スキップしてメイン コンテンツに移動

歴史に残らなかった機体 番外編 米空愚がこの戦闘機が正式採用されていたら歴史は変わっていた----消えた5機種を見る。

 



F-35共用打撃戦闘機やF-22ラプターの背後に選定に漏れた競合各機があった。米政府は優秀な機体を選択したことはずだが、常に選定は正しかっのだろうか。


過去の選定に漏れた機体は国防総省が対象企業の言う通りの性能の実現を信じられなかった、機体性能がその時点で必要とされた水準に達していなかったため採択されなかった。


理由はいろいろだが、選定に漏れた各戦闘機は生産されなかった。だが、選定されていれば、卓越した、あるいは他に比類なき性能を発揮していたはずの機体がある。では、その5例を見てみよう。



第5位 F-16XL もっと優秀な F-16


F-16ファイティングファルコンは40年超にわたり、米空軍戦闘機部隊の中心だが、F-16供用開始の一年前、F-16をしのぐF-16XLが生まれていた。


同機は技術実証機の域を超えた高性能を発揮し、空軍の求める高性能戦術戦闘機としてF-15Eの有力な対抗策になっていた。


F-16XL (U.S. Air Force photo)


だが製造コストと既存システムの利用という点でF-15Eに軍配が下り、同機は敗退したが、今でもF-16XLの優秀性を論じるものが多い。


主張には議論の余地があるが、F-16XLが実現していたら第四世代戦闘機として最高性能を発揮していたのだろうか。


第4位 A-12 Avenger II:米国初のステルス戦闘機になるはずだった(U.S. Navy)


1988年1月13日、マクダネルダグラス=ジェネラルダイナミクス合同チームにA-12アヴェンジャーIIの開発契約が交付された。同機はロッキードがSR-71派生型で武装型となるはずだったA-12とは別の機体だ。実現すればA-12は全翼機形状となり、ノースロップ・グラマンB-2スピリット、同社のB-21レイダー同様の形状ながらはるかに小型の機体となっていただろう。ただA-12アヴェンジャーIIは全翼機形状を採用したが、機体全容は当時開発中のB-2スピリットとは異なる姿だった。


Artist’s rendering of A-12 Avenger II



A-12は鋭角三角形形状で、「空飛ぶドリトス」の愛称がついた。A-12開発は問題なく進展している観があったが、突然国防長官(のちの副大統領)ディック・チェイニーにより1991年1月に開発中止とされた。



第3位 YF-12: 史上最高速で最サイズの戦闘機


冷戦時にSR-71ブラックバードは最も印象の強い機体だったが、高速飛行と高高度飛行だけを主眼としていなかった。事実、SR-71の前身となったのがA-12で迎撃戦闘機として計画され、その後YF-12となり、理論上は制式採用後にF-12Bとなる予定だった。


YF-12の変更点は機体前方にあり、コックピットが追加され戦闘制御士官が空対空装備の運用にあたるはずだった。


機首は設計変更でヒューズ製AN/ASG-18火器管制レーダーを搭載するとした。これは開発中止となったXF-108ように開発されたものだった。だがA-12とYF-12の最大の違いは高性能カメラ装置その他偵察装備の収容を想定した機内搭載ベイ4つだった。そのひとつに火器管制装備を、残る三つにヒューズAIM-47ファルコン空対空ミサイル3発を収納する予定だった。YF-12開発の背景は以下を参照されたい。


第2位 21世紀の運用をめざしたASF-14スーパートムキャット


F-14Dには「スーパートムキャット」の愛称がついたが、F-14近代化改修は「ST21」の名称で別に開始されており、「21世紀のスーパートムキャット」の実現を目指していた。エイビオニクス改良、推力増加、航続距離延長と全般的に性能向上を目指していたのでこの名称はあながち誤りといえなかった。


ST21、AST21ともに既存トムキャットを再生産する構想だったが、グラマンは海軍にその後まったく新規生産となるトムキャットをASF-14として売り込もうとした。


ASF-14は外観ことF-14同様だが類似点は外観だけだった。


ASF-14は推力60千ポンドでF-14Dをしのぐ重力推力比を発揮するほか、推力偏向制御、機内燃料搭載量の増加、ペイロード拡大、レーダーのほかセンサーポッド各種により状況認知能力の増加をめざし、当時の第四世代戦闘機各種より傑出した性能を目指した。


第1位 YF-23: ラプターと互角の機体


ロッキード・マーティンF-22ラプターの供用が始まり15年ほどになるが、同機には同等の性能を有する対抗機種がないままだ。だが、常にそのままではなかった。1990年代には短期間ながらその後F-22となったYF-22には同等の性能を有する対抗機種があった。それがノースロップのYF-23だ。


YF-23試作型は2機製造された。一号機はブラックウィドーIIと呼ばれ黒色塗装でプラット&ホイットニー双発でマッハ1.43のスーパークルーズを1990年のテストフライト開始時点で実現した。

Both YF-23 prototypes in flight (U.S. Air Force)


二号機は灰色塗装のため「グレイゴースト」と呼ばれ、ジェネラルエレクトリックYF120エンジン双発となった。こちらのスーパークルーズはテスト時に、マッハ1.6となりわずかながらYF-22のマッハ1.58を上回った。


YF-23はF-22のアクロバティック性能と互角だったが、ロッキードが契約を勝ち取った。ロッキード作がダイナミックな飛行ぶりを誇示したためで、同社テストパイロットは高い迎角でミサイルを発射したライ、9Gの飛行ぶりをみえつけた。YF-23でも同じような飛行ぶりを示せたのにノースロップは実行しなかった。YF-22の採択は性能より営業手法によるものと主張する向きが多く、国防関係者の目を奪ったという。■


The 5 best fighters America decided not to buy


Alex Hollings | November 28, 2021


コメント

コメントを投稿

コメントをどうぞ。

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ