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主張 台湾の積極防衛戦略は中国侵攻に対し有効に作用すると期待。

 

Image: Creative Commons.

 

ャパンタイムズが台湾国防部が隔年発行する軍事戦略報告の最新版を報じた。(同紙が先行印刷分を入手したのは明白だ。台湾国防部の公式ホームページでもまだ掲載されていない。)以下は同戦略の骨子だ。「何といっても開戦阻止が第一で、外部からの軍事脅威の阻止が肝要で、わが方の防衛力を全面行使しても本土を防衛する」とあり、台湾海峡を挟んでの強襲揚陸作戦の「リスクと負担に対応する」。

 

文書ではさらに中国軍の「弱点は海上移動段階にある」とし、台湾の防衛部隊は「台湾海峡という自然障壁を最大限活用し、粘り強く戦う」とする。「海峡移動が完了し上陸するまで湾海峡の反対側で敵軍が港湾や飛行基地に終結するまで座して待ってはいけない」

 

これは健全な戦略だ。受動的な防衛体制は敗北を招き、敗北は台湾の破滅を意味する。

 

ある意味で台湾防衛軍は敵を模倣することになる。人民解放軍(PLA)は「積極防衛」を中国共産党(CCP)の創立者毛沢東から引き継いでいる。劣勢の部隊が積極防衛を取れば忍耐力を試される。敵より弱い戦力という事実を受け入れ、時期尚早の攻撃は避ける。決戦を挑んでも勝つ見込みがないので、小規模の奇襲攻撃でしつこく攻撃し敵を弱体化させながら、自軍の戦力を蓄える。敵を弱体化させ自軍を強化する積極防衛は弱い側でも忍耐強く当たれば勝利が手に入ると教える。

 

台湾軍はこの積極防衛をめざすべきだが、はるか昔の英国人サー・ジュリアン・コーベットの著作『海洋戦略の諸原則』を参照すべきだ。コーベットは海洋国家英国は最盛期に海外で限定戦を仕掛ける条件として地理条件で孤立していることをあげ、領土をめぐる戦いの条件として敵による「無制限の反撃」の本土上陸作戦を阻止することをあげた。言い換えると限定戦には戦闘を対象地の地上戦に限定し、敵による占領を回避しつつ非対称的な攻撃を加えるべきと説いたのだ。

 

台湾は中国が狙う目標地だ。コーベットの限定戦論では台湾軍はPLAに封鎖される事態を回避すべき、あるいはCCP体制に強烈な打撃を与えるべき、またはその双方となる。後者では台湾政府に実施手段がないので前者に全力で取り組むべきだ。侵攻部隊を海上で撃退できれば、地上戦準備に時間を稼げる。さらに台湾周辺の空域海域を維持できれば、台湾海峡は防壁になり、米国や日本の救援部隊が海空で大きな犠牲を出さずに現場に移動できるよ。

 

そこで前線での戦闘が結果を左右すると台湾の新軍事戦略で特記している。台湾は人員物資面の不利のまま大きな優位性を発揮できる。台湾はPLAを敗北に導き、台湾の意思を本土に強いる必要がない。毛沢東流の考えで勝利を収める必要もない。台湾に必要なのはPLA海軍による海峡制圧を回避することだ。制海権がないままではPLAは兵員重装備の上陸作戦の実施で強硬な防衛軍を制圧できなくなる。PLAの作戦が破綻すれば、台湾は「海上制圧」戦略の勝利となり、戦闘の代償に見合う結果を手に入れることになる。

 

コーベットも海上を移動する攻撃側が「防御に専念する防衛側を突破できなければ制海権を確保できなくなる」と考えた。海上制圧とは台湾が制海権を確保することを意味せず、PLAの航空機やミサイル攻撃の阻止にもつながらない。またPLA海軍の封鎖を破ることでもない。だが、コーベットの言葉を借りれば、敵の支配を否定する効果を「長期間にわたり行使すれば、敵は望む結果を得られず、対抗側は陸上防衛体制を確保する時間が稼げる」。台湾の戦いは台湾の陸上で雌雄を決することになりそうだ。PLAによる拠点確保を台湾軍が阻止できれば、台湾の民主体制は生き延びる。

 

そなると台湾に必要なのは海上支配や対抗作戦の実施ではない。必要なのはPLAを長時間食い止めることだ。また台湾の軍事戦略構想では台湾軍は台湾沿岸からどこまで遠い地点で中国侵攻部隊を叩けるかが問われることになる。沿岸配備の対艦対空ミサイル、ミサイル搭載哨戒艇、機雷がPLAに大きな損傷を与えることで戦闘は長期

 

ボクシング界の伝説的チャンピオン、ジャック・デンプシーなら台湾の戦略防衛構想を健全な攻撃的態度と呼ぶだろう。■

 

How Taiwan Could Stop a Chinese Invasion


ByJames Holmes

 

Now a 1945 Contributing Editor, Dr. James Holmes is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College and a Nonresident Fellow at the Krulak Center for Innovation and Future Warfare, Marine Corps University. The views voiced here are his alone.


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