要性を痛感したルフトバッフェはエリート部隊のBf 110の投入に踏み切った。低速のボーランド軍複葉機が相手と違い、RAFのハリケーン、スピットファイヤは高速で、Bf 110は単発戦闘機の前に操縦性、加速性がいずれも劣ることを思い知らされた。爆撃機の護衛を放棄し、Bf 110部隊は弧を描く飛行で各機を防護する必要に追い込まれ、RAF戦闘機を近づけさせないようにするのが精一杯だった。 英国の戦いでドイツ空軍はBf 110を237機投入し、223機を喪失した。犠牲者の一人が空軍司令ヘルマン・ゲーリングの甥ハンス-ヨアヒム・ゲーリングだ

ボーイング、エンブラエル提携解消でC-390の行方が不安となる

ボ ーイング と エンブラエル の共同事業合意が破棄され、エンブラエルC-390ミレニアム軍用輸送機の海外販売が困難になりそうだ。▶共同事業案ではエンブラエルが51%、ボーイング49%の所有権を持つはずだったが、両社で最終合意できず不成立になったとボーイングは4月25日に発表。 共同事業案は欧州委員会の認可待ちだった。新会社発足の前に予備的措置の「マスター取引合意」で業務開始していた。▶ただしマスター合意事項では4月24日が合意形成の最終日だったが、形成できず両社は予備的合意を延長しないことで意見が一致したとボーイングは述べている。▶ボーイングは合意できなかった条件内容を明らかにせず、論評も避けている。エンブラエルも問合わせに対応していない。 C-390は双発軍用輸送機でブラジル空軍向けにエンブラエルが開発し、当初はKC-390として空中給油機兼輸送機としていた。▶両社は昨年11月のドバイ航空ショーでC-390ミレニアムに名称変更し、共同事業体名称をボーイング・エンブラエル-ディフェンスとすると発表し、各国の軍用市場参入を狙っていた。 今後のC-390の海外向け営業は困難の連続となる。各国とも輸送機を選択済みのためだ。さらに戦術輸送機の需要は比較的小さい。▶さらに市場は今後数年にわたり厳しい状況となる。Tealグループ予想では市場規模は2027年までに36.2億ドル規模と42%縮小する。生産規模も年間56機と24%減る。▶現在供用中の軍用輸送機は総数869機で ロッキード・マーティン のC-130(L-100)が2割を占める。さらにC-130の大部分は米空軍が運用中だ。 ボーイングと共同事業体を立ち上げエンブラエルは米国内に生産拠点を置きC-390を米国向けに販売する予定だった。ボーイングを通じ米国に生産ラインがあれば米国の有償軍事援助制度でC-390の各国向け販売が楽になるはずだった。▶今やこうした目論見が消えた。 ボーイングはエンブラエルと2012年に調印の提携関係は残し、C-390の販売、サポートを共同実施するとしている。ただし、同社は共同事業体構想と販売合意の違いを説明していない。 2019年11月以降ではエンブラエルはKC-390をブラジル空軍に2機納入しており、あと25機を引き渡す。ポルトガル向けに5機の確定受注があり、

いずもを正規空母に改装しF-35C運用を可能にしたらどうなるか大胆に想像

海上自衛隊艦艇は数隻ずつ建造され、確実に進化させており、いずも級のあとに本格的空母が建造されると見る向きも多いと思います。その中でいずもを正規空母にしたらどうなるか、というのが今回の大胆な記事の趣旨です。が、3万トン弱の艦容では意味のある機材運用は無理では。やはり次世代の大型「空母」を最初から建造するのを待つべきなのでしょうか。 これがリークされたいずも改装案のスライドの一部のようです。 日 本のいずも級「ヘリコプター駆逐艦」2隻はヘリコプター空母から小型航空母艦に改装され、スキージャンプ方式飛行甲板でF-35を運用するはずだ。 では、いずも級をカタパルト式空母にしたらどうなるか 。 国防関係のウェブサイトに1枚の写真が掲載された。明らかにリークのパワーポイントスライドでいずもが小型正規空母としてF-35Cをカタパルトで運用する姿となっている。 興味をそそられるのはスライド下部に ジェネラルアトミックス・エレクトロマグネティックス の社名がついていることだ。リーパー、プレデター無人機のメーカーとして有名なジェネラルアトミックスは電磁航空機発艦システム(EMALS)や高性能拘束装置(AAG)のメーカーでもあり、EMALS、AAGは従来の蒸気カタパルトや拘束装置に代わり新型フォード級空母に採用されている。 スライドに詳細情報はない。(ジェネラルアトミックスにNational Interestが照会したが現時点で無回答)だが上部には「JMSDF(海上自衛隊)の航空機:E-2C/E-2Dホークアイ、F-35CライトニングII、H-60シーホーク、V-22オスプレイ、その他?」の表記がある。改装後のいずもの上面図・側面図は空母らしくなり、F-35の二機が前方でカタパルト発艦に備え、その他7機のF-35、E-2一機が駐機し、ヘリコプターがブリッジ近くに、さらにV-22らしき機材が後部に見える。 いずも、かがの2艦は異色の艦艇だ。スキージャンプではなく全通型の飛行甲板を備え、短距離離陸機の運用ができない。だがカタパルト、拘束装置も搭載せず、通常型艦載機の発艦着艦にも対応できない。 ただし、F-35Cとカタパルトでいずもが劇的に変わるというのは決して誇張ではない。F-35Bは短距離離陸垂直着陸(STOVL

最新型F-15QAから見える米空軍向けF-15EXの性能水準と期待

F -15イーグルの最新型が初飛行に成功した。 2020年4月14日、F-15QA初号機がセントルイスのランバート国際空港を離陸した。F-15QAはF-15Eが原型。豊かな産油国カタールは2017年にF-15QA計36機を60億ドルで発注した。▶これまでカタール空軍は1990年代製のミラージュ2000を12機運用していたが、今回のF-15QAの36機以外にダッソー・ラファール36機とユーロファイター・タイフーン24機も発注している。▶つまり、同国は西側主要メーカー各社の新型機を調達し、機材数の拡充とともに各種性能を手に入れようとしている。反面、各機材の維持管理が高額につく。 基本形のF-15は50年前の設計だが、QA型は初期のF-15Aと比較すれば相当の進歩を遂げている。QAはフライ・バイ・ワイヤの飛行制御、 AN/APG-82(V)1高性能電子スキャンアレイレーダー、パイロット、後席の兵装システム士官向けに共用型ヘルメット搭載照準システムを提供し、エンジンは最新の ジェネラル・エレクトリック F110-GE-129となっている。▶また兵装ハードポイントが追加され、空対空ミサイル最大16本を搭載できるが、航続距離と最大速力を犠牲にする。▶「高性能版F-15QAは戦闘の様相を一変させる性能とともに高度製造技術の応用で生産効率を高めている。飛行時間あたり経費は同クラスの他機の半分程度でありながらペイロード、航続距離ともに増えている」とボーイングは声明文を発表している。 米空軍はF-15QAとほぼ同等の新規製造F-15EX144機を調達し、240機あるF-15C型D型を更新する。▶米議会はF-15EXの8機を10億ドルで調達する2020年度予算を承認している。価格は予備部品を含む。▶米空軍はF-15EXを平時の国内防空に投入し、ステルス性の欠如が大きな欠点にならないとする。▶有事にはF-15EXは長距離極超音速ミサイルを発射しつつ、戦闘用無人機編隊の統制機ともなるはずだ。■ この記事は以下を再構成したものです 。 Check Out This Powerful New F-15 (Not Flying for America) Could this be a preview of what the F-15EX cou

F-22は2060年代まで最先端戦闘機として供用を狙う(予算が全て計上されれば)

性 能改修が予定通りすべて実現すれば、F-22は最高水準の制空戦闘機のまま2060年代まで君臨し、第6世代戦闘機と交代する。 F-35やF-15Xに関心が集まる中、米空軍の主力制空戦闘機F-22ラプターの影が薄かった。 2000年代初頭に供用開始した当時、ラプターは世界最高水準の機体だったが、ラプターの性能向上改修はF-15、F-16と比べると頻度が少なく、一部で旧式化してきた。たとえば、F-16、F-15、F/A-18はJHMCSミサイル照準技術を導入し、パイロットは敵機へ視線を向けるだけでよいが、F-22に導入されていない。 米空軍はF-22改修をソフトウェアで対応し、ハードウェア改修は最小限で兵装を統合してきた。だがレーダーや電子光学センサーは小型化し性能向上している。 F-22の機体はUSAF供用中の機材では最高性能の「シャーシ」で、推力偏向やスーパークルーズ性能を実現したが、ステルス性のためセンサーやポッドを搭載できない構造だ。さらに製造は2011年に終了しており、機体性能の改修の余地は限られる。 F-22の最新の改修はハードウェアとソフトウェアに及び、ベースライン3.2B、アップデータ6とそれぞれ呼称される。目標は最新の空対空ミサイルの導入とネットワーク戦能力の向上だ。 AIM-9X、AIM-120D空対空ミサイルをF-22のエイビオニクスで対応可能とする。AIM-9Xは2014年からF-22へ導入予定だったが、何度も延期されてきた。 同ミサイルは2017年に利用可能となっており、いよいよJHMCSヘルメットをF-22に導入する。 改修では新型暗号技術も導入し、厳しい電子戦環境でもF-22を対応可能とする。Link-16データリンクの送信モジュールを組合わせF-22は他機種とレーダー・標的情報を送受信し共有可能となる。現状ではF-22でLink-16の「受信」しかできない。 戦闘状況を把握するセンサーで旧型機に情報共有する機能をF-35が実現したことで、USAFもF-22のデータリンク性能向上に向かうのだろう。 データリンクとミサイル更新を組み合わせたF-22は最新第4世代機と肩を並べる。F-35はセンサー技術で依然として先を走る。 ただし、F-22のセンサー