スキップしてメイン コンテンツに移動

大型非ステルス機は危険と、だが新しいグローバルホークのブロック30まで退役させる米空軍の決断は正しいのか。戦術変更と技術改良でグローバルホークにも対中戦で生存性は高まる。

 



New Tactics & Upgrades to Enable Large Drones to Survive High-Tech Major Power War

Department of Defense

 

 

「とどまるところを知らない」とは情報収集監視偵察(ISR)へのペンタゴンの期待度でぴったりの表現だ。処理済みデータを適時にほしいとの要望は高まるばかりだ。

 

 

偵察作戦は有人スパイ機、掃海ヘリコプターから無人機まであらゆる形状、機体サイズ、高度で展開され、戦時の決定立案に「違いを生み出す」要素とされる。

 

ここで重要なのがスピードと有効範囲で、このため米国や太平洋地域の同盟国の無人機需要には限度がない観がある。日本、オーストラリア、インド、さらに台湾までもがISR及び米国とのネットワーク接続の整備を急いでいる。

太平洋は広大なため、米軍戦闘司令官から偵察機材の追加に加え安全な相互接続によるデータ送受信を米国同盟国間に求める声が高まっている。. 

この背景に中国の海軍力増強が続いていることがあり、日本が高高度飛行可能なグローバルホーク導入を決めた理由でもある。

 

グローバルホークとは

 

グローバルホークは長年にわたり戦闘地帯に投入されているが、センサー、航続性能、燃料消費など改良を続けている。高高度長時間飛行機材としてグローバルホーク無人機は高解像度カメラで敵の動きをズームで捉える。

また、グローバルホークは大規模な統合戦闘ネットワークの「中継点」としても長年使われている。

 

統合参謀本部副議長だったリチャード・マイヤース大将はこの動きを20年前に先取りしイラクの自由作戦でグローバルホークが本人が言う「融合」のカギを握ったと発言していた。

 

 

融合

 

マイヤースが言及したのはグローバルホークをほかの機材や地上偵察機材とリンクさせることで、JSTARS(E-8C統合監視標的攻撃レーダーシステム)に通じるものがあるが、同大将は時流を先取りし、「処理済み」情報の共有スピードが戦闘の行方を決すると見ていた。

 

情報「融合」とは解析結果を高速かつ安全な送信とともに実施することを意味し、前例のない規模での開発が優先的に進む可能性を秘めている。

 

その中で空軍がブロック30仕様のグローバルホークを退役させるのをいぶかしく思う向きがある。

 

空軍発表資料ではグローバルホークは電子光学赤外線カメラと合成開口レーダー(SAR)を搭載している。ブロック40仕様のグローバルホークはこの五年六年で供用開始しており、レーダー技術挿入、アクティブ電子スキャンアレイ、SAR、移動標的捕捉機能では高性能センサーで地上を移動中の標的を探知追尾できる。

 

空軍はノースロップグラマンとグローバルホーク近代化改修を進め、地上制御施設を更新したほか、指揮統制機能も一新し、反応遅延を減らし、攻撃対応を迅速化し、今後のセンサー画像解像度の向上に対応するソフトウェアの基盤を打ち出したほか、AIによりマンマシンインターフェース強化を実現した。

 

戦術面でいうと、これはノースロップグラマンが「その場対応」の任務割り当てと呼ぶ内容につながり、迅速に届く新規情報を活用してミッション内容を調整することにつながる。

 

第一線から外れるグローバルホークのブロック20機材は廃棄保管施設に送るのではなく、グランドフォークス航空基地(ノースダコタ)で極超音速ミサイルテスト二と入される。

 

超大国間戦でもグローバルホークは生き残れる

 

空軍では引き続きブロック30機材の退役も進め、供用開始10年程度で廃止する。空軍上層部はステルス性能が低い大型偵察機では高性能な大国の防空体制に耐えられないと見ている。

 

では、高度脅威環境で本当に生き残れないのだろうか。

 

例としてイランが海軍仕様のグローバルホークを2019年に地対空ミサイルで撃墜した事案がある。脅威対象に合わせた調整内容の詳細は保安上の理由で明かされていないが、米国が新型対抗装置や戦術の変更で機体生存性を調整していることはありうる。

 

この点に関し、大型無人機の運用では飛行経路の予想を困難にする、飛行経路を変更する、搭載カメラの性能を向上するなどの対策を米空軍上層部が話題にしてきた。

 

空軍は新鋭かつ改修直後のグローバルホークでも退役させ、今後の装備導入を優先させるようだ。この発想では今でさえ偵察能力が不足している状況で能力ギャップを生みかねないが、高高度飛行偵察の拡充による付加価値が生まれるのなら木を見て森を見ない態度は避けるべきだろう。

 

戦術変更で生存性を高める、また高高度飛行で安全を確保することで大型かつ低ステルス性能の無人機でもハイエンド環境あるいは紛争時の運行で付加価値を期待できそうだ。

 

グローバルホークに脆弱性があるとしても、同機が無人機であることからパイロットには危険は発生しない。

 

これに対しU-2偵察機は有人機であり、無人機にないリスクがつきまとう。また飛行時間の問題もあり、グローバルホークのような大型機は最長34時間の連続飛行が可能かつ乗員の要素を考慮する必要がない。

 

グローバルホークは中国に対抗する同盟国でも活躍する


太平洋での中国の脅威から米国の同盟各国が高高度長時間運用可能な偵察機材導入に走っており、広大な海洋域を長時間にわたり電子偵察する航空装備の稼働を急いでいる。

 

日本はグローバルホーク三機を調達し、防衛力の整備が進む中で調達を増やせば効果がさらに期待できる

 

南朝鮮はグローバルホーク4機を調達しており、ノースロップグラマンは韓国、日本ともに地上局での指揮統制機能を整備していると明かしている。

 

太平洋に高高度飛行偵察機材が追加されれば各国の「ネットワーク」が相互に強化される。

 

米空軍の高度戦闘管理システムはペンタゴンがめざす統合全ドメイン指揮統制機能の一環として各部隊をつなぐ構想で秘匿性を維持したネットワークの実現で効果を実証しており、各中継点や機材を組織を問わずリアルタイムでネットワーク化するものだ。

 

ここにグローバルホークの意義がある。山脈など地理条件で困難な水平線越えのデータ送信をつなぐ存在となる。日本のような国には極めて重要だ。日本は広大な海洋領域を有し、海洋に囲まれていることから中国の侵攻を受けやすい。日本は巨額予算でF-35導入を進めており、グローバルホークが支援し、脅威データを中継し、標的情報を提供する、偵察映像をリアルタイムで共有する、さらに情報収集の時点でそのままデータを処理する機能を実現する。

 

F-35 Lockheed Martin

F-35がもたらす利点のひとつに各ドメインを横断的につなぐ機能がある。Lockheed Martin

 

 

例として脅威対象の移動情報を海軍艦艇等が山の反対側で収集し、グローバルホークが中継する場合が想定される。味方戦闘機部隊や防空部隊には視認できない。今後の処理速度の向上でグローバアルホークが空の中継点となり、見通し線外での通信接続の課題を解消する存在になりそうだ。これにより戦闘展開が加速化され、戦闘の行方が大きく影響を受ける。

 

グローバルホークは一定地区上空で長時間とどまり、通常なら分断されるレーダーの「視界」をつなぐ機能を実現するので戦闘指揮官に各種情報が途切れなく入ってくる。

 

情報収集時点で処理し、無限ともいえるデータの海から関連線のあるものを自動的に見つけ出すことでネットワーク化の効果があがり、センサー探知から武装発射への時間が短縮される。

 

ソフトウェアとセンサー処理能力の向上にAIのアルゴリズムが加わればパラダイムを一変しかねない変化がグローバルホーク運用に生まれる。ここ数年間で集めた多数の運用例から同機はかつてのような脆弱性のある機体とは言えなくなっている。ブロック30仕様の各機の退役は世界各地の運用ニーズや実際の脅威を考えると得策とは言えない。

 

イラクの自由作戦当時に実戦デビューしたグローバルホークだが今日は一層その存在感を増しており、重要機材になっており、作戦への寄与度はこれからも増えそうだ。■

 

New Tactics & Upgrades to Enable Large Drones to Survive High-Tech Major Power War

KRIS OSBORN, WARRIOR MAVEN

UPDATED:NOV 19, 2021ORIGINAL:NOV 19, 2021

https://warriormaven.com/air/global-hawk-drones-surveillance

 

Osborn is the defense editor for the National Interest. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Master’s Degree in Comparative Literature from Columbia University. 


コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ