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11月, 2021の投稿を表示しています

オーストラリアSSN選定はここまで困難な作業となる。ヴァージニア級対アステュート級の比較。米設計案の採用が有望に見えるが、2060年代の安全保障を左右しかねない重大な決断。

  英海軍のアステュート級。. Image: Creative Commons.     王 立オーストラリア海軍(RAN)向けの原子力潜水艦の選定は非常に複雑かつ困難な選択となる。現在、二型式が候補にあがっている。米海軍(USN)のヴァージニア級ブロックV、英海軍(RN)のアステュート級だ。   ともに優秀な艦で性能は互角といえる。原子炉は燃料交換が不要な点で共通しており、高性能ポンプジェット方式の採用も同じだ。またトマホーク巡航ミサイルを運用できる点も共通する。   オーストラリア政府が検討すべき点として何隻を整備するのか、供用期間、国内産業界への裨益などがある。   今回は両級の違いに着目し、リスク、サイズ、乗員規模、ペイロード、供用開始時期、また輸出規制について論じたい。       【設計上のリスク】ヴァージニア級ではオーストラリアが運用を望むAN/BYG-1 戦闘システムとMk-48魚雷の運用が最初から可能だが、アステュート級は想定してない。アステュート級を改装すれば、ち密に設定されている艦内配置、重量、浮力、バランス、動力、冷却機能の変更が必要となり、想定外の問題になりそうだ。既存設計の変更は数億ドル相当の作業となり数年かかる。代替策として最初から英装備を受け入れ、英国製戦闘システムとスピアフィッシュ魚雷を採用することがある。   【サイズ】両級とも通常型の既存艦コリンズ級を上回るサイズで、オーストラリアのインフラ整備が必要だ。これは低規模予算では実施できない。アステュート級は全長97メートル、排水量7,800トン、ブロックV仕様のヴァージニア級は140.5メートル、10,364トンだ。コリンズ級は77.8メートル、3,407トンにすぎない。   【乗員数】RANではコリンズ級の60名の乗員確保にも苦労しているので乗員数は少ないに越したことはない。アステュート級は90名、ヴァージニア級は130名程度が必要だ。   【ペイロード】ヴァージニア級がアステュート級より大きく、トマホークミサイルに加え将来の新型装備にも対応する。英艦は魚雷発射管を使うのみで、スピアフィッシュとトマホーク合計38発の発射が可能だ。ブロックVヴァージニア級は65発を搭載する。魚雷発射管から25発、ペイロード発射管からトマホーク12発のほか、セイル後方の大直径ペイロード発射管からトマ

歴史に残らなかった機体 番外編 米空愚がこの戦闘機が正式採用されていたら歴史は変わっていた----消えた5機種を見る。

  F -35共用打撃戦闘機やF-22ラプターの背後に選定に漏れた競合各機があった。米政府は優秀な機体を選択したことはずだが、常に選定は正しかっのだろうか。 過去の選定に漏れた機体は国防総省が対象企業の言う通りの性能の実現を信じられなかった、機体性能がその時点で必要とされた水準に達していなかったため採択されなかった。 理由はいろいろだが、選定に漏れた各戦闘機は生産されなかった。だが、選定されていれば、卓越した、あるいは他に比類なき性能を発揮していたはずの機体がある。では、その5例を見てみよう。 第5位 F-16XL もっと優秀な F-16 F-16ファイティングファルコンは40年超にわたり、米空軍戦闘機部隊の中心だが、F-16供用開始の一年前、F-16をしのぐF-16XLが生まれていた。 同機は技術実証機の域を超えた高性能を発揮し、空軍の求める高性能戦術戦闘機としてF-15Eの有力な対抗策になっていた。 F-16XL (U.S. Air Force photo) だが製造コストと既存システムの利用という点でF-15Eに軍配が下り、同機は敗退したが、今でもF-16XLの優秀性を論じるものが多い。 主張には議論の余地があるが、F-16XLが実現していたら第四世代戦闘機として最高性能を発揮していたのだろうか。 第4位 A-12 Avenger II:米国初のステルス戦闘機になるはずだった (U.S. Navy) 1988年1月13日、マクダネルダグラス=ジェネラルダイナミクス合同チームにA-12アヴェンジャーIIの開発契約が交付された。同機はロッキードがSR-71派生型で武装型となるはずだったA-12とは別の機体だ。実現すればA-12は全翼機形状となり、ノースロップ・グラマンB-2スピリット、同社のB-21レイダー同様の形状ながらはるかに小型の機体となっていただろう。ただA-12アヴェンジャーIIは全翼機形状を採用したが、機体全容は当時開発中のB-2スピリットとは異なる姿だった。 Artist’s rendering of A-12 Avenger II A-12は鋭角三角形形状で、「空飛ぶドリトス」の愛称がついた。A-12開発は問題なく進展している観があったが、突然国防長官(のちの副大統領)ディック・チェイニーにより1991年1月に開発中止とされた。 第3位 YF-12

輸送機がミサイル発射機になる。米空軍が進めるパレット弾薬類構想。

  米空軍がめざす戦力分散化の一貫としてこれまで支援機とされてきた機材も戦力を展開する手段となってきました。Breaking Defenseが以下伝えています。 2021年11月3日の空軍によるラピッドドラゴン構想の実証で実弾非装てんの巡航ミサイルが空中で発進した。MC-130Jがパレットのまま同ミサイルを投下した。(US Air Force) 米 空軍は輸送機を爆弾投下機に変貌させる画期的な演習を来月実施する。▼MC-130Jの標準貨物パレットで巡航ミサイル実弾をパラシュートで空中に投下する。▼この実証で空軍のラピッドドラゴン Rapid Dragon 事業の第一段階が終了する。▼これは「パレット弾薬」 Palletized Munition  構想の効果を確かめるのが目的だ。 高度戦力を展開する中国のような相手との戦闘の初期段階で空軍は空爆を受けることを覚悟しており、輸送用機材による人員装備の戦闘地への搬送が困難になると見ている。▼さらに、現有の戦闘機攻撃機だけでは打撃戦力に不足が生まれると想定している。▼コスト効果に優れた形で長距離スタンドオフ兵器を大量に多くの機材で運用できれば、戦闘実施の柔軟性が伸び、新たな抑止効果が生まれると空軍は期待する。▼米空軍の未来派クリント・ハイノート中将 Lt. Gen Clint Hinoteが昨年次のように発言している。「爆撃機部隊がいかに充実しようとも合同部隊が求める攻撃能力は増える一方だ」 そこでパレット搭載弾薬類を貨物機から投下する構想が生まれた。▼この考え方では「スマートパレット」をまず作り、外観上は標準パレットと同じだが、標的情報を入れ、内部に搭載する誘導兵器に標的情報発射指令を与える。▼パレットは輸送機から投下されると、落下中に各種装備を発射し、別々の標的を狙う、あるいは時差を設定しばらばらに運用することが可能となる。 ラピッドドラゴン装備をMC-130Jに搭載し空中投下の準備をした。 (US Air Force) 11月3日にホワイトサンズミサイル演習場(ニューメキシコ州)でMC-130Jから投下したパレットには長距離巡航ミサイル分離試験機が入っており、飛行実証に成功した。▼空軍研究本部(AFRL)によれば同実験でMC-130J乗員は見通し線外の中継機から標的データを受信し、情報を機内の戦闘制御装備から試験用巡

英空軍が合成燃料の作戦運用構想を示し、前線や艦艇内での燃料供給の可能性に触れた。一方、小型機には電動化技術の進歩が著しい。軍もゼロエミッションを目指している。

Zero Petroleum   ロンドン---英空軍トップが考える未来の姿では前方作戦基地や艦艇内で航空機用合成燃料を製造し、ネットゼロエミッションを2040年までに実現する。   英空軍の環境目標でエコフレンドリーなジェット燃料の実用化がカギとなる。だが、サー・マイク・ウィグストン空軍中将Air Marshal Sir Mike Wigstonはフリーマン航空宇宙研究所での11月24日スピーチで新技術の実用化で生まれる作戦運営上の利点にも触れた。 「再生可能発電は太陽光や小型水素電源とし、莫大な量の燃料や補給活動を不要にし、補給の脆弱性や苦労もなくなる。この動きをさらに進め合成燃料の製造施設を前方配備すれば、基地あるいは艦上でジェット燃料を製造できる。HMSクイーン・エリザベス空母打撃群で燃料を自給できる」 この構想はさほど突飛なものではない。 RAFの迅速戦力室Rapid Capabilities Office (RCO) が合成燃料製造技術に予算を投入しており、試行中の方法のうち少なくとも一方式が移動可能になると期待している。 今月初め、RAFは小型機イカルスC42を世界で初めて100%合成燃料で飛行させた、燃料は英国の小企業 ゼロペトロリアム Zero Petroleumが製造したと発表した。 ゼロペトロリアム以外の企業が手がける合成航空燃料二つ目の事業の詳細も間もなく発表される。 「RAFは民間技術系企業数社と組んでおり、12月初旬にもこれ以外の燃料プロジェクトの追加情報を開示したい」(英空軍報道官) ゼロペトロリアムの合成燃料の原料は空気と水だ。まず水から水素を、空気中の二酸化炭素から炭素を抽出する。風力や太陽光の再生可能エナジーで水素と炭素を結合させる。加熱した金属触媒で圧力をかけて合成燃料が生まれる。 同社はスコットランドの小島に製造プラントを数週間で設置し、今回のフライト用燃料を供給した。 RAFではエタノールやリサイクル廃油など飼料を原料のサステナブル航空燃料sustainable aviation fuel (SAF)をと使用しているが、高コストと小規模製造のため、実用性に疑問が出ていた。 「安価かつ供給に心配がなくなれば利用したいが、中短期的には製造規模が低くサプライチェーンも不足気味だ。この関連でいうと、世界規模のジェット燃料消費量は年間

建国間もないイスラエルが核兵器開発の発足に成功した背景には国境を越えたたくみな資金調達ネットワークがあった。

  The Japan Times     イ スラエルの核兵器取得の動きは1948年の建国にまでさかのぼる。建国の祖デイヴィッド・ベングリオンはホロコーストの恐怖とあわせアラブ周辺諸国の脅威を痛感していた。核兵器こそユダヤ国家存続のカギを握る最後の手段ととらえ、イスラエルに勝る通常兵力を周囲国が投入した場合をベングリオンは想定した。ただし、創設まもないイスラエルには必要な技術も資材もなく国産核開発がままならないことだった。そこでイスラエルは海外調達をめざした。幸いにもその願いを実現する条件が生まれた。     1950年代中ごろにフランスはアルジェリアを自国領土ととらえていたが、アルジェリア国内の抵抗勢力がエジプトから支援を受け強力となり、フランスの支配力は危機に陥った。そこでフランスはイスラエルの協力でアルジェリア情勢の情報収集を進め、代償としてフランス製通常兵器類を供与した。1956年には核技術も対象になったのは英仏両国が軍事介入の動きを示したいわゆるスエズ運河危機の発生だ。   ベングリオンはそもそもイスラエルをまきこませるつもりはなかった。だがフランスは小型試験原子炉の供与をもちかけた。スエズ侵攻の企ては米国ソ連双方がイスラエル、フランス、英国へゆさぶりをかけたため不発に至った。フランスはイスラエルを超大国から守れないことを露呈した。撤退合意に先立ち、イスラエルはフランスに核協力の強化を求めた。フランスは大型のプルトニウム増殖炉とともに再処理工場の提供に応じた。これでイスラエルは原爆製造に必要なプルトニウム獲得のめどがついた。あとは重水だけだ。   核兵器製造に必要な技術を他国にここまで提供した例はそれまでなかった。ただしベングリオンは核合意実施に必要な資金を用意立てする必要があった。ディモナ核施設の建設費用は不詳だが、イスラエルはフランスに1960年時点のドル価格で80から100百万ドルを支払ったとみられる。当時のイスラエルには大金だった。さらにベングリオンの心配は核開発予算を国防費から流用すればアラブ諸国に対し有効な通常兵力の整備がままならなくなることだった。   そこでベングリオンは民間資金でフランスとの合意を実現する方法を考えた。この経緯はマイケル・カーピンが The Bomb in the Basemen で説明している。ベングリオンは「エイブに

RQ-180、SR-72(とおぼしき機体)、さらにX-37も登場させてのISR機材の変遷をたどる米空軍の広報ビデオが公開されています。極秘機材が大好きな向きにはたまりませんね。

  米空軍公開のビデオからデジタル採取したSR-72と思われる機体     こ の度公開された米空軍の広報ビデオに興味深い対象が登場している。極秘扱いのSR-72とRQ-180だ。 ビデオはYouTube上で2021年11月8日に米空軍のArms Center of Excellence (PACE)が「今日につながる伝統、ISRとイノベーション」の題で公開したもので、米国最先端のISR(情報収集監視偵察装備)の各事業に触れている。   https://youtu.be/xbqWdXzV-Bk     三分足らずの短編でISRミッションの進化を創世期から見せている。2分25秒でRQ-4グローバルホークが飛行する姿を見せた後、ステルス全翼機形状の無人機が現れ、2013年に出た Aviation Week & Space Technology で表紙を飾った想像図とうり二つだ。この機体の姿に次のナレーションがつく。「気球、複葉機のあとを継ぐのがホワイトバットだ」とあり、RQ-180には「グレイトホワイトバット」のニックネーム(あるいは1995年の映画に登場したシカカとも呼ばれる)がつき、独特の形状は新型スパイ機を示している。   ただし、最新ビデオに登場した機体形状が本当にRQ-180なのか疑わしい点もある。カリフォーニアで昨年、フィリピンで今年前半に目撃された姿と異なるからだ。つまり登場した機体は実はRQ-180でなく、類似機のものであり、公表に備えているのかもしれない。   これがRQ-180ホワイトバットなのか。USAFビデオからスクリーンショットした。   その直後に興味深い機体が登場している。2:34時点で、すっきりしたステルス機体が暗いハンガーに写り、これがSR-71後継機として「ブラックバード二世」と呼ばれるロッキードのSR-72なのか。 nd the presumed date for a first flight possibly in 2025. SR-72は無人極超音速情報収集監視偵察機として、また攻撃機材としてマッハ6飛行を狙う。一部に目撃談がある以外はほとんど情報がないものの、噂だけがとびかい、2025年に初飛行するといわれている。   ただし、ビデオに登場した機体はコンピュータグラフィックで実機と細部が異なる可能性もあるが、そもそも同